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冒険者編
第66話 交渉
しおりを挟む「はぁ、もう夜か」
「ま、まぁ、あんな量の解体と買取だったらしょうがないんじゃないかな?」
「グルッグル」
冒険者協会から窓の外を覗けばすっかり日が沈んでしまい、月が夜空を照らしていた。地球の夜空にはない星座が輝いているのが、ここが異世界だという証明だ。
「あ、でも結構な金額で買い取ってもらえたからよかったんじゃない?」
「金貨56枚、560000バールか。確か、素材の保存状態が一級品だったんだっけ?」
「そうだね。量もあったし、少しサービスされてるんじゃないかな?」
「そうか、なら今日の夕飯は豪華に行くか」
「グル?グルッ!グルグルグッル!」
ゴジは賛成のようだ。
「ちょっと待った!」
「あぁ?やっぱり、この世界だと他人の邪魔をするのが礼儀なのか?…………ギルマス」
こっちに来て、人に会ってからは毎日誰かに話の腰折られてる気がするんだが……。
「あ、いや、その、なんかすまん。今日の依頼で起きた異常事態について話を聞きたい。上に来てくれ」
「いや、面倒なんだが?」
「おい、面倒で済まされる話じゃないぞ。……下手したら人が死ぬ」
「勝手に死んどけ……俺は早く飯が食いたい」
「冗談で言ってるんじゃない、俺は本気だぞ」
「ねぇ、一応話だけでも聞いた方がいいんじゃない?」
「生憎と俺も本気だぞ。ジオかゴジに関わってこないなら知ったことじゃない。時間があったら話を聞いたかもしれないがな、残念だ。明日でも聞いてくれ」
こういったことでジオの進級に悪影響を与えるような人間じゃないと分かった以上、付き合う義理はない。
「仕方ない。……大銀貨5枚」
「?」
「やる気あるのか?大金貨1枚だ」
「え?」
「高いぞ。金貨10枚」
「えぇ?」
「時は金なり。百歩譲って金貨30枚。その上でジオの昇格だ」
「もう、何言ってるか分からないよ」
「ラストオファー……金貨25枚。ジオの昇格に必要な常設依頼、10回分免除だ」
「まだ、安いな。でも、少し飯を遅らせる価値はあるか」
「随分と吹っ掛けてくれたな、坊主」
体を180度回転させてギルマスの方に向かう俺に、ジオが慌ててついてくる。
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