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第2章 南海の珊瑚の森の女王様
第27話 無事帰ってきました、俺の心以外は
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「おじさん、まだ賢者モードなの?元気だしなよ。」
いや、俺四十年以上生きてきたけど、こんな羞恥プレーは初めてだぞ。
もう心が折れたよ。早く元いた場所に帰りたい。
「数千人の大観衆の前で、公開オナニーする男。真の勇者だね。
スマフォで録画しておいたよ最高画質で、後で見せてあげるね。」
やめてくれ、俺に止めをさすつもりか。
その晩、俺は女王から、めでたく無事に種が付いたと聞かされた。
数ヵ月後には、俺と女王の娘が孵化するらしい。早いな、さすが魚だ。
女王からゆっくりして行けと引き止められたが、俺たちは明日帰ることにした。
やだよ、ここでゆっくりしてたら、百年くらい過ぎているような気がする。
浦島太郎は真っ平ごめんだ。
今回は、俺とナンシーで、大きな水瓶いっぱいに詰められた金貨と巨大な桃色珊瑚を一本を報酬として貰った。
ナンシーは、壷に入った金貨を一枚一枚手にとって見ていた。
「おじさん、これ大航海時代のヨーロッパの国々の金貨だよ。あのガレオン船と同じく、こっちの世界に流れ着いたものみたい。
これなら、持って帰って換金できるよ。枚数が凄くいっぱいあるから今度こそ大金持ちだよ。」
それは、良かった。あれだけの羞恥プレーをやれされてただ働きじゃ、流石に俺もキレるぞ。
**********
そして今、俺たちはMk.V特殊作戦艇の後部甲板で、港まで見送りに来た女王達に手を振っている。
金貨の水瓶は何とかキャビンに持ち込んだが、庭木サイズの桃色珊瑚は後部甲板に寝かせてロープで固定してある。
物々しい機関砲と機関銃の銃座の間に、巨大な珊瑚が鎮座しているのはなんともシュールな光景である。
手を振る間に俺たちは、濃い霧につつまれる、この霧が現世と隠世を結ぶトンネルの役割をしているのだろう。
霧が晴れると、俺たちは見覚えのない港の入り口にいた。
港といっても、港湾施設など全くない小さな漁村の港のような佇まいだ。
全長十五メートルぐらいの漁船らしき船が、三隻ほど停泊している。
マラッカ海峡に結構ある有人の小島の一つだろう。
「おじさん、やばい、あの港の人たち全員武装しているよ。ほらこっちに気付いた。
こっちに来るみたい、小銃持って船に乗り込んでいるよ。」
俺がのんびり構えていたら、ナンシーからの注意が入った。
なんか、漁村じゃなくて海賊のねぐらだったようだ。
「ナンシー、戦闘準備!!」
俺は、カールグスタフ無反動砲を取りにキャビンに入り、多目的榴弾を装填して戻って来た。
「相手が泊まっていれば、俺でも中るんだよ!」
と無反動砲の引き金を弾く。
打ち出された多目的流弾は出港準備をしていた船のキャビンに吸い込まれ、爆炎をあげた。
まぐれ当たりにしても良い所に中ったな、あれなら行動不能だ。
「おじさん、ナイス、後はこっちでやるから、おじさんは操艇して。」
俺は、ナンシーに言われるまま、船を港に近づける。
ナンシーは、何の容赦もなく港にいる武装勢力に向けてM三八をぶっ放した。
おい、それ対物兵器だよな、隣のMⅡ重機関銃で良いんじゃないか。
「いや、港に積んだある木箱の後ろに隠れて応戦している奴がいるから、木箱ごと打ち抜けば良いと思ってね。」
それに中ると死体が悲惨なことになるんだが……
どのくらい経っただろうか。武装勢力からの発砲はなくなった。
俺は、支局にヤンに連絡をいれ、沿岸警備隊をこちらに回すよう伝えて欲しいと依頼した。
ヤンは、ここ数日俺達が音信不通になったのを心配してくれていたようだ。
沿岸警備隊の所在地から離れていたのだろうか、俺たちは海上で三時間ほど待たされた。
現れたのは、この間と同じメンバーだった。
経緯を説明すると沿岸警備隊のメンバーは、港に上陸して行った。
陸上から響いてくる銃声を聞きながら再び待たされること数時間、無事海賊のねぐらを制圧したらしい。
警備隊の隊長らしき人物から、礼を言われ、事情聴取書類のカーボンコピーにサインを貰った。
どうもあの女王、最後に俺達に手柄をくれたらしい。粋なことしやがる。
**********
褒美に貰った金貨、船から降ろすのに難儀することとなった。
水瓶いっぱいなんて重くて降ろせんぞ。
結局ヤンに小ぶりのジェラルミンケースを用意してもらい移し替えて船から降ろした。
例の巨大な桃色珊瑚、マレーシアで中華系の商人に売り払った。桃色珊瑚は中国で人気なんだって。
こんな巨大な物見たことないといわれ、信じられない金額で買い取っていった。
ナンシーはホクホク顔だった。
海賊二グループ潰すという十分な働きをしたので、残りの期間はのんびり過ごした。
クライアントとの契約期間の経過を待って俺たちはチューリッヒに戻った。
ちなみに、ナンシーは例の動画を大手動画サイトに投稿したらしい。
あまりに見事なできに、『実写』か『CG』かで、ネットの世界では大論争となったらしい。
ただ、あの動画を、実際にあった出来事だと思った人は殆どいなかったようだ。
ナンシーが悔しがっていた。
ちょっと待て、俺のプライバシーはどこへ行った。
俺の顔にモザイクはかけたんだろうな。
第二章 おわり
いや、俺四十年以上生きてきたけど、こんな羞恥プレーは初めてだぞ。
もう心が折れたよ。早く元いた場所に帰りたい。
「数千人の大観衆の前で、公開オナニーする男。真の勇者だね。
スマフォで録画しておいたよ最高画質で、後で見せてあげるね。」
やめてくれ、俺に止めをさすつもりか。
その晩、俺は女王から、めでたく無事に種が付いたと聞かされた。
数ヵ月後には、俺と女王の娘が孵化するらしい。早いな、さすが魚だ。
女王からゆっくりして行けと引き止められたが、俺たちは明日帰ることにした。
やだよ、ここでゆっくりしてたら、百年くらい過ぎているような気がする。
浦島太郎は真っ平ごめんだ。
今回は、俺とナンシーで、大きな水瓶いっぱいに詰められた金貨と巨大な桃色珊瑚を一本を報酬として貰った。
ナンシーは、壷に入った金貨を一枚一枚手にとって見ていた。
「おじさん、これ大航海時代のヨーロッパの国々の金貨だよ。あのガレオン船と同じく、こっちの世界に流れ着いたものみたい。
これなら、持って帰って換金できるよ。枚数が凄くいっぱいあるから今度こそ大金持ちだよ。」
それは、良かった。あれだけの羞恥プレーをやれされてただ働きじゃ、流石に俺もキレるぞ。
**********
そして今、俺たちはMk.V特殊作戦艇の後部甲板で、港まで見送りに来た女王達に手を振っている。
金貨の水瓶は何とかキャビンに持ち込んだが、庭木サイズの桃色珊瑚は後部甲板に寝かせてロープで固定してある。
物々しい機関砲と機関銃の銃座の間に、巨大な珊瑚が鎮座しているのはなんともシュールな光景である。
手を振る間に俺たちは、濃い霧につつまれる、この霧が現世と隠世を結ぶトンネルの役割をしているのだろう。
霧が晴れると、俺たちは見覚えのない港の入り口にいた。
港といっても、港湾施設など全くない小さな漁村の港のような佇まいだ。
全長十五メートルぐらいの漁船らしき船が、三隻ほど停泊している。
マラッカ海峡に結構ある有人の小島の一つだろう。
「おじさん、やばい、あの港の人たち全員武装しているよ。ほらこっちに気付いた。
こっちに来るみたい、小銃持って船に乗り込んでいるよ。」
俺がのんびり構えていたら、ナンシーからの注意が入った。
なんか、漁村じゃなくて海賊のねぐらだったようだ。
「ナンシー、戦闘準備!!」
俺は、カールグスタフ無反動砲を取りにキャビンに入り、多目的榴弾を装填して戻って来た。
「相手が泊まっていれば、俺でも中るんだよ!」
と無反動砲の引き金を弾く。
打ち出された多目的流弾は出港準備をしていた船のキャビンに吸い込まれ、爆炎をあげた。
まぐれ当たりにしても良い所に中ったな、あれなら行動不能だ。
「おじさん、ナイス、後はこっちでやるから、おじさんは操艇して。」
俺は、ナンシーに言われるまま、船を港に近づける。
ナンシーは、何の容赦もなく港にいる武装勢力に向けてM三八をぶっ放した。
おい、それ対物兵器だよな、隣のMⅡ重機関銃で良いんじゃないか。
「いや、港に積んだある木箱の後ろに隠れて応戦している奴がいるから、木箱ごと打ち抜けば良いと思ってね。」
それに中ると死体が悲惨なことになるんだが……
どのくらい経っただろうか。武装勢力からの発砲はなくなった。
俺は、支局にヤンに連絡をいれ、沿岸警備隊をこちらに回すよう伝えて欲しいと依頼した。
ヤンは、ここ数日俺達が音信不通になったのを心配してくれていたようだ。
沿岸警備隊の所在地から離れていたのだろうか、俺たちは海上で三時間ほど待たされた。
現れたのは、この間と同じメンバーだった。
経緯を説明すると沿岸警備隊のメンバーは、港に上陸して行った。
陸上から響いてくる銃声を聞きながら再び待たされること数時間、無事海賊のねぐらを制圧したらしい。
警備隊の隊長らしき人物から、礼を言われ、事情聴取書類のカーボンコピーにサインを貰った。
どうもあの女王、最後に俺達に手柄をくれたらしい。粋なことしやがる。
**********
褒美に貰った金貨、船から降ろすのに難儀することとなった。
水瓶いっぱいなんて重くて降ろせんぞ。
結局ヤンに小ぶりのジェラルミンケースを用意してもらい移し替えて船から降ろした。
例の巨大な桃色珊瑚、マレーシアで中華系の商人に売り払った。桃色珊瑚は中国で人気なんだって。
こんな巨大な物見たことないといわれ、信じられない金額で買い取っていった。
ナンシーはホクホク顔だった。
海賊二グループ潰すという十分な働きをしたので、残りの期間はのんびり過ごした。
クライアントとの契約期間の経過を待って俺たちはチューリッヒに戻った。
ちなみに、ナンシーは例の動画を大手動画サイトに投稿したらしい。
あまりに見事なできに、『実写』か『CG』かで、ネットの世界では大論争となったらしい。
ただ、あの動画を、実際にあった出来事だと思った人は殆どいなかったようだ。
ナンシーが悔しがっていた。
ちょっと待て、俺のプライバシーはどこへ行った。
俺の顔にモザイクはかけたんだろうな。
第二章 おわり
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