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第3章 高原の岩山の上の鳥(?)
第38話 日常への帰還
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あれから、俺たちの方は何事もなく契約期間が経過した。
俺たちが空の民と接触した村に、独立運動勢力の構成員がいたのだ。
そいつは、俺たちが空の民から村人を救ったところを見ており、かつ俺たちが空の民と話をつけて来た事を聞いて、俺たちが政府と契約している間は事を起こさないと約束してくれた。
おかげで、今回は楽な任務であった。適当にハンヴィーでその辺を流して、飯を食って寝るだけでギャラをもらえるなんて夢みたいだぜ。
なんていったって、今までは安全な場所へ行ったはずなのに、そこが戦場になるってことが多かったからな。人を撃たなかった任務は初めてだぜ。
礼と言っては何だが、独立運動勢力の皆さんにはちょっとしたプレゼントをおいてきた。
天空の里を辞去するときに、クマリー様が「こんなもの邪魔だから持っていけ。」と言って、俺に押し付けた荷物、そう政府軍の歩哨が持っていた自動小銃、拳銃、その予備弾倉、無線機である。
絶対に子供には使わせるなときつく言って、置いてきた。
***********
で、俺たちの方は、何事もなかったが、政府軍の方は無事ではなかった。
何が釣れるかなと期待していたが、思った以上の大物が釣れて思わずガッツポーズをとってしまった。
「ねえ、おじさん、いい歳していきなりガッツポーズなんてキモイよ。
何かいいことあったの?」
「この新聞見ろよ、ここ。」
「なになに、軍の中央司令部の将軍が病気により辞任?この記事がどうしたの?」
「ナンシー、お前、俺が基地指令に持っていった箱は何なのか訊いてきただろう?
あれの答えがこれさ、この将軍はもうこの世にはいないよ。
それと、この間のいけ好かない基地司令官も。
基地司令官は急遽異動ってことになっているけどあれは大嘘だよ。」
「どういうこと?」
「俺な、クマリー様が仙桃をくれると言ったとき、仙桃があるならアレもあるんじゃないかと思って訊いたんだ。
お伽話の定番だろう『玉手箱』、案の定あるって言うからもらったんだ。
まあ、ひとつは見本兼俺のお土産で、開けてあるやつだけど。
で、学のあるお前の方が良く知っているだろうけど、この国は賄賂社会だ。
何をやるにも賄賂が必要な腐った国だから、あの基地司令官が出世のために使うと思ったんだ。
あの玉手箱がどこまで大物の手に渡るかと思ってワクワクしてたんだけど、本当に大物だったな。
嫌々、この仕事を請けさせられた腹いせとしては、まあ良い方かな。
さあ、さっさと帰ろうぜ、こんな国にいても胸糞悪いだけだ。」
「おじさん、本当にこの国嫌いだよね。何か個人的な恨みでもあるの?」
「そんなものないよ、俺はこの国に縁はないから。
先回りしてついでに言っておくと、政治的信条も青臭い正義感も無いから。」
「じゃあ、なんで蛇蝎の如く嫌うの?」
「えっ、決まってるだろう、なんとなくムカつくからだよ。」
「そんな、チンピラみたいな理由で軍の高官のタマとった訳?」
**********
俺たちが軍の基地から首都の空港に向かうとき、軍のやつらが苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
やつらのシナリオでは、俺たちが独立運動勢力に対し発砲するというもんだったろうから、何も起こらなくて不満なんだろう。
結局足掛け三日かかって、チューリッヒに戻って来た。
本社へ出向くとおっさんが満面の笑顔で迎えてくれた。
「よく無事に帰ってきてくれた。クライアントからもクレームはなかったしギャラも満額もらえたぞ。
めだたし、めでたしだ。
しかし、今回は本当に穏便に済んだんだな。下手をすれば独立勢力と武力衝突もありうると思っていたんだけど杞憂だったみたいだな。」
「おっさん、これで味を占めるんじゃないぞ。
もうあの国の仕事は取なよ、少なくとも、俺とナンシーは何があっても絶対やらねえからな。」
「悪かったって、もう絶対にあの国の仕事はお前らには頼まんよ。
俺だって、約束を守るかわからんあんな国の仕事はしたくないんだって。
でもよ、業界の柵とかあって絶対に取らないとは言えないんだこれが、だからお前らには回さないとだけ約束しとくわ。」
まあ、これだけ言っておけば、俺たちにあの国の仕事が回ってくることはないだろう。
さて、帰るかな。
「じゃあ、俺はこれで帰るわ。
オフの間はいつもの娼館にいるから、何かあったら声をかけてくれ。
ナンシー、お前何やっているんだ?」
「動画の編集、今度のは一大スペクタクルだよ。空からハーピーが男を捕まえてきて、着陸するや否や足の爪で男の服を引き裂いて交尾を始めるという凄い映像だよ。」
おい、ナンシー、その動画大丈夫か?それって、あの国の軍服がはっきり映っているよな、男の顔も。
俺たちが空の民と接触した村に、独立運動勢力の構成員がいたのだ。
そいつは、俺たちが空の民から村人を救ったところを見ており、かつ俺たちが空の民と話をつけて来た事を聞いて、俺たちが政府と契約している間は事を起こさないと約束してくれた。
おかげで、今回は楽な任務であった。適当にハンヴィーでその辺を流して、飯を食って寝るだけでギャラをもらえるなんて夢みたいだぜ。
なんていったって、今までは安全な場所へ行ったはずなのに、そこが戦場になるってことが多かったからな。人を撃たなかった任務は初めてだぜ。
礼と言っては何だが、独立運動勢力の皆さんにはちょっとしたプレゼントをおいてきた。
天空の里を辞去するときに、クマリー様が「こんなもの邪魔だから持っていけ。」と言って、俺に押し付けた荷物、そう政府軍の歩哨が持っていた自動小銃、拳銃、その予備弾倉、無線機である。
絶対に子供には使わせるなときつく言って、置いてきた。
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で、俺たちの方は、何事もなかったが、政府軍の方は無事ではなかった。
何が釣れるかなと期待していたが、思った以上の大物が釣れて思わずガッツポーズをとってしまった。
「ねえ、おじさん、いい歳していきなりガッツポーズなんてキモイよ。
何かいいことあったの?」
「この新聞見ろよ、ここ。」
「なになに、軍の中央司令部の将軍が病気により辞任?この記事がどうしたの?」
「ナンシー、お前、俺が基地指令に持っていった箱は何なのか訊いてきただろう?
あれの答えがこれさ、この将軍はもうこの世にはいないよ。
それと、この間のいけ好かない基地司令官も。
基地司令官は急遽異動ってことになっているけどあれは大嘘だよ。」
「どういうこと?」
「俺な、クマリー様が仙桃をくれると言ったとき、仙桃があるならアレもあるんじゃないかと思って訊いたんだ。
お伽話の定番だろう『玉手箱』、案の定あるって言うからもらったんだ。
まあ、ひとつは見本兼俺のお土産で、開けてあるやつだけど。
で、学のあるお前の方が良く知っているだろうけど、この国は賄賂社会だ。
何をやるにも賄賂が必要な腐った国だから、あの基地司令官が出世のために使うと思ったんだ。
あの玉手箱がどこまで大物の手に渡るかと思ってワクワクしてたんだけど、本当に大物だったな。
嫌々、この仕事を請けさせられた腹いせとしては、まあ良い方かな。
さあ、さっさと帰ろうぜ、こんな国にいても胸糞悪いだけだ。」
「おじさん、本当にこの国嫌いだよね。何か個人的な恨みでもあるの?」
「そんなものないよ、俺はこの国に縁はないから。
先回りしてついでに言っておくと、政治的信条も青臭い正義感も無いから。」
「じゃあ、なんで蛇蝎の如く嫌うの?」
「えっ、決まってるだろう、なんとなくムカつくからだよ。」
「そんな、チンピラみたいな理由で軍の高官のタマとった訳?」
**********
俺たちが軍の基地から首都の空港に向かうとき、軍のやつらが苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
やつらのシナリオでは、俺たちが独立運動勢力に対し発砲するというもんだったろうから、何も起こらなくて不満なんだろう。
結局足掛け三日かかって、チューリッヒに戻って来た。
本社へ出向くとおっさんが満面の笑顔で迎えてくれた。
「よく無事に帰ってきてくれた。クライアントからもクレームはなかったしギャラも満額もらえたぞ。
めだたし、めでたしだ。
しかし、今回は本当に穏便に済んだんだな。下手をすれば独立勢力と武力衝突もありうると思っていたんだけど杞憂だったみたいだな。」
「おっさん、これで味を占めるんじゃないぞ。
もうあの国の仕事は取なよ、少なくとも、俺とナンシーは何があっても絶対やらねえからな。」
「悪かったって、もう絶対にあの国の仕事はお前らには頼まんよ。
俺だって、約束を守るかわからんあんな国の仕事はしたくないんだって。
でもよ、業界の柵とかあって絶対に取らないとは言えないんだこれが、だからお前らには回さないとだけ約束しとくわ。」
まあ、これだけ言っておけば、俺たちにあの国の仕事が回ってくることはないだろう。
さて、帰るかな。
「じゃあ、俺はこれで帰るわ。
オフの間はいつもの娼館にいるから、何かあったら声をかけてくれ。
ナンシー、お前何やっているんだ?」
「動画の編集、今度のは一大スペクタクルだよ。空からハーピーが男を捕まえてきて、着陸するや否や足の爪で男の服を引き裂いて交尾を始めるという凄い映像だよ。」
おい、ナンシー、その動画大丈夫か?それって、あの国の軍服がはっきり映っているよな、男の顔も。
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