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第10章 動き出す時間
第232話 戦争を終結させる前に…
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そう言う事ですか、『アルムの魔女』の幻影に囚われているセルベチア上層部の不安を払拭するために、アルムハイム伯国侵攻を企てたと。
私はセルベチア皇帝の話を聞き今回のアルムハイム伯国侵攻の経緯を知ることが出来ました。
セルベチアの上層部では、『アルムの魔女』の祟りなどと言う噂が実しやかに流れているそうです。
そのことに業を煮やした皇帝は、『アルムの魔女』を想起させるこの国をこの世界から消してしまおうと考えたようです。
確かに、この国は『アルムの魔女』の勲功の証ですし、実在の証ですからね。
セルベチアの兵士達に多数の犠牲が出てしまったのは残念ですが、三体の精霊のおかげで助かりました。
私がいたので後れを取る事は無かったでしょうが、館が襲撃される前に撃退してもらえたのは有り難いです。
どさくさ紛れに、アリィシャちゃんやセルベチアから来た姉弟、それにベルタさんに危害が及んだら大変でしたから。
しかし、こんな小さな国に侵攻するのに、皇帝自ら出向いてくるとは夢にも思いませんでした。
獅子は兎を狩るにも全力を尽くすですか。
違いますね、セルベチアの人々を『アルムの魔女』の呪縛から解き放った英雄になりたかっただけですね。
この方、自己顕示欲が強くて、英雄願望が強そうですし。
颯爽とユニコーンに跨る自分の姿とそれに喝采を送る国民の姿を想起したとかと語っていましたしね。
皇帝を捕らえられただけでも、全く想定外の幸運ですのに。
一緒に実務面の最高権力者である宰相まで捕らえることが出来るとは勿怪の幸いでした。
これで、一気に戦争終結に持って行けそうです。
一通り今回のアルムハイム伯国侵攻の経緯を聞き出した私は、場所を変えることにします。
もちろん、帝都のおじいさまの許へ連行するのです。
三人にはその場で眠ってもらい、浮遊の魔法で館に運びました。
そして、…。
**********
「おお、ロッテよ、良くぞ参ったな。
最近、頻繁に顔を見せてくれて嬉しいぞ!」
バタンと大きな音を立てて、部屋の扉が開かれました、ノックも無しに。
ここは帝都の皇宮の一室、入って来たのは勿論おじいさま、この帝国の皇帝です。
「おじいさまに喜んで頂けて、私も嬉しいです。
ですが、ノックはお忘れなく、一応レディーの私室なのですから。」
「それは悪かった。ついそなたの顔が見れると思うと気が急いてな。
ところで今日は遊びに来てくれたのではないようだな。
なんだ、その足元に転がっている男共は?」
おじいさまの位置からはセルベチア皇帝の顔は見えないようです。
足元で寝入っている三人を指差して尋ねました。
「今日、私の国に襲撃がございました。
その首謀者を捕らえたので、連れてまいったのです。」
「なんと、可愛い孫娘の国に攻め入った愚か者だと。
それは赦しては置けんな、即刻縛り首にでもしてやろう。」
「そう、慌てないでくだい。
この方達はとても利用価値があるのですよ。
帝国のため、いえ、この大陸の平和と安定のために、せいぜい役に立ってもらいましょう。」
「利用価値とな?
いったい何者なのだ、そやつらは?
二人は軍服を着ているので軍人のようだが…。
私と同じくらいの爺さんはキツネ狩りにでも行くような格好をしておるぞ。」
おじいさまは見当が付きかねるようで、三人の格好を見て困惑しています。
そろそろ、勿体つけるのはやめにしましょうか。
「一番、偉そうな軍装を纏っているのがセルベチア皇帝です。
キツネ狩りのような服装といった老人はセルベチアの宰相です。
もう一人はおまけですね。皇帝の護衛についていた近衛隊隊長のようです。」
私の言葉を聞いた途端、驚きの余りおじいさまは口をあんぐりとさせました、顎が外れそうなくらいに。
そして、
「それは、真か?
セルベチアの皇帝と宰相を捕らえたと…。」
おじいさまはそう言うと共に私の足元に寄って三人の顔を確認します。
皇帝と面識があるのでしょう、しばらく皇帝の顔を凝視していたおじいさまですが。
顔を上げて姿勢を戻したおじいさまが満面の笑顔を見せて言います。
「でかしたぞ、ロッテや!
私はそなたが孫娘に生まれて来てくれたことを誇りに思うぞ!
これで、戦争の幕引きができる。
さっそく諸侯に連絡を取らねば。」
おじいさまはそう言うとすぐさま部屋を出て行こうとしました。
ですが、私はおじいさまの袖を引いて、それを制止します。
「諸侯への連絡は少し待っていただけませんか。
セルベチア皇帝が、私の国に侵入したのは数時間前の事。
普通であれば、早馬を使っても帝都に知らせが届くのは一月後です。
それを考えれば、そう急くこともありません。
少し仕込みをしたいのです。
一月は掛からないと思います。」
私はそう告げて、内密に帝国宰相をここに呼ぶようにおじいさまにお願いしました。
実務面の事は宰相を交えて相談した方が良いと考えたからです。
ほどなくしてやってきた宰相とおじいさまを相手に私はあるプランを提案します。
「ふむ、姫様の計略は一考の価値がありますな。
上手くいけば、後顧の憂いを残すことなく此度の戦争の幕を引くことが出来ます。
しかし、セルベチアがウンと申しますかな。」
今日が初対面の宰相は私のプランを聞いてその実現性に疑問を呈します。
「セルベチアはウンと言うしかないと思います。
これ以上、セルベチアにとって有利な落としどころは無いのですから。
今回の戦争の賠償問題で、目玉となるのがこれだと思います。
それを、帝国とセルベチアの間に於ける賠償交渉の対象から外してしまおうと言うのですから。」
私が改めてそのことを詳しく説明すると、宰相は一応は納得としたようで。
「姫様がそうおっしゃるのであれば、一旦は姫様にお任せします。
幸い、姫様がお使いになる魔法のおかげで時間的な余裕はございます。
失敗しても、幾らでも仕切り直しは出来ますので好きなようにやってごらんなさい。」
宰相は成功するとはあまり思っていないようで、後学のために任せてみようかとの口振りでした。
一応ではありますが、宰相の許可も得られたので、私は少し暗躍することになったのです。
**********
そして、二週間ほど後、アルビオン王国の王都及び帝国の帝都に衝撃が走りました。
アルビオン王国の王都で発行された新聞、一面トップの見出しにはこうありました。
『クラーシュバルツ王宮襲撃事件の賠償問題、エルゼス地方の同国への割譲で決着』
その記事の内容は概ねこのようなモノでした。
セルベチア共和国政府は、クラーシュバルツ王宮襲撃に関し、全面的に非を認め損害賠償に応じることになった。
賠償の目玉は、セルベチア政府が領有するエルゼス地方の領土全てをクラーシュバルツ王国に割譲すること。
併せて、セルベチア政府がエルゼス地方に保有する炭鉱、鉄鉱山並びにその採掘、加工施設もクラーシュバルツ王国に譲渡する。
なお、割譲される地方に暮らすセルベチア国民は、クラーシュバルツ王国国民として平等に遇される。
炭鉱、鉄鉱山その他、クラーシュバルツ王国に譲渡される施設に勤務するセルベチア国民は引き続き雇用を保証される。
賠償の骨子はこのようなモノでしたが、それに続いてクラーシュバルツ王国側の声明として。
今回クラーシュバルツ王国に割譲される石炭及び鉄鉱山等で産出される産品は、国内で消費する分を除き、セルベチア共和国及び帝国に同量づつ販売する。
販売に当たっては、アルビオン王国の王都で取引される国際相場を基準とした公正なモノとする。
ただし、クラーシュバルツ王国が販売するこれら産品の用途は民生用に限るとし、軍用には用いないことを条件とする。
もし、違反が見つかった場合は取引を打ち切るものとする。
そう報道されたのです。
因みに、言ってませんでしたがエルゼス地方というのはルーネス川流域にあるセルベチア側の地方名です。
ルーネス川流域のセルベチア側にある産炭地、鉄鉱山は全てこの地方に含まれています。
石炭と鉄鉱石に関し大陸最大の埋蔵量を誇る地方が丸々、クラーシュバルツ王国に割譲されたのです。
誰もが驚いたことでしょう。
因みに、この時点では未だセルベチア皇帝が捕らえられたことは世間には知らされていません。
故に、世間の認識では帝国・アルビオン同盟とセルベチア共和国はいまだに交戦中なのです。
当然、戦後賠償問題などはまだ両者が席に着く段階に至っていないのです、…表向きは。
そこがこの件のキモです。
帝国・アルビオン同盟とセルベチア共和国の賠償交渉に先立って、クラーシュバルツ王国とセルベチア共和国が単独で損害賠償問題を決着させたのです。
因みに、クラーシュバルツ王国は中立国で、帝国側に与してないので、この損害賠償問題に正当に異議を唱える権利のある者はいません。
そう、個人的にははらわたが煮えくり返る思いをしても、国際ルールの上では誰も文句を言えないのです。
**********
それから、また二週間後、そろそろかと思い、このところ毎日皇宮にお邪魔しています。
私が毎日訪れるものですから、おじいさまはとても上機嫌な様子です。
この日も、皇帝専用のティールームで二人でお茶を楽しんでいると。
無造作にティールームのドアが開かれました、ノックも無しに。
帝国のお偉い方って、ノックの習慣が無いのかしら…。
「こら、フランツ!いったいこれはどういうことだ!
エルゼス地方が、クラーシュバルツ王国に割譲されるなど俺は聞いてないぞ。
この記事だと、調印はここでされたと書かれているじゃないか。
おまえは、何も異議を唱えなかったのか!」
帝国の最高権力者を呼び捨てですか、本当に思い上がった方なのですね。
ですから二国間協議でっすって、場所貸ししただけのおじいさまに口を挟む権限はありませんよ。
そんなの子供でも分かることでしょう、プルーシャ王さん。
私はセルベチア皇帝の話を聞き今回のアルムハイム伯国侵攻の経緯を知ることが出来ました。
セルベチアの上層部では、『アルムの魔女』の祟りなどと言う噂が実しやかに流れているそうです。
そのことに業を煮やした皇帝は、『アルムの魔女』を想起させるこの国をこの世界から消してしまおうと考えたようです。
確かに、この国は『アルムの魔女』の勲功の証ですし、実在の証ですからね。
セルベチアの兵士達に多数の犠牲が出てしまったのは残念ですが、三体の精霊のおかげで助かりました。
私がいたので後れを取る事は無かったでしょうが、館が襲撃される前に撃退してもらえたのは有り難いです。
どさくさ紛れに、アリィシャちゃんやセルベチアから来た姉弟、それにベルタさんに危害が及んだら大変でしたから。
しかし、こんな小さな国に侵攻するのに、皇帝自ら出向いてくるとは夢にも思いませんでした。
獅子は兎を狩るにも全力を尽くすですか。
違いますね、セルベチアの人々を『アルムの魔女』の呪縛から解き放った英雄になりたかっただけですね。
この方、自己顕示欲が強くて、英雄願望が強そうですし。
颯爽とユニコーンに跨る自分の姿とそれに喝采を送る国民の姿を想起したとかと語っていましたしね。
皇帝を捕らえられただけでも、全く想定外の幸運ですのに。
一緒に実務面の最高権力者である宰相まで捕らえることが出来るとは勿怪の幸いでした。
これで、一気に戦争終結に持って行けそうです。
一通り今回のアルムハイム伯国侵攻の経緯を聞き出した私は、場所を変えることにします。
もちろん、帝都のおじいさまの許へ連行するのです。
三人にはその場で眠ってもらい、浮遊の魔法で館に運びました。
そして、…。
**********
「おお、ロッテよ、良くぞ参ったな。
最近、頻繁に顔を見せてくれて嬉しいぞ!」
バタンと大きな音を立てて、部屋の扉が開かれました、ノックも無しに。
ここは帝都の皇宮の一室、入って来たのは勿論おじいさま、この帝国の皇帝です。
「おじいさまに喜んで頂けて、私も嬉しいです。
ですが、ノックはお忘れなく、一応レディーの私室なのですから。」
「それは悪かった。ついそなたの顔が見れると思うと気が急いてな。
ところで今日は遊びに来てくれたのではないようだな。
なんだ、その足元に転がっている男共は?」
おじいさまの位置からはセルベチア皇帝の顔は見えないようです。
足元で寝入っている三人を指差して尋ねました。
「今日、私の国に襲撃がございました。
その首謀者を捕らえたので、連れてまいったのです。」
「なんと、可愛い孫娘の国に攻め入った愚か者だと。
それは赦しては置けんな、即刻縛り首にでもしてやろう。」
「そう、慌てないでくだい。
この方達はとても利用価値があるのですよ。
帝国のため、いえ、この大陸の平和と安定のために、せいぜい役に立ってもらいましょう。」
「利用価値とな?
いったい何者なのだ、そやつらは?
二人は軍服を着ているので軍人のようだが…。
私と同じくらいの爺さんはキツネ狩りにでも行くような格好をしておるぞ。」
おじいさまは見当が付きかねるようで、三人の格好を見て困惑しています。
そろそろ、勿体つけるのはやめにしましょうか。
「一番、偉そうな軍装を纏っているのがセルベチア皇帝です。
キツネ狩りのような服装といった老人はセルベチアの宰相です。
もう一人はおまけですね。皇帝の護衛についていた近衛隊隊長のようです。」
私の言葉を聞いた途端、驚きの余りおじいさまは口をあんぐりとさせました、顎が外れそうなくらいに。
そして、
「それは、真か?
セルベチアの皇帝と宰相を捕らえたと…。」
おじいさまはそう言うと共に私の足元に寄って三人の顔を確認します。
皇帝と面識があるのでしょう、しばらく皇帝の顔を凝視していたおじいさまですが。
顔を上げて姿勢を戻したおじいさまが満面の笑顔を見せて言います。
「でかしたぞ、ロッテや!
私はそなたが孫娘に生まれて来てくれたことを誇りに思うぞ!
これで、戦争の幕引きができる。
さっそく諸侯に連絡を取らねば。」
おじいさまはそう言うとすぐさま部屋を出て行こうとしました。
ですが、私はおじいさまの袖を引いて、それを制止します。
「諸侯への連絡は少し待っていただけませんか。
セルベチア皇帝が、私の国に侵入したのは数時間前の事。
普通であれば、早馬を使っても帝都に知らせが届くのは一月後です。
それを考えれば、そう急くこともありません。
少し仕込みをしたいのです。
一月は掛からないと思います。」
私はそう告げて、内密に帝国宰相をここに呼ぶようにおじいさまにお願いしました。
実務面の事は宰相を交えて相談した方が良いと考えたからです。
ほどなくしてやってきた宰相とおじいさまを相手に私はあるプランを提案します。
「ふむ、姫様の計略は一考の価値がありますな。
上手くいけば、後顧の憂いを残すことなく此度の戦争の幕を引くことが出来ます。
しかし、セルベチアがウンと申しますかな。」
今日が初対面の宰相は私のプランを聞いてその実現性に疑問を呈します。
「セルベチアはウンと言うしかないと思います。
これ以上、セルベチアにとって有利な落としどころは無いのですから。
今回の戦争の賠償問題で、目玉となるのがこれだと思います。
それを、帝国とセルベチアの間に於ける賠償交渉の対象から外してしまおうと言うのですから。」
私が改めてそのことを詳しく説明すると、宰相は一応は納得としたようで。
「姫様がそうおっしゃるのであれば、一旦は姫様にお任せします。
幸い、姫様がお使いになる魔法のおかげで時間的な余裕はございます。
失敗しても、幾らでも仕切り直しは出来ますので好きなようにやってごらんなさい。」
宰相は成功するとはあまり思っていないようで、後学のために任せてみようかとの口振りでした。
一応ではありますが、宰相の許可も得られたので、私は少し暗躍することになったのです。
**********
そして、二週間ほど後、アルビオン王国の王都及び帝国の帝都に衝撃が走りました。
アルビオン王国の王都で発行された新聞、一面トップの見出しにはこうありました。
『クラーシュバルツ王宮襲撃事件の賠償問題、エルゼス地方の同国への割譲で決着』
その記事の内容は概ねこのようなモノでした。
セルベチア共和国政府は、クラーシュバルツ王宮襲撃に関し、全面的に非を認め損害賠償に応じることになった。
賠償の目玉は、セルベチア政府が領有するエルゼス地方の領土全てをクラーシュバルツ王国に割譲すること。
併せて、セルベチア政府がエルゼス地方に保有する炭鉱、鉄鉱山並びにその採掘、加工施設もクラーシュバルツ王国に譲渡する。
なお、割譲される地方に暮らすセルベチア国民は、クラーシュバルツ王国国民として平等に遇される。
炭鉱、鉄鉱山その他、クラーシュバルツ王国に譲渡される施設に勤務するセルベチア国民は引き続き雇用を保証される。
賠償の骨子はこのようなモノでしたが、それに続いてクラーシュバルツ王国側の声明として。
今回クラーシュバルツ王国に割譲される石炭及び鉄鉱山等で産出される産品は、国内で消費する分を除き、セルベチア共和国及び帝国に同量づつ販売する。
販売に当たっては、アルビオン王国の王都で取引される国際相場を基準とした公正なモノとする。
ただし、クラーシュバルツ王国が販売するこれら産品の用途は民生用に限るとし、軍用には用いないことを条件とする。
もし、違反が見つかった場合は取引を打ち切るものとする。
そう報道されたのです。
因みに、言ってませんでしたがエルゼス地方というのはルーネス川流域にあるセルベチア側の地方名です。
ルーネス川流域のセルベチア側にある産炭地、鉄鉱山は全てこの地方に含まれています。
石炭と鉄鉱石に関し大陸最大の埋蔵量を誇る地方が丸々、クラーシュバルツ王国に割譲されたのです。
誰もが驚いたことでしょう。
因みに、この時点では未だセルベチア皇帝が捕らえられたことは世間には知らされていません。
故に、世間の認識では帝国・アルビオン同盟とセルベチア共和国はいまだに交戦中なのです。
当然、戦後賠償問題などはまだ両者が席に着く段階に至っていないのです、…表向きは。
そこがこの件のキモです。
帝国・アルビオン同盟とセルベチア共和国の賠償交渉に先立って、クラーシュバルツ王国とセルベチア共和国が単独で損害賠償問題を決着させたのです。
因みに、クラーシュバルツ王国は中立国で、帝国側に与してないので、この損害賠償問題に正当に異議を唱える権利のある者はいません。
そう、個人的にははらわたが煮えくり返る思いをしても、国際ルールの上では誰も文句を言えないのです。
**********
それから、また二週間後、そろそろかと思い、このところ毎日皇宮にお邪魔しています。
私が毎日訪れるものですから、おじいさまはとても上機嫌な様子です。
この日も、皇帝専用のティールームで二人でお茶を楽しんでいると。
無造作にティールームのドアが開かれました、ノックも無しに。
帝国のお偉い方って、ノックの習慣が無いのかしら…。
「こら、フランツ!いったいこれはどういうことだ!
エルゼス地方が、クラーシュバルツ王国に割譲されるなど俺は聞いてないぞ。
この記事だと、調印はここでされたと書かれているじゃないか。
おまえは、何も異議を唱えなかったのか!」
帝国の最高権力者を呼び捨てですか、本当に思い上がった方なのですね。
ですから二国間協議でっすって、場所貸ししただけのおじいさまに口を挟む権限はありませんよ。
そんなの子供でも分かることでしょう、プルーシャ王さん。
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