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第9章 雪解け
第214話 この方の影響のようです…
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セルベチア軍の襲撃による王妃達の殺害という痛ましい事件がありました。
ですが、この町へやって来た目的を果たさずに帰る訳にもいきません。
私達は、リーナが提出した就労時間等の規制に関する法案の討議を済ませることにします。
リーナから法案の背景を説明して欲しいと振られ、私はアルビオン王国における過酷な就労状況を説明しました。
「ふむ、かの国では十歳にもならない子供を雇い入れて荷運びに使っているのですか。
それに、夕方六時から朝六時迄の作業とな。場所によってはそれを婦人にやらせていると。
今の我が国ではとうてい考えられないことですな。
夜も更けて働いている者など、宿屋や酒場の従業員、それに娼婦くらいです。
姫様がこの法案を送ってきた時、いったい何の意味があるのだろうと思ったのです。
我が国では当たり前のことばかり言っているものですから。
なるほど、他国から悪しき慣行が持ち込まれる前に禁じてしまおうと言うのですか。」
宰相は私の説明を聞いて、リーナが法を作ろうとした訳に納得したようです。
昨秋、法案と共になぜ法が必要かを説明した書面も添付したのですが、文書ではいまいちピンと来なかったようです。
文書には、リーナがその目で見てきたとは書けませんでした。
リーナはこの国から一歩も外へ出てないことになっていますから。
伝聞形で書かれていたため、宰相たちはリーナが誰かに誤った情報を吹き込まれたと思っていた様子です。
宰相たちにとって、幼子の雇用や夜を徹しての作業などはそれほどまでに信じ難いものだったようです。
実際に視察してきたという私の説明を耳にして、初めて法案の重要性を認識したようです。
「陛下、カロリーネ姫様は非常に先見の明があるようです。
領民に教育を施そうという件といい、この件といい、良く考えておられる。
二年前の姫様は政など全く関心を寄せておられなかったのに…。
シューネフルト領の領主となられてから、見違えるように成長なされた。
この法案の重要性は理解しました。
この件は、セルベチアに襲撃された件に関する事後処理が済んだら最優先で検討いたしましょう。」
宰相は、リーナの提出した法案を早期に制定できるよう取り計らうと約束してくれました。
これで、やるべき事は全て終わりました。
**********
そして、いよいよ王都を発つことにした前の晩のことです。
「せっかく戻ってきたのに、もう帰ってしまうなんて。
お母さん、寂しいわ。
今回は、リーナと一緒にお風呂に入れたのは一度きりだったし…。
一緒に寝ることなんて、結局一度も出来なかったわ。
あの宰相ったら、親子の団欒を邪魔するなんて無粋だわね。」
宰相に対する不満を呟きながら、リリさんが私達の滞在する部屋を訪れました。
「全くですわ。
私も、お母さんやお父さんと一緒にお風呂に入って、一緒にお休みしたかったのに。
とっても楽しみにして来たのですよ。
親子で一緒に寝ることのどこが悪いと言うのでしょうね。
お父さんが私に酷いことなどするはずないのに。」
そんなリリさんの言葉にリーナが相槌を打ちます。
いったい、あの変態オヤジに対するリーナの絶大な信頼はどこから生まれているのでしょうか。
悪い洗脳でも受けているのではと不安になってしまいます。
「旦那様はね、あの晩、リーナをとっても愛してくださるつもりだったのよ。
旦那様に愛して頂くととても幸せな気持ちになるの。
あの心地良さをリーナにも分けてあげたいと思っていたのに残念だわ。」
無垢な笑顔でそう言ったリリさん…。
思わず、私は口の含んだお茶を吹き出しそうになりました。
諸悪の根源はこんな所にいました。
いえ、決して悪気がある訳ではないのでしょう。
リリさんの表情を見る限り、純粋にそう思っているようです。
弱冠十二歳で王に囲われ、離宮に軟禁されるように生活してきたリリさん。
ハインツ王とリリさんの間でもたれる愛の営みを、ハインツ王とリーナの間で営むことはいけないことだ。
そんな、世間では当たり前の倫理観を養うことなく、リリさんは大人になってしまったようです。
あのハインツ王の事です、そのような倫理観はわざと教えなかったのかも知れませんね。
ハインツ王に苦境を救われ、ありったけの愛情を注がれたリリさん。
リリさんは妄信的にハインツ王を慕っていて、間違っているなど露ほども思ってないのかも知れません。
むしろ、自分と同じように娘のリーナに愛情を注いでもらえることを嬉しく感じているようです。
でも、邪気のないリリさんの表情を見ていると、それは間違っているとは言えませんでした。
幸せの形は、人それぞれですからね。
『ハインツ王が枯れるまで、リーナは私が守らないと。』
この時、私はそう思ったのです。リリさんには任せておけないようです。
**********
しばらくは他愛もない会話を続けていたのですが。
会話が途切れた時に、リリさんが言いました。
「ところで、リーナ。
あなた、なにかに憑りつかれていないかしら。
なんか、ロッテさんの方は沢山憑りつかれているわね。
とっても小さくて、かわいいお嬢さん。
見た感じ悪霊には見えないのだけど…、お化け?」
「「えっ?」」
「何がお化けよ!失礼ね!
アタシは誇り高き火の精霊サラよ!
お化けなんかと一緒にしないでちょうだい!」
リリさんから発せられた意外な言葉、私達二人は思わず聞き返してしまいました。
それとほぼ同時に、お化けと言われて憤慨した火の精霊サラちゃんが実体化したのです。
「あらあら、サラちゃんって言うの?可愛いわね。
私は、リリ。よろしくね。
でも、精霊なんて本当にいたのね。
リーナが帰ってきた時からずっと気になっていたのよ。
二人の傍にたくさん浮かんでいるのに、誰も気づかないんですもの。
でも、目の錯覚にしてはハッキリ見えるし…。」
「可愛いなんて言われたら、照れちゃうじゃない。
分かれば良いのよ。
リリさんね、よろしく。」
どうやら、リリさんは私達と同じで、実体化していない精霊を知覚できる人のようです。
リーナの能力もリリさんから継いだものなのですね、おそらく。
元から視えるのであれば隠しておく必要もないという事で、みんなを出して紹介したのですが。
「リリさん、あなた、少し体に狂いが生じていますね。
そのせいで成長が止まってしまっています。
私が治して差し上げましょうか。
そうすれば、今後は年相応に齢を重ねて行くことが出来ますわよ。」
水の精霊アクアちゃんが、リリさんの様子を見て提案しました。
アクアちゃんの言葉に少し思案した様子を見せたリリさんですが。
「せっかくだけど、遠慮しておくわ。
旦那様はこの姿の私をとても気に入ってくださっているの。
成長したり、年老いたりしたら、旦那様をガッカリさせてしまうわ。
私に見向きしないようになったら悲しいですもの。
私は、この姿で、ずっと旦那様に愛して頂く方が良いわ。」
微笑みを見せながらそう言いました。
ハインツ王がそう言う趣味なのは理解しているのですね。
それを変だとは思っていないようですが。
これも、割れ鍋に綴じ蓋と言うのでしょうか。
ともあれ、二人が幸せなら、それで良いのでしょう。…私は理解できませんが。
**********
「リーナ!もう帰ってしまうのか?
もっとゆっくりして行けば良いのに!
父さん、おまえがいないと寂しいぞ!」
離宮の正面エントランス前で、娘を行かせまいとごねるハインツ王、いい歳してみっともないです。
そんなハインツ王とリリさんに見送られて私達は離宮を後にしました。
セルベチアの愚か者のせいで予定外に滞在が長引き、王都アルトブルクを発ったのは四月も終わりの事でした。
ですが、この町へやって来た目的を果たさずに帰る訳にもいきません。
私達は、リーナが提出した就労時間等の規制に関する法案の討議を済ませることにします。
リーナから法案の背景を説明して欲しいと振られ、私はアルビオン王国における過酷な就労状況を説明しました。
「ふむ、かの国では十歳にもならない子供を雇い入れて荷運びに使っているのですか。
それに、夕方六時から朝六時迄の作業とな。場所によってはそれを婦人にやらせていると。
今の我が国ではとうてい考えられないことですな。
夜も更けて働いている者など、宿屋や酒場の従業員、それに娼婦くらいです。
姫様がこの法案を送ってきた時、いったい何の意味があるのだろうと思ったのです。
我が国では当たり前のことばかり言っているものですから。
なるほど、他国から悪しき慣行が持ち込まれる前に禁じてしまおうと言うのですか。」
宰相は私の説明を聞いて、リーナが法を作ろうとした訳に納得したようです。
昨秋、法案と共になぜ法が必要かを説明した書面も添付したのですが、文書ではいまいちピンと来なかったようです。
文書には、リーナがその目で見てきたとは書けませんでした。
リーナはこの国から一歩も外へ出てないことになっていますから。
伝聞形で書かれていたため、宰相たちはリーナが誰かに誤った情報を吹き込まれたと思っていた様子です。
宰相たちにとって、幼子の雇用や夜を徹しての作業などはそれほどまでに信じ難いものだったようです。
実際に視察してきたという私の説明を耳にして、初めて法案の重要性を認識したようです。
「陛下、カロリーネ姫様は非常に先見の明があるようです。
領民に教育を施そうという件といい、この件といい、良く考えておられる。
二年前の姫様は政など全く関心を寄せておられなかったのに…。
シューネフルト領の領主となられてから、見違えるように成長なされた。
この法案の重要性は理解しました。
この件は、セルベチアに襲撃された件に関する事後処理が済んだら最優先で検討いたしましょう。」
宰相は、リーナの提出した法案を早期に制定できるよう取り計らうと約束してくれました。
これで、やるべき事は全て終わりました。
**********
そして、いよいよ王都を発つことにした前の晩のことです。
「せっかく戻ってきたのに、もう帰ってしまうなんて。
お母さん、寂しいわ。
今回は、リーナと一緒にお風呂に入れたのは一度きりだったし…。
一緒に寝ることなんて、結局一度も出来なかったわ。
あの宰相ったら、親子の団欒を邪魔するなんて無粋だわね。」
宰相に対する不満を呟きながら、リリさんが私達の滞在する部屋を訪れました。
「全くですわ。
私も、お母さんやお父さんと一緒にお風呂に入って、一緒にお休みしたかったのに。
とっても楽しみにして来たのですよ。
親子で一緒に寝ることのどこが悪いと言うのでしょうね。
お父さんが私に酷いことなどするはずないのに。」
そんなリリさんの言葉にリーナが相槌を打ちます。
いったい、あの変態オヤジに対するリーナの絶大な信頼はどこから生まれているのでしょうか。
悪い洗脳でも受けているのではと不安になってしまいます。
「旦那様はね、あの晩、リーナをとっても愛してくださるつもりだったのよ。
旦那様に愛して頂くととても幸せな気持ちになるの。
あの心地良さをリーナにも分けてあげたいと思っていたのに残念だわ。」
無垢な笑顔でそう言ったリリさん…。
思わず、私は口の含んだお茶を吹き出しそうになりました。
諸悪の根源はこんな所にいました。
いえ、決して悪気がある訳ではないのでしょう。
リリさんの表情を見る限り、純粋にそう思っているようです。
弱冠十二歳で王に囲われ、離宮に軟禁されるように生活してきたリリさん。
ハインツ王とリリさんの間でもたれる愛の営みを、ハインツ王とリーナの間で営むことはいけないことだ。
そんな、世間では当たり前の倫理観を養うことなく、リリさんは大人になってしまったようです。
あのハインツ王の事です、そのような倫理観はわざと教えなかったのかも知れませんね。
ハインツ王に苦境を救われ、ありったけの愛情を注がれたリリさん。
リリさんは妄信的にハインツ王を慕っていて、間違っているなど露ほども思ってないのかも知れません。
むしろ、自分と同じように娘のリーナに愛情を注いでもらえることを嬉しく感じているようです。
でも、邪気のないリリさんの表情を見ていると、それは間違っているとは言えませんでした。
幸せの形は、人それぞれですからね。
『ハインツ王が枯れるまで、リーナは私が守らないと。』
この時、私はそう思ったのです。リリさんには任せておけないようです。
**********
しばらくは他愛もない会話を続けていたのですが。
会話が途切れた時に、リリさんが言いました。
「ところで、リーナ。
あなた、なにかに憑りつかれていないかしら。
なんか、ロッテさんの方は沢山憑りつかれているわね。
とっても小さくて、かわいいお嬢さん。
見た感じ悪霊には見えないのだけど…、お化け?」
「「えっ?」」
「何がお化けよ!失礼ね!
アタシは誇り高き火の精霊サラよ!
お化けなんかと一緒にしないでちょうだい!」
リリさんから発せられた意外な言葉、私達二人は思わず聞き返してしまいました。
それとほぼ同時に、お化けと言われて憤慨した火の精霊サラちゃんが実体化したのです。
「あらあら、サラちゃんって言うの?可愛いわね。
私は、リリ。よろしくね。
でも、精霊なんて本当にいたのね。
リーナが帰ってきた時からずっと気になっていたのよ。
二人の傍にたくさん浮かんでいるのに、誰も気づかないんですもの。
でも、目の錯覚にしてはハッキリ見えるし…。」
「可愛いなんて言われたら、照れちゃうじゃない。
分かれば良いのよ。
リリさんね、よろしく。」
どうやら、リリさんは私達と同じで、実体化していない精霊を知覚できる人のようです。
リーナの能力もリリさんから継いだものなのですね、おそらく。
元から視えるのであれば隠しておく必要もないという事で、みんなを出して紹介したのですが。
「リリさん、あなた、少し体に狂いが生じていますね。
そのせいで成長が止まってしまっています。
私が治して差し上げましょうか。
そうすれば、今後は年相応に齢を重ねて行くことが出来ますわよ。」
水の精霊アクアちゃんが、リリさんの様子を見て提案しました。
アクアちゃんの言葉に少し思案した様子を見せたリリさんですが。
「せっかくだけど、遠慮しておくわ。
旦那様はこの姿の私をとても気に入ってくださっているの。
成長したり、年老いたりしたら、旦那様をガッカリさせてしまうわ。
私に見向きしないようになったら悲しいですもの。
私は、この姿で、ずっと旦那様に愛して頂く方が良いわ。」
微笑みを見せながらそう言いました。
ハインツ王がそう言う趣味なのは理解しているのですね。
それを変だとは思っていないようですが。
これも、割れ鍋に綴じ蓋と言うのでしょうか。
ともあれ、二人が幸せなら、それで良いのでしょう。…私は理解できませんが。
**********
「リーナ!もう帰ってしまうのか?
もっとゆっくりして行けば良いのに!
父さん、おまえがいないと寂しいぞ!」
離宮の正面エントランス前で、娘を行かせまいとごねるハインツ王、いい歳してみっともないです。
そんなハインツ王とリリさんに見送られて私達は離宮を後にしました。
セルベチアの愚か者のせいで予定外に滞在が長引き、王都アルトブルクを発ったのは四月も終わりの事でした。
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