趣味に全力!森の魔女は勝手気ままに生きたい 〜気になる漫画の続きが読みたいので、弟子を取りました〜

蒼烏

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第26話 グレンのお留守番2日目7

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「はぁ……はぁ……」

 平坦な畑の横を抜け、まだ行ったことのない放牧地の奥へとやってきたグレンは丘を登ってようやく頂上付近へと辿り着いた。

「あれ……まだある?」

 丘を登ったグレンの目に飛び込んできたのは岩山だった。
 ただ、目の前にあるのは普通の岩山ではなかった。

「つりばしがある?ロープにかいだん、はしご、トンネル?」

 まるでアスレチックの様な様相である。
 だが、グレンはアスレチックが分からない。
 何のための物なのか分からないが、どうやらここも敷地内らしいということは分かった。

「これも、のぼるんですね!とらきちせんせい!」
 
 グレンはこれも課題の一種だと考え、むしろ燃えていた。
 疲れも吹き飛ぶやる気が満ちてくる。
 燃えるグレンは岩山へと走っていく。
 丘の上ではまだ出会っていなかった豚たちが木陰で寝そべっており、近くには羊達が群れをなして牧草を食べている。。
 豚と羊たちは走るグレンを横目に見ながら一声鳴いて挨拶をする。

「あっ、こんにちは!グレンといいます、よろしくおねがいします!」

 グレンは急ブレーキして止まると、豚と羊たちに向かって頭を下げながら大声で挨拶をする。
 挨拶したグレンは再び走り出す。
 岩山に近付くと岩の上にも何かがいるのに気が付いた。
 それは岩に張り付くように登っており、白い毛並みを風に靡かせている。

 ――メエェェェ――

 山羊が岩山に登っていた。
 よく見ると牛と鶏も岩山の頂上に登っている。
 一体どうやって登ったのか分からまいが、彼等は魔獣だ。
 何があってもおかしくない。

「あんなふうにのぼればいいのかな?」

 ここまで登ってこいとばかりな鳴き声を上げる牛と鶏。

「おー、すごい!ぼくもいくよ!」

 岩山にに取り付けられたロープに飛びつき、登り始めるグレン。

「むらでも……いっぱい……きのぼりとか……してたんだよ!」

 ロープを使って岩山を登っていくと、何故か右に曲がれと矢印が示されていた。
 グレンがそちらの方をみると岩山と岩山の間に吊り橋が架けられ、これを渡っていけと言うことなのだろうか。
 グレンは揺れる吊り橋を渡りさらに先には丸太の一本橋が現れる。

「これくらいならだいじょうぶ!」

 スルスルと丸太を渡っていくグレン。
 次に現れだのはターザンロープ。
 段々と難易度が上がっていく仕様のようだ。

「これは……やったことないかな?」

 ロープを手繰り寄せ、下を覗き込む。
 まだそこまで高さはないが落ちたら痛そうだ。

「あみがはってある。クレアさんたちがつくったのかな?」

 落下防止の網があるあたり、クレアと寅吉の仕業だろう。

「あぁぁぁぁぉぁぁぁ」
 
 ロープを掴んで岩の上から一気に隣の岩山へと飛び移るグレン。
 思わず叫び声が響くが、ちょと楽しそうである。

「ふふふ、つぎはなにかな」

 訂正、凄く楽しそうである。

 ◇◇◇

 その後もいくつもの仕掛けを乗り越え、ついに最後のアスレチックへと辿り着いたグレン。

「さいごはがけのぼりかな?」
 
 最後に残されたのは頂上までの登攀とうはんだけだ。
 ロープやハシゴは無く、素手で登れと言うことだろう。
 頂上では相変わらず牛と鶏がグレンを待っている。
 その目は"早く来い"と言わんばかりの目だ。

「グレン、いっきます!」

 グレンは一手一手慎重に岩を掴みながら足の爪先を岩の窪みにかけていく。
 一応落ちた場合に備えてなのか、足元の土は柔らかく、藁まで敷いてある。

「くっ……ゆびとあしが……」

 グレン自身が身軽とは言えまだ6歳の少年が登るには険しい岩壁。

「まりょくを、しゅうちゅうして……」

 グレンは手足の指先に魔力を集中させて力を込める。
 筋力だけで登るよりも楽になり、体は徐々に頂上に向かって上がっていく。

「もうちょっと……」

 歯を食いしばり、必死で登る。
 牛と鶏も心配そうにグレンを見ている。
 いつの間にかグレンの下には牛たちが集まり、もしもの時に備えて牛のクッションが作られていた。

「みんな……ぼくがんばる!」

 牛たちの献身に感動したグレンは最後の力を振り絞り、頂上の岩に手をかける。

「の、ぼっ、たー!」

 頂上を牛と鶏から譲られ、グレンは両手を天に掲げ歓喜の雄叫びを上げる。
 牛と鶏、山羊に羊、豚たちも一斉に鳴き声を上げてグレンを祝福する。
 暫くの間、岩山に皆の鳴き声が響いていた。

「へへ……やったよとらきちさん……」

 グレンはやり遂げたと分かり、気が抜ける。
 フラリと足がもたれ、岩山から足を踏み外してしまう。

「あっ……」

 体が宙に浮く感覚。
 内臓がフラリと浮き、気持ち悪さが全身を駆け巡る。

「お、ち……」

 ――モー――

 頂上でグレンを見守っていた牛がグレンを追いかけて飛び降り、グレンの首根っこを咥える。
 迸る魔力。
 牛の体を覆う魔力が一段と力強さを増し、魔力が可視化する程に高まっている。
 そのまま、岩山に何度も着地しながら勢いを殺し、一気に地上まで駆け降りた。

「た、たすかった……」

 牛に首根っこを咥えられ宙吊りのまま着地したグレンは、心臓をバクバクさせながら目を丸くして固まる。

「わっ!」

 牛が首根っこを離し、ドサリりと地面に落とされたグレンは硬い地面の上に着地して地面の有り難さを感じる。

「あ、ありがとうございました……」
 ――モー――

 最後まで気を抜くんじゃない、そう言われた気がした。
 
 ◇◇◇
 
 森の中を捜索するクレアと寅吉は中々手掛かりを見つけることができずにいた。
 
「クレア、何か分かったか?」
「……ダメ、今のところ何も分からない……」

 クレアは首を横に振って手掛かりは見つからないと言う。

「こっちもだ……這ったり引き摺られたりした跡はないし、匂いもない。どこに行ったんだ?」
「一旦元の場所に戻ってみようか、現場に戻ってもう一度確認してみよう」
「分かった、戻ろう」

 クレアと寅吉は一旦川岸に戻り、調査をやり直すことにする。

「うーん……ここで這い上がった、或いは引き上げられたとすると……普通なら川から少し離れるよね……で、ここからどこに向かう?」
「普通なら家に、グレンの所に帰ろうとするだろうな……上流に向かって川沿いを調べる方がいいか」
「かな……うーんでもなー何だろう、何か引っ掛かるんだよねー」

 クレアは何か引っ掛かるのか、うんうんと唸りながら天を仰ぐ。

「うーん……ん?」
「どうした?」
「あれ、あそこ見て」

 クレアは上を見上げながら森の木を指差して寅吉に見てほしいという。

「……枝が、折れてるな。それも最近折れた感じだな」
「ちょっと見てみよう」

 クレアはそう言うと杖を取り出し、寅吉を連れて宙に舞う。
 ゆっくりと折れた枝が目の前にくる所まで上昇し、2人はじっくりと折れた枝を観察し始める。

「クレア……魔力が残ってるぞ」
「ほんとだ……あ、これだ。さっき引っかかった魔力」

 クレアは小さな魔法陣を展開して残存する魔力の解析を始める。
 真剣な表情で解析を続けるクレアの横で、寅吉は更なる手掛かりはないかと木に飛び移って調べ始める。
 
「クレア、こっちにも何か引っかかってるぞ」
「ちょっとまって……もう少しで……よしっ、こっちは終わったよ」
「見てみろ、靴が引っかかってる」

 寅吉が指差す先、他の枝の陰になった場所に小さな靴が1つ引っかかっていた。

「子供の靴だね。寅吉、取ってこれる?」
「任せろ」

 寅吉はスルスルと木を登り、残された靴まで辿り着くと靴を手に取り、しげしげと観察をし、匂いを嗅いでみる。

「ふむ、グレンの様な匂い。多分妹の物で間違いないだろう」
「私にも見せて、魔力を見てみる」

 戻ってきた寅吉から靴を受け取り、クレアも魔力を確かめる。

「――うん、魔力もグレンによく似てる。ちょっと待ってね……」

 クレアは倉庫に手を突っ込みガサガサと何かを探し、その何かを見つけたのか笑顔え取り出す。

「あったあった、これはさっきグレンの家で回収してきた妹ちゃんの服だよ」

 クレアは小さな服を持ってじっと見つめ、靴と交互に見比べる。
 寅吉も服の匂いを嗅いで靴と比べる。

「「間違いない」」

 2人はお互いに顔を見合わせて間違いないと言い切る。

「その妹ちゃんの靴が、こんな所に引っかかっている……それと、折れた枝に残っていた魔力……」
「ん、何か分かったのか?」
「んー何処かで見たことある気がするんだけど、ちょっと思い出せなくてね……でも、妹ちゃんの魔力とは別の魔力だね」

 クレアはそこまで説明すると言葉を切り、寅吉の目をみる。

「普通ならありえない場所に折れた枝と妹の靴。更に枝には妹とは違う魔力……誰か別の人物が関与してると言うことか」
「うん、家に帰ってよく調べてみてデータベースと対照しないと……妹ちゃんはここじゃない別の場所にいる可能性がある。勿論生きてるかどうかの確信はないけど……」

 クレアはそこまで言うと、自分の言葉に俯いてしまう。

「クレア、多分大丈夫だ……ここには、死臭がない」
「じゃあ……」
「にゃ、生きている可能性は高い」

 寅吉の言葉にクレアの顔がパァと明るくなる。

「しかもこの場所にあるって事は……」
「――そうか!、魔法で飛んでいる可能性があるんだ!……って、人間か魔獣か分からないかぁ~」
「そこはな……これから調べるしかないな。ただ、今日これ以上の追跡はかなり難しいというのは分かる」

 寅吉の言葉にクレアも渋々頷く。
 
「……仕方が、ないね」
「一旦村に戻ろう、グレンの家族の魔力、あるいはこの村に残されてる魔力が分かるものは回収していこう。手掛かりがあるかもしれない」
「うん、
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