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第8章 冬が来ます
第186話 精霊たちも紹介しました
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「ロッテさん、あなた、本物の魔女なんですって。
お父様から伺ったわ。
私、魔女にお目にかかるのは初めてだわ。
ねえ、魔女ってどんなことが出来るのかしら。」
トリアさんは期待に満ちた目で私を見つめています。
何か魔法を使って欲しいのですね…。
「そうね、こんなのはいかがかしら?」
私は光の玉を作ると天井に向かって放りました。
冬の日差しは弱々しく、昼間でも部屋の中は薄暗いのですが。
放った光の玉は天井付近で光度を増し、部屋全体を明るく照らします。
「すごい!
信じられない、こんなに部屋の中が明るくなるなんて。
それでいて、優しい光なのね。まるで春の陽だまりのようだわ。
ロウソクよりもずっと明るいし、チカチカしないのですね。」
ロウソクの炎は揺らめきがあり、複数のロウソクを灯すと目にチカチカします。
一方、魔法の光は揺らぎを全く感じさせず、程よい明るさで部屋を照らしてくれるのです。
トリアさんはロウソクより明るく、それでいて目に優しい光の魔法を気に入ってくれたようです。
「残念だわ、こんな便利なものなら私も使えれば良いのに。
ねえ、リーナさんも魔女なのかしら?」
「私は魔女と名乗れるほど魔法は知りませんの。
たまたま魔法の素養があったので、光の玉を生み出す魔法だけは教えてもらいました。
夜、暗い廊下を歩くのに心細くないようにと。
魔女は聖教に良い顔をされないという事で、ロッテはそれ以上は教えてくださいませんの。」
「あらそうですの。
でも、この魔法が使えるだけでも十分価値があると思いますわ。
その魔法の素養ってどうやって調べるのかしら。」
リーナが指先に灯した光を見てトリアさんはとても羨ましそうです。
トリアさんの問い掛けに、私は簡単な説明をした後でトリアさんの手を取りました。
「今から、トリアさんの指先から魔力を流し込みます。
それを感じ取ることが出来れば、程度に差はあれ魔法を使う素養があると言えます。
行きますよ。」
私は、トリアさんの指先から魔力を送り込みそれをしばらく続けます。
トリアさんはジッと指先に神経を集中していたようですが、首を振ると…。
「残念ですわ、何も感じませんわ。
私には魔法の素養が無いみたいですわね。」
そう残念そうに呟きをもらしました。
ですが、そんなに真剣にも考えていなかったようで、すぐに気を取り直して話題を変えました。
「そうそう、これもお父様から伺いました。
とっても可愛い精霊さんがいるそうですね。
疫病で苦しむ人達を癒してくださったのでしょう。
十字勲章を差し上げたと言ってましたわ。
ぜひ私もお目にかかってお礼が申し上げたいですわ。」
トリアは感謝の気落ちを伝えたいと言いうものの、その実精霊と言う存在を目にしてみたい様子です。
興味津々と言った雰囲気で目を輝かせています。
「あまり、人目には晒したくないのですけど、ジョージさんにも紹介しましたものね。
トリアさんにもみんなを紹介するわ。
リーナ、あなたもシアンとセピアをご紹介したら?」
「ええ、わかりました。
シアン、セピア、姿を現してちょうだい。」
リーナが精霊を呼び出すのにあわせて、私もみんなを呼び出します。
呼びかけに応じて次々と現れた可愛い精霊達にトリアは目を奪われていました。
「まあ、こんなにたくさんいらしたのね。
みなさん、愛らしいこと。」
「みんなを紹介するけど、最初にこの二人を紹介するわね。
水の精霊アクアちゃんと光の精霊シャインちゃん。
先日勲章を頂いたのがこの二人よ。
王都の疫病の治療をしてくれた精霊なの。
アクアちゃんは疫病の原因も教えてくれたのよ。」
私がアクアちゃんとシャインちゃんを紹介するとトリアさんは表情を引き締め二人に向き合います。
「先般、我が国の民を救っていただいたことに心より感謝申し上げます。
私は、先日お目にかかった国王ジョージの娘、ビクトリアでございます。
よろしくお見知りおきくださいませ。」
二人に向かい感謝の言葉と共に頭を下げたトリアに向かってアクアちゃんが言います。
「そんなかしこまらなくても結構ですよ。
私達はロッテちゃんに頼まれたからしたことですし。
あのような不浄な虫が湧いて多くの人が命を落とすのは、私達も不愉快ですから。
ただし、二度目はありませんよ。
この町の不潔さは異常です、このままでは再び病が流行っても不思議ではありません。
二の轍を踏まないようにきちんと対処してくださいね。」
「はい、父は首相と計って王都の下水道の整備と下水処理場の整備、それに浄水場の整備を進めるよう命じました。
同時に、建物の上階から屋外に汚物を投げ捨てることを固く禁じ、取り締まりを強化しました。
何処まで迅速に進められるかは定かではございませんが。
お言葉は父も首相も肝に銘じております。」
「そう、それは良かったですわ。
一日も早く、この汚れた町が清潔になるように願っています。」
アクアちゃんの忠告にトリアが最近の取り組み状況を説明します。
それを聞いたアクアちゃんは取り敢えずは安心したようです。
続いて私は他の精霊達の紹介を続けますが、最初はこの子です。
「トリアさん、二人はそのくらいで良いかな。
他の精霊達を紹介するね。
この子は火の精霊のサラちゃん、今日はサラちゃんに芸を披露してもらうから期待してね。」
「サラですわ。
最近見せ場がないので燻ぶっていたのですけど。
今日は全力を出して良いと言われたので、アタシの偉大さを見せて差し上げますわ。
期待してくれて良いですわよ。」
先日サラちゃんが見せ場がないとぼやいていたので今日は芸を披露してもらうことにしたのです。
サラちゃんは薄い胸を精一杯に張って、自信満々です。
周囲の度肝を抜いてあげるとか息巻いていますが…。
「まあ、それは楽しみですわ。
初めまして、サラさん。
私はビクトリアです、トリアと呼んでくださいね。
それで、何を見せてくださるのですか?」
「ふふん、それは見てのお楽しみよ。
みんながあっと驚くようなものを見せてあげましょう。」
などと、サラちゃんは勿体ぶっていますが、確かにみんなの度肝を抜けると思います。
ただ、サラちゃんが全力を出すと問題にならないかが心配ですが…。
**********
「先程からお話を伺っていると、今回はロッテをこの国の方に紹介するのが目的のようですね。
そんな場に私がいるのは場違いではございませんか。」
アルビオン王国を巡る一連の騒動に関与していないリーナが気まずそうにもらしました。
「何をおっしゃるのですか。
今回ご招待したのは、確かにロッテさんに感謝の気持ちを伝えるためでもありますが。
それ以上に、私と友誼を結んで欲しいとお父様が望んだからなのです。
それに、夏にお二人がこの国を訪れたのも、元々はリーナさんの領地改革のためだと伺っています。
リーナさんが領地の改革を検討しなければ、お二人がこの地を訪れることはなかったのでしょう。
そう言った意味では、リーナさんがロッテさんとこの国を結び付けてくれたようなものではございませんか。
加えて、リーナさんが今なさろうとしていることには、お父様もとても関心を持っているのです。」
なんでも、工場が大規模になって来ると口頭で指示を出すのが困難になってきたようです。
書面で指示書を出したいと考えても、識字率の低さがそれを許さない状況なのですって。
一般平民、特に単純労働に就くような低所得者の識字率を上げる必要をこの国の上層部も感じているようです。
ジョージさんはミリアム首相との話の中でそれを強く感じたそうです。
その中で、リーナの計画についても耳にしてジョージさんはいたく感心したそうです。
僅か十六歳の領主が、他国に先駆けて貧しい農村部の子供たち全てに読み書き計算の教育を施そうと試みていることに。
そんな先進的な発想を持つリーナとトリアさんを結び付けたいとジョージさんは考えたみたいです。
是非とも、トリアさんとも懇意にして欲しいとの希望から今回の招待に至ったそうです。
それに私一人では心細いだろうという心遣いもあったようですが。
「そう言って頂けると気が休まります。
では、私も頑張って成果を出さないといけませんね。」
リーナはトリアさんの言葉を聞いて気を取り直したようで、柔らかな微笑みを見せてくれました。
「じゃあ、今日の記念に私とリーナからささやかな贈り物をさせて頂きますね。」
私は、用意しておいた小さな箱を、リーナの手からトリアに手渡してもらいました。
「これは、時計…。
もしかして、これが世界一高精度な時計ですか?」
受け取った小箱を開いたトリアが驚きの表情を見せました。
「ごめんなさいね。
あの時計はこちらの海軍以外にはお渡しできないの。
これは、海軍から一般向けに販売許可を受けた物で、少しだけ精度が落ちますの。
でも、一日の誤差が二十秒ですから、使用に問題はないと思いますわ。
リーナの領地の一流の金細工師に作って頂いたケースに、私の工房のムーヴメントを付けたものです。
女性好みのデザインになるように二人で考えたものですの。」
金のケースの表蓋には細かい蔓バラの彫刻が縁取られその真ん中には冠が乗ったバラの紋様が彫刻されています。
アルビオンの王室の紋章は別にあるのですが、このバラの紋様もアルビオンの王室で長らく使われてきた紋章です。
勇ましい王室の紋章よりも、このバラの紋様の方が女性らしくて良いと思ったのです。
「ありがとう!
とても素敵なデザインですね。
形もチャーミングですし、彫刻がとても繊細です。
それに、一日の誤差が二十秒ですって、信じられない精度ですわ。
二人ともありがとう、大切に使わせていただきますわね。」
トリアはお世辞抜きで喜んでくれたようです。
リーナと二人で頭を悩ませて基本的なデザインを考えた甲斐はありました。
もちろん、リーナが紹介してくれた金細工師の腕が良かったことが一番なのでしょうけど。
そうするうちに、時間は過ぎていよいよ年越しパーティーの時間です。
お父様から伺ったわ。
私、魔女にお目にかかるのは初めてだわ。
ねえ、魔女ってどんなことが出来るのかしら。」
トリアさんは期待に満ちた目で私を見つめています。
何か魔法を使って欲しいのですね…。
「そうね、こんなのはいかがかしら?」
私は光の玉を作ると天井に向かって放りました。
冬の日差しは弱々しく、昼間でも部屋の中は薄暗いのですが。
放った光の玉は天井付近で光度を増し、部屋全体を明るく照らします。
「すごい!
信じられない、こんなに部屋の中が明るくなるなんて。
それでいて、優しい光なのね。まるで春の陽だまりのようだわ。
ロウソクよりもずっと明るいし、チカチカしないのですね。」
ロウソクの炎は揺らめきがあり、複数のロウソクを灯すと目にチカチカします。
一方、魔法の光は揺らぎを全く感じさせず、程よい明るさで部屋を照らしてくれるのです。
トリアさんはロウソクより明るく、それでいて目に優しい光の魔法を気に入ってくれたようです。
「残念だわ、こんな便利なものなら私も使えれば良いのに。
ねえ、リーナさんも魔女なのかしら?」
「私は魔女と名乗れるほど魔法は知りませんの。
たまたま魔法の素養があったので、光の玉を生み出す魔法だけは教えてもらいました。
夜、暗い廊下を歩くのに心細くないようにと。
魔女は聖教に良い顔をされないという事で、ロッテはそれ以上は教えてくださいませんの。」
「あらそうですの。
でも、この魔法が使えるだけでも十分価値があると思いますわ。
その魔法の素養ってどうやって調べるのかしら。」
リーナが指先に灯した光を見てトリアさんはとても羨ましそうです。
トリアさんの問い掛けに、私は簡単な説明をした後でトリアさんの手を取りました。
「今から、トリアさんの指先から魔力を流し込みます。
それを感じ取ることが出来れば、程度に差はあれ魔法を使う素養があると言えます。
行きますよ。」
私は、トリアさんの指先から魔力を送り込みそれをしばらく続けます。
トリアさんはジッと指先に神経を集中していたようですが、首を振ると…。
「残念ですわ、何も感じませんわ。
私には魔法の素養が無いみたいですわね。」
そう残念そうに呟きをもらしました。
ですが、そんなに真剣にも考えていなかったようで、すぐに気を取り直して話題を変えました。
「そうそう、これもお父様から伺いました。
とっても可愛い精霊さんがいるそうですね。
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興味津々と言った雰囲気で目を輝かせています。
「あまり、人目には晒したくないのですけど、ジョージさんにも紹介しましたものね。
トリアさんにもみんなを紹介するわ。
リーナ、あなたもシアンとセピアをご紹介したら?」
「ええ、わかりました。
シアン、セピア、姿を現してちょうだい。」
リーナが精霊を呼び出すのにあわせて、私もみんなを呼び出します。
呼びかけに応じて次々と現れた可愛い精霊達にトリアは目を奪われていました。
「まあ、こんなにたくさんいらしたのね。
みなさん、愛らしいこと。」
「みんなを紹介するけど、最初にこの二人を紹介するわね。
水の精霊アクアちゃんと光の精霊シャインちゃん。
先日勲章を頂いたのがこの二人よ。
王都の疫病の治療をしてくれた精霊なの。
アクアちゃんは疫病の原因も教えてくれたのよ。」
私がアクアちゃんとシャインちゃんを紹介するとトリアさんは表情を引き締め二人に向き合います。
「先般、我が国の民を救っていただいたことに心より感謝申し上げます。
私は、先日お目にかかった国王ジョージの娘、ビクトリアでございます。
よろしくお見知りおきくださいませ。」
二人に向かい感謝の言葉と共に頭を下げたトリアに向かってアクアちゃんが言います。
「そんなかしこまらなくても結構ですよ。
私達はロッテちゃんに頼まれたからしたことですし。
あのような不浄な虫が湧いて多くの人が命を落とすのは、私達も不愉快ですから。
ただし、二度目はありませんよ。
この町の不潔さは異常です、このままでは再び病が流行っても不思議ではありません。
二の轍を踏まないようにきちんと対処してくださいね。」
「はい、父は首相と計って王都の下水道の整備と下水処理場の整備、それに浄水場の整備を進めるよう命じました。
同時に、建物の上階から屋外に汚物を投げ捨てることを固く禁じ、取り締まりを強化しました。
何処まで迅速に進められるかは定かではございませんが。
お言葉は父も首相も肝に銘じております。」
「そう、それは良かったですわ。
一日も早く、この汚れた町が清潔になるように願っています。」
アクアちゃんの忠告にトリアが最近の取り組み状況を説明します。
それを聞いたアクアちゃんは取り敢えずは安心したようです。
続いて私は他の精霊達の紹介を続けますが、最初はこの子です。
「トリアさん、二人はそのくらいで良いかな。
他の精霊達を紹介するね。
この子は火の精霊のサラちゃん、今日はサラちゃんに芸を披露してもらうから期待してね。」
「サラですわ。
最近見せ場がないので燻ぶっていたのですけど。
今日は全力を出して良いと言われたので、アタシの偉大さを見せて差し上げますわ。
期待してくれて良いですわよ。」
先日サラちゃんが見せ場がないとぼやいていたので今日は芸を披露してもらうことにしたのです。
サラちゃんは薄い胸を精一杯に張って、自信満々です。
周囲の度肝を抜いてあげるとか息巻いていますが…。
「まあ、それは楽しみですわ。
初めまして、サラさん。
私はビクトリアです、トリアと呼んでくださいね。
それで、何を見せてくださるのですか?」
「ふふん、それは見てのお楽しみよ。
みんながあっと驚くようなものを見せてあげましょう。」
などと、サラちゃんは勿体ぶっていますが、確かにみんなの度肝を抜けると思います。
ただ、サラちゃんが全力を出すと問題にならないかが心配ですが…。
**********
「先程からお話を伺っていると、今回はロッテをこの国の方に紹介するのが目的のようですね。
そんな場に私がいるのは場違いではございませんか。」
アルビオン王国を巡る一連の騒動に関与していないリーナが気まずそうにもらしました。
「何をおっしゃるのですか。
今回ご招待したのは、確かにロッテさんに感謝の気持ちを伝えるためでもありますが。
それ以上に、私と友誼を結んで欲しいとお父様が望んだからなのです。
それに、夏にお二人がこの国を訪れたのも、元々はリーナさんの領地改革のためだと伺っています。
リーナさんが領地の改革を検討しなければ、お二人がこの地を訪れることはなかったのでしょう。
そう言った意味では、リーナさんがロッテさんとこの国を結び付けてくれたようなものではございませんか。
加えて、リーナさんが今なさろうとしていることには、お父様もとても関心を持っているのです。」
なんでも、工場が大規模になって来ると口頭で指示を出すのが困難になってきたようです。
書面で指示書を出したいと考えても、識字率の低さがそれを許さない状況なのですって。
一般平民、特に単純労働に就くような低所得者の識字率を上げる必要をこの国の上層部も感じているようです。
ジョージさんはミリアム首相との話の中でそれを強く感じたそうです。
その中で、リーナの計画についても耳にしてジョージさんはいたく感心したそうです。
僅か十六歳の領主が、他国に先駆けて貧しい農村部の子供たち全てに読み書き計算の教育を施そうと試みていることに。
そんな先進的な発想を持つリーナとトリアさんを結び付けたいとジョージさんは考えたみたいです。
是非とも、トリアさんとも懇意にして欲しいとの希望から今回の招待に至ったそうです。
それに私一人では心細いだろうという心遣いもあったようですが。
「そう言って頂けると気が休まります。
では、私も頑張って成果を出さないといけませんね。」
リーナはトリアさんの言葉を聞いて気を取り直したようで、柔らかな微笑みを見せてくれました。
「じゃあ、今日の記念に私とリーナからささやかな贈り物をさせて頂きますね。」
私は、用意しておいた小さな箱を、リーナの手からトリアに手渡してもらいました。
「これは、時計…。
もしかして、これが世界一高精度な時計ですか?」
受け取った小箱を開いたトリアが驚きの表情を見せました。
「ごめんなさいね。
あの時計はこちらの海軍以外にはお渡しできないの。
これは、海軍から一般向けに販売許可を受けた物で、少しだけ精度が落ちますの。
でも、一日の誤差が二十秒ですから、使用に問題はないと思いますわ。
リーナの領地の一流の金細工師に作って頂いたケースに、私の工房のムーヴメントを付けたものです。
女性好みのデザインになるように二人で考えたものですの。」
金のケースの表蓋には細かい蔓バラの彫刻が縁取られその真ん中には冠が乗ったバラの紋様が彫刻されています。
アルビオンの王室の紋章は別にあるのですが、このバラの紋様もアルビオンの王室で長らく使われてきた紋章です。
勇ましい王室の紋章よりも、このバラの紋様の方が女性らしくて良いと思ったのです。
「ありがとう!
とても素敵なデザインですね。
形もチャーミングですし、彫刻がとても繊細です。
それに、一日の誤差が二十秒ですって、信じられない精度ですわ。
二人ともありがとう、大切に使わせていただきますわね。」
トリアはお世辞抜きで喜んでくれたようです。
リーナと二人で頭を悩ませて基本的なデザインを考えた甲斐はありました。
もちろん、リーナが紹介してくれた金細工師の腕が良かったことが一番なのでしょうけど。
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