アラフォー傭兵の幻想戦記

アイイロモンペ

文字の大きさ
上 下
17 / 40
第1章 砂漠の中の大森林のお姫様

第17話 帰投

しおりを挟む
 戴冠式の翌日、俺は一旦帰らねばならないことをクラリスに申し出た。
クラリスはあからさまに不満顔であったが、宰相のとりなしにより、渋々納得してくれた。
 結局俺とクラリスの婚姻の儀は、一年後に行われることとなった。
ちなみに、大公クラリスが式典の中で俺との婚姻を宣言してしまったため、既定事実になっており俺に拒否権はないそうだ。

 クラリスは、いつ戻ってきても良いんですよとか、すぐに戻ってきてくださいとか言っていたが、俺にも都合があるのですぐには戻れないと言っておいた。
 そしたら、宰相に婚姻の儀の準備があるので、遅くても十ヵ月後までには戻って来て欲しいと言われた。



     ***********


 そして、今日、俺たちはベイルートに帰投する。
俺は、婚約者である大公クラリス一世とクラリスの母方の祖父であるノルデンシュタット候に見送られてL-ATVに乗り、宮殿前を出発した。
 宮殿の正門前に差し掛かると若いイケメン貴族がズラッと道の両側に整列していた。
何事かと思えば、ナンシーに向かって敬礼をしているではないか。
俺よりはるかに見送りが多いんだが。


 ナンシーによると彼らはこの七日ほどで夜のお相手をした面々であった。
帰り道に、その男共の性癖やナニの具合を事細かに説明された。
やめてくれ、俺には男のナニの具合を聞いて喜ぶ性癖はないんだ。


 シューネヴァルトを出発して二時間ほどで森を抜けて、見覚えのある砂漠の道に復帰した。
森を抜けて六時間、俺たちは無事ベイルート支局に帰投したのである。



 いつも嫌味を言うメタボ支局長は、今回はご機嫌であった。
支局長としては、最悪、派遣隊は全滅も覚悟していたらしい。
それが、俺達の迅速な対応により人的損害がゼロで済んだのだから、嬉しくない訳がない。

 俺たちは、そのままチューリッヒに戻って別命あるまで待機だそうで、支局長に見送られ空港へ向かった。



     **********


 チューリッヒに戻った俺は、貴金属商に恩賞でもらった金貨を一枚持ち込んだ。
価値を鑑定してもらうためだ。店員が言うには、見たことない金貨なので成分を検査するのに少し時間が欲しいと言われた。

 急いで金が要るわけでもないし、俺は了承し金貨を預けて帰ってきた。
それから、久しぶりにリンマートクヴァイ通りの近くにある行きつけの娼館で、二日ほど引き篭っていたら、貴金属商から連絡があった。

 連絡を受けて貴金属商に行くと個室に通された。
 何事かと思っていると、支配人と名乗る男が出てきて、説明を始めた。


 俺が持ち込んだ金貨は、今までに四枚しか市場に出てなく、どこの国のものか分かっていない。
地金としての価値は、八百ドルくらいである。
過去のオークションでは、百万ドルで落札された実績がある。
歴史的希少価値に加えて、科学的希少価値がある。
それは、通常金貨は金が非常に柔らかく磨耗しやすいため金含有量を九割位の合金にして強度を高めているとのこと。
対して俺が持ち込んだ金貨は金含有量が九十九%もあるが、他のどの金貨よりも硬く耐摩耗性に優れるらしい。
一%の金属がポイントなのだが、これが何か分からない未知の金属らしい。
らしいというのは、いかなる測定器具も受け付けないため、本当に分からないらしい。

という事だ。


 俺は、もう一枚財布から取り出し、二枚をオークションにかけるようお願いした。
 もちろん、俺の分とナンシーの分だ。
俺は、ナンシーに連絡を入れ、大騒ぎになるから金貨を換金するのは止めておけと言い、俺とナンシーの分として二枚だけオークションに出品したと伝えた。


 そうそう、シューネヴァルト滞在中、ナンシーが街のあちこちをスマホで撮影し、そのデータを専門機関に持ち込んだが、地球上のどこの都市にも該当する場所がないといって物議をかもしている。
 ある学者は、よく出来た合成写真だといってナンシーの怒りを買っていた。



第一章 終わり


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

処理中です...