棋士に恋愛は似合わない?

Ryo

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1章 人生逆転の一手

第10局 棋士に際会は似合わない?

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と、言ったものの先生ははっきり言って邪魔だ。反射的にあぁいうことを言ってしまったけど、彼女は僕自身で見つけたい。そして‥‥‥いや、そんなことより一刻も早く彼女を探さないと。先生はこの街よりも離れたところを車で移動してながら探している。
だから僕はこの辺を探すことにした。

とは言ったものの当てがないのにどう探せばいいんだ。やっぱり‥‥クラスの人に頼るしかないのか‥‥

そして僕は学校に戻る。
そう、実はまだ学校の時間である。なので、僕と先生は体調不良で早退ということでクラスメイトには秘密にしている。でも、頼りがない今、ただ当てがないまま彷徨うよりは皆んなの力を借りる方が断然言いに決まっている。

そして、学校に着いたわけだが今から教室に入るのはとても気まずい限りである。
でも、覚悟を決めないとこの先には進めないし彼女にあれを言えないまま終わることになる。
僕は『それだけは避けたい!!』と心の中で叫びながら教室の引き戸を勢いよく引いた。

「皆んな、頼みがある!!」

途端に教室全体がざわつき始めた。既に下校したはずのクラスメイトがいきなり授業中の教室に入ってくるんだからその反応もおかしくはない。

「天野、お前は早退したはずだろ?」

理科担当の坂口先生にそう言われるが僕はその声さえも聞こえていなかった。

「皆んな、僕は仲村 楓を探そうと思うんだ。だって、別れが唐突過ぎじゃないか。皆んなだって別れの挨拶をしていないだろ?それに僕は最後に彼女に伝えたいこともあるんだ。だから‥‥こんな僕に付き合ってくれ!」

僕は普段、クラスメイトの前では控えめな性格のつもりだ。だからいきなりそんなクラスメイトが全力で自分の主張を訴えるもんだから一気にクラスの空気が静まり返った。
しかし、そんな雰囲気の中でも発言をする人が居ないわけでもなかった。

「おい、天野。それはどういう了見だ。今の話を聞くようじゃ俺たちはお前だけのために転校して行ったやつを探さないといけないのかよ?それに、お前は仲村と付き合ってたんだろ?彼女に会うために俺たちを利用するのと同じだろ」

この意見を始め、次々と反対の意見が僕のもとにとんでくる。

僕は図星を突かれたので、反論すらすることができなかった。
でも、棋士はどんなに辛い盤面でもじっと耐えて次の最善手を探す。それが今この時。
そう思えた瞬間、頭の中に色々な選択肢が浮かんだ。その数は何十なんて程の領域ではなかった。
頭の中に広がる選択肢とそのルートは数えきれない程多い。でも、僕はその中から最善手を指さないといけない。このまま何も返せないまま撃沈するか、反論して次に繋げるか。

答えはただ一つ。‥‥‥‥勿論反論する!

「まず、僕は仲村 楓とは付き合っていない!それに皆んなが彼女と別れの挨拶をしないまま終わってしまうのは本当のことだ。そして、僕が彼女に伝えたいことは私情であって君達には関係のないこと。つまり、僕はクラスの全員で最後の挨拶をすることと、そのついでに僕は彼女に伝えたいことを伝える。それだけだ!
そこまで言っても反論するやつはいるか!」

息継ぎもろくにせずに熱弁してしまったので、とてもじゃないが息が続かない。そんな「ぜぇ‥‥ぜぇ‥‥」と息切れをしている僕だが、自分の言いたかったことは全て言った。
だから‥‥ぼ‥‥くは‥‥。


気がついたら僕は保健室のベッドに横たわっていた。
保健室の先生曰く僕は熱弁後、急に倒れこんっでしまったようだ。恥ずかしながら原因はただの酸欠のようだ。これくらいで酸欠のなるって‥‥‥‥。

「それよりも、皆んなはどうしていますか?」

先生からは意外な一言が待っていた。

「あぁ、あの子たちなら仲村さんを探す!とか言って飛び出して行ったわよ」

「そうなんですか!?なら僕も早く向かわないと」

「貴方は体をもう少し休ませなさい」

「いえ、僕はもう大丈夫です。それよりも一刻も早く彼女を探したいので」

別に強がっているわけではなく本当に体はもう大丈夫なのだ。

「あ、そうだ。天野君、直接言わなくてもいいから真瀬さんに感謝しなさい」

「何故ですか?」

「なんでだと思う?」

とはいっても、特に思い当たる節はない。

「分かりません。何故ですか?」

「そっかぁ‥‥、まぁいいわ。なら内容が分からなくても一応感謝だけはしておきなさい」

「分かりました‥‥。それでは行っています」

「行っちゃった。真瀬さんも可哀想ね、あの娘がクラスを説得してくれた上に、天野君をここまで運んでくれたというのに。天野君も鈍感だね」


僕は足早に学校を出て、すぐにみんなの元へと向かう。

「お、天野起きてんじゃん」

「遅いぞぉ、天野ぉ」

と次々にクラスメイトが寄り添ってくる。そして同時に

「天野、さっきは悪かった」

「本当に悪く思ってる」

と、謝罪もされた。別に謝罪がされたかったわけではなかったが、自分の選択が正しかったと思うと少し嬉しかった。

「それより、皆んなは何か収穫あった?」

「それが今のところ何もないんだよ」

「そっか、女子は何か知らないの?」

「それが私たちにも分からなくて‥‥彼女が訪れたり、いた所が分かればそこに向かうけど‥‥」

「あいつが‥‥いた所」

その瞬間に先生の言葉を思い出した。そう、確か先生は中を少し覗いたとは言っていたが、中に入ったとは言っていない。
まさかだけど‥‥、もしも僕の勘が正しければ彼女の居場所が分かったかもしれない。

「皆んな、僕はもしかしたらだけど、彼女の居場所が分かったかもしれない。でも、この先は僕1人に行かせてくれ!必ず彼女と一緒に帰って来るから」

ここまで自分が身勝手だとは思ってはいなかったから自分に少し失望しているが、判断は正しいはずだ。

「あぁ、いいよ!ただし、絶対に連れて帰って来いよ!」

全員が満足気な顔で僕を見送ってくれた。だから僕は皆んなの気持ちに答えたい。絶対に連れて帰る。

そして僕は彼女の家に着いた。(家というよりは豪邸)

「お邪魔します」

中は先生の言った通り何もなかった。ただ、辺りは汚いかと言われるとそうでもなく、逆に綺麗な方だった。

そして、僕は部屋らしき扉(名札がかけられていたので)を開けた。

「やっぱり、ここにいたのか‥‥‥楓」
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