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第3章 高原の岩山の上の鳥(?)
第33話 天空の里の長クマリー
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鳥にぶら下げられて雲海を抜けると、そこには桃源郷が広がっていた。
柔らかい曲線を描くなだらかな山を背負った平地には、桃のような薄紅色の花を付けた木がそこかしこにあり、優しい香りを漂わせている。
平地の真ん中に聳え立つ巨木には、幾つものツリーハウスが建てられている。
俺とナンシーは、一際大きなツリーハウスの入り口に下ろされた。
**********
「おじさん、ここやっぱり謎空間だよね。だって、相当高地なはずなのに、空気が全然薄くないもん。
それに、柔らかな日差しや快適な湿度も平地のものだし、極め付けに植生が平地のものだよ。」
いや、それ以前に、雲海を突っ切ってきたのに全然濡れていないんだが。
俺とナンシーは、一緒に来た鳥に促されて、大きなツリーハウスの中に入った。
大きなツリーハウスは、中に入ると大きな居間になっており、正面には分厚いクッションに胡坐をかく派手な雌鳥がいた。
その雌鳥の羽は、緑、黄色、オレンジのグラデーションを描き、頭部から胸にかけては美しい翠色の羽毛に覆われている。まるで、雄の孔雀のような色彩だ。
それはそうと、この鳥の足で胡坐がけけるんだなと感心していると、
「おぬしらが、わらわと話がしたいという地の民か?」
と、派手な雌鳥から声がかかった。
「はい、私はケント、こちらはナンシーと申します。」
「わらわは、この天空の里の里長をしているクマリーである。
して、話とはどの様なものであるか。」
「わたしがクマリー様にお目通りを願ったのは、空の民が村人を攫うのをやめていただきたいとお願いするためにございます。
それと、地の民が古よりの盟約を破らざるを得なかったことのご説明と空の民の子孫繁栄のための代案を持ってまいりました。」
「ならん、地の民は古より守り続けられてきた約定をたがえたのだ、その報いを受けねばならぬ。」
「いえ、地の民は約定を破ったのではありません。他者からの妨害によって約定を果たせなかったのです。
報いを受けるのは、地の民ではなく、地の民が約定を果たそうとするのを妨害した者共ではないですか。
今から、その経緯を説明させてもらえないでしょうか。」
俺は、憤るクマリー様を何とか宥めて、事情を話す機会を得た。
「古のときに空の民と約定を結んだ地の民は、今は異民族に支配され、異民族の為政者に従わされています。
盟約の十年目にあたる今年、地の民の里の者は生け贄を差し出す用意をしていたのです。
しかし、異民族の為政者は、突然地の民の里の者に村を明け渡せと要求してきたのです。
有無を言わさず里を追い立てられた地の民は、生け贄を差し出すことは出来なかったのです。
クマリー様たち、空の民が怒りをぶつけるのは、里を追い出された地の民ではなく、異民族の為政者ではないですか。」
「なに、それは誠か?我らが盟約を交わした里の者は、無理やりに追い出されたと申すか?」
「嘘偽りなき、真実にございます。
クマリー様には、重ねてお願い申し上げます。異民族に支配された哀れな地の民からこれ以上何かを奪うのは許してあげて欲しいのです。」
「ふむ、おぬし、我らが子孫繁栄のための策があると申したな、その策が良きものであるなら考えても良いぞ。言うてみろ。」
「は、実は異民族は、地の民を押さえ付けるための兵を数多く地の民の土地に置いています。
兵士ですので、年若く屈強な者が非常に多くいます。
しかも、異民族というのがいくら男を攫っても、湯水の如く涌いて出るほど人が多いのです。
ですから、いくらでも攫い放題です。里の雌一人に若い雄一人を毎年宛がうことが可能です。」
「それは誠か?そんなうまい話があるのか?」
「ええ、誠です。
ただし、注意が必要です。
奴らは、銃という物で武装しています。銃というのは鉄の弾を凄い速さで打ち出すものです。
しかも、瞬き一つする間に何発も撃ち出すものや大きな弾を打ち出すものもあります。
これに当たると、空の民の方も無事ではないと思います。しかし、弾は非常に早いので避けるのは無理かと思います。」
「ふむ、それを無力化すればよいのだな。
風の壁で身を守り、風で弾を逸らし、風の重みで銃を撃てなくすればよいか。
風を操るのは、空の民にとっては容易いことよ。」
そこで、俺達は、空の民の驚愕の技術を目にすることになった。
なんと、水を張った水瓶に地上の様子を映し出すことができるのだ。
ナンシーが飛び上がって喜んでいる。
俺とナンシーは、その水瓶を使って俺たちが空輸された陸軍基地をクマリー様に伝え、襲撃場所として兵舎の場所を教えると共に、固定されている機関砲の銃座、対空ミサイルを注意を要する危険な物として説明した。
クマリー様は、俺達の説明を受けて、機関砲の銃座と対空ミサイル発射装置を破壊すると言っていたが、どうやってやるんだろうか。
俺達は、最初の襲撃が成功するまでここで人質になった。
俺の言葉に嘘があったら、俺は子種供給装置にされ、ナンシーは子鳥の餌だそうだ。
柔らかい曲線を描くなだらかな山を背負った平地には、桃のような薄紅色の花を付けた木がそこかしこにあり、優しい香りを漂わせている。
平地の真ん中に聳え立つ巨木には、幾つものツリーハウスが建てられている。
俺とナンシーは、一際大きなツリーハウスの入り口に下ろされた。
**********
「おじさん、ここやっぱり謎空間だよね。だって、相当高地なはずなのに、空気が全然薄くないもん。
それに、柔らかな日差しや快適な湿度も平地のものだし、極め付けに植生が平地のものだよ。」
いや、それ以前に、雲海を突っ切ってきたのに全然濡れていないんだが。
俺とナンシーは、一緒に来た鳥に促されて、大きなツリーハウスの中に入った。
大きなツリーハウスは、中に入ると大きな居間になっており、正面には分厚いクッションに胡坐をかく派手な雌鳥がいた。
その雌鳥の羽は、緑、黄色、オレンジのグラデーションを描き、頭部から胸にかけては美しい翠色の羽毛に覆われている。まるで、雄の孔雀のような色彩だ。
それはそうと、この鳥の足で胡坐がけけるんだなと感心していると、
「おぬしらが、わらわと話がしたいという地の民か?」
と、派手な雌鳥から声がかかった。
「はい、私はケント、こちらはナンシーと申します。」
「わらわは、この天空の里の里長をしているクマリーである。
して、話とはどの様なものであるか。」
「わたしがクマリー様にお目通りを願ったのは、空の民が村人を攫うのをやめていただきたいとお願いするためにございます。
それと、地の民が古よりの盟約を破らざるを得なかったことのご説明と空の民の子孫繁栄のための代案を持ってまいりました。」
「ならん、地の民は古より守り続けられてきた約定をたがえたのだ、その報いを受けねばならぬ。」
「いえ、地の民は約定を破ったのではありません。他者からの妨害によって約定を果たせなかったのです。
報いを受けるのは、地の民ではなく、地の民が約定を果たそうとするのを妨害した者共ではないですか。
今から、その経緯を説明させてもらえないでしょうか。」
俺は、憤るクマリー様を何とか宥めて、事情を話す機会を得た。
「古のときに空の民と約定を結んだ地の民は、今は異民族に支配され、異民族の為政者に従わされています。
盟約の十年目にあたる今年、地の民の里の者は生け贄を差し出す用意をしていたのです。
しかし、異民族の為政者は、突然地の民の里の者に村を明け渡せと要求してきたのです。
有無を言わさず里を追い立てられた地の民は、生け贄を差し出すことは出来なかったのです。
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「なに、それは誠か?我らが盟約を交わした里の者は、無理やりに追い出されたと申すか?」
「嘘偽りなき、真実にございます。
クマリー様には、重ねてお願い申し上げます。異民族に支配された哀れな地の民からこれ以上何かを奪うのは許してあげて欲しいのです。」
「ふむ、おぬし、我らが子孫繁栄のための策があると申したな、その策が良きものであるなら考えても良いぞ。言うてみろ。」
「は、実は異民族は、地の民を押さえ付けるための兵を数多く地の民の土地に置いています。
兵士ですので、年若く屈強な者が非常に多くいます。
しかも、異民族というのがいくら男を攫っても、湯水の如く涌いて出るほど人が多いのです。
ですから、いくらでも攫い放題です。里の雌一人に若い雄一人を毎年宛がうことが可能です。」
「それは誠か?そんなうまい話があるのか?」
「ええ、誠です。
ただし、注意が必要です。
奴らは、銃という物で武装しています。銃というのは鉄の弾を凄い速さで打ち出すものです。
しかも、瞬き一つする間に何発も撃ち出すものや大きな弾を打ち出すものもあります。
これに当たると、空の民の方も無事ではないと思います。しかし、弾は非常に早いので避けるのは無理かと思います。」
「ふむ、それを無力化すればよいのだな。
風の壁で身を守り、風で弾を逸らし、風の重みで銃を撃てなくすればよいか。
風を操るのは、空の民にとっては容易いことよ。」
そこで、俺達は、空の民の驚愕の技術を目にすることになった。
なんと、水を張った水瓶に地上の様子を映し出すことができるのだ。
ナンシーが飛び上がって喜んでいる。
俺とナンシーは、その水瓶を使って俺たちが空輸された陸軍基地をクマリー様に伝え、襲撃場所として兵舎の場所を教えると共に、固定されている機関砲の銃座、対空ミサイルを注意を要する危険な物として説明した。
クマリー様は、俺達の説明を受けて、機関砲の銃座と対空ミサイル発射装置を破壊すると言っていたが、どうやってやるんだろうか。
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