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第一章 異世界人?何それ?
第1話 いきなりピンチ!ワイバーン襲来!
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その日おいらが、町の外に向かって歩いていると、前の方が何やら騒がしい。
たいていの事はおいらにゃあ関係ないので、気にせず歩いていたんだけど…。
ちょうど、町の広場に差しかかったとき、何の騒ぎかわかったよ。
知りたくもなかったけど。
「おい、あれみろ!ワイバーンじゃねえか!」
「マジか!」
「やべええぇ!ありゃ、本当にワイバーンだ!」
「おい!逃げろ!」
「何処でもいい、建物に隠れるんだ!」
そんなシャレにならない叫び声が聞こえるし…。
人や家畜をエサとする魔物ワイバーン、時には集団で町を襲う事もあるらしい。
藁ぶき屋根のちゃちい家だと、家を壊して人を襲う事もあるって聞いたよ。
ワイバーンが襲ってきたら、頑丈な建物に逃げ込んで、立ち去るのを待つしかないって。
そんな声にビックリして顔を上げると、…。
えらい数の人達がこっちに向かって走ってくる。
みんな、なりふり構わず走ってて、他人の事などかまってられないって。
おいらは、その場でぼうっとして立ち止まってたんだけど。
見事に突き飛ばされて尻モチついちゃった。
おいらはまだちっこい子供なんだから、少しは気遣って欲しいと思うの…。
「痛てて…。」
おいら、思い切り地面にぶつけたお尻を撫でてたんだ。
おいらのプリチーなお尻に痣でも出来たらどうしてくれるの。
『ギィエー』
涙目でお尻を撫でていると、耳障りな獣の雄叫びが響きわたって。
空を見上げるとでっかい何かが飛んで来たの。
例えて言えば、蜥蜴を大きくしてコウモリの羽を生やしたような何か。
へー、あれがワイバーンって魔物なんだー。
おいら、恐怖心を通り越して、現実逃避に走ったね。
だって、でっかい顎を開いてこちらに向かってくるんだもん。
ちっぽけなおいらなんて、きっと一飲みだ。
見逃してもらえないかな。
やせっぽちのおいらなんて、腹の足しにもならないから。
そう願っていたんだけど、あいにくとみんなサッサとに逃げ込んでしまって…。
広場に残っているのは、尻モチをついたままのおいらとぼうっと突っ立っている兄ちゃんが一人。
どうやら、あのワイバーンのエサはおいらとあの兄ちゃんしかいないみたい。
どうか、おいらの方には来ないでください。
私は心の中で切に願ったよ。だけど…。
一瞬、目が合ったような気がしたんだよね、これが。、
すると、ワイバーンはまっしぐらにおいらに向かって飛んで来たよ。
大きな顎を開けたままで…、とほほ。
あっ、これは死んだ。
おいらは襲い来るワイバーンを前にそう思っていたんだ。
もう逃げる気力も失ってたよ。
そして、ワイバーンが目の前に迫った時のこと。
今まで経験したことがない不思議な感覚が体に走ったの。
ワイバーンの動きが急にカクカクと停まったように不自然に見えたかと思うと…。
体が勝手に、私を一飲みにしようと開いたワイバーンの口を避けたの。
…すんでのところで。
更に、体は勝手に動き…。
草の刈り取りのために持っていた錆びた包丁をワイバーンの首筋にチョコンと振り当てたの。
おいらの横をすり抜けたワイバーン。
一瞬遅れて、その首筋から真っ赤な血が噴き出した。
ホント、これにはビックリした。
まさか、錆びだらけの包丁があんなでっかいワイバーンを傷つけるなんて。
そのまま、地面に突っ込んだワイバーン。
地面に落ちてしばらくはピクピクと痙攣してたんだけど。
しばらくすると、ワイバーンはピクリとも動かなくなった。
「死んだ?」
おいらは誰に言う訳でもなく呟くとワイバーンに近づいてみたの。
まさか、死んだふりとかないよね。
近付いたらパクりとかはイヤだよ。
恐る恐る突いてみたけど、ワイバーンはピクリともしない。
どうやら本当に死んでいるみたい。
この時、おいらは一つの予感がして心の中で念じてみたの、『積載』って。
すると不思議な事に目の前のワイバーンがパッと音も立てずに消えたんだ。
この時、おいらは思ったね、「ラッキー」って。
********
おいらは、ひとまずここから移動することにしたんだ。
年端もいかない小娘がワイバーンを倒したと知れたら大騒ぎになっちゃう。
聞いた話では、ワイバーンは厄災にも等しいと言われているそうだから。
おいらは、当初の目的地、町の外に向うことにして歩き出したんだ。
おいらが、広場を立ち去ろうと歩き出した時のこと。
逃げ遅れてボウっと突っ立っていた兄ちゃんが、不意に話しかけてきた。
「おい、今のでっかい怪物は何なんだ。
この辺にはあんなバケモノがうようよしているのか?」
「さあ? おいらも初めて見たからね。
逃げてく街の人がワイバーンって呼んでたからワイバーンじゃないかな。
うようよいるかどうかは知らないけど、おいらが見たのは初めてだよ。」
「あれがワイバーンか…。
すげえ、ここは異世界なんだ…。
地球には、ワイバーンなんて生き物はいないもんな。
俺は異世界に来ちまった。」
おいらの返事を聞いて、兄ちゃんはブツクサと言いながら何やら考え込んでいる様子。
まっ、もう用がないなら、さっさと言ってしまおう。
そう思った時のこと。
この兄ちゃん、いきなりでっかい声で叫びやがった。
「ステータス・オープン!」
いきなり、耳元で叫ばないで欲しいよ、耳が痛いじゃないか。
でも、このお兄ちゃん、頭は大丈夫?
意味不明の言葉をでっかい声で叫んだりして。
ワイバーンに襲われた恐怖で、頭のネジが一本飛んだんじゃないよね。
「あれ、おっかしいな、何も出てこないじゃないか…。」
今度はそんな、独り言が聞こえて来たよ。
おかしいのは兄ちゃんの頭じゃないかいとツッコミを入れたいよ。
これ以上頭のおかしい人に付き合ってたらロクな事は無いね。
サッサといこう。
今度こそ、広場を立ち去ろうと歩き始めると。
「お、おい、ちょっと、待ってよ。
まだ聞きたいことがあるんだ。」
兄ちゃんが、人の腕を掴んで引き留めた。
「おいらみたいな子供が分かる事なんか少ないよ。
話しを聞きたければ、その辺を歩いてる大人に聞けば?」
ほんと、おいらみたいな子供に何が聞きたいんだか。
自慢ではないけど、八歳児の知恵なんかたかが知れているよ。
「そんなことを言ったって、町の奴ら、ワイバーンを見た途端逃げ出して。
今、建物の外には誰もいないじゃないか。
なあ、少しだけ良いだろう。」
「良くないよ、おいらは今日の晩飯のタネを取りに行くんだ。
もたもたしている時間なんて無いよ。
どうしても話が聞きたいなら、歩きながらだね。」
「わかった、それでかまわないさ。
まずは、ステータスってどうやって見るんだ?」
いきなり、この兄ちゃん、訳のわかんない事を聞いて来たよ…。
「ステータス?なにそれ、聞いたことないよ。」
「マジか…。ちっ、ラノベやゲームみたいな訳にはいかねえか。
んじゃ、この世界にレベルってないのか?」
「えっ、兄ちゃん、レベルあるの?
それは凄い。
おいらも含めて、この街にいる人は大抵レベルゼロだとおもうよ。
レベルがある人なんて初めて見たよ。」
「いや、あるかどうかも分からないんだ。
だから、確認しようと思ったんだ。で、どうやって確認するんだ。」
「うんと、頭の中で自分の能力を確認したいと強く思うの。
そしたら、ぼんやりと頭の中に浮かんで来るよ。」
おいらの返事を聞いた兄ちゃんは立ち止まると、目を瞑ってジッとしている。
きっと、能力値を見ようとしているんだね。
すると、パッと目を見開いてまた大声を上げやがった。
本当に騒がしい兄ちゃんだね。
「み、見えた!ステータスが見えたぞ!ゲームみたいだ!
…って、なんだ、この昭和のレトロゲームみたいなステータス。
レベル、攻撃力、防御力、素早さ、知力、これだけ?
しかも、全部ゼロでやんの。」
なんか、最初は興奮して大声を上げた兄ちゃんだけど、自分のショボい能力値をみて萎んでいったよ。
レベルゼロなんて、この町じゃ、当たり前の事なのに、何で落ち込んでいるんだろうね。
「兄ちゃん、レベルゼロだからって落ち込むことないよ。
さっきも言ったけど、この町でレベルがある人なんてほとんどいないと思うよ。
せいぜいが魔物狩りを生業にしている人くらいだから。
だいたい、レベルなんて生きてくのにはあんまり関係ないしね。」
「うん、どういう意味だ?」
「だって、攻撃力とか、防御力って、何に使うの?
普通、生きていくのに必要だと思う?
素早さ、なんてのも。
まあ、魔物狩りをして食べている人だったら、大事かもしれないけどね。」
「ちっ、子供のくせに醒めてんの。
レベルがあるならレベル上げしたいと思わないのか。
それに、知力なんてステータスもあるじゃないか。
知力を上げれば、色々と役に立つんじゃないのか。」
「知力は上がっても、少し物覚えが良くなるのと計算が速くなるくらいらしいよ。
それにね、知力が能力値ゼロでも、物忘れがひどいとか、計算が出来ないとかじゃないから。
死んだ父ちゃんが言ってたけど、人はレベルゼロ、能力値ゼロが普通なんだって。
一より大きい数字があるのは、プラスの補正らしいよ。」
でも、何でこの兄ちゃん、おいらみたいな小さな子供でも知っていること聞くんだろう?
本当に変な兄ちゃん。
「あっ、そうだ。
もしかしして兄ちゃん、これも知らないかな?」
「うん、なんだ?」
「ええっと、父ちゃんから聞いたんだ。
というより、みんな、小さい時に親から教えられるはずなんだけど。
外で、他人にレベルの事を聞いたら殺されても文句言えないんだって。
絶対に、レベルという言葉は口にしたらダメだと教えられたよ。
さっき、兄ちゃんがいきなりレベルの話をしたんでビックリしたよ。
じゃあ、おいら、本当に急ぐから、バイバイ。」
これ以上、頭のおかしい兄ちゃんの相手はしていられないよ。
もたもたしていると日が暮れちまう、その前に今日の晩飯を確保しないと。
たいていの事はおいらにゃあ関係ないので、気にせず歩いていたんだけど…。
ちょうど、町の広場に差しかかったとき、何の騒ぎかわかったよ。
知りたくもなかったけど。
「おい、あれみろ!ワイバーンじゃねえか!」
「マジか!」
「やべええぇ!ありゃ、本当にワイバーンだ!」
「おい!逃げろ!」
「何処でもいい、建物に隠れるんだ!」
そんなシャレにならない叫び声が聞こえるし…。
人や家畜をエサとする魔物ワイバーン、時には集団で町を襲う事もあるらしい。
藁ぶき屋根のちゃちい家だと、家を壊して人を襲う事もあるって聞いたよ。
ワイバーンが襲ってきたら、頑丈な建物に逃げ込んで、立ち去るのを待つしかないって。
そんな声にビックリして顔を上げると、…。
えらい数の人達がこっちに向かって走ってくる。
みんな、なりふり構わず走ってて、他人の事などかまってられないって。
おいらは、その場でぼうっとして立ち止まってたんだけど。
見事に突き飛ばされて尻モチついちゃった。
おいらはまだちっこい子供なんだから、少しは気遣って欲しいと思うの…。
「痛てて…。」
おいら、思い切り地面にぶつけたお尻を撫でてたんだ。
おいらのプリチーなお尻に痣でも出来たらどうしてくれるの。
『ギィエー』
涙目でお尻を撫でていると、耳障りな獣の雄叫びが響きわたって。
空を見上げるとでっかい何かが飛んで来たの。
例えて言えば、蜥蜴を大きくしてコウモリの羽を生やしたような何か。
へー、あれがワイバーンって魔物なんだー。
おいら、恐怖心を通り越して、現実逃避に走ったね。
だって、でっかい顎を開いてこちらに向かってくるんだもん。
ちっぽけなおいらなんて、きっと一飲みだ。
見逃してもらえないかな。
やせっぽちのおいらなんて、腹の足しにもならないから。
そう願っていたんだけど、あいにくとみんなサッサとに逃げ込んでしまって…。
広場に残っているのは、尻モチをついたままのおいらとぼうっと突っ立っている兄ちゃんが一人。
どうやら、あのワイバーンのエサはおいらとあの兄ちゃんしかいないみたい。
どうか、おいらの方には来ないでください。
私は心の中で切に願ったよ。だけど…。
一瞬、目が合ったような気がしたんだよね、これが。、
すると、ワイバーンはまっしぐらにおいらに向かって飛んで来たよ。
大きな顎を開けたままで…、とほほ。
あっ、これは死んだ。
おいらは襲い来るワイバーンを前にそう思っていたんだ。
もう逃げる気力も失ってたよ。
そして、ワイバーンが目の前に迫った時のこと。
今まで経験したことがない不思議な感覚が体に走ったの。
ワイバーンの動きが急にカクカクと停まったように不自然に見えたかと思うと…。
体が勝手に、私を一飲みにしようと開いたワイバーンの口を避けたの。
…すんでのところで。
更に、体は勝手に動き…。
草の刈り取りのために持っていた錆びた包丁をワイバーンの首筋にチョコンと振り当てたの。
おいらの横をすり抜けたワイバーン。
一瞬遅れて、その首筋から真っ赤な血が噴き出した。
ホント、これにはビックリした。
まさか、錆びだらけの包丁があんなでっかいワイバーンを傷つけるなんて。
そのまま、地面に突っ込んだワイバーン。
地面に落ちてしばらくはピクピクと痙攣してたんだけど。
しばらくすると、ワイバーンはピクリとも動かなくなった。
「死んだ?」
おいらは誰に言う訳でもなく呟くとワイバーンに近づいてみたの。
まさか、死んだふりとかないよね。
近付いたらパクりとかはイヤだよ。
恐る恐る突いてみたけど、ワイバーンはピクリともしない。
どうやら本当に死んでいるみたい。
この時、おいらは一つの予感がして心の中で念じてみたの、『積載』って。
すると不思議な事に目の前のワイバーンがパッと音も立てずに消えたんだ。
この時、おいらは思ったね、「ラッキー」って。
********
おいらは、ひとまずここから移動することにしたんだ。
年端もいかない小娘がワイバーンを倒したと知れたら大騒ぎになっちゃう。
聞いた話では、ワイバーンは厄災にも等しいと言われているそうだから。
おいらは、当初の目的地、町の外に向うことにして歩き出したんだ。
おいらが、広場を立ち去ろうと歩き出した時のこと。
逃げ遅れてボウっと突っ立っていた兄ちゃんが、不意に話しかけてきた。
「おい、今のでっかい怪物は何なんだ。
この辺にはあんなバケモノがうようよしているのか?」
「さあ? おいらも初めて見たからね。
逃げてく街の人がワイバーンって呼んでたからワイバーンじゃないかな。
うようよいるかどうかは知らないけど、おいらが見たのは初めてだよ。」
「あれがワイバーンか…。
すげえ、ここは異世界なんだ…。
地球には、ワイバーンなんて生き物はいないもんな。
俺は異世界に来ちまった。」
おいらの返事を聞いて、兄ちゃんはブツクサと言いながら何やら考え込んでいる様子。
まっ、もう用がないなら、さっさと言ってしまおう。
そう思った時のこと。
この兄ちゃん、いきなりでっかい声で叫びやがった。
「ステータス・オープン!」
いきなり、耳元で叫ばないで欲しいよ、耳が痛いじゃないか。
でも、このお兄ちゃん、頭は大丈夫?
意味不明の言葉をでっかい声で叫んだりして。
ワイバーンに襲われた恐怖で、頭のネジが一本飛んだんじゃないよね。
「あれ、おっかしいな、何も出てこないじゃないか…。」
今度はそんな、独り言が聞こえて来たよ。
おかしいのは兄ちゃんの頭じゃないかいとツッコミを入れたいよ。
これ以上頭のおかしい人に付き合ってたらロクな事は無いね。
サッサといこう。
今度こそ、広場を立ち去ろうと歩き始めると。
「お、おい、ちょっと、待ってよ。
まだ聞きたいことがあるんだ。」
兄ちゃんが、人の腕を掴んで引き留めた。
「おいらみたいな子供が分かる事なんか少ないよ。
話しを聞きたければ、その辺を歩いてる大人に聞けば?」
ほんと、おいらみたいな子供に何が聞きたいんだか。
自慢ではないけど、八歳児の知恵なんかたかが知れているよ。
「そんなことを言ったって、町の奴ら、ワイバーンを見た途端逃げ出して。
今、建物の外には誰もいないじゃないか。
なあ、少しだけ良いだろう。」
「良くないよ、おいらは今日の晩飯のタネを取りに行くんだ。
もたもたしている時間なんて無いよ。
どうしても話が聞きたいなら、歩きながらだね。」
「わかった、それでかまわないさ。
まずは、ステータスってどうやって見るんだ?」
いきなり、この兄ちゃん、訳のわかんない事を聞いて来たよ…。
「ステータス?なにそれ、聞いたことないよ。」
「マジか…。ちっ、ラノベやゲームみたいな訳にはいかねえか。
んじゃ、この世界にレベルってないのか?」
「えっ、兄ちゃん、レベルあるの?
それは凄い。
おいらも含めて、この街にいる人は大抵レベルゼロだとおもうよ。
レベルがある人なんて初めて見たよ。」
「いや、あるかどうかも分からないんだ。
だから、確認しようと思ったんだ。で、どうやって確認するんだ。」
「うんと、頭の中で自分の能力を確認したいと強く思うの。
そしたら、ぼんやりと頭の中に浮かんで来るよ。」
おいらの返事を聞いた兄ちゃんは立ち止まると、目を瞑ってジッとしている。
きっと、能力値を見ようとしているんだね。
すると、パッと目を見開いてまた大声を上げやがった。
本当に騒がしい兄ちゃんだね。
「み、見えた!ステータスが見えたぞ!ゲームみたいだ!
…って、なんだ、この昭和のレトロゲームみたいなステータス。
レベル、攻撃力、防御力、素早さ、知力、これだけ?
しかも、全部ゼロでやんの。」
なんか、最初は興奮して大声を上げた兄ちゃんだけど、自分のショボい能力値をみて萎んでいったよ。
レベルゼロなんて、この町じゃ、当たり前の事なのに、何で落ち込んでいるんだろうね。
「兄ちゃん、レベルゼロだからって落ち込むことないよ。
さっきも言ったけど、この町でレベルがある人なんてほとんどいないと思うよ。
せいぜいが魔物狩りを生業にしている人くらいだから。
だいたい、レベルなんて生きてくのにはあんまり関係ないしね。」
「うん、どういう意味だ?」
「だって、攻撃力とか、防御力って、何に使うの?
普通、生きていくのに必要だと思う?
素早さ、なんてのも。
まあ、魔物狩りをして食べている人だったら、大事かもしれないけどね。」
「ちっ、子供のくせに醒めてんの。
レベルがあるならレベル上げしたいと思わないのか。
それに、知力なんてステータスもあるじゃないか。
知力を上げれば、色々と役に立つんじゃないのか。」
「知力は上がっても、少し物覚えが良くなるのと計算が速くなるくらいらしいよ。
それにね、知力が能力値ゼロでも、物忘れがひどいとか、計算が出来ないとかじゃないから。
死んだ父ちゃんが言ってたけど、人はレベルゼロ、能力値ゼロが普通なんだって。
一より大きい数字があるのは、プラスの補正らしいよ。」
でも、何でこの兄ちゃん、おいらみたいな小さな子供でも知っていること聞くんだろう?
本当に変な兄ちゃん。
「あっ、そうだ。
もしかしして兄ちゃん、これも知らないかな?」
「うん、なんだ?」
「ええっと、父ちゃんから聞いたんだ。
というより、みんな、小さい時に親から教えられるはずなんだけど。
外で、他人にレベルの事を聞いたら殺されても文句言えないんだって。
絶対に、レベルという言葉は口にしたらダメだと教えられたよ。
さっき、兄ちゃんがいきなりレベルの話をしたんでビックリしたよ。
じゃあ、おいら、本当に急ぐから、バイバイ。」
これ以上、頭のおかしい兄ちゃんの相手はしていられないよ。
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