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第16章 冬から春へ、時は流れます
第426話 神の権威より、人の権威?
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叙勲式の前日、私達は会場となる王都郊外のお城に赴くこととなりました。
会場となる王家所有の城は、王都の西約二十マイルの郊外にあります。
明日の日程は、朝一番でお城の王の間で叙勲式が行われます。
叙勲式に参列できるのは、今までこの勲章を受勲した先輩方だけだそうです。
その後、参列者と共に城内にある教会までお披露目の行進を行います。
教会での礼拝が済みますと昼餐となります。
ここまでが、受勲式と一体になった公式行事だそうです。
ここまでの行事に参加できるのは、勲章を受勲した先輩方だけだと言います。
式典としての中心は当然、朝一の叙勲式ですが、一番華やかなのはお披露目の行進だと言います。
一連の行事の中で、この行進だけが一般に公開されるからです。
沿道に集まった多くの見物人の祝福を受けながら教会まで行進するそうです。
私が先頭で…。
なんか、見せ物になっているようで、そう言うのは苦手です。
そして、その日は会場となっているお城で晩餐会が催されます。
この晩餐会に至って、既存の受勲者限定と言う枠は外され、国内の重要人物が招かれたパーティとなります。
これで、叙勲式に伴う一連の行事はお終いです。
********
朝一番で叙勲式ということは、当然それまでに正装を整えないといけません。
明日の朝、王都の館を出たのではとうてい間にあいません。
という訳で、前日から会場となるお城に乗り込むことになったのですが…。
「いやあ、孫娘の叙勲式が見られるなんて夢のようだわい。
長生きはするものだな。
こんな機会を作ってくれたジョージ王には、心から感謝いたしますぞ。」
「いえ、いえ、我が国はシャルロッテお嬢ちゃんに多大な恩がありますから。
勲章一つでは申し訳ないくらいですよ。
こちらこそ、我が国の勲章の叙勲式に皇帝陛下の参列を頂けるとは光栄です。」
そう、何故かアルビオン王国の国王であるジョージさんが同じ馬車に乗っているのです。
普通、護衛も無しで国王陛下が動くことなどあり得ませんよね。
しかも、次期女王と目されるヴィクトリア王女まで一緒に乗っているのですから。
今、この馬車に乗っているのは、私、おじいさま、ジョージさん、トリアさん、そして侍女のベルタさんの五人です。
先日、王宮へ呼ばれた際に、ジョージさんから私達に同行すると伝えられました。
その際に、それはどうなのかと尋ねたのですが…。
「シャルロッテお嬢ちゃんもフランツ皇帝も、私を暗殺しようなどとは思ってはないだろう。
なら、馬車で半日も掛けて、城まで行く必要もないだろう。
シャルロッテお嬢ちゃんの素敵な馬車で行けば半時も掛からんのだろう。
それに、これは演出でもあるんだよ。」
ジョージさん、ヴァイスの引く馬車で空を飛んでいく気満々ですね。
確かに、二十マイルくらいであれば、三十分もかかりませんが…。
ジョージさんのお話では、今回私が頂く勲章はアルビオン王国で最上位に位置付けられる勲章だそうです。
形式上は国王であるジョージさんが独断で受勲者を決めることができるそうですが。
最上位の勲章だけに口うるさく言う方々がいるそうです。
この勲章、アルビオン王国に特別の勲功があった国民に与えられますが。
それとは別に、友好国の君主にも与えることが出来ます。
私の場合、特別な勲功に対して与えられるのですが、私は国民ではありません。
ですので、形式的には友好国の君主として与えられることになります。
この場合の友好国の『君主』という点で、苦言を呈する側近の方がいたそうです。
私の場合、アルムハイム伯国という独立した領邦の君主ですが、帝国での爵位は伯爵でした。
伯爵クラスの君主が、この勲章の対象とする君主の格としていかがなものかとの意見だそうです。
過去、帝国の領邦君主にも贈られた実績はありますが、みなさん、大公だったそうです。
昨年、私が大公へ昇爵したので、ジョージさんはそれで押し切ったと言います。
それで、私が大公へ昇爵したことを報告に行った際にあんなに喜んだのですね。
********
ですが、今でも名ばかり大公の私の受勲に不満を持つ方々が側近の中にいるそうで。
「実は、私の側に仕える者は既に城の方へ移動させてあるんだよ。
そして、私が城に着いたら出迎えるように命じてある。
何処から、どうやって、城に着くとは言ってないけどね。
あいつら、さぞかし驚くことだろうね。
天馬の引く馬車で空から降って来るんだから。
しかも、現皇帝陛下をパートナーとして伴ってくるんだ。
これで、君主の格がなどとほざく、愚か者は私の側近にはいらんよ。
だから、ロッテお嬢ちゃん、なるべく目立つように城に降りてくれよ。」
なんて事をいうジョージさん。
ジョージさんの周囲の人達に、私が受勲する事を納得させろと言うのですか。
「全く、お父様ってば。
本来、臣下の納得を取り付けるのは、お父様の務めでしょうに。
それを、お招きしたお客様本人にさせるなんて、本末転倒ですわ。
シャルロッテさん、本当に申し訳ないですわね。
我が国にも、頭の固い権威主義者が今でも残っているのですわ。
幾らお父様があなたの勲功を説明しても納得しない愚か者が。
でも、そんな奴らをウンと言わせるのは意外と簡単。
あいつらが主張する権威以上の権威で抑え込んでしまえば良いのですわ。
そう、例えば、『神の権威』とか。」
私が力を見せつけることで側近の人達を納得させて欲しい。
そんな事をいうジョージさんに、トリアさんは苦々しい顔をしますが。
ジョージさんも、私に勲章を贈ることに関しては繰り返し側近たちに説明してくださったそうです。
大部分の側近たちは、説明に納得したそうですが。
一部の権威主義に凝り固まった方々は良い顔はしなかったそうです。
もちろん、この勲章、ジョージさんの独断で受勲者を決められるので、そう言う人々は無視してしまってもかまわないのですが。
多くの臣下を束ねる立場としてはそうもいかないようです。
例えば、私の受勲を心から納得していなければ、私が王宮を訪れた時に敬意を払わないかも知れないと言います。
そんなことが起こらないために、周囲の納得を得る必要があるのだと。
「分かりました。
では、デモンストレーションに精々派手に着地するようにしましょうか。
シャインちゃん、ブリーゼちゃん、ちょっと良いかな。」
「は~い! な~に~、ロッテ。
なんか楽しい事するつもり~?」
いつもの明るく軽い口調で現れる風の精霊ブリーゼちゃん。先程からの話は聞いていた様子です。
「ごきげんよう、ロッテさん。
お呼びでございますか?」
深窓の令嬢という言葉がピッタリの光の精霊シャインちゃんが控えめに現れます。
私が、二人にこれからして欲しいことを説明すると。
「わかったよ~! ヴァイスにはそう指示するよ~!
シャインも大丈夫だよね~?」
「はい、承知いたしました。
容易いことです。」
そう言って馬車を出て行く二人。
やがて馬車は目的のお城の上空へ差し掛かります。
着地するのは城内にある宮殿の前庭。
いつもであれば、なるべく目立たないように人目の少ない方角から一直線に降下するのですが。
今回は城の上空を何度も旋回しながらゆっくりと高度を落として行くようにお願いしました。
今頃、ブリーゼちゃんがヴァイスに降下の仕方を細かく指示しているはずです。
ブリーゼちゃんからヴァイスに指示してもらったのはもう一つ。
風の精霊であるヴァイスは翼で飛んでいる訳ではありません。
空を飛んでいる時は、滑空する鳥のようにほぼ水平に翼を広げています。
今回は、敢えて翼をゆっくりと羽ばたかせてもらいました。
そこに、シャインちゃんの演出を入れます。
ヴァイスの羽ばたきに併せて、金色の光の粒が舞うようにお願いしたのです。
ヴァイスが翼を羽ばたかせる毎に、翼から零れ落ちる光の粒が後方へ流れ落ちます。
後方へ流れていく光の粒は馬車の窓からでも見ることが出来ました。
「きれい…。
それにとっても神々しい…。
これ、凄いですわ、この光景をみたら誰もがひれ伏しますわ。」
窓にかじりつくようにして、外を眺めているトリアさんが呟きました。
誰もがひれ伏すって…、ちょっとやり過ぎましたか。
いつもなら一分も掛けずに行う降下を、たっぷり十分以上かけてゆっくりと降りてきた私達。
その頃には、宮殿前の庭には城に勤める人々が出て来て、ヴァイスの引く馬車は注目の的になっていました。
前庭に着地すると、トリアさんとジョージさんが先に馬車から降りました。
「陛下、これはいったい?
アルムハイム大公と一緒に来られるとは伺っていましたが。
空から降りて来られるとは…。」
前庭で出迎えた臣下の方がジョージさんに尋ねます。
「ああ、これはアルムハイム大公がお持ちの天翔ける馬車だよ。
王都からここまで、わずか三十分だよ。
しかも、馬車みたいに揺れることもないし、快適そのものだよ。」
「これが、アルムハイム大公のお持物でございますか…。
有翼の白馬をお持ちとは、まるで神の化身のようですな。」
臣下の方は、ヴァイスを見て呆気に取られています。
そこへ、おじいさまのエスコートで私が馬車を降ります。
「おい、あの方は帝国の皇帝陛下では。」
周囲にいる臣下の方々の中からそんな声が聞こえます。
ここにいる方々は、それなりの地位にいる方ですから、外交官としておじいさまを目にした方もいるでしょう。
「誰だ、アルムハイム大公を妾腹の取るに足らない姫だなんて誤情報を流したのは。
孫娘の叙勲式に皇帝陛下自ら足をお運びになるなんて、重要人物中の重要人物じゃないか。」
いや、本人やおじいさまの聞こえるところで、そんなことを言うのはどうかと思いますよ。
ジョージさんが、説明したか否かは分かりませんが、私がおじいさまの孫娘だとは知られていたようです。
ですが、それがかえって侮られる結果となっていたみたいですね。
全ての事情を知らなければ、妾腹で捨扶持を与えられた姫君にしか見えませんものね。
豆粒ほどの領地しかありませんから。
ヴァイスによる演出より、おじいさまがお出ましになる方が、権威主義に凝り固まった方々を納得させる材料になったようです。
結果として、私は帝国皇帝の愛孫娘としてジョージさんの周囲の人に大歓迎を受けることになります。
手のひらを返したような対応に、ジョージさんもトリアさんも複雑な表情をしていました。
でも、ジョージさん、おじいさまが来られることは、ミリアム首相や一部の人にしか伝えてなかったのですね。
いえ、逆ですか、反対派の耳に入らないように箝口令を敷いていたんですね。
これを狙って。
********
*並行して新作を投稿しています。
『ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!』
ゴミスキルとバカにされるスキルをモグモグと育てた女の子の物語です。
12時10分、20時30分の投稿です。
お読み頂けたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
↓ ↓ ↓ (PCの方の向け)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/255621303/784533340
会場となる王家所有の城は、王都の西約二十マイルの郊外にあります。
明日の日程は、朝一番でお城の王の間で叙勲式が行われます。
叙勲式に参列できるのは、今までこの勲章を受勲した先輩方だけだそうです。
その後、参列者と共に城内にある教会までお披露目の行進を行います。
教会での礼拝が済みますと昼餐となります。
ここまでが、受勲式と一体になった公式行事だそうです。
ここまでの行事に参加できるのは、勲章を受勲した先輩方だけだと言います。
式典としての中心は当然、朝一の叙勲式ですが、一番華やかなのはお披露目の行進だと言います。
一連の行事の中で、この行進だけが一般に公開されるからです。
沿道に集まった多くの見物人の祝福を受けながら教会まで行進するそうです。
私が先頭で…。
なんか、見せ物になっているようで、そう言うのは苦手です。
そして、その日は会場となっているお城で晩餐会が催されます。
この晩餐会に至って、既存の受勲者限定と言う枠は外され、国内の重要人物が招かれたパーティとなります。
これで、叙勲式に伴う一連の行事はお終いです。
********
朝一番で叙勲式ということは、当然それまでに正装を整えないといけません。
明日の朝、王都の館を出たのではとうてい間にあいません。
という訳で、前日から会場となるお城に乗り込むことになったのですが…。
「いやあ、孫娘の叙勲式が見られるなんて夢のようだわい。
長生きはするものだな。
こんな機会を作ってくれたジョージ王には、心から感謝いたしますぞ。」
「いえ、いえ、我が国はシャルロッテお嬢ちゃんに多大な恩がありますから。
勲章一つでは申し訳ないくらいですよ。
こちらこそ、我が国の勲章の叙勲式に皇帝陛下の参列を頂けるとは光栄です。」
そう、何故かアルビオン王国の国王であるジョージさんが同じ馬車に乗っているのです。
普通、護衛も無しで国王陛下が動くことなどあり得ませんよね。
しかも、次期女王と目されるヴィクトリア王女まで一緒に乗っているのですから。
今、この馬車に乗っているのは、私、おじいさま、ジョージさん、トリアさん、そして侍女のベルタさんの五人です。
先日、王宮へ呼ばれた際に、ジョージさんから私達に同行すると伝えられました。
その際に、それはどうなのかと尋ねたのですが…。
「シャルロッテお嬢ちゃんもフランツ皇帝も、私を暗殺しようなどとは思ってはないだろう。
なら、馬車で半日も掛けて、城まで行く必要もないだろう。
シャルロッテお嬢ちゃんの素敵な馬車で行けば半時も掛からんのだろう。
それに、これは演出でもあるんだよ。」
ジョージさん、ヴァイスの引く馬車で空を飛んでいく気満々ですね。
確かに、二十マイルくらいであれば、三十分もかかりませんが…。
ジョージさんのお話では、今回私が頂く勲章はアルビオン王国で最上位に位置付けられる勲章だそうです。
形式上は国王であるジョージさんが独断で受勲者を決めることができるそうですが。
最上位の勲章だけに口うるさく言う方々がいるそうです。
この勲章、アルビオン王国に特別の勲功があった国民に与えられますが。
それとは別に、友好国の君主にも与えることが出来ます。
私の場合、特別な勲功に対して与えられるのですが、私は国民ではありません。
ですので、形式的には友好国の君主として与えられることになります。
この場合の友好国の『君主』という点で、苦言を呈する側近の方がいたそうです。
私の場合、アルムハイム伯国という独立した領邦の君主ですが、帝国での爵位は伯爵でした。
伯爵クラスの君主が、この勲章の対象とする君主の格としていかがなものかとの意見だそうです。
過去、帝国の領邦君主にも贈られた実績はありますが、みなさん、大公だったそうです。
昨年、私が大公へ昇爵したので、ジョージさんはそれで押し切ったと言います。
それで、私が大公へ昇爵したことを報告に行った際にあんなに喜んだのですね。
********
ですが、今でも名ばかり大公の私の受勲に不満を持つ方々が側近の中にいるそうで。
「実は、私の側に仕える者は既に城の方へ移動させてあるんだよ。
そして、私が城に着いたら出迎えるように命じてある。
何処から、どうやって、城に着くとは言ってないけどね。
あいつら、さぞかし驚くことだろうね。
天馬の引く馬車で空から降って来るんだから。
しかも、現皇帝陛下をパートナーとして伴ってくるんだ。
これで、君主の格がなどとほざく、愚か者は私の側近にはいらんよ。
だから、ロッテお嬢ちゃん、なるべく目立つように城に降りてくれよ。」
なんて事をいうジョージさん。
ジョージさんの周囲の人達に、私が受勲する事を納得させろと言うのですか。
「全く、お父様ってば。
本来、臣下の納得を取り付けるのは、お父様の務めでしょうに。
それを、お招きしたお客様本人にさせるなんて、本末転倒ですわ。
シャルロッテさん、本当に申し訳ないですわね。
我が国にも、頭の固い権威主義者が今でも残っているのですわ。
幾らお父様があなたの勲功を説明しても納得しない愚か者が。
でも、そんな奴らをウンと言わせるのは意外と簡単。
あいつらが主張する権威以上の権威で抑え込んでしまえば良いのですわ。
そう、例えば、『神の権威』とか。」
私が力を見せつけることで側近の人達を納得させて欲しい。
そんな事をいうジョージさんに、トリアさんは苦々しい顔をしますが。
ジョージさんも、私に勲章を贈ることに関しては繰り返し側近たちに説明してくださったそうです。
大部分の側近たちは、説明に納得したそうですが。
一部の権威主義に凝り固まった方々は良い顔はしなかったそうです。
もちろん、この勲章、ジョージさんの独断で受勲者を決められるので、そう言う人々は無視してしまってもかまわないのですが。
多くの臣下を束ねる立場としてはそうもいかないようです。
例えば、私の受勲を心から納得していなければ、私が王宮を訪れた時に敬意を払わないかも知れないと言います。
そんなことが起こらないために、周囲の納得を得る必要があるのだと。
「分かりました。
では、デモンストレーションに精々派手に着地するようにしましょうか。
シャインちゃん、ブリーゼちゃん、ちょっと良いかな。」
「は~い! な~に~、ロッテ。
なんか楽しい事するつもり~?」
いつもの明るく軽い口調で現れる風の精霊ブリーゼちゃん。先程からの話は聞いていた様子です。
「ごきげんよう、ロッテさん。
お呼びでございますか?」
深窓の令嬢という言葉がピッタリの光の精霊シャインちゃんが控えめに現れます。
私が、二人にこれからして欲しいことを説明すると。
「わかったよ~! ヴァイスにはそう指示するよ~!
シャインも大丈夫だよね~?」
「はい、承知いたしました。
容易いことです。」
そう言って馬車を出て行く二人。
やがて馬車は目的のお城の上空へ差し掛かります。
着地するのは城内にある宮殿の前庭。
いつもであれば、なるべく目立たないように人目の少ない方角から一直線に降下するのですが。
今回は城の上空を何度も旋回しながらゆっくりと高度を落として行くようにお願いしました。
今頃、ブリーゼちゃんがヴァイスに降下の仕方を細かく指示しているはずです。
ブリーゼちゃんからヴァイスに指示してもらったのはもう一つ。
風の精霊であるヴァイスは翼で飛んでいる訳ではありません。
空を飛んでいる時は、滑空する鳥のようにほぼ水平に翼を広げています。
今回は、敢えて翼をゆっくりと羽ばたかせてもらいました。
そこに、シャインちゃんの演出を入れます。
ヴァイスの羽ばたきに併せて、金色の光の粒が舞うようにお願いしたのです。
ヴァイスが翼を羽ばたかせる毎に、翼から零れ落ちる光の粒が後方へ流れ落ちます。
後方へ流れていく光の粒は馬車の窓からでも見ることが出来ました。
「きれい…。
それにとっても神々しい…。
これ、凄いですわ、この光景をみたら誰もがひれ伏しますわ。」
窓にかじりつくようにして、外を眺めているトリアさんが呟きました。
誰もがひれ伏すって…、ちょっとやり過ぎましたか。
いつもなら一分も掛けずに行う降下を、たっぷり十分以上かけてゆっくりと降りてきた私達。
その頃には、宮殿前の庭には城に勤める人々が出て来て、ヴァイスの引く馬車は注目の的になっていました。
前庭に着地すると、トリアさんとジョージさんが先に馬車から降りました。
「陛下、これはいったい?
アルムハイム大公と一緒に来られるとは伺っていましたが。
空から降りて来られるとは…。」
前庭で出迎えた臣下の方がジョージさんに尋ねます。
「ああ、これはアルムハイム大公がお持ちの天翔ける馬車だよ。
王都からここまで、わずか三十分だよ。
しかも、馬車みたいに揺れることもないし、快適そのものだよ。」
「これが、アルムハイム大公のお持物でございますか…。
有翼の白馬をお持ちとは、まるで神の化身のようですな。」
臣下の方は、ヴァイスを見て呆気に取られています。
そこへ、おじいさまのエスコートで私が馬車を降ります。
「おい、あの方は帝国の皇帝陛下では。」
周囲にいる臣下の方々の中からそんな声が聞こえます。
ここにいる方々は、それなりの地位にいる方ですから、外交官としておじいさまを目にした方もいるでしょう。
「誰だ、アルムハイム大公を妾腹の取るに足らない姫だなんて誤情報を流したのは。
孫娘の叙勲式に皇帝陛下自ら足をお運びになるなんて、重要人物中の重要人物じゃないか。」
いや、本人やおじいさまの聞こえるところで、そんなことを言うのはどうかと思いますよ。
ジョージさんが、説明したか否かは分かりませんが、私がおじいさまの孫娘だとは知られていたようです。
ですが、それがかえって侮られる結果となっていたみたいですね。
全ての事情を知らなければ、妾腹で捨扶持を与えられた姫君にしか見えませんものね。
豆粒ほどの領地しかありませんから。
ヴァイスによる演出より、おじいさまがお出ましになる方が、権威主義に凝り固まった方々を納得させる材料になったようです。
結果として、私は帝国皇帝の愛孫娘としてジョージさんの周囲の人に大歓迎を受けることになります。
手のひらを返したような対応に、ジョージさんもトリアさんも複雑な表情をしていました。
でも、ジョージさん、おじいさまが来られることは、ミリアム首相や一部の人にしか伝えてなかったのですね。
いえ、逆ですか、反対派の耳に入らないように箝口令を敷いていたんですね。
これを狙って。
********
*並行して新作を投稿しています。
『ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!』
ゴミスキルとバカにされるスキルをモグモグと育てた女の子の物語です。
12時10分、20時30分の投稿です。
お読み頂けたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
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