アラフォー傭兵の幻想戦記

アイイロモンペ

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第3章 高原の岩山の上の鳥(?)

第28話 命令拒否

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 今、俺はリンマートクヴァイ通りから丘側に狭い路地を入ったところにある馴染みの娼館にいる。 
もう既に一週間、この娼館に篭りっ放しだ。

 前回のマラッカ海峡のミッションで、多額の余禄があったから、奮発してこの店の綺麗どころを二人買って三Pプレイを楽しんでいた。

 ちなみのナンシーは、何処かに男漁りに行った。今頃パリか、ロンドンか大都市で遊んでいることだろう、良いね若い子はフットワークが軽くて。

 そんな自堕落な日が十日ほど過ぎた頃、社長のハインツから呼び出しの電話があった。
次の仕事が決まったらしい。


     **********


 数日後、本社の社長室に行くと、社長とナンシーが既に揃っていた。

「悪りい、おっさん、遅れたかな。」

「いや大丈夫、五分前だ。相変わらず時間には几帳面だな。」

「ごめん、おじさん、私、空港から直接来たもんだから早く着きすぎたんだ。
だから、少し社長に話し相手になってもらってたんだ。」

 そうか、遅刻したんじゃなければいいんだ。

 
 俺とナンシーが揃ったので、社長から新しい仕事の説明があった。

「悪りい、おっさん、俺は今回の仕事はパスだ。」

「私も、この仕事は気が乗らないな。」


 社長から聞いた仕事の概要はこうだ、今回の仕事はヒマラヤ山脈の近くの高原が現場だ。
 クライアントは、その高原を自国の領土だという超大国、仕事の内容はその高原の独立を目指す独立運動勢力の取り締まりだ。
 
 俺は、二十五年間血なまぐさい戦場を渡り歩いて、反政府武装組織の鎮圧なんかもやってきた。
俺たち傭兵にとっちゃどっちに正義があろうと関係ないし、あんなものはどちらにも自分なりの正義があるんだろう。
 傭兵なんてものはリスクに見合う金がもらえれば良いんだ。
 だから、理屈じゃないんだ。ただ単に、いやなものは嫌なんだ。

「珍しいな、お前が仕事を拒否するなんて、初めてじゃないか?」

「おっさん、俺はそのクライアントの仕事だけは請けたくないぜ。
その国の反日感情といえば最悪じゃねえか。
終始背中に注意しながら仕事するなんて真っ平ごめんだぜ。」

「私もそう、あの国って貿易摩擦でステイツとの関係最悪じゃない。
ステイツ人の私がどの面下げて行けるっての?」

「そんなこといわれても、もう契約しちまったしな。困ったなあ、他に適任がいないんだよ。」

「うちの会社には、あの国出身の奴が結構いたと思うがダメなんか?」

「少し考えればわかるだろう。あの国を出て傭兵なんかやっている連中が、あの国のため働くわけないだろう。
下手すれば、独立運動側に寝返るわ。」

「そりゃあ、道理だ。
 ところで、会社も大きくなったんだから少しは仕事を選べよ。
 ステイツの退役軍人をごっそり再雇用している上に、そのコネで最新の武器を流してもらってるんだろう。
 傭兵なんだから特定の国に組しないのはわかるけど、少しは旗色を見せたらどうだ。
あの国に利することをしたらステイツに睨まれるぞ。
西側の仕事だけでも、十分社員を食わせていけるだろう。
 とにかく、あの国はやばい、俺はパスだ。」

「私もおじさんに同じ、パスね。」


「ちくしょう、お前らに断られたら、俺はどうしたら良いんだ。
とんだ貧乏くじ引いちまったぜ。」

「いや、俺たちの国籍考えたら断られる可能性を考えるべきだろ。
むしろ、俺たちなんか、最初に候補から外されるのが普通だと思うが。」


「社長、私みたいな新米が言うことでもないですが、独立運動勢力と私たちに武力衝突を起こさせて、私たちに鎮圧させた上で責任を私たちに擦り付けるぐらい平気でやりますよ、あの国は。
 独立運動勢力を多数死傷させた傭兵が、日本人とステイツ人ってさぞマスコミが喜ぶよね。」

「うっ、そんなのわかっているよ。だから引き受けたくなかったんだ。」

 じゃあ、引き受けるなよと言いたかったが、この依頼は他社も全然引き受けなくて、大人の事情で社長が渋々引き受けさせられたらしい。

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