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第三章
温泉の管理者家族
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『さえずり』ではいい情報を得られなかった・・・
僕たちは次の目的地であるサンスケさんの家へと向かう
サンスケさんの一族は代々温泉を管理している
その為、今回の温泉工事の責任者の一人にサンスケさんが選ばれた
王命とはいえ、自分達の管理する温泉とその為の建物が建て替えられる事に、一切の口出しが出来なかったかと言うと、そういうわけでも無いのだ
王の温泉建て替え命令は綺麗にする事、利便性を上げる事、そして自分の趣味の押し付けである
王はこの温泉を外交に使用するつもりでもあるので、ボロい温泉に他国の重鎮を招いたら恥をかいてしまうかもしれない
もしかしたら理解ある国の主導者は『味がある』と言ってくれるかもしれない
しかし、関係の悪い国だった場合、どう思われるかは分からないのだ
『こんなオンボロ温泉に呼びやがって、俺たちの国を舐めてるのか?』と取られるかもしれない
国の良い所を見せつける、ということも外交には必要なのだろう
そんな重要な仕事を任されてしまったこの村の村人達は、さぞ大変だったのだろう
僕も冒険者にならなかったら、村長の家族として、何か重要な仕事を任されていたのだろうか
その生活が僕にとって良い物か悪い物か、僕がその仕事を達成できたかは、もう村を出てしまった僕にはわからないことだ
ジェーンと他愛もない話をしながら温泉の方へと向かう
お昼前にサンスケさんの家にたどり着くことが出来た
彼の家は温泉の施設の向かいにある建物だ
正直、建て替えられてしまった温泉と比べると、雰囲気がまるで合っていない
前の建物だったら合ってたんだけど、管理する家族の家まで建て替えることはしなかったから、こうなったのだ
「やぁやぁ!マーク君、待ってましたよ」
「どうもお待たせしました」
サンスケさんは彼の家の窓辺で、僕たちの来るのを待っていたようだ
僕とジェーンを見つけ家から出てきて、ぱたぱたと走り寄ってきた
ここら辺では見ない服と珍しい履物を履いている
僕とジェーンの視線に気づいたのか、説明してくれた
「これですか?私の故郷の服なんですけどね
ローブを帯で留めているようなものですよ」
「へぇ~、こんな服があるんだねぇ」
「これは『着物』と言いましてね
着るのも脱ぐのも割と簡単で気持ちのいい服なんですが、動き回るとすぐ乱れてしまうんですよ
なので私は普段は家の中だけで着ていて、仕事着や普段着にはしてないんです」
「良い見た目してるし、あたしも着てみたら似合うかな?」
「うん、ジェーンなら似合うんじゃない?」
彼女は嬉しそうにサンスケさんの来ている服を、興味深そうに見ている
サンスケさんは神妙な顔つきになり、人差し指を立ててジェーンに話す
「・・・実は昔、温泉に入るお客様に着てもらおうと考えたこともあったんですよ
この服なら、他に無い雰囲気を味わってもらえると思ったんですけどね
どうもこの周辺の国々では使ってない生地でして・・・高くつくから、辞めたんですよねーアハハハ」
「ありゃー、そりゃ残念だなぁ」
サンスケさんは昨日の夜の怯えていた姿が嘘のように、明るく振舞っている
そういえば、もともとこういう冗談交じりで温泉の案内等をしてくれる人だった
僕とラビヤーが覆面男に襲われたことに対して怯えていた姿も、彼なのだろうけど
少しも不安を出さなかった他のメンバーがおかしかっただけなのだろうか・・・
「あっそちらの方は初めましてですね、温泉の管理をしていますサンスケ・テルマエと申します」
「ジェーンだ、フリーの冒険者で主に護衛の仕事をしてるよ」
サンスケさんとジェーンの自己紹介が終わると、サンスケさんに彼の家に入るように誘われた
彼の家族が中で待っているようだ
僕とジェーンは誘いに乗り、サンスケさんの家の中へと入っていった
サンスケさんの家に入ると、テーブルで女性が二人、談笑していた
僕は二人を知っているけど、ジェーンは初めて会うのでサンスケさんが紹介の場を作る
「紹介します、僕の妻と娘で「マーク兄ちゃん!」す・・・」
サンスケさんの紹介を遮り、彼の娘が僕の名前を呼ぶ
「久しぶりだねユキちゃん」
「うん!久しぶり!聞いてよ!あたしエステティシャンになったよ!」
「すごいじゃないか」
彼女はユキ
サンスケさんの娘さんで18歳・・・くらいだったっけな?
彼女が小さな頃で僕がまだ村を出る前、僕の爺ちゃんが村長なので、サンスケさんがよく訪ねてきていた
その時に連れられて家に遊びに来ていたので、相手してあげていた
彼女は温泉に併設されているエステで働くことが決まり、王都で修行して選ばれた三人のうちの一人だということを自慢してくる
「ユキ?久しぶりに会えて嬉しいのは分かるけど、お母さんも紹介させて?」
「あっ!ごめんおかーさん!」
「娘が失礼しました、サンスケの妻のロウリュと申します
マークちゃん、お久しぶりね」
彼女は元々村の人間ではない
僕が生まれてすぐの時に、この村の温泉に旅行に来てそのまま住み着いた人だ
僕の母の友人でもあったそうだ
ユキが生まれる前に何度か面倒を見てくれたことがあるらしいけど、僕は覚えていない
しかし、何か逆らえないような貫禄がある女性である
ジェーンもユキとロウリュさんへの自己紹介が終わったので早速、仕事の話に入る
温泉の改装計画に最も関わっている人たちだ
きっといい情報が得られるだろう
僕はそんな期待を胸に、彼女たちから話を聞く
僕たちは次の目的地であるサンスケさんの家へと向かう
サンスケさんの一族は代々温泉を管理している
その為、今回の温泉工事の責任者の一人にサンスケさんが選ばれた
王命とはいえ、自分達の管理する温泉とその為の建物が建て替えられる事に、一切の口出しが出来なかったかと言うと、そういうわけでも無いのだ
王の温泉建て替え命令は綺麗にする事、利便性を上げる事、そして自分の趣味の押し付けである
王はこの温泉を外交に使用するつもりでもあるので、ボロい温泉に他国の重鎮を招いたら恥をかいてしまうかもしれない
もしかしたら理解ある国の主導者は『味がある』と言ってくれるかもしれない
しかし、関係の悪い国だった場合、どう思われるかは分からないのだ
『こんなオンボロ温泉に呼びやがって、俺たちの国を舐めてるのか?』と取られるかもしれない
国の良い所を見せつける、ということも外交には必要なのだろう
そんな重要な仕事を任されてしまったこの村の村人達は、さぞ大変だったのだろう
僕も冒険者にならなかったら、村長の家族として、何か重要な仕事を任されていたのだろうか
その生活が僕にとって良い物か悪い物か、僕がその仕事を達成できたかは、もう村を出てしまった僕にはわからないことだ
ジェーンと他愛もない話をしながら温泉の方へと向かう
お昼前にサンスケさんの家にたどり着くことが出来た
彼の家は温泉の施設の向かいにある建物だ
正直、建て替えられてしまった温泉と比べると、雰囲気がまるで合っていない
前の建物だったら合ってたんだけど、管理する家族の家まで建て替えることはしなかったから、こうなったのだ
「やぁやぁ!マーク君、待ってましたよ」
「どうもお待たせしました」
サンスケさんは彼の家の窓辺で、僕たちの来るのを待っていたようだ
僕とジェーンを見つけ家から出てきて、ぱたぱたと走り寄ってきた
ここら辺では見ない服と珍しい履物を履いている
僕とジェーンの視線に気づいたのか、説明してくれた
「これですか?私の故郷の服なんですけどね
ローブを帯で留めているようなものですよ」
「へぇ~、こんな服があるんだねぇ」
「これは『着物』と言いましてね
着るのも脱ぐのも割と簡単で気持ちのいい服なんですが、動き回るとすぐ乱れてしまうんですよ
なので私は普段は家の中だけで着ていて、仕事着や普段着にはしてないんです」
「良い見た目してるし、あたしも着てみたら似合うかな?」
「うん、ジェーンなら似合うんじゃない?」
彼女は嬉しそうにサンスケさんの来ている服を、興味深そうに見ている
サンスケさんは神妙な顔つきになり、人差し指を立ててジェーンに話す
「・・・実は昔、温泉に入るお客様に着てもらおうと考えたこともあったんですよ
この服なら、他に無い雰囲気を味わってもらえると思ったんですけどね
どうもこの周辺の国々では使ってない生地でして・・・高くつくから、辞めたんですよねーアハハハ」
「ありゃー、そりゃ残念だなぁ」
サンスケさんは昨日の夜の怯えていた姿が嘘のように、明るく振舞っている
そういえば、もともとこういう冗談交じりで温泉の案内等をしてくれる人だった
僕とラビヤーが覆面男に襲われたことに対して怯えていた姿も、彼なのだろうけど
少しも不安を出さなかった他のメンバーがおかしかっただけなのだろうか・・・
「あっそちらの方は初めましてですね、温泉の管理をしていますサンスケ・テルマエと申します」
「ジェーンだ、フリーの冒険者で主に護衛の仕事をしてるよ」
サンスケさんとジェーンの自己紹介が終わると、サンスケさんに彼の家に入るように誘われた
彼の家族が中で待っているようだ
僕とジェーンは誘いに乗り、サンスケさんの家の中へと入っていった
サンスケさんの家に入ると、テーブルで女性が二人、談笑していた
僕は二人を知っているけど、ジェーンは初めて会うのでサンスケさんが紹介の場を作る
「紹介します、僕の妻と娘で「マーク兄ちゃん!」す・・・」
サンスケさんの紹介を遮り、彼の娘が僕の名前を呼ぶ
「久しぶりだねユキちゃん」
「うん!久しぶり!聞いてよ!あたしエステティシャンになったよ!」
「すごいじゃないか」
彼女はユキ
サンスケさんの娘さんで18歳・・・くらいだったっけな?
彼女が小さな頃で僕がまだ村を出る前、僕の爺ちゃんが村長なので、サンスケさんがよく訪ねてきていた
その時に連れられて家に遊びに来ていたので、相手してあげていた
彼女は温泉に併設されているエステで働くことが決まり、王都で修行して選ばれた三人のうちの一人だということを自慢してくる
「ユキ?久しぶりに会えて嬉しいのは分かるけど、お母さんも紹介させて?」
「あっ!ごめんおかーさん!」
「娘が失礼しました、サンスケの妻のロウリュと申します
マークちゃん、お久しぶりね」
彼女は元々村の人間ではない
僕が生まれてすぐの時に、この村の温泉に旅行に来てそのまま住み着いた人だ
僕の母の友人でもあったそうだ
ユキが生まれる前に何度か面倒を見てくれたことがあるらしいけど、僕は覚えていない
しかし、何か逆らえないような貫禄がある女性である
ジェーンもユキとロウリュさんへの自己紹介が終わったので早速、仕事の話に入る
温泉の改装計画に最も関わっている人たちだ
きっといい情報が得られるだろう
僕はそんな期待を胸に、彼女たちから話を聞く
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