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第2章 南海の珊瑚の森の女王様
第26話 決着、そして悲しい結末
しおりを挟む頭上からの投石を逃れて距離をとった俺たちは、ガレオン船の砲弾が届かない位置で一休みしていた。
「ナンシー、半魚人も頭使うんだな。」
「銃座にぶつからなくて良かったよ、本当に。M三八なんかが壊れたら大損害だよ。」
さて、これからどうするかな?
「なあ、ナンシー、やっぱり昨日みたいに対戦車弾頭撃ち込んで、火薬に引火するのを期待するか?」
「そうだね、だとしたら狙うのは砲門の横当たり?多分、火薬樽をおいてあると思うけど。
あとは、火薬庫ってどこにあるんだろう?
喫水線狙って浸水を誘うのとどちらが効果的なんだろうね。」
「いや、俺は船のことは全く分からねえから。
大体木造船があんなに丈夫だとは知らなかったぞ。側舷の板の厚みってどのくらいだ。」
「あれがどのくらいか分からないけど。以前イギリスに旅行に行った時に見た十九世紀の戦列艦は厚さ六十センチあるオーク材を使っているって聞いたよ。」
「そんなにあるのか。まあ、どこを狙えば良いかは俺には分からんからナンシーに任せるよ。
それより、対戦車弾頭ってあと何発ある?」
「まだ、結構あるよ。大丈夫、弾切れになることはないと思う。」
それじゃ、いってみますか。
俺は、Mk.V特殊作戦艇を加速させガレオン船に近づく、ガレオン船の砲門が火を吹き、少し遅れてこちらの周囲いに水柱が立つ。
更に近づくと、今度は甲板から半魚人どもがマスケット銃を撃ってくる。
こちらは、四百メートルまで接近し減速する。
ナンシーがキャビンから甲板に出て、無反動砲の引き金を弾いた。
打ち出された対戦車弾頭は、ガレオン船の側舷に吸い込まれ、……
えっ?
ガレオン船の側舷で大爆発が起こった。
「おーい、ナンシー、あれ何が起こったんだ?」
「えーっと、ギャグ漫画みたいな奇跡が起こった?
砲門の脇辺りを狙ったんだけど、ほら海の上で足元が揺れるじゃない。
少し照準が狂って、たまたま火薬の装填が終わった大砲に命中したみたい。
それが爆発して、周りの火薬に引火したみたいな?」
ナンシーが説明している間にも、次々に火薬に引火しているようで、爆音と共に黒煙が上がる。
慌てたサハギンたちが次々と甲板から海に飛び込んでいるのが見える。
このまま見ていれば沈みそうだな。
「なあ、ナンシー、お前撃ち足りないんじゃないか。
海に飛び込んだサハギン共に二十五ミリをプレゼントしてやったらどうだ?」
「いいけど、もっと近づかないとダメだよ。何か、色々飛んできて危ないんだけど近づく?」
「いや、おまえが気が済むんだったらいいぞ。無駄玉撃つ必要もないしな。」
俺たちは、ガレオン船が沈んでいくのをボーっと見ていた。
船が沈むのって結構時間がかかるんだな、知らなかったよ。
ボロボロになったガレオン船が沈みきる頃には、その辺に飛び込んだはずのサハギンの姿もなかった。また、謎空間に帰還したんだな、きっと。
サハギンのガレオン船が沈むのは、港からも見えていたようで港はもうお祭り騒ぎだった。
もちろん、女王も俺達を出迎えに来ていた。
「おお、勇者達よ。良くぞ憎っくきサハギン共の船を沈めてくれた。
その一部始終しかと見届けたぞ。今日は盛大な宴を催そうぞ。」
***********
宴は、飲めや歌えの大騒ぎであった。
俺の横に座ったミクズメ女王が、
「本当に大儀であった勇者殿、ついては十分な褒美を取らせるが、一つこちらに願いがあるのだが聞いてくれぬか?」
「俺にできることであれば、多少のことは。」
「実はな、サハギンを撃退してくれた勇者の血を後世に伝えたいので、我に勇者殿の子種を恵んでもらえぬか?」
「おじさん、ラッキーだね。今度こそ素人童貞卒業だね。」
うるさいぞ、ナンシー。でも、俺も期待に胸を膨らませて、返答した。
「俺でよければ、喜んでお相手いたします。」
「そうか、それは重畳、では準備があるので明日よろしく頼むぞ。」
準備というのは体のお手入れでもするのかな。
そうか、初めてお相手する素人は女王様か、今まで苦労した甲斐があったてなもんだ。
***********
翌日、祝賀式典の会場、女王が宣言した。
「皆のものよく聞け、この度次代の女王となる我の娘の子種を勇者殿から頂戴することになった。
これから、末永く勇者の血は我々一族の中に留まり、受け継がれていくことになろう。」
「女王陛下万歳!」、「勇者様万歳!」
女王の宣言を聞いた観衆から歓声が上がった。
「さあ、勇者殿、皆の祝福も貰った。ここに、子種を降り注ぐのだ。」
俺の目の前に、『いくら』のような魚卵が入った桶が置かれた。
「何ですかこれは?」
一応聞いたよ。薄々落ちは見えてるけど。
「我の卵よ。昨晩産卵したのじゃ。さあ、ここへ子種を注ぐのだ。」
「うわっ、公開処刑じゃない。」
うるせー、ナンシー。俺にこれだけの公衆の面前でマスかけっていうのか?
「えーと、女王様、あとで人目のないところで振り掛けるってのはダメですか。」
「これは、女王の伴侶となるものを民に広く知らしめる大切な儀式じゃ、ここで皆に見せてもらわねば示しがつかぬ。」
そうですか。結局魚じゃねえか。
それから、俺は公衆の面前でマスをかいた。しかも、量が足らんといわれて三回も。
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