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第33話 「ごめん」
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眉を寄せた先輩が、話しにくそうに口を開く。
「木花さん……ナツメさんのことなんだけど」
ああ、もう、だめだ。
きっとこれから、恋人という関係を解消して、ナツメさんとつきあうという話をされるのだろう。もしかしたら、すでに二人きりの時にその約束をしているのかもしれない。それを話すだけの時間が、二人にはあったのだから。
じゃあせめて、僕ができることは、これからもただの後輩として先輩の関係を保つことくらいだ。
だから笑顔で言わなきゃ。先輩が罪悪感を持ったりしないように。
わかりました。だいじょうぶですよ。
だけど凍りついた体は声帯も奪って、声すら出てこない。
夏の夜に一人だけ凍えた世界に閉じ込められて身動きができない。破けた心臓だけがどくどくと瀕死の脈動を鳴らしている。
冷たい感覚が支配する中で、唯一、かすかな熱が目から浮かんでくる。
先輩がハッと驚いた顔をする。
ああまずい。こんな時に泣くなんて卑怯すぎる。同情を欲しているみたいじゃないか。なんで涙腺は凍ってくれないんだ。
「コーヨー?」
大きな手が、心配するように僕の方に伸びてくる。
反射的にビクリと体が跳ねる。先輩の手を拒むように。
先輩は目を丸くする。
緊張はすることはあっても、先輩の手を嫌がることなんてなかった。でも今は先輩のぬくもりを感じてしまったら、もう自分を保てなくなる気がして。
はじけた体の動きにつられて、口を動かす。情けない顔を見られたくなくて、気づかわし気な目を見たくなくて、顔をそむけたまま。
「だいじょうぶ、です、なんともないです。ぼくは、へいきですから。わかって、ます。ふたり、は、おにあいだと、おもいます、し。やっぱり男のぼくよりも、女のひとがいいってなるのは、あたりまえです、から。だから、だいじょうぶなので、その」
青葉先輩の口から突き付けられるよりも自分から言ってしまった方がまだマシだ。
先輩からはっきりと拒絶されたら。ぼくは。
「だから、ふたりが、つきあうなら」
「――コーヨー」
低い声で、名前を呼ばれる。
あっという間に、逃げる隙もなく手首をとられる。泣くのをこらえる代わりに握りしめていた拳はぶるぶる震えて、血の気を失っていた。重ねられた手のひらが、火傷しそうなほどあたたかい。
だめだ。こんな熱を、感じたら。この一瞬の間だけ封じ込めていた、これまでの先輩との触れ合いが一気によみがえって。それももう未来永劫、失うのだと考えたら。
何とか動いていた余力もなくなって、倒れそうになる。
「コーヨー」
倒れる前に、大きな手が頬に添えられる。力をいれられているわけでもないのに、逆らえないまま顔を正面に――青葉先輩のほうに向かされる。
眉間にしわを寄せる先輩は、怒った顔をしていた。
でも下げられた眉根は、悲しんでいるような、悔しそうな。
なんで、せんぱいのほうが、そんな顔をしているんだろう。
「ちょっと待て。なんか勘違いしてるだろ。けど、なんでそんなこと言えんだよ。くそっ……いや、オレも悪いか。あの時……あーもー、とにかく、今コーヨーが考えているの、絶対勘違いだから、落ち着いてオレの話、聞いてくれ」
頬を触りながら、目尻を指で拭われる。涙に触れた先輩はより一層、苦々しそうな表情をする。
先輩の話を聞く怖さより、そんな顔をしている理由が気になって、逃げることも耳をふさぐこともできないで、立ち尽くした。
「まず、オレがさっき謝ったのは――ナツメさんに、コーヨーに相談しないで、男の恋人がいるって話しちゃってごめん、っていう理由」
「………え?」
「もちろんコーヨーの名前は言ってない。ただ、話の流れで合宿メンバーの中にいるっていうのは説明しなきゃいけなくて。オレが浅葱にぃ……従兄弟に話すのと、状況が全然違うだろ。先に相談すべきだったのに、ごめん」
手を包む力が強くなる。申し訳なさそうに、目を伏せながら先輩は僕を見下ろす。
何の話をしているのかわからなかった。謝った理由が、「周りに秘密にする」という約束を、きちんと守り切れなかったからだ、と。
ぐるぐるぐるぐる頭の中で、いろんな言葉や先輩の顔、合宿の間に見た光景がめぐる。
「え、っと、ナツメさんに言ってよかったんです、か?」
「え? コーヨーが周りに言ってほしくないんだろ?」
「いや、だって」
もしも改めてナツメさんと付き合うというなら、わざわざ男の恋人がいるなんてマイナスなる情報を伝えていいのだろうか。
誠実に対応しようとしたからか。だけど合宿メンバーの中にいるということまで話すような状況とは、どういうことだろう。
「恋人がいるっていうのも言う気はなかったんだけど。ナツメさんから頼まれたことと、事情を聞いたら、こっちもちゃんと話さないといけないなって……。それでも、勝手に話したことはごめん。コーヨーが怒っても仕方ないってわかってる」
眉を寄せて、苦しそうに懺悔している表情にますます混乱する。
そもそそも周りに秘密にするという約束はこっちの勝手な願い事で。男同士でつきあっている、ということを周りに知られたら、先輩がイヤな目に合うかもしれない、という理由が大半だから正直怒る理由なんてない。
それに僕の名前を言っているわけでもないのだから、約束を破ったわけではない。
先輩は相変わらず、誠実に、向き合ってくれている。
「あの、そこは、怒って、ないです。それより、頼まれたことって……」
「ああ。簡単に言うと合宿の間、男よけになってほしいっていう話」
「おとこ、よけ?」
「ナツメさん、やっぱ注目浴びるし、実際ケイタとかいるしな。なるべくナツメさんと一緒にいて、他の男の牽制になってほしいって頭下げられたんだ。だけど、恋人がいるからそういうことはできないって断った」
全く予想もしていなかった話の方向に、脳が追い付いていかない。
「先輩は、それで、いいんですか?」
だって。他の人を近づけないように、傍にいるナイトみたいな役目。もしも付き合おうとするなら、それは魅力的な話じゃなかろうか。
でも。青葉先輩はケロリとした顔と声で答える。からりと晴れた青空のように。
「なんで? いいに決まってるだろ? オレがつきあってるのは、コーヨーなんだから」
凍った体すら、あっさりと溶かすような。
はくはくと、言葉がつむげない。先輩は困ったように笑って、僕の額と先輩の額を、こつんとくっつける。
「コーヨー、やっぱ変な勘違いしてたろ。言っとくけど、オレはナツメさんのこと何とも思ってないから」
「で、も」
「大体ナツメさんがオレに頼んだのも、オレがナツメさんに全然興味ないっていうのがわかってたからだし」
「ああいう風にモテる人って、周りが自分にどんな感情持ってるかに敏感なんだよな。浅葱にぃもそうだし」と僕の手を撫でながら、あやすように続ける。
手を包む熱は、いつの間にか穏やかなぬくもりになって。
先輩は、ナツメさんに、興味がない。
本当に? あんなに綺麗な人なのに? いい人なのに? なにより、女性なのに?
煮え立つぐるぐるとしたものはすぐに消しきれない。
「でも、先輩、今日の撮影のとき、ナツメさんのこと、すごい、見てて」
「え? あー……、あれか」
カメラの前で、綺麗な涙を流していたナツメさんを、じっと、真剣な目で見ていたじゃないか。
青葉先輩は言葉を濁す。ああ、やっぱり見惚れていたんだ、と心臓が痛くなりながら、チラリと先輩のほうをうかがうと。
予想していた反応と違って、あれ?となる。
先輩は困ったように片手で自分の顔を隠している。
その指の隙間からは、ほんの少し、紅くなった肌が見えて。
「………思い出してたんだよ」
困っているというよりも、むしろ、照れているように。
「ピアス、開けてくれた時の、コーヨーのこと」
僕が、ピアスを、開けた時。
もちろん覚えている。忘れたことなんてない。こらえきれなくなった思いがあふれて、目の前の人にさらけ出してしまった、無様なほど泣いた、あの日。
きっとそれは、見ているだけでこちらが切なくなるような、カメラに向けられた綺麗な泣き方とは、ほど遠いはずなのに。
だけど先輩は、あの時のナツメさんの涙から、思い出したっていうのか。
僕の、泣き顔を。
それで、そのうえで、あんな、顔をしていたのか。
ばつが悪そうにしながらも、先輩は口元を緩めて、僕の左耳の髪をかきあげる。そっと、ピアスに触れる。嬉しそうに。
それでも。頭は理解できない。簡単にうなずけない。
なのに。
「……あんな風に、自分のためだけに泣かれて、何とも思わないヤツなんていないだろ」
ポツリと呟かれた言葉。
触られている左耳から、ぞくぞくと、何かが侵蝕する。
透き通るような、それでも深くてたまらない、青色が、耳から心臓に向かって染め上げていく錯覚。
それが何かなんて、わからない。だけど、ああ、酩酊して、くらりとする。
じわりじわりと、先輩が触れるぬくもりから体内に広がっていく何か。
決してイヤなものではない。むしろ、歓喜に震えてしまう。抑えきれないものが、目からあふれ出る。
さっきとは全く違う、涙が。
「また泣きそうになってる」
笑いながら先輩は僕の目尻をぬぐって、軽くキスをする。
まだ全部納得できたわけじゃない。だけど、昼間見た先輩の顔は、僕が確かに見たものだ。
あんな風に真剣に見ていた理由が、僕だった、と。
誠実に向き合う先輩が、こんなくだらない嘘をつく理由もない。
ずっと緊張していた身体がから一気に力が抜けて、倒れそうになる。いつの間にか、手のひらを覆っていた片手は腰に回されて、ふらつく体を支えらえる。
「ホントはもっと早く相談したかったんだけど。なんかコーヨー避けるし」
「それ、は」
確かに避けていた。二人がいるところを見たり聞いたりしたくなくて、昨日の電話もすぐに切って、今日もずっと目線が合わないように気をつけていた。
「でも……不安にさせるようなことさせて、悪かった。ちょっとオレもいろいろ余裕なくしてた。ごめん」
「先輩が、謝るようなこと、ない、です」
だって、先輩が言っているのが本当なら。
ナツメさんの近くにいることが多かったのも理由があったからで。二人の間にはやましいことなんて何ひとつなくて。勝手に僕が考えすぎて、決めつけただけで。
そこに思い当たると、恥ずかしくて湖に投身自殺したくなる。けれど先輩の腕のか囲いから逃げ出すことは叶わない。
誤魔化すように頭に浮かんだことを口走る。
「でも、その、ナツメさんのほうは、いいんですか。もしかしたら、ナツメさんは」
先輩がナツメさんに興味がなくても、もしかしたらナツメさんのほうは。
その猜疑すらあっさりと切り捨てられる。
「それはない。というか、それがオレの恋人が男っていう話す理由になったんだけど……うーん、あっちの個人的な事情もあるからなあ。どうすっかな」
「……事情?」
「ちょっと待って。一回ナツメさんに聞くから」
片腕は僕を囲んだまま、もう片方の手で自分のスマートフォンを取り出す。『木花 夏芽』と表示された宛先のメッセージ画面。先輩は僕を安心させるためか、わざと僕に見えるように『恋人にナツメさんの事情、話しても大丈夫か?』と打ち込む。
送ってすぐに返事があった。それもやはり、そのまま画面を見せられる。
文面は簡潔だった。『もちろん大丈夫。むしろお相手のかたが許してくれるなら直接謝りたい』と書かれている。
青葉先輩は「どうする?」と目で問いかけてくる。二人のことは周りに秘密にする、という約束がある。直接会ったら、ナツメさんにつきあっている相手が僕だということが知られてしまう。
「コーヨーがイヤなら、適当に断るよ」
だけど。
こんなにも、誠意と優しさを与えてくれる先輩に、小さな嘘を積み重ねるようなことを、させたくなかった。
だから。大丈夫です、と、頷いた。
◇
「――本当にごめんなさい」
勢いよく、けれど丁寧に腰を折って深々と頭を下げられて、逆に慌ててしまう。
メッセージをもらってから時間をおかずに、他の人には見られないように――とはいえみんな飲んで騒いでいるから気にも留められなかった――こっそりとナツメさんの部屋にうかがうと、青葉先輩と一緒にきたのが僕であることに驚いた様子のナツメさんだったけど、真っ先に謝罪をされた。
「あの、えっと、そんなことしないで大丈夫です!」
上級生で、しかも主演女優であるナツメさんに頭を下げさせて平気でいられるほど図太くはない。ナツメさんは頭を上げたけれど、低姿勢のままだ。
「いいえ。青葉くんが今は誰ともつきあっていないって聞いていたから、あんなこと頼んでしまったけど。恋人が目の前で他の人とずっと傍にいたら、イヤに決まってるでしょう。私の我儘のせいで迷惑をかけて……本当に、ごめんなさい」
「それは……その、周りに秘密に……してましたし。ナツメさんが知らないのも、当たり前ですから」
「それでも……私が、誤解されたくないからって、あくまで友人として、なるべく一緒にいてほしいなんてことお願いしたのは確かだもの」
「誤解されたく……ない、です、か?」
「ああ、そうね。その話をしなきゃね」
そこでようやくナツメさんはふっと笑った。
はにかみながらも、どこか苦い笑顔で。
「――私、猫柳さんのことが好きなの」
唐突なカミングアウトに、衝撃で言葉が詰まる。
青葉先輩は事前に知っていたからか、特に反応はない。これがナツメさんの『事情』なのか、と思い当たる。
映研で、猫柳といえば一人しかいない。ガチ班の監督――そして、女性、だ。
「私はね、レズビアンなの。だから男の人に興味もなくって……ただ、顔はいいでしょう? だから告白されたりとか、アプローチを受けることはよくあって。もちろん、お断りするんだけど……猫柳さんの前で、そんなことになりたくなかったの」
自分で言っても嫌味にならないくらい確かにナツメさんは美人だ。そして当然モテるであろうことも理解できる。
実際、軽いとはいってもケイタさんのように明らかにナツメさん狙いの人がいる。もしかしたら他の男メンバーも、あわよくば、と思っている可能性がないわけではない。
「だから、私も態度に気をつけるけど、青葉くんにガード役として一緒にいてもらいたかったの。青葉くんが私に興味ないっていうのはすぐにわかったから、そんなことにならないだろうし。でも、恋人がいる、しかも合宿メンバーの中にいるから、って断られたの。正直驚いちゃって。だって女子メンバーに青葉くんとそういう雰囲気のある子はいなかったし……それで……完全に私の邪推だけど、もし相手が猫柳さんだったらどうしよう、って不安になって……私がレズビアンで、猫柳さんが好きだっていうことを話したの。そしたら、相手は猫柳さんじゃなくて男だ、名前は言えないって」
説明を終えたナツメさんから、微笑ましいものを見るような目を向けられる。
ナツメさんが、レズビアンであること、そして思い人が監督であるという秘密を話したから。
その誠意に応えるためにも、青葉先輩も、恋人がいるというのは嘘ではなくて、秘密にしている理由があることを示すために、恋人が男であることを話したのか。
そうすると、するすると様々なことが腑に落ちる。
監督と話すときの楽しそうなナツメさんの笑顔。カメラの前で、秘密の片思いを発露する、演技。
そのカメラの先にいたのは、監督である猫柳さんだ。
「まあ……オレも同期が迷惑かけるのは申し訳ないし、協力できるならしたかったけど……恋人を放っておいて、他の人を優先するようなマネはできなかったから」
はあ、と溜息をつく先輩に「もともと無茶なお願いをしたのは私だから」と謝るナツメさん。
二人ともどこまでもまっすぐに向き合っていて。ただ、それが、互いに秘密を抱えてるから、わからない人間から見たら変なことを勘ぐってしまうことになった。
「コーヨーくん、あなたたちのことは絶対に誰にも言わない。私の我儘のせいで秘密を暴くようなことになって、ごめんなさい」
「いいえ! あの、色々わかったので、大丈夫です。むしろ、僕のほうこそ……その、言いたくないこと言わせちゃって……」
きっと猫柳さんが好きだということは、ナツメさんにとって、とてもとても大事な秘密のはずだ。
ほろ苦い笑顔をナツメさんは浮かべる。
「私はいいの。誰にも言えなかったから、逆に知ってもらえてちょっと楽になったくらい……猫柳さんはノンケだし、簡単に好きなんて言えないもの」
「それは……そう、です、ね。でも恋愛よりも映画のことのほうが好きそうですけど」
「そうなのよね。最大の恋敵が映画って……敵が大きすぎて困っちゃうわ」
そうい言いながらも、扉のほうを見て笑うナツメさんの目からは感情があふれ出ていた。きっと、向かいの部屋で作業をしている猫柳さんのことを考えているんだろう。
「ああもちろん、今回の撮影には本気で取り組んでいるからね? まあ、たまに打ち合わせを理由に二人で話せる機会が多いのが嬉しいのも、本当だけど……あの人は、私のこと、映画の主演女優っていう以外に、なんとも思ってないだろうから。だって同じ女だもの」
誤魔化すように、だけど切なそうにそうこぼすナツメさんに、本来は共通点など全くない人なのに、なぜか共感してしまった。
それが伝わったのか、ナツメさんのほうも、声を潜めて呟く。
「……ノンケを好きになるのって、ホントにキツイのよね」
その言葉は、ものすごく、わかってしまって。
「……そうですね」
思わず、自然にポロリと言葉がこぼれた。
きっと。ナツメさんは、青葉先輩がノンケで、同性愛者なのは――ナツメさんと同じ側なのは僕だというのを察しているんだろう。
ナツメさんの気持ちはイヤになるほどわかる。僕とは違って、こんなに綺麗で、優しくて、素敵な人なのに。
だって、少し前まで僕は同じ立場だった。
ただ見ることしかできない。
気持ちを伝えることなんて、ましてや恋人という関係になるなんて、夢よりも遠いもので。
手が届くことはないと、諦めていた。
ナツメさんは笑った。
綺麗に。完璧に。
「――だから、あなたたちのこと、うらやましいの」
ちょっとだけね、とふざけて付け足しているけど。
笑っているのに、今にも泣きそうに見えた。
「木花さん……ナツメさんのことなんだけど」
ああ、もう、だめだ。
きっとこれから、恋人という関係を解消して、ナツメさんとつきあうという話をされるのだろう。もしかしたら、すでに二人きりの時にその約束をしているのかもしれない。それを話すだけの時間が、二人にはあったのだから。
じゃあせめて、僕ができることは、これからもただの後輩として先輩の関係を保つことくらいだ。
だから笑顔で言わなきゃ。先輩が罪悪感を持ったりしないように。
わかりました。だいじょうぶですよ。
だけど凍りついた体は声帯も奪って、声すら出てこない。
夏の夜に一人だけ凍えた世界に閉じ込められて身動きができない。破けた心臓だけがどくどくと瀕死の脈動を鳴らしている。
冷たい感覚が支配する中で、唯一、かすかな熱が目から浮かんでくる。
先輩がハッと驚いた顔をする。
ああまずい。こんな時に泣くなんて卑怯すぎる。同情を欲しているみたいじゃないか。なんで涙腺は凍ってくれないんだ。
「コーヨー?」
大きな手が、心配するように僕の方に伸びてくる。
反射的にビクリと体が跳ねる。先輩の手を拒むように。
先輩は目を丸くする。
緊張はすることはあっても、先輩の手を嫌がることなんてなかった。でも今は先輩のぬくもりを感じてしまったら、もう自分を保てなくなる気がして。
はじけた体の動きにつられて、口を動かす。情けない顔を見られたくなくて、気づかわし気な目を見たくなくて、顔をそむけたまま。
「だいじょうぶ、です、なんともないです。ぼくは、へいきですから。わかって、ます。ふたり、は、おにあいだと、おもいます、し。やっぱり男のぼくよりも、女のひとがいいってなるのは、あたりまえです、から。だから、だいじょうぶなので、その」
青葉先輩の口から突き付けられるよりも自分から言ってしまった方がまだマシだ。
先輩からはっきりと拒絶されたら。ぼくは。
「だから、ふたりが、つきあうなら」
「――コーヨー」
低い声で、名前を呼ばれる。
あっという間に、逃げる隙もなく手首をとられる。泣くのをこらえる代わりに握りしめていた拳はぶるぶる震えて、血の気を失っていた。重ねられた手のひらが、火傷しそうなほどあたたかい。
だめだ。こんな熱を、感じたら。この一瞬の間だけ封じ込めていた、これまでの先輩との触れ合いが一気によみがえって。それももう未来永劫、失うのだと考えたら。
何とか動いていた余力もなくなって、倒れそうになる。
「コーヨー」
倒れる前に、大きな手が頬に添えられる。力をいれられているわけでもないのに、逆らえないまま顔を正面に――青葉先輩のほうに向かされる。
眉間にしわを寄せる先輩は、怒った顔をしていた。
でも下げられた眉根は、悲しんでいるような、悔しそうな。
なんで、せんぱいのほうが、そんな顔をしているんだろう。
「ちょっと待て。なんか勘違いしてるだろ。けど、なんでそんなこと言えんだよ。くそっ……いや、オレも悪いか。あの時……あーもー、とにかく、今コーヨーが考えているの、絶対勘違いだから、落ち着いてオレの話、聞いてくれ」
頬を触りながら、目尻を指で拭われる。涙に触れた先輩はより一層、苦々しそうな表情をする。
先輩の話を聞く怖さより、そんな顔をしている理由が気になって、逃げることも耳をふさぐこともできないで、立ち尽くした。
「まず、オレがさっき謝ったのは――ナツメさんに、コーヨーに相談しないで、男の恋人がいるって話しちゃってごめん、っていう理由」
「………え?」
「もちろんコーヨーの名前は言ってない。ただ、話の流れで合宿メンバーの中にいるっていうのは説明しなきゃいけなくて。オレが浅葱にぃ……従兄弟に話すのと、状況が全然違うだろ。先に相談すべきだったのに、ごめん」
手を包む力が強くなる。申し訳なさそうに、目を伏せながら先輩は僕を見下ろす。
何の話をしているのかわからなかった。謝った理由が、「周りに秘密にする」という約束を、きちんと守り切れなかったからだ、と。
ぐるぐるぐるぐる頭の中で、いろんな言葉や先輩の顔、合宿の間に見た光景がめぐる。
「え、っと、ナツメさんに言ってよかったんです、か?」
「え? コーヨーが周りに言ってほしくないんだろ?」
「いや、だって」
もしも改めてナツメさんと付き合うというなら、わざわざ男の恋人がいるなんてマイナスなる情報を伝えていいのだろうか。
誠実に対応しようとしたからか。だけど合宿メンバーの中にいるということまで話すような状況とは、どういうことだろう。
「恋人がいるっていうのも言う気はなかったんだけど。ナツメさんから頼まれたことと、事情を聞いたら、こっちもちゃんと話さないといけないなって……。それでも、勝手に話したことはごめん。コーヨーが怒っても仕方ないってわかってる」
眉を寄せて、苦しそうに懺悔している表情にますます混乱する。
そもそそも周りに秘密にするという約束はこっちの勝手な願い事で。男同士でつきあっている、ということを周りに知られたら、先輩がイヤな目に合うかもしれない、という理由が大半だから正直怒る理由なんてない。
それに僕の名前を言っているわけでもないのだから、約束を破ったわけではない。
先輩は相変わらず、誠実に、向き合ってくれている。
「あの、そこは、怒って、ないです。それより、頼まれたことって……」
「ああ。簡単に言うと合宿の間、男よけになってほしいっていう話」
「おとこ、よけ?」
「ナツメさん、やっぱ注目浴びるし、実際ケイタとかいるしな。なるべくナツメさんと一緒にいて、他の男の牽制になってほしいって頭下げられたんだ。だけど、恋人がいるからそういうことはできないって断った」
全く予想もしていなかった話の方向に、脳が追い付いていかない。
「先輩は、それで、いいんですか?」
だって。他の人を近づけないように、傍にいるナイトみたいな役目。もしも付き合おうとするなら、それは魅力的な話じゃなかろうか。
でも。青葉先輩はケロリとした顔と声で答える。からりと晴れた青空のように。
「なんで? いいに決まってるだろ? オレがつきあってるのは、コーヨーなんだから」
凍った体すら、あっさりと溶かすような。
はくはくと、言葉がつむげない。先輩は困ったように笑って、僕の額と先輩の額を、こつんとくっつける。
「コーヨー、やっぱ変な勘違いしてたろ。言っとくけど、オレはナツメさんのこと何とも思ってないから」
「で、も」
「大体ナツメさんがオレに頼んだのも、オレがナツメさんに全然興味ないっていうのがわかってたからだし」
「ああいう風にモテる人って、周りが自分にどんな感情持ってるかに敏感なんだよな。浅葱にぃもそうだし」と僕の手を撫でながら、あやすように続ける。
手を包む熱は、いつの間にか穏やかなぬくもりになって。
先輩は、ナツメさんに、興味がない。
本当に? あんなに綺麗な人なのに? いい人なのに? なにより、女性なのに?
煮え立つぐるぐるとしたものはすぐに消しきれない。
「でも、先輩、今日の撮影のとき、ナツメさんのこと、すごい、見てて」
「え? あー……、あれか」
カメラの前で、綺麗な涙を流していたナツメさんを、じっと、真剣な目で見ていたじゃないか。
青葉先輩は言葉を濁す。ああ、やっぱり見惚れていたんだ、と心臓が痛くなりながら、チラリと先輩のほうをうかがうと。
予想していた反応と違って、あれ?となる。
先輩は困ったように片手で自分の顔を隠している。
その指の隙間からは、ほんの少し、紅くなった肌が見えて。
「………思い出してたんだよ」
困っているというよりも、むしろ、照れているように。
「ピアス、開けてくれた時の、コーヨーのこと」
僕が、ピアスを、開けた時。
もちろん覚えている。忘れたことなんてない。こらえきれなくなった思いがあふれて、目の前の人にさらけ出してしまった、無様なほど泣いた、あの日。
きっとそれは、見ているだけでこちらが切なくなるような、カメラに向けられた綺麗な泣き方とは、ほど遠いはずなのに。
だけど先輩は、あの時のナツメさんの涙から、思い出したっていうのか。
僕の、泣き顔を。
それで、そのうえで、あんな、顔をしていたのか。
ばつが悪そうにしながらも、先輩は口元を緩めて、僕の左耳の髪をかきあげる。そっと、ピアスに触れる。嬉しそうに。
それでも。頭は理解できない。簡単にうなずけない。
なのに。
「……あんな風に、自分のためだけに泣かれて、何とも思わないヤツなんていないだろ」
ポツリと呟かれた言葉。
触られている左耳から、ぞくぞくと、何かが侵蝕する。
透き通るような、それでも深くてたまらない、青色が、耳から心臓に向かって染め上げていく錯覚。
それが何かなんて、わからない。だけど、ああ、酩酊して、くらりとする。
じわりじわりと、先輩が触れるぬくもりから体内に広がっていく何か。
決してイヤなものではない。むしろ、歓喜に震えてしまう。抑えきれないものが、目からあふれ出る。
さっきとは全く違う、涙が。
「また泣きそうになってる」
笑いながら先輩は僕の目尻をぬぐって、軽くキスをする。
まだ全部納得できたわけじゃない。だけど、昼間見た先輩の顔は、僕が確かに見たものだ。
あんな風に真剣に見ていた理由が、僕だった、と。
誠実に向き合う先輩が、こんなくだらない嘘をつく理由もない。
ずっと緊張していた身体がから一気に力が抜けて、倒れそうになる。いつの間にか、手のひらを覆っていた片手は腰に回されて、ふらつく体を支えらえる。
「ホントはもっと早く相談したかったんだけど。なんかコーヨー避けるし」
「それ、は」
確かに避けていた。二人がいるところを見たり聞いたりしたくなくて、昨日の電話もすぐに切って、今日もずっと目線が合わないように気をつけていた。
「でも……不安にさせるようなことさせて、悪かった。ちょっとオレもいろいろ余裕なくしてた。ごめん」
「先輩が、謝るようなこと、ない、です」
だって、先輩が言っているのが本当なら。
ナツメさんの近くにいることが多かったのも理由があったからで。二人の間にはやましいことなんて何ひとつなくて。勝手に僕が考えすぎて、決めつけただけで。
そこに思い当たると、恥ずかしくて湖に投身自殺したくなる。けれど先輩の腕のか囲いから逃げ出すことは叶わない。
誤魔化すように頭に浮かんだことを口走る。
「でも、その、ナツメさんのほうは、いいんですか。もしかしたら、ナツメさんは」
先輩がナツメさんに興味がなくても、もしかしたらナツメさんのほうは。
その猜疑すらあっさりと切り捨てられる。
「それはない。というか、それがオレの恋人が男っていう話す理由になったんだけど……うーん、あっちの個人的な事情もあるからなあ。どうすっかな」
「……事情?」
「ちょっと待って。一回ナツメさんに聞くから」
片腕は僕を囲んだまま、もう片方の手で自分のスマートフォンを取り出す。『木花 夏芽』と表示された宛先のメッセージ画面。先輩は僕を安心させるためか、わざと僕に見えるように『恋人にナツメさんの事情、話しても大丈夫か?』と打ち込む。
送ってすぐに返事があった。それもやはり、そのまま画面を見せられる。
文面は簡潔だった。『もちろん大丈夫。むしろお相手のかたが許してくれるなら直接謝りたい』と書かれている。
青葉先輩は「どうする?」と目で問いかけてくる。二人のことは周りに秘密にする、という約束がある。直接会ったら、ナツメさんにつきあっている相手が僕だということが知られてしまう。
「コーヨーがイヤなら、適当に断るよ」
だけど。
こんなにも、誠意と優しさを与えてくれる先輩に、小さな嘘を積み重ねるようなことを、させたくなかった。
だから。大丈夫です、と、頷いた。
◇
「――本当にごめんなさい」
勢いよく、けれど丁寧に腰を折って深々と頭を下げられて、逆に慌ててしまう。
メッセージをもらってから時間をおかずに、他の人には見られないように――とはいえみんな飲んで騒いでいるから気にも留められなかった――こっそりとナツメさんの部屋にうかがうと、青葉先輩と一緒にきたのが僕であることに驚いた様子のナツメさんだったけど、真っ先に謝罪をされた。
「あの、えっと、そんなことしないで大丈夫です!」
上級生で、しかも主演女優であるナツメさんに頭を下げさせて平気でいられるほど図太くはない。ナツメさんは頭を上げたけれど、低姿勢のままだ。
「いいえ。青葉くんが今は誰ともつきあっていないって聞いていたから、あんなこと頼んでしまったけど。恋人が目の前で他の人とずっと傍にいたら、イヤに決まってるでしょう。私の我儘のせいで迷惑をかけて……本当に、ごめんなさい」
「それは……その、周りに秘密に……してましたし。ナツメさんが知らないのも、当たり前ですから」
「それでも……私が、誤解されたくないからって、あくまで友人として、なるべく一緒にいてほしいなんてことお願いしたのは確かだもの」
「誤解されたく……ない、です、か?」
「ああ、そうね。その話をしなきゃね」
そこでようやくナツメさんはふっと笑った。
はにかみながらも、どこか苦い笑顔で。
「――私、猫柳さんのことが好きなの」
唐突なカミングアウトに、衝撃で言葉が詰まる。
青葉先輩は事前に知っていたからか、特に反応はない。これがナツメさんの『事情』なのか、と思い当たる。
映研で、猫柳といえば一人しかいない。ガチ班の監督――そして、女性、だ。
「私はね、レズビアンなの。だから男の人に興味もなくって……ただ、顔はいいでしょう? だから告白されたりとか、アプローチを受けることはよくあって。もちろん、お断りするんだけど……猫柳さんの前で、そんなことになりたくなかったの」
自分で言っても嫌味にならないくらい確かにナツメさんは美人だ。そして当然モテるであろうことも理解できる。
実際、軽いとはいってもケイタさんのように明らかにナツメさん狙いの人がいる。もしかしたら他の男メンバーも、あわよくば、と思っている可能性がないわけではない。
「だから、私も態度に気をつけるけど、青葉くんにガード役として一緒にいてもらいたかったの。青葉くんが私に興味ないっていうのはすぐにわかったから、そんなことにならないだろうし。でも、恋人がいる、しかも合宿メンバーの中にいるから、って断られたの。正直驚いちゃって。だって女子メンバーに青葉くんとそういう雰囲気のある子はいなかったし……それで……完全に私の邪推だけど、もし相手が猫柳さんだったらどうしよう、って不安になって……私がレズビアンで、猫柳さんが好きだっていうことを話したの。そしたら、相手は猫柳さんじゃなくて男だ、名前は言えないって」
説明を終えたナツメさんから、微笑ましいものを見るような目を向けられる。
ナツメさんが、レズビアンであること、そして思い人が監督であるという秘密を話したから。
その誠意に応えるためにも、青葉先輩も、恋人がいるというのは嘘ではなくて、秘密にしている理由があることを示すために、恋人が男であることを話したのか。
そうすると、するすると様々なことが腑に落ちる。
監督と話すときの楽しそうなナツメさんの笑顔。カメラの前で、秘密の片思いを発露する、演技。
そのカメラの先にいたのは、監督である猫柳さんだ。
「まあ……オレも同期が迷惑かけるのは申し訳ないし、協力できるならしたかったけど……恋人を放っておいて、他の人を優先するようなマネはできなかったから」
はあ、と溜息をつく先輩に「もともと無茶なお願いをしたのは私だから」と謝るナツメさん。
二人ともどこまでもまっすぐに向き合っていて。ただ、それが、互いに秘密を抱えてるから、わからない人間から見たら変なことを勘ぐってしまうことになった。
「コーヨーくん、あなたたちのことは絶対に誰にも言わない。私の我儘のせいで秘密を暴くようなことになって、ごめんなさい」
「いいえ! あの、色々わかったので、大丈夫です。むしろ、僕のほうこそ……その、言いたくないこと言わせちゃって……」
きっと猫柳さんが好きだということは、ナツメさんにとって、とてもとても大事な秘密のはずだ。
ほろ苦い笑顔をナツメさんは浮かべる。
「私はいいの。誰にも言えなかったから、逆に知ってもらえてちょっと楽になったくらい……猫柳さんはノンケだし、簡単に好きなんて言えないもの」
「それは……そう、です、ね。でも恋愛よりも映画のことのほうが好きそうですけど」
「そうなのよね。最大の恋敵が映画って……敵が大きすぎて困っちゃうわ」
そうい言いながらも、扉のほうを見て笑うナツメさんの目からは感情があふれ出ていた。きっと、向かいの部屋で作業をしている猫柳さんのことを考えているんだろう。
「ああもちろん、今回の撮影には本気で取り組んでいるからね? まあ、たまに打ち合わせを理由に二人で話せる機会が多いのが嬉しいのも、本当だけど……あの人は、私のこと、映画の主演女優っていう以外に、なんとも思ってないだろうから。だって同じ女だもの」
誤魔化すように、だけど切なそうにそうこぼすナツメさんに、本来は共通点など全くない人なのに、なぜか共感してしまった。
それが伝わったのか、ナツメさんのほうも、声を潜めて呟く。
「……ノンケを好きになるのって、ホントにキツイのよね」
その言葉は、ものすごく、わかってしまって。
「……そうですね」
思わず、自然にポロリと言葉がこぼれた。
きっと。ナツメさんは、青葉先輩がノンケで、同性愛者なのは――ナツメさんと同じ側なのは僕だというのを察しているんだろう。
ナツメさんの気持ちはイヤになるほどわかる。僕とは違って、こんなに綺麗で、優しくて、素敵な人なのに。
だって、少し前まで僕は同じ立場だった。
ただ見ることしかできない。
気持ちを伝えることなんて、ましてや恋人という関係になるなんて、夢よりも遠いもので。
手が届くことはないと、諦めていた。
ナツメさんは笑った。
綺麗に。完璧に。
「――だから、あなたたちのこと、うらやましいの」
ちょっとだけね、とふざけて付け足しているけど。
笑っているのに、今にも泣きそうに見えた。
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