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第2章 南海の珊瑚の森の女王様
第21話 霧の中の敵
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昨日はあれから、クアラルンプール支局に海賊を一組潰した旨の連絡を入れたら、沿岸警備隊の連中が駆けつけてきた。
沿岸警備隊の連中は、海賊船の周囲に浮いている穴だらけの海賊の死体に若干ひいていたが、俺たちへの対応はすこぶる丁寧で好感が持てた。
連中は、俺たちに対する事情聴取のほか、死体の回収や沈みかかっている海賊船の調査などの現場検証にかれこれ、三時間ほどかけて帰っていった。
ちなみに、怒り狂うナンシーを何とかなだめて、五名ほど海賊を生け捕りにした。
今回は、ナンシー好みのイケメンがいなかったので、素直に沿岸警備隊に引き渡していた。
海賊の尋問は沿岸警備隊が行い、アジトが分かったらそっちも沿岸警備隊が対応するという。
今回の件については、ここから先の手柄は沿岸警備隊に譲れということだな。
俺たちに異存はなかったので、事情聴取と現場検証の書類のカーボンコピーを貰い、そこに現場責任者のサインをして貰った。
それを支局に提出して仕事をこなしたというアリバイは成立だな。後は、支局の方でクライアントに報告する書類を勝手に作るだろう。
**********
ということで、俺たちは今日もマラッカ海峡をあてどなく彷徨っていた。
「おじさん、こんなにのんびりしていて良いのかね?」
「大丈夫だろ。とりあえず、一グループ潰したんだ、契約不履行でギャラが貰えないという事はないぞ。」
「そうだけどさ、何か撃ち足りないんだよね。もうちょっと、派手に暴れたいんだけど。」
「何言ってんだ、昨日AKの斉射食らって泣きべそかいていた癖に。」
「いや、あれはおじさんのせいでしょう。あんなに不用意に近づくから。」
まあ、のんびりできるのは良いことじゃないか。傭兵なんてものは、生きてて何ぼさ。
お、珍しいな霧か、朝靄っていう時間でもないのに。
「おじさん、なんか霧が出てきたよ。周りに船いない?大丈夫?
おじさん、やばい、やばい、なんか霧が急に濃くなっている!!
陸に戻ったほうが良いんじゃない?」
ナンシーが慌てている。でも突然霧が濃くなってきたぞ、もう視界十メートルもないんじゃないか。
「無理だ、この辺りは岩礁が多くてとても霧の中で動かす自信はねえぞ。
この霧の中、この岩礁の多い場所を移動する船もないさ、衝突の心配はないだろう。」
俺がそう言ったとき、フロントに大きな衝撃音と多少の衝撃を感じた。
音の割りに、体に感じた衝撃は大きくなかったので、速度が遅く質量がさして大きくないものだったのだろう。
すると、次々と何かがぶち当たる音がした。
船にダメージは全く内容ではあるが、地味に鬱陶しい。
「おじさん、これ、なんかの攻撃を受けているんじゃないの?」
なに、また矢でも射掛けられたか?そのとき、後部甲板に何か転がる音がした。
ナンシーはやおら立ち上がると、席を離れ後部甲板へ向かった。
「おい、ナンシー危ないぞ!!」
俺の静止を聞かずナンシーは、後部甲板へ出ると何かを拾い素早く戻って来た。
「おじさん、これみて!!」
「銛?」
ナンシーが拾ってきたのは銛だった。そう、海に潜って魚を突くやつ。
何者か判らないが、俺たちは今銛で攻撃を受けているらしい。
ほんのわずかな時間、俺が思考停止していると右舷に衝撃が走った。
ナンシーが床に転がっていた。
何がが接舷したようだ。こんな霧の中で接舷してくるなんて俺みたいな素人ではないな。
「ナンシー、敵さん、乗り込んでくるぞ。戦闘準備!!」
俺は、ナンシーに指示を出すと愛用のミニミ軽機関銃を抱えて後部甲板に向かった。
霧でよく見えないが、何者かが後部甲板に乗り込んできたのを見た俺は、すぐさまスタングレネードを一つ後部甲板へ向けて放り投げた。
強烈な光と音が後部甲板を包み込んだ。
光が止んだ後、後部甲板を窺うと魚が転がっていた。
全長が二メートルぐらいある巨大な魚が、七、八匹甲板に転がっていた。
まぶたがないので、スタングレネードを直視してしまったようでピクピクと痙攣している。
「おじさん、大丈夫?」
「ナンシー、甲板はいいから右舷に接舷している敵に、二十五ミリ弾を思いっきりぶち込んでくれ。」
ナンシーは、俺の指示を聞くとすぐにM三八機関砲に取り付き、接舷している船?に向けて二十五ミリ弾をばら撒いた。
その間、おれは、甲板に転がる魚にミニミで止めをさして歩いたが、最初はびっくりした。
こいつら、魚の癖してミニミの五.五六ミリ弾を弾き返しやがる。
しようがないので、一発ずつ丁寧に眼球を狙って打ち抜いていった。
さすがに、まぶたのない目は、頑丈ではなかった。
ナンシーは、しばらく二十五ミリ弾を撒いていたが、程なくして敵は退却していった。
「おじさん、あれなんだったんだろうね?
え、それ魚?
私の目が変じゃなければ、そいつら手と足があるんだけど?」
「おう、見間違いじゃないぞ。
間違いなく手も足もついている。
ついでにいえば、こいつらの鱗がすげえ硬くて銃弾弾くんだ。
俺、こんな魚初めて見たよ。」
「それって、もう魚じゃないよね?
それに、そいつら銛もって攻撃してきたよ。
半漁人?サハギン?なんかそんな感じのファンタジー生物じゃない?」
「これ、そこの者、このたびはサハギン族の襲撃を撃退してくれ感謝するぞ。」
気が付くと中華風?の装いのやたら風格のある美女が、ナンシーの後ろに立っていた。
沿岸警備隊の連中は、海賊船の周囲に浮いている穴だらけの海賊の死体に若干ひいていたが、俺たちへの対応はすこぶる丁寧で好感が持てた。
連中は、俺たちに対する事情聴取のほか、死体の回収や沈みかかっている海賊船の調査などの現場検証にかれこれ、三時間ほどかけて帰っていった。
ちなみに、怒り狂うナンシーを何とかなだめて、五名ほど海賊を生け捕りにした。
今回は、ナンシー好みのイケメンがいなかったので、素直に沿岸警備隊に引き渡していた。
海賊の尋問は沿岸警備隊が行い、アジトが分かったらそっちも沿岸警備隊が対応するという。
今回の件については、ここから先の手柄は沿岸警備隊に譲れということだな。
俺たちに異存はなかったので、事情聴取と現場検証の書類のカーボンコピーを貰い、そこに現場責任者のサインをして貰った。
それを支局に提出して仕事をこなしたというアリバイは成立だな。後は、支局の方でクライアントに報告する書類を勝手に作るだろう。
**********
ということで、俺たちは今日もマラッカ海峡をあてどなく彷徨っていた。
「おじさん、こんなにのんびりしていて良いのかね?」
「大丈夫だろ。とりあえず、一グループ潰したんだ、契約不履行でギャラが貰えないという事はないぞ。」
「そうだけどさ、何か撃ち足りないんだよね。もうちょっと、派手に暴れたいんだけど。」
「何言ってんだ、昨日AKの斉射食らって泣きべそかいていた癖に。」
「いや、あれはおじさんのせいでしょう。あんなに不用意に近づくから。」
まあ、のんびりできるのは良いことじゃないか。傭兵なんてものは、生きてて何ぼさ。
お、珍しいな霧か、朝靄っていう時間でもないのに。
「おじさん、なんか霧が出てきたよ。周りに船いない?大丈夫?
おじさん、やばい、やばい、なんか霧が急に濃くなっている!!
陸に戻ったほうが良いんじゃない?」
ナンシーが慌てている。でも突然霧が濃くなってきたぞ、もう視界十メートルもないんじゃないか。
「無理だ、この辺りは岩礁が多くてとても霧の中で動かす自信はねえぞ。
この霧の中、この岩礁の多い場所を移動する船もないさ、衝突の心配はないだろう。」
俺がそう言ったとき、フロントに大きな衝撃音と多少の衝撃を感じた。
音の割りに、体に感じた衝撃は大きくなかったので、速度が遅く質量がさして大きくないものだったのだろう。
すると、次々と何かがぶち当たる音がした。
船にダメージは全く内容ではあるが、地味に鬱陶しい。
「おじさん、これ、なんかの攻撃を受けているんじゃないの?」
なに、また矢でも射掛けられたか?そのとき、後部甲板に何か転がる音がした。
ナンシーはやおら立ち上がると、席を離れ後部甲板へ向かった。
「おい、ナンシー危ないぞ!!」
俺の静止を聞かずナンシーは、後部甲板へ出ると何かを拾い素早く戻って来た。
「おじさん、これみて!!」
「銛?」
ナンシーが拾ってきたのは銛だった。そう、海に潜って魚を突くやつ。
何者か判らないが、俺たちは今銛で攻撃を受けているらしい。
ほんのわずかな時間、俺が思考停止していると右舷に衝撃が走った。
ナンシーが床に転がっていた。
何がが接舷したようだ。こんな霧の中で接舷してくるなんて俺みたいな素人ではないな。
「ナンシー、敵さん、乗り込んでくるぞ。戦闘準備!!」
俺は、ナンシーに指示を出すと愛用のミニミ軽機関銃を抱えて後部甲板に向かった。
霧でよく見えないが、何者かが後部甲板に乗り込んできたのを見た俺は、すぐさまスタングレネードを一つ後部甲板へ向けて放り投げた。
強烈な光と音が後部甲板を包み込んだ。
光が止んだ後、後部甲板を窺うと魚が転がっていた。
全長が二メートルぐらいある巨大な魚が、七、八匹甲板に転がっていた。
まぶたがないので、スタングレネードを直視してしまったようでピクピクと痙攣している。
「おじさん、大丈夫?」
「ナンシー、甲板はいいから右舷に接舷している敵に、二十五ミリ弾を思いっきりぶち込んでくれ。」
ナンシーは、俺の指示を聞くとすぐにM三八機関砲に取り付き、接舷している船?に向けて二十五ミリ弾をばら撒いた。
その間、おれは、甲板に転がる魚にミニミで止めをさして歩いたが、最初はびっくりした。
こいつら、魚の癖してミニミの五.五六ミリ弾を弾き返しやがる。
しようがないので、一発ずつ丁寧に眼球を狙って打ち抜いていった。
さすがに、まぶたのない目は、頑丈ではなかった。
ナンシーは、しばらく二十五ミリ弾を撒いていたが、程なくして敵は退却していった。
「おじさん、あれなんだったんだろうね?
え、それ魚?
私の目が変じゃなければ、そいつら手と足があるんだけど?」
「おう、見間違いじゃないぞ。
間違いなく手も足もついている。
ついでにいえば、こいつらの鱗がすげえ硬くて銃弾弾くんだ。
俺、こんな魚初めて見たよ。」
「それって、もう魚じゃないよね?
それに、そいつら銛もって攻撃してきたよ。
半漁人?サハギン?なんかそんな感じのファンタジー生物じゃない?」
「これ、そこの者、このたびはサハギン族の襲撃を撃退してくれ感謝するぞ。」
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