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第16章 冬から春へ、時は流れます
第400話 ジョージさんも感心してます
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「はい、今日の給金ね。
それから、これも受け取って、ご祝儀よ。」
『スノーフェスティバル』の幕を閉じて、館に戻った私はケリー君に給金を渡します。
私は日当の銀貨三枚を手渡した後、ケリー君に布袋を差し出しました。
「なんだ?ご祝儀って?」
「ご祝儀というのは、何かが上手くいった時にお祝いに渡す金一封よ。
『スノーフェスティバル』はみんなのおかげで大盛況だったわ。
だから、頑張ってくれたみんなにご褒美を出す事にしたの。
一人金貨一枚だけど、スラムじゃ金貨なんか使えないでしょう。
だから、ケリー君には銀貨で金貨一枚分を渡すわ、二十枚。」
実際、一週間の開催期間の間、訪れる人は途切れることなくとても盛況でした。
もちろん、ほとんどが無料の出し物ですから、はなから持ち出しのイベントです。
唯一有料の屋台も、ほとんど原価での販売でした。
加えて、『雪合戦』に参加した子供達に配った食券の利用も多く、大赤字です。
でも、それで良いのです。
遊びを楽しんでもらう事を通して、この国の人々に少しでもアルム地方へ関心を寄せてらえれば。
その中でたとえ一割でも、実際にアルム地方まで足を運ぶ人が出て来れば御の字です。
なので、沢山の人を集められたことは祝うべきことです。
その働きに報いるため、頑張ってくれたみんなにご祝儀を配ることにしました。
「そうなのか?
俺、チビ共をあやしてただけだぞ。
それで毎日銀貨三枚ももらってわりぃなって思ってたんだ。
その上、銀貨二十枚も貰っちまって良いのか?」
「ケリー君はとても良く働いてくれたわ。
小さい子がケガをしたり、迷子になった子がそのままいなくなったりしたら。
それこそ、大変なことになったもの。
ケリー君が良く気が付く子で、本当に助かったわ。
だから、遠慮せずに取っておきなさい。」
ケリー君にとっては、港の荷役作業のような肉体労働だけが仕事なのでしょう。
今回の仕事は、スラムでサリーちゃんやエリーちゃんをかまうのと同じ感覚なのだと思います。
それで、荷役作業以上の給金をもらう事に引き目を感じていたようです。
「ねえちゃん、ありがとうな。
それなら、遠慮なく、もらっておくわ。
助かるぜ、銀貨二十枚って言えば…。
給金の何日分だ?」
喜びを露わにして、銀貨の入った布袋を受け取ったケリー君。
袋の中から銀貨を取り出し、指折り数えながらテーブルに並べていきます。
途中で指が足りずに困っていましたが、なんとか十まで二回数えると。
今度は、それを三枚ずつに分けて行き…。
「…五、六っと。
七は、無いのか…。
一週間分近くもらっちまって悪いな。」
ケリー君の数に対する理解の程度が、把握できました。
両手で余る数を数えるのは難しいようです。
ましてや、割り算は無理ですね。
でも、キチンと正しい結論は導けたようです。
やはり、雇い入れた頃の工房の悪ガキ共より、格段に賢いです。
********
「もう良いかな?
そろそろ、私の事をその少年に紹介してはくれまいか。
その少年であろう、ロッテお嬢ちゃんが感心していた子は。」
ケリー君に給金を渡し終わるのを見計らうように、ジョージさんが声を掛けてきました。
「ジョージさん、本気ですか?
ジョージさんが、この子に仕事をくださるのなら。
願ってもない事だとは思いますが…。」
大国アルビオン王国の国王陛下がスラムの子供を召し抱えようなんて許されるモノでしょうか。
この国の国王と言ったら、私のような肩書だけのなんちゃって大公とは違いますからね。
宮廷の中に、出自にこだわるうるさ方が沢山いそうですし。
「うん?
ロッテお嬢ちゃんが見込んだ子であろう。
出自にこだわっていたら、稀有な人材を根こそぎさらわれそうだからね。
なあに、宮廷で雇うのではなく、私個人で面倒を見るのなら口煩い者もおるまい。」
などと、ジョージさんは楽観的なセリフを口にしました。
「ケリー君、こちらの方はジョージ様。
この国の国王陛下よ。
ジョージ様がケリー君とお話がしたいのですって。
ご無礼の無いようにね。」
ジョージさんが紹介しろというのですから、私はその意に従うこととしました。
「国王陛下?それって、王様ってやつか?
王様ってのは、スゲー偉い人なんだろう。
その王様が、俺みてえなビンボー人に何の用だ?」
無礼が無いようにと注意しているそばから、そんな口をききますか…。
もちろん、ケリー君には悪気はないでしょうが。
「うん?用件か?
先日、ロッテお嬢ちゃんからケリー君の事を耳にしてね。
聡い少年だと聞いたので、話をしてみたくなっただけだよ。
私はジョージ、この国の国王をしている。
よろしくな、ケリー君。」
ジョージさんは、ケリー君に気さくな言葉をかけました。
ケリー君の失礼な物言いは、差して気にしていないようです。
するとケリー君は、ジョージさんではなく、私に向かい。
「なあ、ねえちゃん、失礼が無いようにって言うけど。
俺、王様に対する口の利き方なんか知らねえぞ。」
流石に王様に対しては、自分の言葉遣いでは拙いと理解しているのですね。
「良い、良い。
君のような子供の言葉遣いが悪くても一々咎めはせんよ。
もっとも、君が貴族の子息であれば、話は別であるがな。
教育がなっておらんと、親の方をきつく叱責せねばなるまい。
貴族は国民の範とならないといけないのだからね。
君には言葉遣いを教えてくれる者がいなかったのだろう。
それであれば、言葉遣いが悪いとしても誰も咎めることはできまい。」
「王様の言うことは良く分かんないけど。
俺はこのまましゃべっても良いんだな。
失礼の無いようにしゃべれって言われなくて良かったぜ。
それじゃあ、どう返事して良いか分かんねえもんな。
何か聞かれて黙ってたら、それも無礼だと怒られそうだしな。」
口調で咎めることはないと言われて、ケリー君は安堵した様子です。
言葉遣いが分からないが故に、何か聞かれても答えられない事を危惧していたのですね。
確かに、王侯貴族の下問を無視しようものなら勘気に触れそうですからね。
「ほう、その辺にも気が回るのであるな。
なるほど、聡い子のようだ。
なあ、ケリー君、君は幼子二人に食べ物を分けていたそうだね。
自分でも満足に食べてないようなのに、何で分けてあげようと思ったのかい。
一人で食べれば、多少はお腹も膨れたであろうに。」
「ああ、チビ共の事か?
あいつら、俺がメシを食っているのをジッと見てるんだぜ。
涎をたらして、すっごく腹を空かせているみたいだったんだ。
チビ共にそんな目で見られたら、知らんぷりはできねえだろうが。
俺がちょっと我慢すりゃ、チビ共の腹が膨れるんだ。
そうするのが当たり前だろう。
もっとも、仕事が減っちまってそれも出来なくなっちまったけどよ。」
冬になって荷役の仕事が減ってしまったケリー君。
二人に食べ物を分けてあげられなくなったことが悔しそうでした。
「ロッテお嬢ちゃんの言う通り、心根の優しい少年のようだね。
この歳では、中々出来る事ではないぞ。
自分が腹を空かせているのに、赤の他人に食べ物を分け与えるなんて。
金が無くなっても投げ出さなかったのも、見上げたものだ。
良く、『スノーフェスティバル』に連れて行くのを思いついたものだと感心するよ。」
ケリー君の返事を聞いて、褒め称えたジョージさん。
その後、何で『スノーフェスティバル』に連れて来ようと思ったのかとか。
何処で『スノーフェスティバル』の事を知ったのかとか。
ジョージさんは、ケリー君に色々と尋ねていました。
中には、「何で冬になると荷役の仕事が減るか知っているか。」なんてことも尋ねていました。
それに対するケリー君が中々のもので。
「どこから来るのは知らねえけど。
港に着く荷って、遠い国から来るんだろう。
この国は海って言うでっかい水溜りに囲まれていて。
その海が冬になると荒れて船が通れねえって。
あと、さっきの丘にあった雪、あれが凄く降る海があるって聞いたぜ。
そのせいで、港に船が着かなくなるって、港で船乗り連中が言ってた。」
港で大人たちの会話を拾い聞きしたようですが、ほぼ正解に辿り着いていました。
「なるほど、ロッテお嬢ちゃんが入れ込むのも頷ける。
心根が優しいだけではなく、頭も切れるようだ。
港での拾い聞きだけでそこまで辿り着くとは、大したもんだ。
ちゃんと教えてもらった訳でもないのに。」
そう、この子もノノちゃんと同じように、生活の知恵を活かす事ができる子なのです。
数多ある情報を整理して、役立つモノを引き出すのが上手いのです。
それから、これも受け取って、ご祝儀よ。」
『スノーフェスティバル』の幕を閉じて、館に戻った私はケリー君に給金を渡します。
私は日当の銀貨三枚を手渡した後、ケリー君に布袋を差し出しました。
「なんだ?ご祝儀って?」
「ご祝儀というのは、何かが上手くいった時にお祝いに渡す金一封よ。
『スノーフェスティバル』はみんなのおかげで大盛況だったわ。
だから、頑張ってくれたみんなにご褒美を出す事にしたの。
一人金貨一枚だけど、スラムじゃ金貨なんか使えないでしょう。
だから、ケリー君には銀貨で金貨一枚分を渡すわ、二十枚。」
実際、一週間の開催期間の間、訪れる人は途切れることなくとても盛況でした。
もちろん、ほとんどが無料の出し物ですから、はなから持ち出しのイベントです。
唯一有料の屋台も、ほとんど原価での販売でした。
加えて、『雪合戦』に参加した子供達に配った食券の利用も多く、大赤字です。
でも、それで良いのです。
遊びを楽しんでもらう事を通して、この国の人々に少しでもアルム地方へ関心を寄せてらえれば。
その中でたとえ一割でも、実際にアルム地方まで足を運ぶ人が出て来れば御の字です。
なので、沢山の人を集められたことは祝うべきことです。
その働きに報いるため、頑張ってくれたみんなにご祝儀を配ることにしました。
「そうなのか?
俺、チビ共をあやしてただけだぞ。
それで毎日銀貨三枚ももらってわりぃなって思ってたんだ。
その上、銀貨二十枚も貰っちまって良いのか?」
「ケリー君はとても良く働いてくれたわ。
小さい子がケガをしたり、迷子になった子がそのままいなくなったりしたら。
それこそ、大変なことになったもの。
ケリー君が良く気が付く子で、本当に助かったわ。
だから、遠慮せずに取っておきなさい。」
ケリー君にとっては、港の荷役作業のような肉体労働だけが仕事なのでしょう。
今回の仕事は、スラムでサリーちゃんやエリーちゃんをかまうのと同じ感覚なのだと思います。
それで、荷役作業以上の給金をもらう事に引き目を感じていたようです。
「ねえちゃん、ありがとうな。
それなら、遠慮なく、もらっておくわ。
助かるぜ、銀貨二十枚って言えば…。
給金の何日分だ?」
喜びを露わにして、銀貨の入った布袋を受け取ったケリー君。
袋の中から銀貨を取り出し、指折り数えながらテーブルに並べていきます。
途中で指が足りずに困っていましたが、なんとか十まで二回数えると。
今度は、それを三枚ずつに分けて行き…。
「…五、六っと。
七は、無いのか…。
一週間分近くもらっちまって悪いな。」
ケリー君の数に対する理解の程度が、把握できました。
両手で余る数を数えるのは難しいようです。
ましてや、割り算は無理ですね。
でも、キチンと正しい結論は導けたようです。
やはり、雇い入れた頃の工房の悪ガキ共より、格段に賢いです。
********
「もう良いかな?
そろそろ、私の事をその少年に紹介してはくれまいか。
その少年であろう、ロッテお嬢ちゃんが感心していた子は。」
ケリー君に給金を渡し終わるのを見計らうように、ジョージさんが声を掛けてきました。
「ジョージさん、本気ですか?
ジョージさんが、この子に仕事をくださるのなら。
願ってもない事だとは思いますが…。」
大国アルビオン王国の国王陛下がスラムの子供を召し抱えようなんて許されるモノでしょうか。
この国の国王と言ったら、私のような肩書だけのなんちゃって大公とは違いますからね。
宮廷の中に、出自にこだわるうるさ方が沢山いそうですし。
「うん?
ロッテお嬢ちゃんが見込んだ子であろう。
出自にこだわっていたら、稀有な人材を根こそぎさらわれそうだからね。
なあに、宮廷で雇うのではなく、私個人で面倒を見るのなら口煩い者もおるまい。」
などと、ジョージさんは楽観的なセリフを口にしました。
「ケリー君、こちらの方はジョージ様。
この国の国王陛下よ。
ジョージ様がケリー君とお話がしたいのですって。
ご無礼の無いようにね。」
ジョージさんが紹介しろというのですから、私はその意に従うこととしました。
「国王陛下?それって、王様ってやつか?
王様ってのは、スゲー偉い人なんだろう。
その王様が、俺みてえなビンボー人に何の用だ?」
無礼が無いようにと注意しているそばから、そんな口をききますか…。
もちろん、ケリー君には悪気はないでしょうが。
「うん?用件か?
先日、ロッテお嬢ちゃんからケリー君の事を耳にしてね。
聡い少年だと聞いたので、話をしてみたくなっただけだよ。
私はジョージ、この国の国王をしている。
よろしくな、ケリー君。」
ジョージさんは、ケリー君に気さくな言葉をかけました。
ケリー君の失礼な物言いは、差して気にしていないようです。
するとケリー君は、ジョージさんではなく、私に向かい。
「なあ、ねえちゃん、失礼が無いようにって言うけど。
俺、王様に対する口の利き方なんか知らねえぞ。」
流石に王様に対しては、自分の言葉遣いでは拙いと理解しているのですね。
「良い、良い。
君のような子供の言葉遣いが悪くても一々咎めはせんよ。
もっとも、君が貴族の子息であれば、話は別であるがな。
教育がなっておらんと、親の方をきつく叱責せねばなるまい。
貴族は国民の範とならないといけないのだからね。
君には言葉遣いを教えてくれる者がいなかったのだろう。
それであれば、言葉遣いが悪いとしても誰も咎めることはできまい。」
「王様の言うことは良く分かんないけど。
俺はこのまましゃべっても良いんだな。
失礼の無いようにしゃべれって言われなくて良かったぜ。
それじゃあ、どう返事して良いか分かんねえもんな。
何か聞かれて黙ってたら、それも無礼だと怒られそうだしな。」
口調で咎めることはないと言われて、ケリー君は安堵した様子です。
言葉遣いが分からないが故に、何か聞かれても答えられない事を危惧していたのですね。
確かに、王侯貴族の下問を無視しようものなら勘気に触れそうですからね。
「ほう、その辺にも気が回るのであるな。
なるほど、聡い子のようだ。
なあ、ケリー君、君は幼子二人に食べ物を分けていたそうだね。
自分でも満足に食べてないようなのに、何で分けてあげようと思ったのかい。
一人で食べれば、多少はお腹も膨れたであろうに。」
「ああ、チビ共の事か?
あいつら、俺がメシを食っているのをジッと見てるんだぜ。
涎をたらして、すっごく腹を空かせているみたいだったんだ。
チビ共にそんな目で見られたら、知らんぷりはできねえだろうが。
俺がちょっと我慢すりゃ、チビ共の腹が膨れるんだ。
そうするのが当たり前だろう。
もっとも、仕事が減っちまってそれも出来なくなっちまったけどよ。」
冬になって荷役の仕事が減ってしまったケリー君。
二人に食べ物を分けてあげられなくなったことが悔しそうでした。
「ロッテお嬢ちゃんの言う通り、心根の優しい少年のようだね。
この歳では、中々出来る事ではないぞ。
自分が腹を空かせているのに、赤の他人に食べ物を分け与えるなんて。
金が無くなっても投げ出さなかったのも、見上げたものだ。
良く、『スノーフェスティバル』に連れて行くのを思いついたものだと感心するよ。」
ケリー君の返事を聞いて、褒め称えたジョージさん。
その後、何で『スノーフェスティバル』に連れて来ようと思ったのかとか。
何処で『スノーフェスティバル』の事を知ったのかとか。
ジョージさんは、ケリー君に色々と尋ねていました。
中には、「何で冬になると荷役の仕事が減るか知っているか。」なんてことも尋ねていました。
それに対するケリー君が中々のもので。
「どこから来るのは知らねえけど。
港に着く荷って、遠い国から来るんだろう。
この国は海って言うでっかい水溜りに囲まれていて。
その海が冬になると荒れて船が通れねえって。
あと、さっきの丘にあった雪、あれが凄く降る海があるって聞いたぜ。
そのせいで、港に船が着かなくなるって、港で船乗り連中が言ってた。」
港で大人たちの会話を拾い聞きしたようですが、ほぼ正解に辿り着いていました。
「なるほど、ロッテお嬢ちゃんが入れ込むのも頷ける。
心根が優しいだけではなく、頭も切れるようだ。
港での拾い聞きだけでそこまで辿り着くとは、大したもんだ。
ちゃんと教えてもらった訳でもないのに。」
そう、この子もノノちゃんと同じように、生活の知恵を活かす事ができる子なのです。
数多ある情報を整理して、役立つモノを引き出すのが上手いのです。
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