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第1章 砂漠の中の大森林のお姫様
第17話 帰投
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戴冠式の翌日、俺は一旦帰らねばならないことをクラリスに申し出た。
クラリスはあからさまに不満顔であったが、宰相のとりなしにより、渋々納得してくれた。
結局俺とクラリスの婚姻の儀は、一年後に行われることとなった。
ちなみに、大公クラリスが式典の中で俺との婚姻を宣言してしまったため、既定事実になっており俺に拒否権はないそうだ。
クラリスは、いつ戻ってきても良いんですよとか、すぐに戻ってきてくださいとか言っていたが、俺にも都合があるのですぐには戻れないと言っておいた。
そしたら、宰相に婚姻の儀の準備があるので、遅くても十ヵ月後までには戻って来て欲しいと言われた。
***********
そして、今日、俺たちはベイルートに帰投する。
俺は、婚約者である大公クラリス一世とクラリスの母方の祖父であるノルデンシュタット候に見送られてL-ATVに乗り、宮殿前を出発した。
宮殿の正門前に差し掛かると若いイケメン貴族がズラッと道の両側に整列していた。
何事かと思えば、ナンシーに向かって敬礼をしているではないか。
俺よりはるかに見送りが多いんだが。
ナンシーによると彼らはこの七日ほどで夜のお相手をした面々であった。
帰り道に、その男共の性癖やナニの具合を事細かに説明された。
やめてくれ、俺には男のナニの具合を聞いて喜ぶ性癖はないんだ。
シューネヴァルトを出発して二時間ほどで森を抜けて、見覚えのある砂漠の道に復帰した。
森を抜けて六時間、俺たちは無事ベイルート支局に帰投したのである。
いつも嫌味を言うメタボ支局長は、今回はご機嫌であった。
支局長としては、最悪、派遣隊は全滅も覚悟していたらしい。
それが、俺達の迅速な対応により人的損害がゼロで済んだのだから、嬉しくない訳がない。
俺たちは、そのままチューリッヒに戻って別命あるまで待機だそうで、支局長に見送られ空港へ向かった。
**********
チューリッヒに戻った俺は、貴金属商に恩賞でもらった金貨を一枚持ち込んだ。
価値を鑑定してもらうためだ。店員が言うには、見たことない金貨なので成分を検査するのに少し時間が欲しいと言われた。
急いで金が要るわけでもないし、俺は了承し金貨を預けて帰ってきた。
それから、久しぶりにリンマートクヴァイ通りの近くにある行きつけの娼館で、二日ほど引き篭っていたら、貴金属商から連絡があった。
連絡を受けて貴金属商に行くと個室に通された。
何事かと思っていると、支配人と名乗る男が出てきて、説明を始めた。
俺が持ち込んだ金貨は、今までに四枚しか市場に出てなく、どこの国のものか分かっていない。
地金としての価値は、八百ドルくらいである。
過去のオークションでは、百万ドルで落札された実績がある。
歴史的希少価値に加えて、科学的希少価値がある。
それは、通常金貨は金が非常に柔らかく磨耗しやすいため金含有量を九割位の合金にして強度を高めているとのこと。
対して俺が持ち込んだ金貨は金含有量が九十九%もあるが、他のどの金貨よりも硬く耐摩耗性に優れるらしい。
一%の金属がポイントなのだが、これが何か分からない未知の金属らしい。
らしいというのは、いかなる測定器具も受け付けないため、本当に分からないらしい。
という事だ。
俺は、もう一枚財布から取り出し、二枚をオークションにかけるようお願いした。
もちろん、俺の分とナンシーの分だ。
俺は、ナンシーに連絡を入れ、大騒ぎになるから金貨を換金するのは止めておけと言い、俺とナンシーの分として二枚だけオークションに出品したと伝えた。
そうそう、シューネヴァルト滞在中、ナンシーが街のあちこちをスマホで撮影し、そのデータを専門機関に持ち込んだが、地球上のどこの都市にも該当する場所がないといって物議をかもしている。
ある学者は、よく出来た合成写真だといってナンシーの怒りを買っていた。
第一章 終わり
クラリスはあからさまに不満顔であったが、宰相のとりなしにより、渋々納得してくれた。
結局俺とクラリスの婚姻の儀は、一年後に行われることとなった。
ちなみに、大公クラリスが式典の中で俺との婚姻を宣言してしまったため、既定事実になっており俺に拒否権はないそうだ。
クラリスは、いつ戻ってきても良いんですよとか、すぐに戻ってきてくださいとか言っていたが、俺にも都合があるのですぐには戻れないと言っておいた。
そしたら、宰相に婚姻の儀の準備があるので、遅くても十ヵ月後までには戻って来て欲しいと言われた。
***********
そして、今日、俺たちはベイルートに帰投する。
俺は、婚約者である大公クラリス一世とクラリスの母方の祖父であるノルデンシュタット候に見送られてL-ATVに乗り、宮殿前を出発した。
宮殿の正門前に差し掛かると若いイケメン貴族がズラッと道の両側に整列していた。
何事かと思えば、ナンシーに向かって敬礼をしているではないか。
俺よりはるかに見送りが多いんだが。
ナンシーによると彼らはこの七日ほどで夜のお相手をした面々であった。
帰り道に、その男共の性癖やナニの具合を事細かに説明された。
やめてくれ、俺には男のナニの具合を聞いて喜ぶ性癖はないんだ。
シューネヴァルトを出発して二時間ほどで森を抜けて、見覚えのある砂漠の道に復帰した。
森を抜けて六時間、俺たちは無事ベイルート支局に帰投したのである。
いつも嫌味を言うメタボ支局長は、今回はご機嫌であった。
支局長としては、最悪、派遣隊は全滅も覚悟していたらしい。
それが、俺達の迅速な対応により人的損害がゼロで済んだのだから、嬉しくない訳がない。
俺たちは、そのままチューリッヒに戻って別命あるまで待機だそうで、支局長に見送られ空港へ向かった。
**********
チューリッヒに戻った俺は、貴金属商に恩賞でもらった金貨を一枚持ち込んだ。
価値を鑑定してもらうためだ。店員が言うには、見たことない金貨なので成分を検査するのに少し時間が欲しいと言われた。
急いで金が要るわけでもないし、俺は了承し金貨を預けて帰ってきた。
それから、久しぶりにリンマートクヴァイ通りの近くにある行きつけの娼館で、二日ほど引き篭っていたら、貴金属商から連絡があった。
連絡を受けて貴金属商に行くと個室に通された。
何事かと思っていると、支配人と名乗る男が出てきて、説明を始めた。
俺が持ち込んだ金貨は、今までに四枚しか市場に出てなく、どこの国のものか分かっていない。
地金としての価値は、八百ドルくらいである。
過去のオークションでは、百万ドルで落札された実績がある。
歴史的希少価値に加えて、科学的希少価値がある。
それは、通常金貨は金が非常に柔らかく磨耗しやすいため金含有量を九割位の合金にして強度を高めているとのこと。
対して俺が持ち込んだ金貨は金含有量が九十九%もあるが、他のどの金貨よりも硬く耐摩耗性に優れるらしい。
一%の金属がポイントなのだが、これが何か分からない未知の金属らしい。
らしいというのは、いかなる測定器具も受け付けないため、本当に分からないらしい。
という事だ。
俺は、もう一枚財布から取り出し、二枚をオークションにかけるようお願いした。
もちろん、俺の分とナンシーの分だ。
俺は、ナンシーに連絡を入れ、大騒ぎになるから金貨を換金するのは止めておけと言い、俺とナンシーの分として二枚だけオークションに出品したと伝えた。
そうそう、シューネヴァルト滞在中、ナンシーが街のあちこちをスマホで撮影し、そのデータを専門機関に持ち込んだが、地球上のどこの都市にも該当する場所がないといって物議をかもしている。
ある学者は、よく出来た合成写真だといってナンシーの怒りを買っていた。
第一章 終わり
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