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第1章 砂漠の中の大森林のお姫様
第14話 公都シューネヴァルト へ
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ナンシーは、捕虜三人を一晩中搾り取ったらしい。
ラッキーなことに、捕虜の中に公爵の腰巾着の息子がおったので詳しい情報が得られた。
それによると、公爵方が動かした兵員は総勢で五百人。
ただし、大公家が保有する正規軍は、公爵には指揮権がないと公爵に組しなかった。
そのため、金で雇われたならず者の集まりで、公爵方の貴族かその子息が指揮官を勤めている。
総勢五百人のうち三百人をここノルデンシュタット攻略に差し向けたため、公都に残っている軍勢は二百人ほどということ。
三侯爵は全く動いていない、公爵の配下に入るよう命令を出したが鼻で笑われたとの事。
どうやらクラリスの叔父である公爵は人望がなく、腰巾着の不平貴族だけがお仲間のようである。
**********
反乱軍のあまりのしょぼさに、とっとと公都へ乗り込んで鎮圧してしまおうと思った。
クラリス姫に、公都までの距離を聞くと、馬車を使うと夜明け前に出て日没前に着く感じだという。
いや、夜明けも日没も季節によって違うでしょう。大体十三時間くらいか?
馬車って結構遅いんだよな、時速六キロくらいだっけ。
だとすると、八十キロくらいか。悪路だということを勘案しても三時間でつくか?
俺は、クラリス姫に言った。
「早いとこ決着をつけたいんで、俺たちだけで行く。
ついては、姫さんに旗印として着いてきて欲しい。」
するとノルデンシュタット候が、
「わしも連れて行ってくれ。姫様一人行かせるのは心配だし、大公妃のことも気になる。」
というので、ノルデンシュタット候も連れて行くことになった。
**********
ノルデンシュタット候が同行する事になったのは良いのだけど、
「なんだこれは、馬がいないのに走っとるぞ。凄い早いな、景色が飛んでいくようだ。」
と子供のようなはしゃぎようである。窓にかぶりついて外を見ている。
この人は自動車に乗ったことがないんだろうか?
そういえば、クラリス姫は全然はしゃがなかったよな。
ノルデンシュタットを出て二時間、そろそろ前回クラリス姫を拾ったあたりに差し掛かったとき、
クラリス姫が、「あっ、そこを左に曲がってください。」と言った。
気付くとそこには、左に曲がる道があった。往路では気が付かなかった。
幅員六メートルくらいある結構立派な道なのに、ナビにも載っていなかった。
分岐から約一時間、ナビに載っていない道を進むと目の前に、美しい城郭都市が現れた。
街の規模は、ノルデンシュタットよりは二回りくらい大きいか、街の大きさはおそらくネルトリンゲン位ではないか。
城門の前には、柄の悪い男が二人、やる気なさそうに立っていた。
俺が、L-ATVから降りて、男のほうに近づくと
「兄ちゃん、この門は閉鎖中だ。悪いけど街には入れないからとっとと戻りな。」
と言う。
いつになったら開放されるのかを聞いても公爵様の命令なんでわからないと言われた。
また、この門の鍵はかかっているのかと聞いたら、門兵が鍵を開けたまま何処かへ行ってしまったので、鍵は開いていると言っていた。
この男口が軽いな。
俺がL-ATVへ向けてハンドサインを送ると、ナンシーが身を乗り出して、ハンドキャノンの引き金を弾いた。
響いた銃声は二回、二発の銃弾は正確に二人の門番の頭を打ち抜いた。
俺は、城門にL-ATVのフロントグリルを押し付けるとゆっくりとアクセルを踏み込んだ。
城門にかかる圧力が増すに連れ、徐々に城門が押し開かれる。
門の向こうから、「門が開いているぞ」、「門番は何しているんだ」とか慌てている声が聞こえるがもう遅い。
俺は、慣性が付いて少しずつ門の動きが滑らかに成って来たのに乗じ、思いっきりアクセルを踏み込んだ。
門の向こう側で慌てていただけの愚か者を跳ね飛ばして、門が勢いよく開いた。
俺は、門の内側にたむろっていた者たちに、「お前らは公爵の手の者か?」と尋ねた。
「貴様こそ何者だ。門を破って進入するとは怪しい奴。」
まあ、確かに傍から見れば俺は怪しい奴だな。
でもな、この門は普通ならこの時間は開いているものなんだぞ。
「俺か?俺は、クラリス姫の依頼で、反逆者であるシューネヴァルト公爵を討ち取りに来た者だ。
死にたい奴はかかって来い。」
「こいつは面白れえや。公爵様のお膝元に公爵を討伐に一人で来ただとよ。
身の程知らずにも程があるぜ。」
で、どうなんだ?こいつら敵でいいのか?
「おい、お前ら、公爵の手先と考えていいのか?」
「そうさ、俺たちゃ公爵様の下で手柄を立てて、貴族に取り立ててもらうんだ。」
こんなごろつきが貴族になった日にはこの国は終わりだな。
まあ、敵認定確定ということで。
「ナンシー、俺ちょっと降りて、害虫駆除してくるわ。」
俺はL-ATVを降りると、目の前の男の額にハンドキャノンの銃口を押し付けて、そのまま引き金を引いた。
「ダーン」という銃声と共に俺の肩に衝撃が走る、だから嫌なんだよ大口径銃は。
男は、脳漿を撒き散らしながら後へ仰け反ってそのまま倒れた。
連中が狼狽しているところに、すかさずミニミ軽機関銃の弾丸をばら撒く、二十人ほどがたむろっていた城門の内側のスペースは瞬く間に片付いた。
その後も、大公の宮殿に向かって進む道すがら、街の中の広場になっているところには公爵の手下のゴロツキ共が配置されていたが、俺たちにとっては足止めにすらならなかった。
**********
そしていま、俺たちは L-ATVを降りて大公の宮殿にいる。今まさに、正門前の門番を締め上げたところだ。
門番のゴロツキによると、公爵は玉座の間にいるそうだ。
これから宮殿に突入する訳だが、クラリス姫になるべく物を壊さないで欲しいと泣きそうな顔で言われたので、今回の制圧はナンシーに任せることにした。
もちろん宮殿内にL-ATVで突入なんてこともしない。
だって、俺は基本銃弾を撒き散らすから、物を壊さないなんて器用なことは出来ないし。
俺の役割は、曲がり角に来ると進行方向にスタングレネードを投げるだけ。
そこをナンシーが制圧する。
それを繰り返すこと何回かで、俺たちは玉座の間にたどり着いた。
俺は、扉をそっと開き、催涙弾を五つほど床に転がして扉を閉めた。
扉から、数メートル離れてしばらく待っていると、突然玉座の間の扉が開いて、数人の男が転がり出てきた。
ナンシーは一発も銃弾を無駄にすることなく、全員を一撃で沈めた。
おれは、その場でクラリス姫を呼んで、倒れている三人の首実検をしてもらった。
そのうち、一際肥え太った醜い男が、クラリス姫の叔父でもあるシューネヴァルト公爵であった。
これにてあっけなく、シューネヴァルト公爵による反乱は終結したが、ノルデンシュタット候は公爵は生きて捕らえて欲しかったといっていた。
知らんよそんなこと、それならそうと先に言っておいてくれないと。
ラッキーなことに、捕虜の中に公爵の腰巾着の息子がおったので詳しい情報が得られた。
それによると、公爵方が動かした兵員は総勢で五百人。
ただし、大公家が保有する正規軍は、公爵には指揮権がないと公爵に組しなかった。
そのため、金で雇われたならず者の集まりで、公爵方の貴族かその子息が指揮官を勤めている。
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三侯爵は全く動いていない、公爵の配下に入るよう命令を出したが鼻で笑われたとの事。
どうやらクラリスの叔父である公爵は人望がなく、腰巾着の不平貴族だけがお仲間のようである。
**********
反乱軍のあまりのしょぼさに、とっとと公都へ乗り込んで鎮圧してしまおうと思った。
クラリス姫に、公都までの距離を聞くと、馬車を使うと夜明け前に出て日没前に着く感じだという。
いや、夜明けも日没も季節によって違うでしょう。大体十三時間くらいか?
馬車って結構遅いんだよな、時速六キロくらいだっけ。
だとすると、八十キロくらいか。悪路だということを勘案しても三時間でつくか?
俺は、クラリス姫に言った。
「早いとこ決着をつけたいんで、俺たちだけで行く。
ついては、姫さんに旗印として着いてきて欲しい。」
するとノルデンシュタット候が、
「わしも連れて行ってくれ。姫様一人行かせるのは心配だし、大公妃のことも気になる。」
というので、ノルデンシュタット候も連れて行くことになった。
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ノルデンシュタット候が同行する事になったのは良いのだけど、
「なんだこれは、馬がいないのに走っとるぞ。凄い早いな、景色が飛んでいくようだ。」
と子供のようなはしゃぎようである。窓にかぶりついて外を見ている。
この人は自動車に乗ったことがないんだろうか?
そういえば、クラリス姫は全然はしゃがなかったよな。
ノルデンシュタットを出て二時間、そろそろ前回クラリス姫を拾ったあたりに差し掛かったとき、
クラリス姫が、「あっ、そこを左に曲がってください。」と言った。
気付くとそこには、左に曲がる道があった。往路では気が付かなかった。
幅員六メートルくらいある結構立派な道なのに、ナビにも載っていなかった。
分岐から約一時間、ナビに載っていない道を進むと目の前に、美しい城郭都市が現れた。
街の規模は、ノルデンシュタットよりは二回りくらい大きいか、街の大きさはおそらくネルトリンゲン位ではないか。
城門の前には、柄の悪い男が二人、やる気なさそうに立っていた。
俺が、L-ATVから降りて、男のほうに近づくと
「兄ちゃん、この門は閉鎖中だ。悪いけど街には入れないからとっとと戻りな。」
と言う。
いつになったら開放されるのかを聞いても公爵様の命令なんでわからないと言われた。
また、この門の鍵はかかっているのかと聞いたら、門兵が鍵を開けたまま何処かへ行ってしまったので、鍵は開いていると言っていた。
この男口が軽いな。
俺がL-ATVへ向けてハンドサインを送ると、ナンシーが身を乗り出して、ハンドキャノンの引き金を弾いた。
響いた銃声は二回、二発の銃弾は正確に二人の門番の頭を打ち抜いた。
俺は、城門にL-ATVのフロントグリルを押し付けるとゆっくりとアクセルを踏み込んだ。
城門にかかる圧力が増すに連れ、徐々に城門が押し開かれる。
門の向こうから、「門が開いているぞ」、「門番は何しているんだ」とか慌てている声が聞こえるがもう遅い。
俺は、慣性が付いて少しずつ門の動きが滑らかに成って来たのに乗じ、思いっきりアクセルを踏み込んだ。
門の向こう側で慌てていただけの愚か者を跳ね飛ばして、門が勢いよく開いた。
俺は、門の内側にたむろっていた者たちに、「お前らは公爵の手の者か?」と尋ねた。
「貴様こそ何者だ。門を破って進入するとは怪しい奴。」
まあ、確かに傍から見れば俺は怪しい奴だな。
でもな、この門は普通ならこの時間は開いているものなんだぞ。
「俺か?俺は、クラリス姫の依頼で、反逆者であるシューネヴァルト公爵を討ち取りに来た者だ。
死にたい奴はかかって来い。」
「こいつは面白れえや。公爵様のお膝元に公爵を討伐に一人で来ただとよ。
身の程知らずにも程があるぜ。」
で、どうなんだ?こいつら敵でいいのか?
「おい、お前ら、公爵の手先と考えていいのか?」
「そうさ、俺たちゃ公爵様の下で手柄を立てて、貴族に取り立ててもらうんだ。」
こんなごろつきが貴族になった日にはこの国は終わりだな。
まあ、敵認定確定ということで。
「ナンシー、俺ちょっと降りて、害虫駆除してくるわ。」
俺はL-ATVを降りると、目の前の男の額にハンドキャノンの銃口を押し付けて、そのまま引き金を引いた。
「ダーン」という銃声と共に俺の肩に衝撃が走る、だから嫌なんだよ大口径銃は。
男は、脳漿を撒き散らしながら後へ仰け反ってそのまま倒れた。
連中が狼狽しているところに、すかさずミニミ軽機関銃の弾丸をばら撒く、二十人ほどがたむろっていた城門の内側のスペースは瞬く間に片付いた。
その後も、大公の宮殿に向かって進む道すがら、街の中の広場になっているところには公爵の手下のゴロツキ共が配置されていたが、俺たちにとっては足止めにすらならなかった。
**********
そしていま、俺たちは L-ATVを降りて大公の宮殿にいる。今まさに、正門前の門番を締め上げたところだ。
門番のゴロツキによると、公爵は玉座の間にいるそうだ。
これから宮殿に突入する訳だが、クラリス姫になるべく物を壊さないで欲しいと泣きそうな顔で言われたので、今回の制圧はナンシーに任せることにした。
もちろん宮殿内にL-ATVで突入なんてこともしない。
だって、俺は基本銃弾を撒き散らすから、物を壊さないなんて器用なことは出来ないし。
俺の役割は、曲がり角に来ると進行方向にスタングレネードを投げるだけ。
そこをナンシーが制圧する。
それを繰り返すこと何回かで、俺たちは玉座の間にたどり着いた。
俺は、扉をそっと開き、催涙弾を五つほど床に転がして扉を閉めた。
扉から、数メートル離れてしばらく待っていると、突然玉座の間の扉が開いて、数人の男が転がり出てきた。
ナンシーは一発も銃弾を無駄にすることなく、全員を一撃で沈めた。
おれは、その場でクラリス姫を呼んで、倒れている三人の首実検をしてもらった。
そのうち、一際肥え太った醜い男が、クラリス姫の叔父でもあるシューネヴァルト公爵であった。
これにてあっけなく、シューネヴァルト公爵による反乱は終結したが、ノルデンシュタット候は公爵は生きて捕らえて欲しかったといっていた。
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