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第3章 高原の岩山の上の鳥(?)
第34話 襲撃
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俺とナンシーは、天空の里の長クマリー様と、政府軍の基地襲撃の計画を立てている。
「やっぱり、深夜に寝込みを襲うのが無難じゃない。最初に歩哨を襲撃して攫ってしまって、警戒が途切れた隙に、静かに兵舎を襲撃するの。みんな寝ているから攫いやすいんじゃないかな。」
それが無難だろう。あの基地の歩哨がそんなに多いとは思えんから、夜の視界の効かない中で空の民が頭上から襲えば歩哨を制圧するのは容易いだろう。
「いやダメだ、それは出来ん。」
「なに、夜襲なんて卑怯なことは出来ないって?」
「いや、我々空の民は夜目が効かんのだ。」
ちっ、やっぱり鳥目かよ。
しかし、夜がダメとなると、比較的安全なのは早朝か。昼間は問題外だな、夜と違って人が散ってしまっているし、訓練とかしていると武装しているからな。
自動小銃やら機関銃やら持っている兵隊に丸腰の空の民がかなうわけがない。
幸い今は初夏、朝四時には明るくなるから、兵隊さんたちがまだ寝ている兵舎を襲撃できるんじゃないか。
「クマリー様、空の民は朝はいつごろから行動できるのですか。」
「明るくなりさえすれば、問題ないぞ。日の出と共に行動できるぞ。」
決まりだな。
**********
翌朝、薄明るくなった空に百羽を超える空の民の姿があった。
水瓶に移った基地の様子から、歩哨の数は約五十人といったところか、
ツーマンセルを組んでいるので二十五組くらいか。
こちらもツーマンセルを組ました。歩哨一人に対し頭上から二羽襲撃し、一羽が自動小銃を奪い、もう一羽が歩哨を制圧するよう指示した。
向こうが二人一組だから、こちらは四羽一組になる。
四羽ずつ、雲海へ飛び込んでいく。
ん?今飛び込んだグループが一組の歩哨の上空に現れた。
いったい位置関係はどうなっているんだ。いや、これは、半漁人が突然現れたのと同じ現象か?
次々と配置につく空の民たち、まだ歩哨の方は誰も頭上に気が付いていない。
「ハーピーたち絶対に羽で飛んでないよね。
だって、こいつらホバリングしているはずなのに、羽ばたき一つしてないよ。
あの大きさの羽で、頭上数メートルで羽ばたいたら、羽音か風で絶対気付かれるよ。
ここへ連れて来られた時から変だなと思ってたんだ。
なんで、あの大きさの羽で、自分の体重より重いおじさんが運べるのかって。
ハーピーたちの羽は見せ掛けだけで、実際は何か別の力で飛んでるよ、きっと。」
ナンシー、空の民のことを勝手にハーピーなんて呼んだら、クマリー様が気を悪くするぞ。
それに、何の力で飛んでたっていいじゃないか、敵に気付かれないのなら何よりだぜ。
そして、空の民のグループ全てが、ターゲットの頭上に配置済みとなった。
俺たちは、襲撃が開始されるのを固唾を呑んで見守る。
クマリー様が一瞬何かを指示したように見えた次の瞬間、空の民が一斉に歩哨に押しかかった。
うまい、ちゃんと一羽が歩哨の肩にかかる自動小銃を奪い取った。
音もなく頭上から襲い来る空の民に、歩哨は対応できず小銃を奪い取られていた。
連携も大したもので、一羽が小銃を取り上げるともう一羽が肩をがっちり足の爪で掴む。
更に小銃を取り上げた方は、小銃を羽にかけ足の爪は歩哨の両腕を掴んだ。
拳銃のホルスターに手をかけられないように拘束したんだ。
捕らえた歩哨は、一旦ここへ持ち帰るという、そうだよな下に置いといて逃げられたら困るし、見張りをつけたら襲撃する手が足りなくなるもんな。
次々と歩哨を攫った空の民が戻ってくる、そのまま歩哨を置いて再び基地の襲撃に向かう……
のかと思ったら、その場で歩哨をひん剥いて交尾し始めやがった。
「おい、何やっているんだ。早く兵舎を襲撃しないと起床時刻になってしまうぞ。まだ、雄は足りないんだろう。」
「ああ、無理じゃよ。空の民は一度ああなってしまったら、満足するまで止めはせん。
今年は、雄を早々に処分してしまって、みなご無沙汰だったから我慢できなかったのだろう。
今回はもうお仕舞いだな。次回の襲撃は明朝にでもするか。」
空の民、本能には逆らえないらしい、やっぱり鳥じゃないか。
「じゃあ、今回襲撃に参加しなかった者がたくさんいるだろう。歩哨がいなくなった今が襲撃のチャンスなんだぞ。
今回の襲撃の様子は、監視カメラで撮影されているだろうから、明日から警戒が厳しくなるぞ。」
「そんな事言っても、既に手遅れだよ。村中に男の匂いが漂っているので、そのうち里中の民が集まってきてしまい今回の獲物に群がるだろうよ。
せっかく五十人以上捕まえてきたのに雄どもは何日使い物になることやら。」
空の民は相当欲求不満であったらしい。
それもそうか、何百人もいる里で雄は常に一人だけでは何日に一回順番が回ってくることやら。
今回は、なんと数えたら二十七人もいた、うまくすれば一日一回回ってくるから目の色も変わるか。
クマリー様も大満足の様子だ。
「ケントにナンシー、そなたら良くぞ我らに知恵を貸してくれた。
これだけの雄を里に迎えるのは、本当に何百年振りであろうか。
礼を申すぞ。
今日は宴をひらいて歓待しよう。褒美も取らすゆえ期待しておくとよいぞ。」
うん、それは有り難いが、もう一回ぐらい今日中に襲撃して欲しかった。
「やっぱり、深夜に寝込みを襲うのが無難じゃない。最初に歩哨を襲撃して攫ってしまって、警戒が途切れた隙に、静かに兵舎を襲撃するの。みんな寝ているから攫いやすいんじゃないかな。」
それが無難だろう。あの基地の歩哨がそんなに多いとは思えんから、夜の視界の効かない中で空の民が頭上から襲えば歩哨を制圧するのは容易いだろう。
「いやダメだ、それは出来ん。」
「なに、夜襲なんて卑怯なことは出来ないって?」
「いや、我々空の民は夜目が効かんのだ。」
ちっ、やっぱり鳥目かよ。
しかし、夜がダメとなると、比較的安全なのは早朝か。昼間は問題外だな、夜と違って人が散ってしまっているし、訓練とかしていると武装しているからな。
自動小銃やら機関銃やら持っている兵隊に丸腰の空の民がかなうわけがない。
幸い今は初夏、朝四時には明るくなるから、兵隊さんたちがまだ寝ている兵舎を襲撃できるんじゃないか。
「クマリー様、空の民は朝はいつごろから行動できるのですか。」
「明るくなりさえすれば、問題ないぞ。日の出と共に行動できるぞ。」
決まりだな。
**********
翌朝、薄明るくなった空に百羽を超える空の民の姿があった。
水瓶に移った基地の様子から、歩哨の数は約五十人といったところか、
ツーマンセルを組んでいるので二十五組くらいか。
こちらもツーマンセルを組ました。歩哨一人に対し頭上から二羽襲撃し、一羽が自動小銃を奪い、もう一羽が歩哨を制圧するよう指示した。
向こうが二人一組だから、こちらは四羽一組になる。
四羽ずつ、雲海へ飛び込んでいく。
ん?今飛び込んだグループが一組の歩哨の上空に現れた。
いったい位置関係はどうなっているんだ。いや、これは、半漁人が突然現れたのと同じ現象か?
次々と配置につく空の民たち、まだ歩哨の方は誰も頭上に気が付いていない。
「ハーピーたち絶対に羽で飛んでないよね。
だって、こいつらホバリングしているはずなのに、羽ばたき一つしてないよ。
あの大きさの羽で、頭上数メートルで羽ばたいたら、羽音か風で絶対気付かれるよ。
ここへ連れて来られた時から変だなと思ってたんだ。
なんで、あの大きさの羽で、自分の体重より重いおじさんが運べるのかって。
ハーピーたちの羽は見せ掛けだけで、実際は何か別の力で飛んでるよ、きっと。」
ナンシー、空の民のことを勝手にハーピーなんて呼んだら、クマリー様が気を悪くするぞ。
それに、何の力で飛んでたっていいじゃないか、敵に気付かれないのなら何よりだぜ。
そして、空の民のグループ全てが、ターゲットの頭上に配置済みとなった。
俺たちは、襲撃が開始されるのを固唾を呑んで見守る。
クマリー様が一瞬何かを指示したように見えた次の瞬間、空の民が一斉に歩哨に押しかかった。
うまい、ちゃんと一羽が歩哨の肩にかかる自動小銃を奪い取った。
音もなく頭上から襲い来る空の民に、歩哨は対応できず小銃を奪い取られていた。
連携も大したもので、一羽が小銃を取り上げるともう一羽が肩をがっちり足の爪で掴む。
更に小銃を取り上げた方は、小銃を羽にかけ足の爪は歩哨の両腕を掴んだ。
拳銃のホルスターに手をかけられないように拘束したんだ。
捕らえた歩哨は、一旦ここへ持ち帰るという、そうだよな下に置いといて逃げられたら困るし、見張りをつけたら襲撃する手が足りなくなるもんな。
次々と歩哨を攫った空の民が戻ってくる、そのまま歩哨を置いて再び基地の襲撃に向かう……
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「おい、何やっているんだ。早く兵舎を襲撃しないと起床時刻になってしまうぞ。まだ、雄は足りないんだろう。」
「ああ、無理じゃよ。空の民は一度ああなってしまったら、満足するまで止めはせん。
今年は、雄を早々に処分してしまって、みなご無沙汰だったから我慢できなかったのだろう。
今回はもうお仕舞いだな。次回の襲撃は明朝にでもするか。」
空の民、本能には逆らえないらしい、やっぱり鳥じゃないか。
「じゃあ、今回襲撃に参加しなかった者がたくさんいるだろう。歩哨がいなくなった今が襲撃のチャンスなんだぞ。
今回の襲撃の様子は、監視カメラで撮影されているだろうから、明日から警戒が厳しくなるぞ。」
「そんな事言っても、既に手遅れだよ。村中に男の匂いが漂っているので、そのうち里中の民が集まってきてしまい今回の獲物に群がるだろうよ。
せっかく五十人以上捕まえてきたのに雄どもは何日使い物になることやら。」
空の民は相当欲求不満であったらしい。
それもそうか、何百人もいる里で雄は常に一人だけでは何日に一回順番が回ってくることやら。
今回は、なんと数えたら二十七人もいた、うまくすれば一日一回回ってくるから目の色も変わるか。
クマリー様も大満足の様子だ。
「ケントにナンシー、そなたら良くぞ我らに知恵を貸してくれた。
これだけの雄を里に迎えるのは、本当に何百年振りであろうか。
礼を申すぞ。
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