恋愛小話もしくはただのつぶやき

ヒトサマの人生

駅へ急ぐわたしの横をサイレンと共に走り去る救急車。
無いに越したことはないけれど非日常でありながら稀とまでは言えない日常の一コマ。
今誰かがあの中で痛い苦しいと助けを求めている。

若い頃。
その瞬間その度に「どうかどうか助かって！」と、それはもうけっこう真剣に祈った。心の中で手を合わせた。

今、
相当大人になって。
サイレンが通り過ぎる時「どうぞあなたとあなたの周りの方に最良の結果になりますように」と願っている。
たとえその先に待つものが死であったとしても。

自分が歳を重ねて思い残すことや出来得るだろうことが少なくなったせいもあるかもしれない。
だから壮絶な痛みを克服してまで到達した先に五体満足が無かったり、病魔と闘う途方も無い苦しみの先に希望が見えないなら。
それでも今この時、助かるべきなのかと考えてしまう。
そもそもわたし自身、辛い延命なら拒みたい派の弱虫なのだ。
なら死ぬのも怖いでしょ？と言われれば否定できないけど。
そもそもなんで生き物は死ななきゃならないんでしょうね。
ちょっと話がズレてきました、戻します。


こんなこと大きな声で言ったなら諸々四方八方のお歴々からお叱りを受けるだろうし、当然のことに先や結果は誰にも分からない。
けれどもし、あの中に凶悪犯が乗っていても？
はたして助かることが最良なのかと疑問に思ってはいけないことだろうか。
それでもいけないんだろう。
差別だと罵られるのだろう。
でもな。

諦めの悪い自己中で粘着質なストーカー野郎がたまたま目の前で思わぬ不慮の事故で瀕死の重症を負ったとして、被害者の女性が救急車を見送りながらどうかもうこのまま戻って来ないでと願うことはいけないこと？
と、小さな小さな声でつぶやいてみる。