アラフォー傭兵の幻想戦記

アイイロモンペ

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第1章 砂漠の中の大森林のお姫様

第4話 砂漠の中の大森林でお姫様を拾う(大丈夫俺も何のことだかわからない)

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 ナンシーがとんでもないど変態だとわかった。
そんな馬鹿話をしていたとき、ふと気が付くと辺りが薄暗くなっていた。
 まだ、午後二時にもならないはずだ、何で暗くなったんだろうと空を見た。
信じがたいことに空は、分厚い雨雲に覆われていた。


 この辺りは乾燥地帯、ありていに言えば砂漠である。
こんな積乱雲みたいな雲が生じるはずないんだが、どうしたんだ?


 そんな俺の疑問をあざけ笑うかのように、突然大粒の雨が降り始めた。
スコールのような大雨、流石に中東でこんな雨に遭うとは思っていなかった。
この大雨の中進むのは危険だと判断し、一旦停止して雨が小降りになるのを待つこととした。
 

 雨が止むまで退屈なんでなんか話をさせようと思い、ナンシーを見たら寝てた。
どうりで静かだと思った。
 でもこいつ午前中も寝てたよな。
だいたい、もうここはいつテロ組織に襲撃されてもおかしくない場所なのに寝るなよ。
俺は運転してるんだから、せめて周囲の警戒をして欲しい。


「おーい、ナンシー起きろ!」

俺は、軽くナンシーの頬を平手で打ちながら、声をかけた。


「何すんの!痛いぞ。」


 ナンシーは、いかにも不機嫌そうに目を覚ました。


「ここはもう敵地なんだ。寝ている馬鹿がどこにいる。
少しは周囲を警戒しろ。
というより、外を見てみろ。」


 俺の指示し従い窓の外を見たナンシーは、「何だこれは!」と大声を上げた。


うるさいなもう、そんな大きな声出すなよ。
そう思いつつ、ナンシーに向かった言った。

「さっき急に降り出したんだよ。大雨で視界が確保できなくなったんで一旦止まったんだ。
酷い雨だろ、二十五年間この辺りには来ているけど、こんな雨は初めてだわ。」


それに対しナンシーは、

「いや、これは異常事態だって。シリア砂漠にこんな雨降るわけないだろう。」

と言ったが、


「実際降っているし、ほらナビを見ると道は間違っていない。
現在地はまごうことなくシリア砂漠だ。」


ナビは間違っていないはずだ。多分……。


一時間ほど経過したとき、小雨になってきて、視界が回復してきた。
そろそろ出発しようと思ったとき、車の前に何か白いモノが落ちていることに気付いた。
一応確認しようと思って車を降りて白い物体に近づく。


姫様が落ちていた。
何を言っているのかわからない?
安心してくれ、言っている俺もわからない。


年の頃は、十五、六だろうか。少なくとも一昨日の晩に買った北欧少女よりは若いだろう。
雨で汚れているものの純白のドレスを纏っている。
絹糸のように細いブロンドの髪、額の少し上には銀色に輝くティアラを載せている。
ティアラの素材は、プラチナかホワイトゴールドか、銀よりは光沢がある。
散りばめられた小粒のダイヤがきらきらと輝いていて綺麗だ。


俺が、少女を抱き起こしているとナンシーが車から降りてきて言った。


「なに、なに、おじさんたら女の子拾ったの?
やった、チャンスじゃん。
ちょうど意識がないみたいだし、この娘で素人童貞卒業しちゃえば。
日本で流行ってるって聞いたよ。
睡眠姦っていうAVのジャンル。」


「お前は、この娘を見て言うことはそれか。
よく見てみろ、おかしいだろこの娘。」


 ナンシーは、俺が抱き上げている娘を良く見て、ハッと気付いたように言った。


「この娘の格好はヨーロッパの王侯貴族のようだね。少なくとも中東にこの格好はありえないわ。
おじさん、学がないと言う割には良く気付いたね。観察力はあるんだ。」


うるさい、ほっとけ。
いったいこの娘はどこから来たんだ。
そりより、このままじゃ風邪引いてしまうか。


「ナンシー悪いが、この娘を後部座席へ運ぶんで、濡れた服を脱がせて体を拭いてやってくれ。」

「え、おじさんがやりたいんじゃないの。」

「馬鹿言っていないでとっととやれ。着替えはないから、寝袋に入れておくか。」



 ナンシーが娘のケアをし、寝袋に詰め込んだ頃にはすっかり雨が上がり、周囲は明るくなった。
さあ、今度こそ出発しようとして、再び驚くべき事態となった。


「おい、ナンシー、シリア砂漠ってこんな森あったっけ?」

「何をまた馬鹿なことを言っているんだ。このおじさんは……。」


 ナンシーは何かを言いかけて言葉を失っていた。
目の前には、森があった。そう、大森林と言ってもいい深い森が。
ここは、シリア砂漠。間違っていない、ナビはそういっている。
ナビは嘘つかない、はず、多分……。



このままでは、埒が明かないし、先へ進んでみるか。
ナビがどう反応するか見たいし。
俺は、その旨をナンシーに伝えると、静かにアクセルを踏み込んだ。



     ***********


 結論から言うと、道を進むとナビの上ではちゃんと目的地へ向かって進んでいるのがわかった。
でも、もう一時間以上走ったのに、未だ森は抜けられなかった。
どんだけ広いんだこの森は。

 しかし、不思議なのはもう一時間走り続けていて、結構な距離を進んでいるはずなのに燃料計がぜんぜん動いていないんだ。
 この燃料喰いの燃料計が動かないって、さては故障したかな。
敵地で燃料計の故障は勘弁して欲しい。
いざと言うときにガス欠になったら洒落にならない。


 どうしたものかと思案していると、後部座席から

「ううっ…、ここはどこですか?」

というか細い声が聞こえた。





















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