棋士に恋愛は似合わない?

Ryo

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1章 人生逆転の一手

第6局 棋士に欠点は似合わない?

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先日、僕は仲村楓の要望で遊園地へデートに行った。
でも、そのことはクラスには言わない。はっきり言ってクラスにバレるのは、恥ずかしいからだ。
だから彼女にも念押しに

「今日のことはクラスの人には内密に」

と言ってあるから安心はしているつもりだ。
そして、僕は教室のドアを開けた。

「おはようございます」

クラス全体の視線が一気にこちらに集中した瞬間である。そして1人の女子が僕に問いかける。

「ねえねえ、天野君昨日仲村さんとデートしていたの?」

うわぁ、いきなりバレてるやつじゃん。

女子からの視線はまだ大丈夫だが、問題は男子の視線だ。見る限り男子の僕に向ける視線には殺気が含まれているに違いない。
それも仕方がないことだ。何故なら仲村楓は誰もが憧れるような美少女だ。彼女の長くて綺麗な黒髪はもう十分ほどにも思える整った顔のパーツを強調する。

それよりもここからどう対処するかだな。内容によっては後ろから覗いている男子が僕を放っておかないだろう。

でも下手に誤魔化すのも災いを呼ぶだけだ。ここは正直に話して誤解を解こう。

「あのですねえ、これは誤解であっ」

「問題ありますか?だって私と翔太様は付き合っていますもの」

後ろから声を重ねられたことよりもその内容に僕は驚愕した。いや、僕だけじゃない。この教室にいた彼女以外のクラスメイト全員が驚愕したに違いない。
しかし、静まり返るこの雰囲気の中でも彼女はその雰囲気に逆らうように喋り続けた。

「そんな私たちがどこに行っていても別にいいじゃないですか。誰かにどうこう言われる筋合いなどありません!」

内容はともかく、こんな雰囲気でも自分の意見を貫き通す彼女の姿はとても格好良かった。
また僕は彼女に助けられたなぁ‥‥でも、ありがとう。
僕はそうやって心の中で呟くことしかできなかった。
でも、それが同時に自分が弱いことの証明もされている。
なぜなら僕は棋士だ。棋士ならどんな局面でも逃げずに指し続けなければいけない。それがいくら自分の不利な局面であってもだ。
しかし、それはとても難しいことである。だから普段からこんな場面(局面)に出会ったとしてもそこでの最善の選択(好手)を見つけることが大切なんだ。

つまり全ての僕の行動や言動1つ1つが将棋に繋がるんだ。生活=将棋だ!

だから僕はその面で彼女に劣っている。
だから僕は彼女が苦手だ。

~放課後~

「仲村さん。内容はともかくありがとう」

「いえ、いいんですよ     それに私は本気ですよボソ」

「え、何ですか?」

「なんでもないです!本当に鈍感なんですからぁ」

正直、僕は聞こえていた。でも、やっぱりなんて言えばいいのか分からなかった。これだから僕は人付き合いをあまり好まない。

でも、なんでだろうな。なんでこんなに胸が熱いんだ。



(注意)
・ここからは本編とは関係ありません

前回の詰将棋の答えです!

▲(先手)8六飛車打で詰みです!
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