棋士に恋愛は似合わない?

Ryo

文字の大きさ
上 下
6 / 13
1章 人生逆転の一手

第6局 棋士に欠点は似合わない?

しおりを挟む
先日、僕は仲村楓の要望で遊園地へデートに行った。
でも、そのことはクラスには言わない。はっきり言ってクラスにバレるのは、恥ずかしいからだ。
だから彼女にも念押しに

「今日のことはクラスの人には内密に」

と言ってあるから安心はしているつもりだ。
そして、僕は教室のドアを開けた。

「おはようございます」

クラス全体の視線が一気にこちらに集中した瞬間である。そして1人の女子が僕に問いかける。

「ねえねえ、天野君昨日仲村さんとデートしていたの?」

うわぁ、いきなりバレてるやつじゃん。

女子からの視線はまだ大丈夫だが、問題は男子の視線だ。見る限り男子の僕に向ける視線には殺気が含まれているに違いない。
それも仕方がないことだ。何故なら仲村楓は誰もが憧れるような美少女だ。彼女の長くて綺麗な黒髪はもう十分ほどにも思える整った顔のパーツを強調する。

それよりもここからどう対処するかだな。内容によっては後ろから覗いている男子が僕を放っておかないだろう。

でも下手に誤魔化すのも災いを呼ぶだけだ。ここは正直に話して誤解を解こう。

「あのですねえ、これは誤解であっ」

「問題ありますか?だって私と翔太様は付き合っていますもの」

後ろから声を重ねられたことよりもその内容に僕は驚愕した。いや、僕だけじゃない。この教室にいた彼女以外のクラスメイト全員が驚愕したに違いない。
しかし、静まり返るこの雰囲気の中でも彼女はその雰囲気に逆らうように喋り続けた。

「そんな私たちがどこに行っていても別にいいじゃないですか。誰かにどうこう言われる筋合いなどありません!」

内容はともかく、こんな雰囲気でも自分の意見を貫き通す彼女の姿はとても格好良かった。
また僕は彼女に助けられたなぁ‥‥でも、ありがとう。
僕はそうやって心の中で呟くことしかできなかった。
でも、それが同時に自分が弱いことの証明もされている。
なぜなら僕は棋士だ。棋士ならどんな局面でも逃げずに指し続けなければいけない。それがいくら自分の不利な局面であってもだ。
しかし、それはとても難しいことである。だから普段からこんな場面(局面)に出会ったとしてもそこでの最善の選択(好手)を見つけることが大切なんだ。

つまり全ての僕の行動や言動1つ1つが将棋に繋がるんだ。生活=将棋だ!

だから僕はその面で彼女に劣っている。
だから僕は彼女が苦手だ。

~放課後~

「仲村さん。内容はともかくありがとう」

「いえ、いいんですよ     それに私は本気ですよボソ」

「え、何ですか?」

「なんでもないです!本当に鈍感なんですからぁ」

正直、僕は聞こえていた。でも、やっぱりなんて言えばいいのか分からなかった。これだから僕は人付き合いをあまり好まない。

でも、なんでだろうな。なんでこんなに胸が熱いんだ。



(注意)
・ここからは本編とは関係ありません

前回の詰将棋の答えです!

▲(先手)8六飛車打で詰みです!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

処理中です...