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第16章 冬から春へ、時は流れます

第379話 負の遺産にも使い道はあるようです

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 ホテルの従業員の件は一先ずはここまでです。
 後は、シャルちゃんと宰相にお任せして人が集まるのを待つしかありません。

 話しが一段落すると、早速トリアさんはシャルちゃんといちゃつき始めます。
 私や宰相がいる事など気にも止めず二人の世界に入り込んでいる姿を白い目で眺めていると。

 目の前にテーブルの隅に置かれた一枚の紙きれが目に留まりました。

「門?」

 思わず呟きを漏らしてしまいました。
 紙切れに見えたそれは折りたたまれた見取り図で、そこに描かれていたのは門でした。

「あ、それは、先程まで陛下と相談をしていたものですから。
 置いたままにしてしまい申し訳ございません。
 お邪魔でしたね。」

 宰相がそう言って片付けようとします。
 
「何処かに新しい門を造るのですか?」

 目の前でいちゃつく二人を見ていても退屈するだけですので、宰相に話を振ってみました。

「いえ、作るのではなく、四年前から造り始めてしまっているのです。
 その工事が今後三十年近く続くのです。
 敗戦の影響で緊縮財政を余儀なくされているのに、こんなものを造る必要があるのか。
 そんな意見が持ち上がっていまして、陛下と相談していたのです。」

「えっ、建設に三十年もかかるのですか?
 門ですよね、どんだけ大きな物を造ろうとしているんです?」

 私のそんな素朴な疑問に返って来た答えは信じられないもので…。
 なんと、その門、幅五十ヤード、高さ五十五ヤード、奥行二十五ヤードという特大サイズでした。
 しかも、大理石をふんだんに使った総石造りの金食い虫だそうです。

 四年前と言えば、まだ、あの胃痛持ちの皇帝の治世です。
 その門は、皇帝がおじいさまの帝国軍に勝利した戦勝記念として建設を始めたものだと言います。
 門は多くのレリーフで飾られることになるとのことですが…。

 あの自己顕示意欲が強い皇帝が作り始めた門です。
 そこに飾られるレリーフは、皇帝が登場するものが多いそうで…。

 皇帝が勝利の女神から月桂樹を授けられる。

 なんとそんな場面が、門の正面に施される特大のレリーフに描かる計画だそうです。
 呆れた…、自分が神に祝福された存在だとでも誇示したかったのでしょうか。
 思い上がりも良いところです。

 いっその事、ドラゴンに恐怖して色々垂れ流している場面のレリーフに差し替えればどうかと思ったほどです。
 ダメですね、そんなくだらないモノに貴重な国費は使えませんね。

「そんな、バカバカしいモノ、工事を中止してしまえば良いではないですか。
 どうせ、戦争に負けちゃったんですから、今更凱旋門も無いでしょうに。」

 私が呆れ交じりにそう言うと。

「シャルロッテお姉さま、話はそんな単純な事ではないのです。」

 返ってきた言葉は、宰相ではなく、シャルちゃんの口から発せられたものでした。

「お姉さまがおっしゃる通り、あの門自体は恥晒しなバカバカしいものです。
 ですが、あの門の建設現場では何百という人が働いているのです。
 現場だけではありません。
 石材の加工やレリーフの製作、そういった人達まで含めると千人ではきかない人のメシのタネになっています。
 ご存じの通り、我が国は敗戦の影響から立ち直っておらず、不景気の真っただ中です。
 千にも及ぶ人の仕事を取り上げてしまう訳にはいかないのです。」

 多額の戦費と賠償金の支払いで国庫は底をつき、緊縮財政を余儀なくされています。
 それに加えて、シャルちゃんが平和主義を唱えて、軍の縮小を断行したため多くの軍人が職を失いました。
 不景気と巷にあふれる失業者。
 それを考えると千人もの雇用を生み出す事業を、簡単に辞めてしまう訳にはいかないそうです。

「シャルちゃんも大変ね、まだ子供なのに。」

「本当です。
 『君臨すれども統治せず』を貫き通すつもりだったのに…。
 あの皇帝が残した負の遺産の整理がつくまでは、市民に政を放り投げる訳にはいきません。
 それは、無責任というモノです。
 早く、戦後処理を終えて、お飾りの国王になりたいです。」

 シャルちゃんは、『君臨すれども統治せず』と宣言して、政治は議会に任せてしまうつもりでした。
 ですが、そう簡単に議会に任せてしまう訳にもいきませんでした。
 皇帝に与して大陸に戦火を広げる事になった議員を追放したら、議会が機能不全に陥ったのです。
 民主主義の体裁を取りながら、人々を欺き独裁体制を築き上げた皇帝が残した負の遺産が余りに大きかったそうです。
 市民が公平な選挙で代表者を選べるような仕組みや独裁者を生み出さないような仕組みを作るのは容易くないようです。
 今は、皇帝とは一線を画していた市民の代表者が残った議会に色々と諮りつつ、体制整備を進めている途中だと言います。

     ********

「でも、困ったわね。
 中止に出来ないなら、無意味なものを造るに三十年もお金を費やさないといけないのよね。
 どうするつもりなの?」

「だから、宰相と頭を悩ませているのです。
 高さ五十五ヤードなんて建物は王都にありませんから。
 完成したら展望台として屋上テラスを解放しようと思います。
 それで、入場料をとって少しでも建設費を回収出来たらと思っているのですが。
 完成までの費用を何処から捻出したモノか。
 あんなくだらないモノを作るのに国民の血税は使いたくありませんからね。
 間違っても、あれを作るのに増税なんかはしたくありません。」

 シャルちゃんと二人、顔を見合わせてため息をついていると…。

「お姉さん、案内して頂き有り難うございました。」

 ノノちゃんの礼儀正しい声が聞こえました。
 ノノちゃん達三人、仕事の話を聞かせても退屈なだけだと思ったのです。
 すると、私が何も言わないうちに、宰相の方が気配りを見せてくださいました。
 子供達三人を王宮見学に連れて行ってくださると言います。

 宰相は部屋付きの侍女に、三人を王宮見学に案内するように命じてくださったのです。

「おかえりなさい、王宮はどうだった?」

 私が三人に尋ねると…。

「ひろくて、つかれた。
 絵とか、彫刻とかがたくさんあったけど…。
 良く分かんなくて、つまんなかった。」

 アリィシャちゃんが、本当に疲れた表情で言いました。

「この王宮、実際に王宮として使っていたのは四代前の王様までなんだそうです。
 三代前の王様が、王都の外に大きな離宮をつくったそうで。
 王政末期の三代はそこで政を行ったそうです。
 その三代の間、この王宮は王家が集めた美術品の保管に使っていたそうなんです。
 こんな大きな宮殿に溢れんばかりの蒐集品があるんですよ。
 驚いちゃいました。」

 ノノちゃんが、アリィシャちゃんの言葉を補足するように説明してくれます。

「私もアリィシャちゃんと同じかな。
 この絵が素晴らしいと言われても、何処が良いのか分んないよ。
 絵に描かれたお姉さんの顔が『至上の微笑み』だなんて言われてもね…。
 田舎育ちの私やまだ小さなアリィシャちゃんに絵の良し悪しは難しいかな。」

 ナナちゃんもアリィシャちゃんと同じで、あまり面白くなかったようです。

「あはは、天才画家と言われている者の作品も、幼子にかかると形無しですな。
 ここの収蔵品は、歴代の国王が蒐集した逸品揃いなのですがね。
 そちらのお嬢さんが言った通り、この王宮は永らく美術品の収蔵庫になっていたんです。
 ですが、悪しき王政の象徴ともいえる離宮を使うことには議会の抵抗が強くて。
 王都の衛生状況の改善が叶えば、ここを再び王の住まいにと思っているのです。」

 もちろん、私だって、セルベチアの旧王政末期、郊外にある広大な離宮が政の中心だったことくらい知っています。
 夜な夜な、盛大なパーティーが幾つも開かれて、国民から搾り取った血税を浪費していたのですよね。
 ふむ、歴代の国王の膨大なコレクションと豪奢な離宮ですか、お金、あるじゃないですか。

「この王宮にシャルちゃんを住まわす計画は止めませんか。
 お飾りの王であれば、今の小さな離宮に住んでいても問題ないのでしょう。
 この王宮、少しコレクションを整理した上で、ギャラリーとして公開しましょう。
 価値のある作品ばかりなのであれば、お客さんは見込めるでしょう。
 入場料をとれば、結構な収入が期待できるのでは。
 併せて、溢れているコレクションの中で価値が一段下がるモノは売却しちゃいましょう。
 それに、今は使っていない離宮も遊ばせておくのは勿体ないので一般公開して入場料を取りましょう。
 あの離宮、無駄に豪華な宮殿なのでしょう、見世物としてお金を取れば良いじゃないですか。」

 この王宮にある蒐集品は全てが一流のものだと言います。
 コレクションの中では劣るモノでも、競売に掛ければそれなりの価格がつくはずです。
 蒐集点数が膨大なようですので、それなりにまとまった金額になるのではと思うのです。

 私の言葉を聞いた宰相は、「王の権威の象徴だったものを見世物にするのですか」と渋い顔をしますが。

「シャルロッテお姉さまの意見に賛成です。
 私は今住まいする離宮に留まりたいと思います。
 お飾りの王は王都にいない方が、議会が気兼ねなく議事を進める事が出来るでしょう。
 それに、この二十年、これだけの混乱を招いておいて王の権威もないでしょう。
 そんなもの、とっくに失墜しています。
 精々、愚かな先人たちの夢の跡を見世物にして、今の国民の役に立てようじゃないですか。」

 シャルちゃんの鶴の一声で、王宮をギャラリーとして公開する事と王都郊外にある離宮を一般公開する事が決まりました。

 その後、セルベチアの王都は花の都と謳われ、世界有数の観光地になりました。
 その流れの中で、王宮のギャラリーは世界一の美術館として名声を博すことになります。
 また、郊外の離宮もセルベチア王国最盛期を代表する宮殿建築として、王都観光の目玉となるのです。
 皇帝の自己顕示欲の塊のような巨大な門、あれも王都の人気スポットです。
 屋上に昇ると王都が一望に見渡せ、休日は観光客でいっぱいになります。

 その道筋が、この時のシャルちゃんの言葉で定まったのです。

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