421 / 580
第16章 冬から春へ、時は流れます
第418話 湯けむりの中で
しおりを挟む
聖下をホテルにお迎えした後。
私は館へ戻ってジョージさん一行とおじいさまをホテルへご案内しました。
そして今、私はと言うと…、
「このお風呂、本当に広々して良いわね。
あなたの館の温泉も良いけど、このホテルの温泉は格別だわ。
何よりも、目の前のアルム山脈の景色が最高。
何時までも、温泉に浸かっていたいですわ。」
私の右側、湯船の縁に背中をもたれかけ、トリアさんは上機嫌です。
何故か、トリアさんと一緒に湖を望むホテルの温泉に浸かっています。
私はお三方のおもてなしをしようと思っていたのですが…。
ご招待した皆さんに、ホテル内のご案内を一通り済ませたところで。
「ねえ、後は皆さん、ご自由にのんびり過ごして頂くのが良いのでは。
皆さん、お忙しい中、せっかくとれた休暇なのですもの。
ロッテさんが、付きっ切りですとかえって気が休まらないのでは。
ロッテさんも少しお休みになって、私と温泉にでも入りませんか?」
そんな提案をトリアさんがしました。
「おお、それが良いだろう。
ロッテお嬢ちゃんも、今朝は夜明け前から遠出してきたんだ。
疲れただろうから、少し休んだ方が良い。
ヴィクトリアと一緒に温泉にでも浸かって来れば良いのではないか。
私達年寄りはのんびりとさせてもらうよ。」
トリアさんの言葉に、ジョージさんが相槌を打ちます。
これは、体よく人払いですか…。
と言うことで、私は昼の日中から温泉三昧です。
「私も、この温泉に浸かるのは初めてですけど、素敵な眺めですね。
毎日見慣れた風景ですのに、温泉に浸かりながら眺めると新鮮に感じます。」
私の左側では、リーナが浴室からの眺望に感心しています。
トリアさんのリクエストで、急遽呼ぶことになりました。
トリアさんが、せっかくだから一緒に入りたいと、希望したのです。
「リーナ、急に呼んじゃって悪かったわね。
仕事、忙しかったのでしょう。」
「良いのよ、最近少し疲れ気味だから休みたいと思ってたところなの。
逗留している貴族のお客さん達の相手は、本当に肩が凝るわ。
こうして温泉に浸かっていると肩の凝りがスッと抜けていくようよ。
早くこのホテルがオープンしてくれると助かるわ。」
今年は、雪解け早々、教会へ礼拝に訪れる人が増えているようで。
リーナの館にも、泊めて欲しいとう貴族の依頼が次々と届くそうです。
このところ、その対応でリーナは四苦八苦していた様子です。
「そうね。
この温泉に浸かっていると、ホント、肩の凝りがほぐれるわね。
私、肩こりが酷いものですから、助かりますわ。」
リーナの肩が凝るとの言葉に引っかけて、トリアさんがそんな声を上げました。
その声に引かれるように、トリアさんの方を振り返ると…。
浮いていました…。
そうでしょうとも。
日頃そんなたいそうなモノを下げてれば、さぞ肩も凝る事でしょう。
私の慎ましいソレは、肩こりとは無縁で良かったです。
負け惜しみじゃありませんよ。
********
などと、埒もない事を考えていると。
「リーナさんは、貧しい平民の方にも教育を施そうと考えているのでしょう。
領民学校の設立に向けて教員の養成を始めたと聞いているわ。
それって、素晴らしい事だと思う。」
不意にそんなことを口にしたトリアさん。
そのことは以前から話しているはずなのに、今更唐突ですね。
「はい、前にも話しましたが、私の領地は凄く貧しくて。
女の子を身売りに出したり、男の子を傭兵に出したりが当たり前なのです。
そんな状況を何とかしたくて…。
せめて読み書き計算くらい出来れば、娼婦にならなくても他に出来る仕事があるかと。
とは言え、資金面を中心に制約が大きくて、ロッテに助けてもらってばかりですけど。」
リーナも何で今更という顔で、いつも通りの説明を返します。
「そうよね、領民全員が読み書き計算をできるようにしようと思ったら。
お金も、人材も、時間もたくさん掛かるわね。
でも、リーナさんのやろうとしている事は、多分正解だと私は思うの。」
リーナの説明を受けて、トリアさんはそんな風に話し始めると。
それから、アルビオン王国の最近の経済発展について話を続けました。
アルビオン王国の経済発展を担っているのは市民階級であり。
優秀な市民が、新たな発見をし、工夫を凝らして近代化を推し進めたと言います。
そして、それは旧態依然とした貴族たちには成しえなかっただろうと。
まっ、そこまではありきたりのことだったのですが…。
「貴族だろうと、平民だろうと、優秀な人の割合は変わらないと思うの。
ロッテさんに紹介してもらったケリー君、とっても優秀だわ。
ノノちゃんだってそう。
人の優劣に、スラムだろうが、貧民だろうが、生まれには関係ないわ。
ただし、それはきちんと教育できたらの話だけどね。
勿体ないと思わない、出自に拘って優秀な人材を埋もれさせちゃったら。」
そう続けたトリアさん。
一部の貴族に重点的に教育を行うより、数の多い平民に教育を施した方が優秀な人材を多く育成できると言います。
ただ、そうすると市民階級が力を付けて来るのは当然だし、貴族の影響力が低下するのも自明の理だと。
トリアさんは、それでも国全体が富むのであれば仕方がないと考えているようでした。
「だいたい、貴族なんて、一握りしかいないのよ。
貴族だから優秀だなんてあり得ないでしょう。
ぼんくら貴族だって沢山いるわ。
そんな一握りの貴族たちだけで、国の舵取りが出来る訳ないでしょう。
ただでさえ、最近の近代化で社会が複雑になっているのですもの。
優秀な市民を登用してどんどん意見を取り入れないと。
でもね、そんな当たり前のことが分からない困ったちゃんがいるのよ。」
トリアさんの話しが、ありきたりでない方向へ流れたのです。
「トリアさん、それって、プルーシャ王のことでは?」
「ええ?
私は誰とは言っていませんわよ。
優秀な君主に権力を集中して強力な中央集権国家を作るのだとか。
近代化は民に任せるのではなく、王や貴族が率先して民を導くのだとか。
王や貴族の権限を強化して、民の発言力を押さえ込むのだとか。
そんな、時代錯誤なことを声高々に叫んでいる困ったちゃんがいると言っているだけです。」
いえ、それもうハッキリと言ってますよね。
だいたい、何で、お風呂でそんな物騒な話をするのですか。
のんびりと羽を伸ばすのではなかったのですか。
「トリアさん、ジョージさんはまだ趨勢がハッキリしていないと。
今、憶測で話をすると誤解を生む可能性があるから。
事態の成り行きがハッキリしたら話すと言ってましたよね。
トリアさんが、今話そうとしているのは拙い事ではないでしょうか?」
昨日、あれほどジョージさんに釘を刺されてましたよね。
「おそらく、事態の趨勢は判明してからでは手遅れになるからですよ。
早めに備えをしておかないと、リーナさんには困ったことになると思いますよ。」
「えっ、私ですか?」
不意にトリアさんの矛先が自分に向いて、戸惑いの声を上げるリーナ。
どうやら、リーナを呼んだのはこの事を話したかったようです。
「ええ、今、困ったちゃんがロクでもない企てをしています。
勝ち目が無いように追い込んでから、ロッテさんの御爺様にチェスを挑もうとしています。
まともに受けたら、勝ち目がないどころか戦禍が生じますよ。
そこで、ロッテさんの御爺様はチェスの盤面をひっくり返してしまうおつもりです。
それで、帝国内での争いは避けられるかも知れませんが。
リーナさんの国は戦禍を避けられないのではと。
だって、困ったちゃんが一番欲しいものをお持ちなのですもの。」
「エルゼス地方ですか?」
私が尋ねると、トリアさんはそれには答えませんでした。
代わりに、リーナに向かって言ったのです。
「備えなさい、早くしないと間に合いませんよ。」
と。
********
*並行して新作を投稿しています。
『ゴミスキルだって育てりゃ、けっこうお役立ちです!』
ゴミスキルとバカにされるスキルをモグモグと育てた女の子の物語です。
12時10分、20時30分の投稿です。
お読み頂けたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
↓ ↓ ↓ (PCの方の向け)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/255621303/784533340
(本日投稿分、操作ミスで昨日一瞬公開してしまいました。
そのため、新着にのらないかも知れませんが、投稿してあります。)
私は館へ戻ってジョージさん一行とおじいさまをホテルへご案内しました。
そして今、私はと言うと…、
「このお風呂、本当に広々して良いわね。
あなたの館の温泉も良いけど、このホテルの温泉は格別だわ。
何よりも、目の前のアルム山脈の景色が最高。
何時までも、温泉に浸かっていたいですわ。」
私の右側、湯船の縁に背中をもたれかけ、トリアさんは上機嫌です。
何故か、トリアさんと一緒に湖を望むホテルの温泉に浸かっています。
私はお三方のおもてなしをしようと思っていたのですが…。
ご招待した皆さんに、ホテル内のご案内を一通り済ませたところで。
「ねえ、後は皆さん、ご自由にのんびり過ごして頂くのが良いのでは。
皆さん、お忙しい中、せっかくとれた休暇なのですもの。
ロッテさんが、付きっ切りですとかえって気が休まらないのでは。
ロッテさんも少しお休みになって、私と温泉にでも入りませんか?」
そんな提案をトリアさんがしました。
「おお、それが良いだろう。
ロッテお嬢ちゃんも、今朝は夜明け前から遠出してきたんだ。
疲れただろうから、少し休んだ方が良い。
ヴィクトリアと一緒に温泉にでも浸かって来れば良いのではないか。
私達年寄りはのんびりとさせてもらうよ。」
トリアさんの言葉に、ジョージさんが相槌を打ちます。
これは、体よく人払いですか…。
と言うことで、私は昼の日中から温泉三昧です。
「私も、この温泉に浸かるのは初めてですけど、素敵な眺めですね。
毎日見慣れた風景ですのに、温泉に浸かりながら眺めると新鮮に感じます。」
私の左側では、リーナが浴室からの眺望に感心しています。
トリアさんのリクエストで、急遽呼ぶことになりました。
トリアさんが、せっかくだから一緒に入りたいと、希望したのです。
「リーナ、急に呼んじゃって悪かったわね。
仕事、忙しかったのでしょう。」
「良いのよ、最近少し疲れ気味だから休みたいと思ってたところなの。
逗留している貴族のお客さん達の相手は、本当に肩が凝るわ。
こうして温泉に浸かっていると肩の凝りがスッと抜けていくようよ。
早くこのホテルがオープンしてくれると助かるわ。」
今年は、雪解け早々、教会へ礼拝に訪れる人が増えているようで。
リーナの館にも、泊めて欲しいとう貴族の依頼が次々と届くそうです。
このところ、その対応でリーナは四苦八苦していた様子です。
「そうね。
この温泉に浸かっていると、ホント、肩の凝りがほぐれるわね。
私、肩こりが酷いものですから、助かりますわ。」
リーナの肩が凝るとの言葉に引っかけて、トリアさんがそんな声を上げました。
その声に引かれるように、トリアさんの方を振り返ると…。
浮いていました…。
そうでしょうとも。
日頃そんなたいそうなモノを下げてれば、さぞ肩も凝る事でしょう。
私の慎ましいソレは、肩こりとは無縁で良かったです。
負け惜しみじゃありませんよ。
********
などと、埒もない事を考えていると。
「リーナさんは、貧しい平民の方にも教育を施そうと考えているのでしょう。
領民学校の設立に向けて教員の養成を始めたと聞いているわ。
それって、素晴らしい事だと思う。」
不意にそんなことを口にしたトリアさん。
そのことは以前から話しているはずなのに、今更唐突ですね。
「はい、前にも話しましたが、私の領地は凄く貧しくて。
女の子を身売りに出したり、男の子を傭兵に出したりが当たり前なのです。
そんな状況を何とかしたくて…。
せめて読み書き計算くらい出来れば、娼婦にならなくても他に出来る仕事があるかと。
とは言え、資金面を中心に制約が大きくて、ロッテに助けてもらってばかりですけど。」
リーナも何で今更という顔で、いつも通りの説明を返します。
「そうよね、領民全員が読み書き計算をできるようにしようと思ったら。
お金も、人材も、時間もたくさん掛かるわね。
でも、リーナさんのやろうとしている事は、多分正解だと私は思うの。」
リーナの説明を受けて、トリアさんはそんな風に話し始めると。
それから、アルビオン王国の最近の経済発展について話を続けました。
アルビオン王国の経済発展を担っているのは市民階級であり。
優秀な市民が、新たな発見をし、工夫を凝らして近代化を推し進めたと言います。
そして、それは旧態依然とした貴族たちには成しえなかっただろうと。
まっ、そこまではありきたりのことだったのですが…。
「貴族だろうと、平民だろうと、優秀な人の割合は変わらないと思うの。
ロッテさんに紹介してもらったケリー君、とっても優秀だわ。
ノノちゃんだってそう。
人の優劣に、スラムだろうが、貧民だろうが、生まれには関係ないわ。
ただし、それはきちんと教育できたらの話だけどね。
勿体ないと思わない、出自に拘って優秀な人材を埋もれさせちゃったら。」
そう続けたトリアさん。
一部の貴族に重点的に教育を行うより、数の多い平民に教育を施した方が優秀な人材を多く育成できると言います。
ただ、そうすると市民階級が力を付けて来るのは当然だし、貴族の影響力が低下するのも自明の理だと。
トリアさんは、それでも国全体が富むのであれば仕方がないと考えているようでした。
「だいたい、貴族なんて、一握りしかいないのよ。
貴族だから優秀だなんてあり得ないでしょう。
ぼんくら貴族だって沢山いるわ。
そんな一握りの貴族たちだけで、国の舵取りが出来る訳ないでしょう。
ただでさえ、最近の近代化で社会が複雑になっているのですもの。
優秀な市民を登用してどんどん意見を取り入れないと。
でもね、そんな当たり前のことが分からない困ったちゃんがいるのよ。」
トリアさんの話しが、ありきたりでない方向へ流れたのです。
「トリアさん、それって、プルーシャ王のことでは?」
「ええ?
私は誰とは言っていませんわよ。
優秀な君主に権力を集中して強力な中央集権国家を作るのだとか。
近代化は民に任せるのではなく、王や貴族が率先して民を導くのだとか。
王や貴族の権限を強化して、民の発言力を押さえ込むのだとか。
そんな、時代錯誤なことを声高々に叫んでいる困ったちゃんがいると言っているだけです。」
いえ、それもうハッキリと言ってますよね。
だいたい、何で、お風呂でそんな物騒な話をするのですか。
のんびりと羽を伸ばすのではなかったのですか。
「トリアさん、ジョージさんはまだ趨勢がハッキリしていないと。
今、憶測で話をすると誤解を生む可能性があるから。
事態の成り行きがハッキリしたら話すと言ってましたよね。
トリアさんが、今話そうとしているのは拙い事ではないでしょうか?」
昨日、あれほどジョージさんに釘を刺されてましたよね。
「おそらく、事態の趨勢は判明してからでは手遅れになるからですよ。
早めに備えをしておかないと、リーナさんには困ったことになると思いますよ。」
「えっ、私ですか?」
不意にトリアさんの矛先が自分に向いて、戸惑いの声を上げるリーナ。
どうやら、リーナを呼んだのはこの事を話したかったようです。
「ええ、今、困ったちゃんがロクでもない企てをしています。
勝ち目が無いように追い込んでから、ロッテさんの御爺様にチェスを挑もうとしています。
まともに受けたら、勝ち目がないどころか戦禍が生じますよ。
そこで、ロッテさんの御爺様はチェスの盤面をひっくり返してしまうおつもりです。
それで、帝国内での争いは避けられるかも知れませんが。
リーナさんの国は戦禍を避けられないのではと。
だって、困ったちゃんが一番欲しいものをお持ちなのですもの。」
「エルゼス地方ですか?」
私が尋ねると、トリアさんはそれには答えませんでした。
代わりに、リーナに向かって言ったのです。
「備えなさい、早くしないと間に合いませんよ。」
と。
********
*並行して新作を投稿しています。
『ゴミスキルだって育てりゃ、けっこうお役立ちです!』
ゴミスキルとバカにされるスキルをモグモグと育てた女の子の物語です。
12時10分、20時30分の投稿です。
お読み頂けたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
↓ ↓ ↓ (PCの方の向け)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/255621303/784533340
(本日投稿分、操作ミスで昨日一瞬公開してしまいました。
そのため、新着にのらないかも知れませんが、投稿してあります。)
1
お気に入りに追加
323
あなたにおすすめの小説
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
夫に用無しと捨てられたので薬師になって幸せになります。
光子
恋愛
この世界には、魔力病という、まだ治療法の見つかっていない未知の病が存在する。私の両親も、義理の母親も、その病によって亡くなった。
最後まで私の幸せを祈って死んで行った家族のために、私は絶対、幸せになってみせる。
たとえ、離婚した元夫であるクレオパス子爵が、市民に落ち、幸せに暮らしている私を連れ戻そうとしていても、私は、あんな地獄になんか戻らない。
地獄に連れ戻されそうになった私を救ってくれた、同じ薬師であるフォルク様と一緒に、私はいつか必ず、魔力病を治す薬を作ってみせる。
天国から見守っているお義母様達に、いつか立派な薬師になった姿を見てもらうの。そうしたら、きっと、私のことを褒めてくれるよね。自慢の娘だって、思ってくれるよね――――
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう
天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。
侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。
その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。
ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる