棋士に恋愛は似合わない?

Ryo

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1章 人生逆転の一手

第13局 棋士に頓死は似合わない?

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あれから数日と月日が経った。今でも彼女は僕のクラスの一員だ。彼女がここに滞在するのは僕がちゃんと返事を返すまでの間だけども僕はそんなことも忘れていた。それくらい充実した数日だったからだ。

この日までは_____

「ねぇ、翔太様」

「ん、何?」

僕は自販機で買ったオレンジジュース2つを取り出し口から取り出し1つを彼女に渡す。

「翔太様は将棋がお好きなんですよね?」

「あぁうん、小2くらいからやってるよ」

「本当に将棋が好きなんだね」

「将棋が好き‥‥か」

僕にはその言葉に抵抗があった。だって僕は将棋が‥‥

「それより翔太様の通っているあの、なんでしたっけ?」

「奨励会?」

「そう、それ!それです!」

「んで、奨励会がどうしたの?」

「私にも連れて行って下さい!」

今時、奨励会に興味のあるお嬢様って‥‥‥

「ところで何で奨励会に?」

「それは‥‥私はしょ、翔太様の後にガ、ガールフレンドになりますし、彼氏の好きなことも知っておいた方がいいというものですし   エヘヘ」

「あのー、楓さーん?一体どうしましたー?」

いきなりおかしくなってどうしたんだ。途中からうまく聞こえなかったしけど‥‥‥。

「い、いえ!なんでもありません!!とにかく私は奨励会に興味があります!なので今度の日曜日に2人で将棋会館に行きませんか?」

「まぁ、日曜日ならいいよ。最近行ってなかったしね」

そう言って僕はオレンジジュースを一口で飲みきり、自販機の隣に置いてあるゴミ箱に向けて軽いスナップで投げ入れる。

「それじゃあ、日曜日の朝10時いつもの公園で待ち合わせでいいですか?」

「分かった、それじゃあな」

丁度僕たちの帰り道の分岐点だった。話もきりが良かったので、話を切り上げる。

「うん、それではまた日曜日に」

「また日曜日に」って、明日水曜日なんだけど‥‥。
それにクラスも一緒なんだから普通に会うだろ。
と突っ込みを入れようとした頃にはもう彼女の姿はなかった。
一人で突っ立ってそんなことを考えていたかと思うと凄く恥ずかしかった。

__そして日曜日

特に何事もなく僕たちは電車で向かった先は東京都渋谷区にある将棋会館。

今日はあくまで彼女に将棋会館を紹介するだけで対局をする予定はない‥‥‥はずだった。

「おぉ、ここが将棋会館ですか!それに思ってたより大きいですね」

「将棋会館は5階、4階は対局室等で3階とB1階は事務室、2階は道場・教室で1階は販売部となってるんんだ。でもB1階と3階以上は関係者のみ立ち入りができるんだ」

「以外に館内広いんですね。それと私販売部に興味があります」

「なら寄って行こうか」

そうして僕たちは将棋会館 1階の販売部に向かう。
販売部には将棋盤や駒を始め、将棋連盟が出すグッズなどがある。

「翔太様、私この扇子に興味があります!」

彼女が指していたのはプロ棋士が対局に使っている扇子を指していた(勿論印刷したものだが)。
プロ棋士は扇子に自分の好きな言葉を書いて対局で使うわけだが、扇子を持つことに特に意味はない。リズムをとるためになどで扇子で音を鳴らしたりなどが主流だろう‥‥。

そして、彼女の指したその扇子は現在竜王と棋聖の2つのタイトルを持つプロ棋士「桐ヶ谷 明久」二冠。
その強さは誰もが認める実力者。
そんな彼の扇子に書かれた文字は「栄光」
まさしく彼だけのために作られた言葉と言っても過言ではない。

「桐ヶ谷二冠のこと知っているのか?」

「勿論、今日この時のために調べまくったにきまっているじゃないですか」

「そっか、君なりに頑張ってるんだね」

「はい、最近やっとルールも覚えてきたところですけど、戦法や囲いもイマイチ分からなくて‥‥」

「そういうのは僕が今度教えてあげるよ」

「本当ですか!! しょ、翔太様が私に将棋を‥‥  エヘヘへ」

最近こいつの様子がおかしくて流石の僕でも、少しひく。
数分経ったが、未だに彼女の頭は正常に動いていないらしく今もずっと独り言を呟き続けている。

いくら話しかけても彼女から反応がないので、仕方なく一人で2階の道場に向かうことにした。
エレベーターの扉が開くと共に僕はここに来たことに後悔した。

「お、お前‥‥」

「お、その声は翔太」

そいつは僕にとって、この上ない程嫌な存在。

「元気だった翔太?最近全く顔見せてくれないからお姉ちゃん寂しかったんだよ」

「秋姉さん‥‥」

村川 秋 僕の従兄弟のお姉さんだ。彼女は女流2段の女流棋士だ。
しかし、僕はこの人が「超」がつく程苦手だ。
姉さんは僕が小さな頃から僕をからかうのが大好きでいつもその標的にされていた。
具体的にどうからかうかということは僕からは凄く言いにくい。というか想像もしたくない。

「ねぇねぇ、翔太ぁ、翔太も寂しかったでしょ?私に会えなくて」

そう言って姉さんは僕の右腕を自分の方へと引っ張っていく。途端に右腕に柔らかい感触が僕を襲い、女性の香りが鼻をくすぐる。

これだ、姉さんはいつも僕にこういう行為をしては僕を困らせる。特に親に見られて僕はどれだけ気まずい思いをしたことか‥‥‥

「姉さん、僕はもう高校生なんだからそういうのはやめてください。いい大人が何してるんですか!」

そう言って右腕を無理やり離すが‥‥

「えぇ、いいじゃん。私は翔太とこうしていた方がいいんだけどなぁ?」

と言ってまた僕は右腕を持っていかれる。

「ねぇ、翔太様は何をしているのですか?重ねて質問しますが、その女の人は誰ですか?」

あ、すっかり忘れていた。そう気付いた時には遅かった。自分で指した、彼女を1階においていくということが大悪手だったということに‥‥‥。
そう、まさに頓死だ。
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