アラフォー傭兵の幻想戦記

アイイロモンペ

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第1章 砂漠の中の大森林のお姫様

第7話 ノルデンシュタット門前殲滅戦

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商人の下から車へ戻った俺は、姫さんには向かって

「おい、姫さん。
ここまで送れば、約束は果たしたと思っていいんだよな。
もうこれ以上付き合っている暇はないんだ。
ところで、門の前にいる奴らな、姫さんがここの侯爵に誘拐されたと言っているらしい。
姫さんを返さなければ、反逆者として討伐するんだと。
姫さん、あそこにいる奴ら知ってるか?」

と尋ねた。
城門をじっと見つめた姫さんは、

「あ、あそこに居るのは、名前は忘れましたけど叔父様の腰巾着の一人ですわ。
確か男爵だったと思いますが、非常に横柄で素行の悪い人と言う記憶しかございません。」

「そうか、それでな、始めから言っている通り俺達には時間がないんだ。
で、ここで姫さんを降ろすと、姫さんはあの素行の悪い男爵に捕まる可能性が高い。
もし、姫さんがあいつらを皆殺しにしてもいいというなら、姫さんを城門の中まで送ることができる。
生け捕りにしろとか、交渉しろとか手間暇かかることを言うなら、俺達はここでサヨナラだ。
皆殺しにするなら十分もあれば足りるからな。
どうする姫さん。」

「正直あまり殺してしまうのは気が進まないのですが、ここに置き去りにされるは困りますね。
まあ、あの選民意識が強い男爵を生かしておいても碌な事がないでしょうから目を瞑ります。
やっちゃって下さい。」

「だ、そうだが、ナンシーもそれでいいか?」

「ええ、大丈夫だよー。ここまで、全然弾薬を使っていないから、ここで多少使っても平気。
往路で、もっと頻繁に戦闘があることを想定して弾薬の支給を受けているから。」



 クラリス姫の許可も下りたし、さくっと殺っちゃいますかね。
テロを相手にいきなり実戦投入するんでなく、こんな温い戦場であれを試してみるかな。
今回、多勢に無勢となる状況を危惧して、初めてサーモバリック弾頭を用意した。
 テロとの戦いの前にあいつらに使ってみるか?
いや、下手したら城門も吹き飛ばしてしまうか。やっぱりなしだな。

 
 サーモバリック弾頭を使うのを諦めた俺はナンシーに、

「無反動砲とクレイモアとミニミでいいな。
ナンシー、無反動のフレシェット弾って持ってきていたよな。
あと、クレイモアを出してくれ。
フレシェット弾で、こちらに注意を引いて、向かって来た所をクレイモアで仕留める。
クレイモアを抜けてきた奴にはミニミだな。
全身鎧じゃない奴らは、フレシェット弾で無力化できるだろうしな。」


 相手の武装は、貴族の指揮官とその騎士らしき奴らは馬に騎乗して、全身鎧を着ている。
こいつ等は、馬上槍っていう槍を得物にしている。
 歩兵は三十人以上いるけど破城槌と投石器の係りで、城門が開いたら突撃するんだろうな。
歩兵の装備は、チェーンメイルに小楯と片手剣か。
残りは、弓兵で十人位、チェーンメイルにクロスボウを装備している。


 俺は、L-ATVを引き込み道路の端に止めると、カールグスタフM4にフレシェット弾を装填し、商人達の十メートル程前へ出てクレイモアを置くと起爆コードと起爆スイッチを接続し後ろに下がった。
 そして、商人たちに俺達の後方両脇に下がるように指示した。
 間違っても俺達の真後ろに来ないこと、俺達より前へ出ないこと何度も言い含めた。


じゃあ、お祭りを始めるとしますか。


 城門の前に布陣している連中は、背中は全く無警戒で、俺達のことなど気付いてもいない。
俺は、後ろに誰もいないことを確認すると、無言でカールグスタフM4の引き金を弾いた。

 ダーン

 大きな爆発音と共に、高速で打ち出された千百本の小さな矢は、五十メートル先にいる兵の全てを飲み込むくらいの範囲に広がり、兵達を蹂躙した。
 元々、フレシェット弾は殺傷能力は高くは無いが、当たり所が悪ければ死ぬし、高速で飛来する矢は当たれば行動不能となる。
 

 男爵の兵が布陣していた辺りは、血の海と化しており、無事だったのは全身鎧の五人と運よく破城槌や投石器が盾代わりになる位置に居た者十人程度だった。
 死亡した者はいないようだが、大部分の者は体に複数の矢を受けて蹲って苦しんでいた。
 全身鎧の五人は無事だったものの、馬が矢にやられ全員が落馬していた。
全身鎧の五人の戦意は未だ失われておらず、剣を抜いてこちらに向かってきた。
無事だった歩兵は、周囲の惨状を見てあからさまに戦意を喪失していたが、騎士に叱咤されて渋々騎士に付き従った。


 もうあとは、ミニミ軽機関銃だけでいいかなと思ったが、五.五六ミリの弾丸で全身鎧の鉄板を打ち抜けるか分からないため、予定通りクレイモアを使うことにした。

 しかし、重い全身鎧を着た騎士たちの歩みは遅くなかなか近づいてこない。
漸くクレイモアの手前十メートルくらいに近づいたとき、俺は起爆装置を押した。

ダーン

爆発音と共に白煙が上がった。

そして、敵に向かって七百個の鉄球が、高速高密度で浴びせられる。
全身鎧の連中は、すごい勢いで後方に吹き飛んだ。
歩兵連中は、まあ、即死だな。手が千切れたり、腹が抉れたり、酷い事になっている。


見ていた商人が道路の端によって、リバースしている。
まあ、素人さんには刺激が強すぎる光景だわな。


結局、フレシェット弾一発とクレイモワ一つで片付いてしまった。
本当に十分かからなかったな。









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