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第1章 砂漠の中の大森林のお姫様
第5話 美しき森のお姫さま
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砂漠の中に突如現れた大森林、俺は戸惑いながらも森を抜けるべくL-ATV(装輪式多目的軍用車両の一つ)のアクセルを踏み続けた。
しばらくして、後部座席から、 「ううっ…、ここはどこですか?」というか細い声が聞こえた。
俺は、L-ATVを停車させ、後部座席を覗き込んだ。
目を覚ました少女の瞳は、美しい碧眼であった。
少女は、何度か瞬きしたあと、手足を動かそうとして、自由が利かないことに気付いた。
「あなた方は、叔父様の手の者ですか。私を拘束して叔父様の下へ連れて行くのですね。」
と、少女は言った。
「落ち着け、俺達はお嬢さんを拘束なんかしてないから。着替えがなかったんで寝袋に入れただけだ。落ち着いて寝袋から手を出して、ジッパーを下ろせば出られるから。
お嬢さん、覚えていないか?
俺達は、森の中で行き倒れていたお嬢さんを拾ったんだ。
お嬢さんを拾ったとき、雨でびしょぬれだったもんだから、着ていた服を脱がせて体を拭いたんだが、あいにく着替えになる服がなかったんで、俺達の寝袋に押し込んだんだ。」
「安心して、あなたの服を脱がせたのも、体を拭いたのも、私がやったから。
このおじさんには、あなたの玉の肌は一瞬たりとも見せてはいないから。
それと、今寝袋から出るのは止した方がいいかな。パンツしか履いてないから。」
寝袋から手を出して、もぞもぞとジッパーを下げようとしいしていた少女は、ナンシーの言葉を聞いて、手を止めた。
「あなた方は、叔父様の手の者ではないのですか?」
「お嬢さんの言う叔父様ってのが誰のことかはわからんが、俺達は単なる通りすがりだ。
俺の名はケント、隣の女はナンシーだ。
仕事でこの森を抜けた先にあるはずの村に行く途中だ。
仕事の途中なんであまり寄り道はできないが、近くなら送っていくぞ。」
少女は、なにやら思案しているようであり、その真剣な表情は寝袋の中で蓑虫状態になっている外見とはあまりに不釣合いであり、不謹慎にも噴出しそうになった。
数分の沈黙の後、少女は言葉を発した。
「このたびは危ないところを助けていただいて感謝いたします。
わたくしは、クラリス・フォン・シューネヴァルト。
美しき森の守護者にしてシューネヴァルト大公国の指導者であるシューネヴァルト大公の第一公女です。」
「蓑虫姿で言われて似合わないセリフの最たるものだね。」
ナンシーの奴、言っちまいやがった。本当に空気読まん奴だな。
ほら、姫さん、赤面しちゃったじゃないか。
でも、シューネヴァルト大公国って言う国は初耳だな。そんな国あったんだ。
大公国なんてのも、ルクセンブルク以外聞いたことがなかった。
公国って言うのはいくつかあったか、モナコとかリヒテンシュタインとか。
まあ、俺は知らない国のほうが多いからな、多分ヨーロッパの国の半分も知らないんじゃないか。
後で、ナンシーに聞いておくか。
「ケントさんの先ほどのお話では送っていただけるとの事ですが、それは誠ですか?」
「俺達は仕事の途中なんで寄り道はできないぞ。
この道沿いに森を抜ける予定なんで、道沿いであれば乗せていくと言うことだ。」
「それで十分です。
ケントさんたちに出会えたのは、本当に不幸中の幸いです。
ぜひとも、私をこの森の北の街を治める祖父の下まで連れて行ってください。
この道沿いにある街ですのでケントさんに余計なお時間は取らせないと思います。
もちろん、十分はお礼は用意させていただきます。」
「どうせ通り道なんだろ、礼なんか要らんよ。」
「いや、おじさん、そこは貰っておくべきだって。
姫さんからお礼をもらえる機会なんて、一生に一度あるかないかだよ。」
ナンシーは、欲望に忠実だな。
でも、金品を貰えるならともかく、お礼にもてなすなんて言われても困るぞ、時間がないんだ。
「ええ、是非とも。
大公家の公女たる者が、命の恩人に何のお返しもしないと言うのは、一生の恥です。
最大限のお礼はさせていただきます。」
まあ、そういうのであればお言葉に甘えようか。
もし、時間をとるようであれば、先にミッションを済ませて帰りによればいいしな。
クラリス姫が、連れて行った欲しいと言った北の街は、あのあと二時間ほど走ったら着いた。
街の名をノルデンシュタットと言うらしい。
ナンシーが、「まんまじゃないか。」とクラリス姫の説明に突っ込んでいたが、俺には何のことかわからなかった。
しばらくして、後部座席から、 「ううっ…、ここはどこですか?」というか細い声が聞こえた。
俺は、L-ATVを停車させ、後部座席を覗き込んだ。
目を覚ました少女の瞳は、美しい碧眼であった。
少女は、何度か瞬きしたあと、手足を動かそうとして、自由が利かないことに気付いた。
「あなた方は、叔父様の手の者ですか。私を拘束して叔父様の下へ連れて行くのですね。」
と、少女は言った。
「落ち着け、俺達はお嬢さんを拘束なんかしてないから。着替えがなかったんで寝袋に入れただけだ。落ち着いて寝袋から手を出して、ジッパーを下ろせば出られるから。
お嬢さん、覚えていないか?
俺達は、森の中で行き倒れていたお嬢さんを拾ったんだ。
お嬢さんを拾ったとき、雨でびしょぬれだったもんだから、着ていた服を脱がせて体を拭いたんだが、あいにく着替えになる服がなかったんで、俺達の寝袋に押し込んだんだ。」
「安心して、あなたの服を脱がせたのも、体を拭いたのも、私がやったから。
このおじさんには、あなたの玉の肌は一瞬たりとも見せてはいないから。
それと、今寝袋から出るのは止した方がいいかな。パンツしか履いてないから。」
寝袋から手を出して、もぞもぞとジッパーを下げようとしいしていた少女は、ナンシーの言葉を聞いて、手を止めた。
「あなた方は、叔父様の手の者ではないのですか?」
「お嬢さんの言う叔父様ってのが誰のことかはわからんが、俺達は単なる通りすがりだ。
俺の名はケント、隣の女はナンシーだ。
仕事でこの森を抜けた先にあるはずの村に行く途中だ。
仕事の途中なんであまり寄り道はできないが、近くなら送っていくぞ。」
少女は、なにやら思案しているようであり、その真剣な表情は寝袋の中で蓑虫状態になっている外見とはあまりに不釣合いであり、不謹慎にも噴出しそうになった。
数分の沈黙の後、少女は言葉を発した。
「このたびは危ないところを助けていただいて感謝いたします。
わたくしは、クラリス・フォン・シューネヴァルト。
美しき森の守護者にしてシューネヴァルト大公国の指導者であるシューネヴァルト大公の第一公女です。」
「蓑虫姿で言われて似合わないセリフの最たるものだね。」
ナンシーの奴、言っちまいやがった。本当に空気読まん奴だな。
ほら、姫さん、赤面しちゃったじゃないか。
でも、シューネヴァルト大公国って言う国は初耳だな。そんな国あったんだ。
大公国なんてのも、ルクセンブルク以外聞いたことがなかった。
公国って言うのはいくつかあったか、モナコとかリヒテンシュタインとか。
まあ、俺は知らない国のほうが多いからな、多分ヨーロッパの国の半分も知らないんじゃないか。
後で、ナンシーに聞いておくか。
「ケントさんの先ほどのお話では送っていただけるとの事ですが、それは誠ですか?」
「俺達は仕事の途中なんで寄り道はできないぞ。
この道沿いに森を抜ける予定なんで、道沿いであれば乗せていくと言うことだ。」
「それで十分です。
ケントさんたちに出会えたのは、本当に不幸中の幸いです。
ぜひとも、私をこの森の北の街を治める祖父の下まで連れて行ってください。
この道沿いにある街ですのでケントさんに余計なお時間は取らせないと思います。
もちろん、十分はお礼は用意させていただきます。」
「どうせ通り道なんだろ、礼なんか要らんよ。」
「いや、おじさん、そこは貰っておくべきだって。
姫さんからお礼をもらえる機会なんて、一生に一度あるかないかだよ。」
ナンシーは、欲望に忠実だな。
でも、金品を貰えるならともかく、お礼にもてなすなんて言われても困るぞ、時間がないんだ。
「ええ、是非とも。
大公家の公女たる者が、命の恩人に何のお返しもしないと言うのは、一生の恥です。
最大限のお礼はさせていただきます。」
まあ、そういうのであればお言葉に甘えようか。
もし、時間をとるようであれば、先にミッションを済ませて帰りによればいいしな。
クラリス姫が、連れて行った欲しいと言った北の街は、あのあと二時間ほど走ったら着いた。
街の名をノルデンシュタットと言うらしい。
ナンシーが、「まんまじゃないか。」とクラリス姫の説明に突っ込んでいたが、俺には何のことかわからなかった。
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