アラフォー傭兵の幻想戦記

アイイロモンペ

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第3章 高原の岩山の上の鳥(?)

第35話 再襲撃

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 昨日の晩は、まさに狂宴だった。
村中のあちこちでところかまわわず交尾する雌鳥のよがり声が朝まで聞こえた。
あれ、こいつら鳥目じゃなかったっけ?

 夜明け前にクマリー様のところ行くと、顔が艶々な空の民が揃っていた。
数が昨日より多い、二百羽くらいいるかこれ?

「何かいやに多いじゃないか今朝は、どうしたんだ?」

「昨日、あれだけの収穫があったので、味を占めおってな。
今日は昨日以上にやる気を出した奴が多いのだ。」

「おいおい、昨日言った様に、今日は警戒が強まっていると思うぞ。
機関砲の弾が中ろうもんならただでは済まないぞ。」

「それなら、機関砲とやらを先に潰せばよいのじゃろう。」

といって、クマリー様は、水瓶に基地の様子を映す。

案の定今日は機関砲の銃座に人が張り付いている。
さすがに鳥相手に、対空ミサイルを持ち出すことはないようだ。

 俺とナンシーは、機関砲相手ではこちらの損害が大きくなり過ぎるのではないかと危惧しているが、クマリー様は気にする様子がない。


     **********


 そして、空が明るくなり始める頃、昨日と同じように四羽一組の空の民たちが、基地上空に飛んでいく。

 そして、全ての空の民が配置につくと、クマリー様の合図で一斉に対空機関砲と歩哨を襲撃した。
歩哨は昨日と同じ連携で何とかなっている。相手も、昨日より警戒しているのだろうが頭上からの不意打ちはちょっとやそっとでは防げないらしい。

 問題の対空機関砲だが、信じられない光景を目にしてしまった。
空の民の一羽が、対空機関砲の砲身を足の爪で掴むと力任せに砲身を捻じ曲げてしまった。
これには、俺もナンシーも呆然とした。なんという馬鹿力なんだ。

 今朝だけで、かなりの機関砲がオシャカにされている。政府軍いい損失だな。

 歩哨が増えていたことと機関砲要員が配置されていたことで、今回確保した兵士えものはおそらく八十人を超えたであろう。
 クマリー様はご満悦だ。

「これを何度か繰り返せば、空の民一人にオス一人をあてがうという宿願が成就するな。」

「いや、ちょっと待て、日が経てば経つほど警戒が厳しくなるぞ。
今日こそ、一旦帰ったら兵士えものを置いて再襲撃に行くべきだ。
今なら兵士の起床時間前なので、簡単に攫い放題だぞ。
それに、襲撃に行った奴ら、みんな艶々のいい顔していたじゃないか。
昨日、あれだけやったんだから欲求不満は十分解消しただろう。」

「そうか、ここまでおぬしらの言うことに間違いはなかったからの。
ここは、従っておくとするか。
では、こちらで獲物を拘束する人手を揃えておくかの。」

 クマリー様が外へ出て何羽にか話しかけると、話を聞いたものが慌ただしく動き回りあっという間に百羽近い空の民が集まった。

 今回はクマリー様の指示通り、襲撃組は里に待機した拘束組に獲物を預けると次々と基地上空に戻って行った。


 まだ、外の騒ぎは兵舎の中に伝わってないようで、兵舎から人が出てくる様子は見られない。

「クマリー様チャンスです。兵舎の窓を破って寝いている兵士を片っ端から攫ってしまいましょう。」

「よし、わかった。」

クマリー様が何か合図を送ったような仕草をすると、襲撃組は一斉の兵舎の窓ガラスを吹き飛ばした。

「「ええぇ!!!」」

 吃驚した。俺もナンシーも、窓ガラスを蹴破るのかと思っていたが、何か衝撃波のようなものでガラスを破壊したのだ。

「おい、あれじゃあ、せっかくの獲物が怪我をするぞ。」

「大丈夫だ。多少体が不自由になったところで、イチモツさえ無事なら問題ないわ。」

 まあ、確かに多少障害がある方が抵抗できなくていいか。
就寝中にガラスの破片を浴びた兵士たちは、抵抗する間もなく次々と空の民に捕らえられた。

 途中襲撃に気が付いて助けに来る兵士もいたが、仲間が捕らえられているため武器の使用ができず、どうすることも出来なかった。

 結果として空の民は無傷で二百名以上の兵士を手に入れることに成功した。

「どうです、兵舎を襲撃してよかったでしょう。空の民がどの位の人口なのかは知りませんが、大分子種が行き渡るのではないですか?」

 何と言っても、昨日今日で三百人近いオスを確保したんだから。

「大成功だ。おぬしらの助言に従ってよかったぞ。十分な収穫があった。
おぬしらの望み通り、今後は地の民の里は襲わないと約束しよう。
それと、今回はこれで仕舞いにする。
おぬしの言うとおり、何度も繰り返せば向こうの警戒も厳しくなるだろう。
何事も欲をかきすぎない方が良い。
オスを全員に行き渡らすことはできなんだが、数人に一人オスをあてがうことができる。」

 そうそう、何事も引き際が肝心だからね。
子種の出が悪くなったらまた攫ってくればいいさ。
喉元過ぎればっていうじゃないか。数年したら警戒も緩むって。



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