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第6章 異国の地を旅します
第133話 駄馬の言葉に赤面させられました
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「なに、なに、どっか出かけるの~?
あの馬使うのなら、わたしも必要だよね!
あの馬の誘導なら任せて~、泥船に乗ったつもりでいてちょうだ~い!」
ポンっと、いきなり私の目の前にブリーゼちゃんが現れます。
そして、いつものように軽い口調でまくし立てました。
いや、それを言うなら大船でしょうに。
でも、ブリーゼちゃんのお気軽な言葉を聞いていると、泥船の方が的を射ているような気がしてきます。
この安請け合い感が半端ないセリフに、そこはかとない不安を感じさせられます。
「じゃあ、ヴァイスの準備をお願いできる?」
「りょ~かい!すぐに用意するね~!」
そして、ブリーゼちゃんはせわしなく飛び去っていきました。
本当にあの子はせっかちなんだから…。
ふと、気が付くと私の目の前ではオークレフトさんが目を丸くしていました。
「シャルロッテ様、今のちっこいのはいったい…。」
「あら、ごめんなさい。まだ言ってませんでしたわね。
今のは私の契約精霊のブリーゼちゃん、風の精霊ですのよ。」
「精霊ですか?あの御伽噺によく出てくる?」
「そうよ、可愛いでしょう。」
「精霊って本当にいたのですか?」
「ご自分で目にしたものが信じられません?」
「いえ、僕は自分の目で確認したものを否定するほど偏狭ではないつもりですので。
ただ、この年になって、魔法使いやら精霊やら、お伽噺の中の存在を目にするとは思わなかったです。
正直言って戸惑っています。」
どうやら、オークレフトさんは目に映るモノすら否定するような心の狭い人ではないようです。安心しました。
これなら他の子たちを紹介しても問題ありませんね。
「他にもたくさんいますので、後ほど紹介しますね。
そうそう、あなた、この屋敷の噂は耳にしたことございません?」
「この屋敷の噂ですか?
最初に申し上げた通り、僕は人付き合いが苦手で機械好きの人以外には付き合いがないのです。
ですから、巷の噂などにはトンと疎いもので、この屋敷の事も耳にした覚えは無いですね。」
「この屋敷は幽霊屋敷として、王都ではちょっとした有名な屋敷らしいですわ。」
「幽霊も実在するのですか?この屋敷に?」
「幽霊が実在するかどうかは私も知りませんわ。
ですが、この館の中にはいませんね。
ところでこの館、百年以上前に建てられた建物なのですけど信じられます。」
「またまた、ご冗談を。
先程から、僕をからかっているのではございませんか?
どう見ても、築二、三十年でしょう、この建物。」
「それも、この館が幽霊屋敷と言われる所以の一つですわ。
ステラちゃん、新しい住人を紹介するから出てらっしゃい。」
私が呼びかけると廊下の方から、チェックの巻きスカートをはいたステラちゃんがフヨフヨと飛んできました。
「おや、またお仲間が増えたのですか?
珍しい、殿方のお仲間は初めてですね。ロッテの佳い人ですか?
はじめまして、この屋敷の手入れをしているブラウニーのステラです。
幽霊じゃありませんよ。」
握りしめた右手の親指を立てながら、ステラちゃんが自己紹介をしました。
やめなさい、レディーがそんな仕草をするのは、はしたないですよ…。
いくら殿方を連れてくるのが初めてだからと言って、その言い方は如何なものかと思います。
「家憑き精霊、ブラウニーのステラちゃんです。
この国でもブラウニーはメジャーな精霊ですよね。
ステラちゃんが不思議な力で維持してくれたので、この館はこんなに真新しいのです。
丹精込めて手入れしてくれたのに、それを気味悪がって幽霊屋敷なんて失礼な話です。」
「ブラウニーって、確かに子供のころ聞かされるお伽噺には定番の精霊ですが…。
まさか、本当にいたなんて…。
言われてみればこの館の建築様式って最近のモノでは無いです。
じゃあ、本当に百年以上経っているのですか、この建物が…。」
そう呟いたオークレフトさんは呆然としてしまいました。
ブラウニーの業には本当に驚嘆したようです。
ステラちゃんがその気になれば、百年でも一切劣化せずに現状を維持できることは内緒にしておきましょう。
「ロッテ~、馬の準備ができたよ~!」
そうこうしているうちにヴァイスの準備ができたようです。ブリーゼちゃんが呼びに来てくれました。
**********
館の正面玄関前の車寄せにヴァイスに引かれた馬車が停められています。
「この馬車をこの白馬一頭で引くのですか?
凄い力持ちの馬なのですね、通常このタイプのリムジンは二頭、いや四頭立てですよ。」
馬車を目にした途端、オークレフトさんは驚きの声を上げました。
いえ、そんな事くらいで驚いていたら、この後腰を抜かしますよ。
「ヴァイス、馬車など引かせて申し訳ないけど、またよろしくお願いしますね。」
私がヴァイスの首筋をなでながら声を掛けると。
「主のためであれば、我は喜んで馬車を引こうではないか。
その代わり、契約をゆめゆめ忘れるのではないぞ。
あとで我に騎乗して主の股間の感触を我に堪能させるのだぞ。」
このエロ馬、最近性癖を隠さなくなりましたね。
今日は言葉を取り繕うことすらしていません。
「シャルロッテ様、今、その馬…、喋りませんでした?」
オークレフトさん、驚きすぎて声がうまく出ないようです。
私がヴァイスの事を説明しようとすると。
「なんだ、主、その汚らわしい男と二人だけで我が引く馬車に乗ろうというのか?
密室となるこの馬車に。
しかも盛りがついた年回りの男ではないか。
まさか主の番いではあるまいな。
分かっておろうな、主が清き乙女でなくなったら契約は破棄するぞ。」
ええい、このエロ馬は殿方を前にしてなんということ言うのでしょう。少しは言葉を選んでください。
赤面した私は慌ててオークレフトさんを先に馬車に放り込みました。そして、ヴァイスを宥めに掛かります。
オークレフトさんとはそう言う関係ではないことを説明し、渋々オークレフトさんが馬車に乗ることを承諾させました。
帰ってきたらヴァイスの気の済むまで騎乗してあげるという条件を付けられてしまいましたが…。
知りませんでした、ヴァイスがあんなに殿方を警戒していたなんて。
今まで殿方と二人だけでヴァイスの引く馬車に乗ったことはありませんでしたので気づきませんでした。
これからは気を付けることにしましょう。
*20時に続きを投稿します。引き続きお読み頂けたら幸いです。
あの馬使うのなら、わたしも必要だよね!
あの馬の誘導なら任せて~、泥船に乗ったつもりでいてちょうだ~い!」
ポンっと、いきなり私の目の前にブリーゼちゃんが現れます。
そして、いつものように軽い口調でまくし立てました。
いや、それを言うなら大船でしょうに。
でも、ブリーゼちゃんのお気軽な言葉を聞いていると、泥船の方が的を射ているような気がしてきます。
この安請け合い感が半端ないセリフに、そこはかとない不安を感じさせられます。
「じゃあ、ヴァイスの準備をお願いできる?」
「りょ~かい!すぐに用意するね~!」
そして、ブリーゼちゃんはせわしなく飛び去っていきました。
本当にあの子はせっかちなんだから…。
ふと、気が付くと私の目の前ではオークレフトさんが目を丸くしていました。
「シャルロッテ様、今のちっこいのはいったい…。」
「あら、ごめんなさい。まだ言ってませんでしたわね。
今のは私の契約精霊のブリーゼちゃん、風の精霊ですのよ。」
「精霊ですか?あの御伽噺によく出てくる?」
「そうよ、可愛いでしょう。」
「精霊って本当にいたのですか?」
「ご自分で目にしたものが信じられません?」
「いえ、僕は自分の目で確認したものを否定するほど偏狭ではないつもりですので。
ただ、この年になって、魔法使いやら精霊やら、お伽噺の中の存在を目にするとは思わなかったです。
正直言って戸惑っています。」
どうやら、オークレフトさんは目に映るモノすら否定するような心の狭い人ではないようです。安心しました。
これなら他の子たちを紹介しても問題ありませんね。
「他にもたくさんいますので、後ほど紹介しますね。
そうそう、あなた、この屋敷の噂は耳にしたことございません?」
「この屋敷の噂ですか?
最初に申し上げた通り、僕は人付き合いが苦手で機械好きの人以外には付き合いがないのです。
ですから、巷の噂などにはトンと疎いもので、この屋敷の事も耳にした覚えは無いですね。」
「この屋敷は幽霊屋敷として、王都ではちょっとした有名な屋敷らしいですわ。」
「幽霊も実在するのですか?この屋敷に?」
「幽霊が実在するかどうかは私も知りませんわ。
ですが、この館の中にはいませんね。
ところでこの館、百年以上前に建てられた建物なのですけど信じられます。」
「またまた、ご冗談を。
先程から、僕をからかっているのではございませんか?
どう見ても、築二、三十年でしょう、この建物。」
「それも、この館が幽霊屋敷と言われる所以の一つですわ。
ステラちゃん、新しい住人を紹介するから出てらっしゃい。」
私が呼びかけると廊下の方から、チェックの巻きスカートをはいたステラちゃんがフヨフヨと飛んできました。
「おや、またお仲間が増えたのですか?
珍しい、殿方のお仲間は初めてですね。ロッテの佳い人ですか?
はじめまして、この屋敷の手入れをしているブラウニーのステラです。
幽霊じゃありませんよ。」
握りしめた右手の親指を立てながら、ステラちゃんが自己紹介をしました。
やめなさい、レディーがそんな仕草をするのは、はしたないですよ…。
いくら殿方を連れてくるのが初めてだからと言って、その言い方は如何なものかと思います。
「家憑き精霊、ブラウニーのステラちゃんです。
この国でもブラウニーはメジャーな精霊ですよね。
ステラちゃんが不思議な力で維持してくれたので、この館はこんなに真新しいのです。
丹精込めて手入れしてくれたのに、それを気味悪がって幽霊屋敷なんて失礼な話です。」
「ブラウニーって、確かに子供のころ聞かされるお伽噺には定番の精霊ですが…。
まさか、本当にいたなんて…。
言われてみればこの館の建築様式って最近のモノでは無いです。
じゃあ、本当に百年以上経っているのですか、この建物が…。」
そう呟いたオークレフトさんは呆然としてしまいました。
ブラウニーの業には本当に驚嘆したようです。
ステラちゃんがその気になれば、百年でも一切劣化せずに現状を維持できることは内緒にしておきましょう。
「ロッテ~、馬の準備ができたよ~!」
そうこうしているうちにヴァイスの準備ができたようです。ブリーゼちゃんが呼びに来てくれました。
**********
館の正面玄関前の車寄せにヴァイスに引かれた馬車が停められています。
「この馬車をこの白馬一頭で引くのですか?
凄い力持ちの馬なのですね、通常このタイプのリムジンは二頭、いや四頭立てですよ。」
馬車を目にした途端、オークレフトさんは驚きの声を上げました。
いえ、そんな事くらいで驚いていたら、この後腰を抜かしますよ。
「ヴァイス、馬車など引かせて申し訳ないけど、またよろしくお願いしますね。」
私がヴァイスの首筋をなでながら声を掛けると。
「主のためであれば、我は喜んで馬車を引こうではないか。
その代わり、契約をゆめゆめ忘れるのではないぞ。
あとで我に騎乗して主の股間の感触を我に堪能させるのだぞ。」
このエロ馬、最近性癖を隠さなくなりましたね。
今日は言葉を取り繕うことすらしていません。
「シャルロッテ様、今、その馬…、喋りませんでした?」
オークレフトさん、驚きすぎて声がうまく出ないようです。
私がヴァイスの事を説明しようとすると。
「なんだ、主、その汚らわしい男と二人だけで我が引く馬車に乗ろうというのか?
密室となるこの馬車に。
しかも盛りがついた年回りの男ではないか。
まさか主の番いではあるまいな。
分かっておろうな、主が清き乙女でなくなったら契約は破棄するぞ。」
ええい、このエロ馬は殿方を前にしてなんということ言うのでしょう。少しは言葉を選んでください。
赤面した私は慌ててオークレフトさんを先に馬車に放り込みました。そして、ヴァイスを宥めに掛かります。
オークレフトさんとはそう言う関係ではないことを説明し、渋々オークレフトさんが馬車に乗ることを承諾させました。
帰ってきたらヴァイスの気の済むまで騎乗してあげるという条件を付けられてしまいましたが…。
知りませんでした、ヴァイスがあんなに殿方を警戒していたなんて。
今まで殿方と二人だけでヴァイスの引く馬車に乗ったことはありませんでしたので気づきませんでした。
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