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第18章 冬、繫栄する島国で遭遇したのは

第551話 子供達を部屋に案内して

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「何よ、大の大人が騒がしいわね。
 ほら見なさい、子供達がビックリしているじゃないの。
 ブラウニーがいたら悪い?
 この館は、建てられてからずっと私達が維持してきたのよ」

 ブラウニーに驚き大きな叫び声を上げたマーブル青年にブラウニーのリーダーが苦言を呈します。

「すみません、今の今までブラウニーさんはお伽話の中の存在だと思っていたものですから。
 実際に目にして驚いてしまいました。」

「そっ、じゃあ、私は子供達に話があるから静かにしていてちょうだいね。」

 謝罪を受けたブラウニーのリーダーは、青年に黙らせると子供達に向き直ります。

「みんな、良く来たわね。
 私達、ブラウニーはみんなのことを歓迎するわ。
 これから、私達がみんなのために美味しいごはんを作ってあげるからね。 
 他にもあなた達がここで楽しく暮らせるように手助けしてあげる。
 あなた達が大人になってここを巣立っていく時。
 ここで暮らすことができて本当に良かったと思えるようにね。
 だから、仲良くしてね。」

 その言葉は、心から子供達を歓迎するものであり。
 また、とても愛情にあふれた言葉でした。

 すると、最期まで私の事を疑っていた少女が。

「ブラウニーさん、有り難う。
 そんな風に言ってもらえるの生まれて初めて…。
 私、どんなところに連れていかれるのか不安だったの。
 大人は優しい顔をして近付いて来るって。
 うっかり付いて行くと、手のひらを返したように酷いことをするって。
 スラムのお姉ちゃん達に聞かされていたから。」

 緊張の糸が切れたのか、そう言うと涙を零しはじめました。
 私の言葉は中々信用してくれなかったのに、小さなブラウニーの言葉は信用できたようです。
 私、アリィシャちゃんから始まって、メイちゃんまで結構な数の子供を保護してきました。
 今までは、概ねすぐに信用してもらえたのですが、こんなに警戒されたの始めてです。
 スラムで暮らす中で、年上の孤児から、大人から受けた酷い仕打ちを聞かされたのでしょう。
 
       **********

 ブラウニーの紹介が終ると、キム院長は子供達を部屋に案内します。

「ここが、あなた達二人が暮らす部屋です。
 お部屋は四人部屋で、先輩二人と一緒に部屋になります。
 この施設について、先輩二人から良く教えてもらってください。
 くれぐれも仲良くしてくださいね。」

 居室の前に着くと、キム院長はその部屋に住むことになる子供の名前を呼び同じことを伝えました。
 キム院長には、新しく入る子が早く施設に馴染めるように先に入った子供と同室にするように伝えてあります。
 居室は全て四人部屋として、基本、年長者が同室の年少の子のお世話をするようにしてあります。

 この建物は、元々裕福な貴族の別邸として建てられたもので。
 それぞれの居室はリビング部分とベッドルーム部分で構成されています。

 孤児たちの保護施設に転用するに当たって、リビング部分には学習用の机を四つ置くことにしました。
 一人に一つ専用の机を置いて、じっくりと学べるようにしたのです。

 ベッドルーム部分は、どの部屋もとても広かったのでベッド四つと各人に専用のクローゼットをおいても余裕でした。

 それぞれの部屋に着くと、キム院長は同室の子供を紹介し、ベッドとクローゼットを割り当てていました。

「あなた達には、それぞれ専用のベッドとクローゼットがあります。
 必ず自分に割り当てられたモノを使うようにしてくださいね。
 クローゼットの中には、予めそれぞれの着替えを入れてあります。
 もし、大きさがあわないようでしたら、交換します。
 使い方などで分からない時は、同室の先輩に教えてもらってください。
 同室の子供同士、仲良くしてくださいね。」

 ベッドとその横に設置されたクローゼットが、各人のプライベートスペースです。
 私物は全てクローゼットに片付けて、施錠できるようにしてあります。

「わーい、べっど、ふかふか、きのうとおんなじだ。」

 ベッドに寝転んで喜んでいるのは、今朝、私の館のベッドに感動していた少女です。
 この子は路上生活をしていて、まともなベッドに寝たのは初めてだと言ってました。
 この施設のベッドもなるべく上質なものにしたのですが、どうやらお気に召したようです。

「凄い、服がこんなにいっぱい…。
 これ、全部、私だけのものなのですか。
 今、着ている服だけでも夢みたいなのに…。
 こんなに色々な服があるなんて信じられない。」

 少し年長のこちらの少女は、クローゼットの中を覗き込み用意されていた服に驚きを見せました。
 今回保護した十人は、全員が所々にほつれや切り裂けがある薄い服をきていてとても寒々しい服装でした。
 当然、靴下などと言う上等なモノは履いていないし、下着すら着けていない子供ばかりでした。

 今回支給したのは、ワンピース、ジャケット、スカートが一枚ずつ、ブラウスが三枚、何れも冬用の厚手の服です。
 もちいろん、インナーも支給しました、下着を上下五枚ずつと靴下を五足です。
 また、昨日支給した冬用のワンピースとコート、それに下着一式ももちろんそのまま使ってもらいます。
 夏物はまた別途初夏に支給することにしています。
 子供は成長が早いので、なるべく着用する時に支給した方がサイズがあいますので。 
 
 取り敢えず、このくらいあれば、王都に住む一般家庭の子供と同等の服の揃えかと思います。

 このような感じて、十人全員を居室に案内して、同室の子供にお世話をお願いしました。

       **********

 その後、キム院長の執務室へ行き。

「驚きました。
 ブラウニーが実在したこととか、ここと王都の間を魔法で行き来するとか。
 最初から驚きの連続でしたが。
 そんな事より、孤児に対する扱いが、教会の救貧院とは全く別物です。
 清潔な部屋に、柔らかいベッド、服だって十分に与えられている。
 貴族の子供のような環境だと感じましたよ。」

 てっきりマーブル青年はブラウニーの方に食いつくと思ったのですが。
 一番感心したのは、子供達の生活環境のようでした。

「先日も言いましたが、孤児たちは心に傷を負っている子供が多いのです。
 朝から、私の言葉に疑心暗鬼だった少女がいるでしょう。
 彼女はスラムで酷い仕打ちを目にしてきたのだと思います。
 私はここをそんな孤児たちの心の傷を癒す安らぎの場所にしたいと考えています。
 孤児だと言う負い目を感じずに成長して欲しいのです。
 さっき、ブラウニーが言っていたでしょう。
 いつか巣立つ時に、ここで暮らして本当に良かったと感じて欲しいと。
 私も全く同感です。
 そのためには、少し与え過ぎくらいの暮らしをしても良いと思います。」

 この保護施設の運営資金の大部分は私が提供した基金から出ているのですから。
 子供達に与える環境は、私の意向を反映してもらっています。
 子供達がここを巣立つときに、胸を張ってここの出身だと言えるような施設にしたいのです。

「マーブル坊ちゃま、私はアルムハイム公とメアリー様から仰せつかっています。
 後ろ盾のない孤児たちに、高い教養という武器を身に付けさせるようにと。
 私もそのお考えに深く共鳴しました。
 今、女学校を退職した先生方をここにお招きできないか検討していますのよ。」

 現在、この施設の運営は、キム院長の他は飢饉で働き手を失った女性とブラウニーで行っています。
 食事や施設の維持管理をブラウニーが、洗濯や子供の世話を女性職員がしています。
 子供達の生活面だけではあれば、それで良いのですが。

 教養を身に付けるとなると、教師が必要になります。
 メアリーさん、キム院長と相談した結果、何人か教師を雇用することになりました。
 現在、メアリーさんが、探してくださってます。

 私達の話を耳にして、マーブル青年は孤児院という言葉のイメージとかけ離れていると呟いていました。 
 
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