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第1章 砂漠の中の大森林のお姫様
第6話 美しき森の内乱
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クラリス姫が目を覚ましてから聞いた話は、こんな感じだった。
シューネヴァルト公国は、気風の穏やかな国で、森との共存を国是としている。
無闇に森を開発しない、森の恵みは国民全員で分け合うをモットーとしているらしい。
国土の小さいシューネヴァルト公国は大公家が治める首都シューネヴァルトを中心に四つの街が東西南北にあり、其々を侯爵家が治めている。
領主貴族は、大公家の他はこの四侯爵だけである。
他に宮廷貴族と呼ばれる大公家や四侯爵の行政を補佐する立場で、領地を持たない貴族もいる。
大公家及び四侯爵家の最も重要な役目は、森の外からやってくる外敵の排除と森の害獣を間引き往来の安全を確保することだそうだ。
森の外からやってくる外敵は、シューネヴァルト公国では荒地の民と呼んでおり、馬の扱いに長け、しばしば女を略奪して行ったらしい。
聞けば、ここ二百年くらいは、外敵の侵入は見られないといっていた。
森には、獰猛な害獣がおり、しばしば往来を行く人々を襲ったとの事である。
人への被害をなくし、安全な往来を確保するために害獣を駆除するが、ノウハウがあるらしい。
森には複雑な食物連鎖があり、人に仇なす害獣であろうと狩り過ぎると拙いらしい。
増えすぎると人に領域に出てきて、人に仇なすため適度に間引くのがコツだそうだ。
大公家を含めた五大貴族は、過度の贅沢はぜず慎ましやかな生活を心がけているため、国民からの支持は高いそうだ。
宮廷貴族の年金は、五大貴族の生活水準を基準として定められるため、伯爵で平民の裕福層、男爵で平均的な平民の所得と同程度になっているらしい。
一方で、貴族が浪費をせず、外敵との戦争もないため国民にかかる税率は低く抑えられており、国民は総じて豊かな生活を送れているそうだ。
そうした中で、一部の選民思考がある貴族が、「我々が平民と同水準の生活なのはおかしい」とか「平民からもっと税金を搾り取って我々の年金を増やすべきだ」と主張しているらしい。
その中心人物がクラリスの叔父であり、大公の弟であるシューネヴァルト公爵だ。
そして、ついにシューネヴァルト公爵は、クラリス姫の父を暗殺するという凶行に走った。
そして、「大公は急病により死去した、大公の遺言に基づき大公の継承権第一位のクラリス姫が成人するまでの間摂政として国政を預かる。」と勝手に宣言した。
クラリス姫の話によるとシューネヴァルト公爵は、クラリス姫の公配となりクラリス姫に自分の子供を生ませて次次代の大公としたいようだ。シューネヴァルト公爵から直接聞かされたらしい。
二十も年下の自分の姪っ子を孕ませたいなんて、何と言う変態なんだ。
ちょっと、憧れるかも。
クラリス姫は、母方の祖父であるノルデンシュタット侯爵の助力を得るべく公都から抜け出した。
その途中で、追っ手に襲われて森で行き倒れているところを俺達に拾われたと。
さて、ノルデンシュタットまではたどり着いた。
ノルデンシュタットの街はすぐにわかった。
だって、道の左側五十メートル位から先の森が切り開かれて大きな城郭都市が存在している。
しかも、都市の基礎の高さが道より二メートルほど高いからよく見える。
街の雰囲気はローテンブルクみたいな感じだ。
なんて説明すればいいか、ちゃっちゃな雪使いが住んでいるみたいな?
俺達が進んでいる道の左側五十メートル位の処にノルデンシュタットの街に入る城門がある。
道から城門までは幅員二十メートル位の引き込み道路になっており、石畳が敷かれている。
ぶっちゃけ、今いる道が幅員十メートル位だから、城門までの道の方がよっぽど立派だ。
それでだが、城門の前には武装した集団が五十人ほどおり、投石器や破城槌を装備している。
対して、城壁の上にはやはり武装した集団がおり、こちらは弓兵を中心にバリスタも備えている。
何の冗談だろうか?
最初は歴史物の映画の撮影でもするのかと思った。
大砲の一つ、小銃の一つもない。
貧乏テロ組織だって、RPG-7とかAK-47とか装備しているぞ。
まあ、二百年位外敵の侵入が無いと言うのだから、近代的な武器は要らなかったのか。
そういえば、リヒテンシュタイン公国なんかも、軍隊持ってなかったな。
ただ、これが冗談でも、映画の撮影でもないのは、その場の張り詰めた緊張感が物語っている。
俺が二十五年間、身を置いてきたピリピリとした戦場の緊張感である。
今にも戦端が開かれそうな雰囲気である。
そして、俺達に近い場所には、ノルデンシュタットにきた商人らしき人々が遠巻きに見ている。
俺は、商人たちに近づき、「いったいあれは何の騒ぎだ?」と話しかけてみた。
商人たちは町に入れず退屈していたのであろう、
「俺が朝の開門を待っていると、あいつらが現れたんだよ。
あいつら、俺達商人を門から下がらせると、門の前に布陣しやがるんだ。
布陣が終わると馬に乗った貴族らしきやつが、門に向かってでっけい声で口上を述べた。
まるで、芝居を見ているみたいだったぜ。
でよ、その口上なんだがな。
何でも、摂政様の命令で、ノルデンシュタット侯爵に誘拐されたクラリス姫の救出に来たらしい。
素直にクラリス姫を差し出さなければ、叛逆者として討伐すると言ったんだ。
ところで、摂政ってなんだ?俺はそんな役職聞いた事ないんだけど。」
と丁寧に教えてくれた。
どうも、追っ手の方が早く着いたらしい。
ここまで送り届ければ、一応姫さんとの約束は果たしたことになるが、ここでサヨナラだと絶対にあいつらに捕まるだろうな。
とは言っても、こっちも時間がないし、これ以上首を突っ込むのもまずいか。
シューネヴァルト公国は、気風の穏やかな国で、森との共存を国是としている。
無闇に森を開発しない、森の恵みは国民全員で分け合うをモットーとしているらしい。
国土の小さいシューネヴァルト公国は大公家が治める首都シューネヴァルトを中心に四つの街が東西南北にあり、其々を侯爵家が治めている。
領主貴族は、大公家の他はこの四侯爵だけである。
他に宮廷貴族と呼ばれる大公家や四侯爵の行政を補佐する立場で、領地を持たない貴族もいる。
大公家及び四侯爵家の最も重要な役目は、森の外からやってくる外敵の排除と森の害獣を間引き往来の安全を確保することだそうだ。
森の外からやってくる外敵は、シューネヴァルト公国では荒地の民と呼んでおり、馬の扱いに長け、しばしば女を略奪して行ったらしい。
聞けば、ここ二百年くらいは、外敵の侵入は見られないといっていた。
森には、獰猛な害獣がおり、しばしば往来を行く人々を襲ったとの事である。
人への被害をなくし、安全な往来を確保するために害獣を駆除するが、ノウハウがあるらしい。
森には複雑な食物連鎖があり、人に仇なす害獣であろうと狩り過ぎると拙いらしい。
増えすぎると人に領域に出てきて、人に仇なすため適度に間引くのがコツだそうだ。
大公家を含めた五大貴族は、過度の贅沢はぜず慎ましやかな生活を心がけているため、国民からの支持は高いそうだ。
宮廷貴族の年金は、五大貴族の生活水準を基準として定められるため、伯爵で平民の裕福層、男爵で平均的な平民の所得と同程度になっているらしい。
一方で、貴族が浪費をせず、外敵との戦争もないため国民にかかる税率は低く抑えられており、国民は総じて豊かな生活を送れているそうだ。
そうした中で、一部の選民思考がある貴族が、「我々が平民と同水準の生活なのはおかしい」とか「平民からもっと税金を搾り取って我々の年金を増やすべきだ」と主張しているらしい。
その中心人物がクラリスの叔父であり、大公の弟であるシューネヴァルト公爵だ。
そして、ついにシューネヴァルト公爵は、クラリス姫の父を暗殺するという凶行に走った。
そして、「大公は急病により死去した、大公の遺言に基づき大公の継承権第一位のクラリス姫が成人するまでの間摂政として国政を預かる。」と勝手に宣言した。
クラリス姫の話によるとシューネヴァルト公爵は、クラリス姫の公配となりクラリス姫に自分の子供を生ませて次次代の大公としたいようだ。シューネヴァルト公爵から直接聞かされたらしい。
二十も年下の自分の姪っ子を孕ませたいなんて、何と言う変態なんだ。
ちょっと、憧れるかも。
クラリス姫は、母方の祖父であるノルデンシュタット侯爵の助力を得るべく公都から抜け出した。
その途中で、追っ手に襲われて森で行き倒れているところを俺達に拾われたと。
さて、ノルデンシュタットまではたどり着いた。
ノルデンシュタットの街はすぐにわかった。
だって、道の左側五十メートル位から先の森が切り開かれて大きな城郭都市が存在している。
しかも、都市の基礎の高さが道より二メートルほど高いからよく見える。
街の雰囲気はローテンブルクみたいな感じだ。
なんて説明すればいいか、ちゃっちゃな雪使いが住んでいるみたいな?
俺達が進んでいる道の左側五十メートル位の処にノルデンシュタットの街に入る城門がある。
道から城門までは幅員二十メートル位の引き込み道路になっており、石畳が敷かれている。
ぶっちゃけ、今いる道が幅員十メートル位だから、城門までの道の方がよっぽど立派だ。
それでだが、城門の前には武装した集団が五十人ほどおり、投石器や破城槌を装備している。
対して、城壁の上にはやはり武装した集団がおり、こちらは弓兵を中心にバリスタも備えている。
何の冗談だろうか?
最初は歴史物の映画の撮影でもするのかと思った。
大砲の一つ、小銃の一つもない。
貧乏テロ組織だって、RPG-7とかAK-47とか装備しているぞ。
まあ、二百年位外敵の侵入が無いと言うのだから、近代的な武器は要らなかったのか。
そういえば、リヒテンシュタイン公国なんかも、軍隊持ってなかったな。
ただ、これが冗談でも、映画の撮影でもないのは、その場の張り詰めた緊張感が物語っている。
俺が二十五年間、身を置いてきたピリピリとした戦場の緊張感である。
今にも戦端が開かれそうな雰囲気である。
そして、俺達に近い場所には、ノルデンシュタットにきた商人らしき人々が遠巻きに見ている。
俺は、商人たちに近づき、「いったいあれは何の騒ぎだ?」と話しかけてみた。
商人たちは町に入れず退屈していたのであろう、
「俺が朝の開門を待っていると、あいつらが現れたんだよ。
あいつら、俺達商人を門から下がらせると、門の前に布陣しやがるんだ。
布陣が終わると馬に乗った貴族らしきやつが、門に向かってでっけい声で口上を述べた。
まるで、芝居を見ているみたいだったぜ。
でよ、その口上なんだがな。
何でも、摂政様の命令で、ノルデンシュタット侯爵に誘拐されたクラリス姫の救出に来たらしい。
素直にクラリス姫を差し出さなければ、叛逆者として討伐すると言ったんだ。
ところで、摂政ってなんだ?俺はそんな役職聞いた事ないんだけど。」
と丁寧に教えてくれた。
どうも、追っ手の方が早く着いたらしい。
ここまで送り届ければ、一応姫さんとの約束は果たしたことになるが、ここでサヨナラだと絶対にあいつらに捕まるだろうな。
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