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冒険者編
第34話 ジオの過去
しおりを挟む母さんが死んだのは俺がまだ十歳だった時。その時、僕の心が折れたんだ。唯一、いつも優しくしてくれた母さんが死んでしまった僕には笑ってくれる人がいなくて、常に睨まれ続けて、心がだんだん他人を拒絶するようになってね。
でもある日、彼女にあったんだ。彼女の笑顔はまるで母さんが僕に向けてくれたものみたいに優しくて、優しくて、とっても……綺麗だった。僕と彼女は次第に恋に落ちて、最後には未来を誓い合った。彼女は僕の希望になったんだよ。たとえ侯爵家から追放されようとも、彼女となら幸せになれる気がしたんだ。
ただある日、僕の人生はまたひね曲がる。ある日、彼女もいなくなったんだ。フォックスハント侯爵によれば魔法の……実験体として売られたらしいんだ」
「そうか」
今の説明、淡々としていたが、最後の一文を言ったとき彼の瞳は燃えていた。
あの竜と同じ瞳。
俺と同じ瞳。
復讐に染まった燃える瞳だ。
彼は思い人を魔法の実験体にされた。そして、それを行なったものを恨んでいる。
「ただ、十五歳になった今日、僕は追放と見かけて殺されることになったんだ。もうダメかと思ったよ。でも君が助けてくれた。これで復讐が果たせるし、もしかして彼女が生きているなら助けに行ける。改めて、ありがとう。」
「いいや、俺はたまたまここに居合わせただけ。そうだな、ジオにだけ身の上話させるのも悪いな。俺の話もさせてくれ」
「え!?いいのかい?」
「ああ」
そっから、俺はこの世界に召喚させられてからの出来事を話した。もちろん元勇者だってこともだ。最初はめっちゃ驚いてたジオも、話してくとだんだん「まぁ、ノアだからな」とか言うようになってしまった。
俺のメンタルにちょっとダメージが入った。
「そうか、ノアも大変だったな」
「お前もな。それより、これからどうするつもりだ」
「そうだな、今日で死ぬと思ってたから諦めてたけど……出来れば、冒険者になって彼女、アルトリエを助けたい」
「冒険者かぁ。俺もなったほうがいいのかな?」
「ノアが行きたいのは神聖イスタリア王国だよね。ここはグルガルト王国だから国境を渡らなきゃいけないけど、国境を自由に行ったり来たりできるのはC級の冒険者からだから、なったほうがいいんじゃない」
「そうかぁ、じゃあ冒険者になるか」
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