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プロローグ
30にならなくても使えた魔法2
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※この作品は同人ゲーム「男子校でハーレムが作れる俺マジ勝ち組」からテキストを抜き出したノベル版です。
ゲームテキスト形式なので背景やキャラ名の指定が残っています。
原作ゲームは18禁ですが、今作は18禁シーンを削除し全年齢版として公開します。
PCを持っていない方のために、同じく全年齢版の体験版プレイ動画もございます。
詳しくは「はとごろTIMES」のホームページをご覧下さい。
また、漫画も投稿しています。そちらも是非ご覧下さい。
《自宅・リビング》
全員が『静香は女』だと思っているなら、母さんもそうだろう。なら泊まるとだけ説明すれば済むはずだ。昔からよく泊まっていたし。
そう思っていたのだが、それは静香を見た母さんが発した一言に打ち消された。
陽子
「あら、せーちゃんどうしたの? 女装?」
【女装】 男が女の格好をする、痛々しい行動のこと。
って、えぇぇぇえぇぇぇぇぇえぇえぇっ!?
零時
「か、母さん! 静香が男だって覚えてんのか!?」
陽子
「あらやだ、うちの子とうとう頭がおかしくなっちゃったのね……」
零時
「いや正常ですけど! むしろおかしいのは世の中ですけど!」
陽子
「やだ……今更中学二年生みたいなこと言わないで。お母さん悲しくなっちゃうわ」
零時
「そうじゃなくてさぁ!」
静香
「相変わらずで何よりですけど、今だけは零時が正しいです」
俺と母さんの漫才もどきのやり取りに、冷静に静香がツッコミを入れる。
だいたいいつもこんな感じなので、静香ももう慣れっこなのだろう。
母さんは割って入ってきた静香をじっと見て、あらあらと目を丸くする。
陽子
「……あら、何? 本当に女の子になっちゃってるじゃない」
静香
「認めたくないけけど、そうみたいで……」
静香
「零時と陽子さん以外は僕のこと、元々女だったと思ってるみたいなんですけど」
陽子
「私と……しょーくんだけ?」
陽子
「ふむふむ、だとしたら多分おとーさんも分かるわねぇ。いいえ、四ッ橋の人間とでも言いましょうか」
静香
「ど、どういうことです……?」
なんだかもったいぶった言い方をして、くすくすと含み笑いをする。
元々こういう悪乗りが好きな人なのだが、今だけは何か知ってるならさっさと言ってほしい。
陽子
「あのね、今から私が言うことは本当のことだから、信じてね?」
零時
「いいよそういう前振りはっ」
静香
「こんなことが起きている以上、信じられないことなんてないですよ」
陽子
「まーそうよねぇ。じゃあ言っちゃうわよ?」
陽子
「せーちゃん、しょーくんに女の子にされちゃったのよ☆」
……どうしよう、信じる以前に意味が分からなかった。
零時
「え……俺?」
陽子
「そうよ。全部あなたのせい」
静香
「どういうことだ……」
静香が怒りの眼差しを向けてくる。いや、そんなこと言われても俺なにもしてないですけど。
陽子
「四ッ橋家の男にはね、代々『一つだけ魔法が使えるようになる』という言い伝えがあるの」
おおーっと、突然胡散臭さか倍増したぁーっ!
陽子
「始まりは数百年前……しょーくんのご先祖様は六十歳まで童貞を保ったらしいわ」
零時
「よくそこまで保って子孫を残せたなご先祖様」
陽子
「そこで、彼は一度だけ使える魔法を覚えることが出来た……って話よ」
零時
「三十まで保つとどうのこうのって言うけど、六十までいかないといけないのか」
陽子
「そうみたいねぇ」
陽子
「その魔法で叶えた願いが『女の子とセックスさせてくれぇ!』だったそうな」
ああなるほど、だから子孫が残ったのかって納得できませんけど。
つーか俺の先祖最低だな。俺でもドン引くよ。うっわ俺そんな爺の血が流れてんのかようえぇっ。
陽子
「そして子供が出来て、家庭を持って、幸せに暮らしましたとさ」
陽子
「だけど問題はここから。魔法で作った子供には、父親と同じ魔力が残ってしまったらしいの」
陽子
「そして代々四ッ橋家の童貞には、一つの魔法が覚えられる程度の魔力を受け継がれるようになった……」
陽子
「ね、信じられないでしょ?」
零時
「ええ全く信じられません」
静香
「でも……事実なんですよね、それ」
陽子
「この言い伝えが事実かどうかは私には分からないけど、しょーくんが魔法を覚えたのは事実じゃない?」
陽子
「男の子を女の子にしてしまう魔法……ってところかしら」
ま、マジですか……
信じられないけど、ありえないけど、静香が女になってしまったのは事実。
信じなければいけないんだろう……
陽子
「きっとせーちゃんには女体化と、認識妨害の魔法がかかってるのね」
零時
「にんしきぼうがい?」
陽子
「魔法を魔法だと理解させない力のことね」
陽子
「並大抵の人間は、せーちゃんが男の子だったと思うことすらできないようになってるはずだわ」
零時
「そ、それで誰も疑問に思わなかったのか……」
静香
「元に戻る方法とか……ないんでしょうか」
陽子
「無理じゃない?」
静香
「即答された!?」
あまりに慈悲のない回答に静香がショックを受け項垂れる。
まぁ、この母にデリカシーって言葉はねーからな。
静香
「で、でも、零時の魔法が性転換とかなら可能性は……」
静香
「う…………」
零時
「どうした?」
静香
「……ま、魔法とか自分で言ったら寒気がした……」
零時
「うん、まぁ……なんとなくわかるよ」
静香
「こんなこと大真面目に話して……なんだかアホみたいじゃないか」
陽子
「あら、もしかして私馬鹿にされてる?」
静香
「そ、そんなことないです!」
陽子
「そう? じゃあ話を戻すわね」
陽子
「仮にしょーくんの魔法が性転換でも無理ね。一度魔法を使われちゃったら魔力耐性がついちゃうから」
静香
「魔力耐性?」
陽子
「そうよー」
零時
「母さん、なんでそんな詳しいの……胡散臭すぎんだけど」
陽子
「そんなの、おとーさんも昔魔法が使えたからに決まってるじゃない」
零時・静香
「えええええええマジでええええええ!?」
そうか、四ッ橋家の童貞だもんな、そりゃそうだ! って簡単に納得できることじゃないけどさ!
しかしこれ以上話の腰を折っても意味はない。ここはぐっと堪えて受け入れよう……
零時
「え、と、父さんどんな魔法使ったの」
陽子
「一時間×××が二本になる魔法だったわ」
す、すごいのかしょぼいのかわかんねぇ……! わかんねーけど、母親の口から×××とか聞きたくなかった!
陽子
「あの時、四ッ橋家の過去とか色々調べたものよ。おかげで変なことに詳しくなっちゃって」
静香
「じゃあ信頼していいんですね、その情報」
陽子
「そこは安心してちょうだい」
陽子
「まず魔力耐性についてだけど、相手に影響するタイプの魔法を使うと、一度使われた相手はその魔力に耐性がついてしまうの」
陽子
「つまり、同じ魔法は効かないってことね」
静香
「なるほど……」
陽子
「魔法の解除はとても高等な技術を必要とするらしいから、今は誰にもできないわ」
陽子
「唯一できるのはかけた本人であるしょーくんだけど……しょーくんは今日覚醒したばかり」
陽子
「解除ができるほどに魔力をコントロールするには十年以上の月日が必要になるわ」
陽子
「その間ずっと童貞でいろというのは酷な話でしょう?」
静香
「た、確かに……さすがにそこまで強制はできない」
零時
「というか、この性転換は父さんのやつみたいに時間制限はねーの?」
陽子
「認識妨害までかかっているほどだもの、恐らく一生モノ……短くて八十年ってところじゃないかしら」
静香
「要するに一生このままってことじゃないですか……」
陽子
「だから言ったじゃない、無理☆って」
陽子
「いーじゃないの、可愛いわよ? 心さんも女の子が欲しかったって言ってたし」
静香
「まぁ……そう、ですけど」
陽子
「あ……ごめんなさい、心さんは今関係なかったわね」
静香
「いえ…………」
心さんとは静香の母親のことだ。今でこそあまり会わないが、昔は母さんと仲良く話をしたりしてたらしい。
静香という名前も、女の子が欲しかったからつけたという。酷い話だ。小学生の頃なんか、名前のことでよくからかわれてたし。
……いや、今でも騒あたりがからかってるか。
陽子
「でも、その姿で男子寮に帰るのは頂けないわねぇ」
零時
「ああ、それで今日はうちに泊めようかと思ってたんだけど」
陽子
「今日と言わずにずーっと居ていいのよ? というかもう住みましょうよせーちゃん」
静香
「えっ? い、いや、そこまでお世話になるわけには……」
陽子
「やだもう、今更でしょう? ちょっと前なんか、二人してドロだらけで帰ってきたりして」
静香
「うわ、わ、わかりましたから昔話とかやめて下さいっ!」
陽子
「ふふっ、じゃあ決まりねぇ」
勝手に色々決められてしまったが、やっぱり母さんの図太さはこういうときに心強い。
いくら前例があるとはいえ、息子の男友達が女になってきたのにこの対応は普通出来ないだろう。
我が親ながら流石だ。これで他の部分でもしっかりしてくれると助かるんだけど。
陽子
「ふふふ、今日は私とお風呂に入る? 娘が出来たらしたかったのよねーこういうこと」
静香
「な、ば、馬鹿なこと言わないでください! 普通に無理ですからっ!」
静香
「というか自分ひとりでも入れる自信がないのに……」
零時
「そうだよな、風呂とかトイレは大変だろうな」
静香
「誰のせいでこうなったと思っている……」
零時
「俺っすね、すんません」
陽子
「しょーくんはせーちゃんに魔法をかけた心当たりはあるの?」
零時
「ねーよ。ちょっと手が触れただけで突然だ」
陽子
「あらぁ……相当魔力コントロールができてないのねぇ。これは先が思いやられるわ」
零時
「はぁ? どういう……」
陽子
「貴方はもう覚醒しちゃったんだから、これからこういうことが多々あると思うわ」
零時
「こういうって……まさか」
陽子
「男の子を女の子にしちゃうってこと」
やっぱりか!
零時
「ど、どうすんだよそんなの!」
陽子
「魔力コントロールばかりはどうしようもないもの……気合?」
零時
「疑問形で言われても!」
陽子
「まぁ頑張ったらいいじゃない。でも、あまり好き放題しちゃだめよ? 性転換って、案外その人の人生コロッと変えちゃうんだから」
零時
「…………」
さらっととんでもないことを言われた気がする。
性別が変わる……確かに、それは人生を反転させるようなものだ。
男と女じゃ何もかもが違う。
もしかして、俺はとんでもない疫病神なんじゃ……
静香
「あ……あの、零時?」
零時
「ん、なんだ……?」
静香
「えぇと……なんだ、その……さっきはああ言ったが……」
静香
「僕はそこまで気にしていないから、あまり落ち込むな」
零時
「…………」
静香
「な、なんだ……黙られると困るんだが」
零時
「いや……うん」
うわ、なんだ今の、やばい。ぐっときた。
可愛いとかそういうのもあるけど、それとは別に、静香がいいヤツ過ぎて泣けてきた。
零時
「さんきゅー、静香」
静香
「別に礼を言われても……気持ち悪いだけだ」
静香
「それに僕は……この方が…………」
静香
「……いや、これは言わなくてもいいことだな」
静香
「とにかく、明日からが大変そうだ。今日はもう休もう」
零時
「そうだな。苦労かけるぜ」
静香
「本当にな」
陽子
「じゃあせーちゃんには私の部屋を貸してあげるわ。私はおとーさんの部屋でいいから」
陽子
「どーせあと数年は帰ってこないんだろうしぃ」
静香
「ありがとうございます、何から何まで」
零時
「必要なものとかあったら揃えるから言ってくれよ」
静香
「はは、至れり尽くせりだな。悪くない」
こうして、変わらないと思っていた俺の日常は一変したのだった。
ゲームテキスト形式なので背景やキャラ名の指定が残っています。
原作ゲームは18禁ですが、今作は18禁シーンを削除し全年齢版として公開します。
PCを持っていない方のために、同じく全年齢版の体験版プレイ動画もございます。
詳しくは「はとごろTIMES」のホームページをご覧下さい。
また、漫画も投稿しています。そちらも是非ご覧下さい。
《自宅・リビング》
全員が『静香は女』だと思っているなら、母さんもそうだろう。なら泊まるとだけ説明すれば済むはずだ。昔からよく泊まっていたし。
そう思っていたのだが、それは静香を見た母さんが発した一言に打ち消された。
陽子
「あら、せーちゃんどうしたの? 女装?」
【女装】 男が女の格好をする、痛々しい行動のこと。
って、えぇぇぇえぇぇぇぇぇえぇえぇっ!?
零時
「か、母さん! 静香が男だって覚えてんのか!?」
陽子
「あらやだ、うちの子とうとう頭がおかしくなっちゃったのね……」
零時
「いや正常ですけど! むしろおかしいのは世の中ですけど!」
陽子
「やだ……今更中学二年生みたいなこと言わないで。お母さん悲しくなっちゃうわ」
零時
「そうじゃなくてさぁ!」
静香
「相変わらずで何よりですけど、今だけは零時が正しいです」
俺と母さんの漫才もどきのやり取りに、冷静に静香がツッコミを入れる。
だいたいいつもこんな感じなので、静香ももう慣れっこなのだろう。
母さんは割って入ってきた静香をじっと見て、あらあらと目を丸くする。
陽子
「……あら、何? 本当に女の子になっちゃってるじゃない」
静香
「認めたくないけけど、そうみたいで……」
静香
「零時と陽子さん以外は僕のこと、元々女だったと思ってるみたいなんですけど」
陽子
「私と……しょーくんだけ?」
陽子
「ふむふむ、だとしたら多分おとーさんも分かるわねぇ。いいえ、四ッ橋の人間とでも言いましょうか」
静香
「ど、どういうことです……?」
なんだかもったいぶった言い方をして、くすくすと含み笑いをする。
元々こういう悪乗りが好きな人なのだが、今だけは何か知ってるならさっさと言ってほしい。
陽子
「あのね、今から私が言うことは本当のことだから、信じてね?」
零時
「いいよそういう前振りはっ」
静香
「こんなことが起きている以上、信じられないことなんてないですよ」
陽子
「まーそうよねぇ。じゃあ言っちゃうわよ?」
陽子
「せーちゃん、しょーくんに女の子にされちゃったのよ☆」
……どうしよう、信じる以前に意味が分からなかった。
零時
「え……俺?」
陽子
「そうよ。全部あなたのせい」
静香
「どういうことだ……」
静香が怒りの眼差しを向けてくる。いや、そんなこと言われても俺なにもしてないですけど。
陽子
「四ッ橋家の男にはね、代々『一つだけ魔法が使えるようになる』という言い伝えがあるの」
おおーっと、突然胡散臭さか倍増したぁーっ!
陽子
「始まりは数百年前……しょーくんのご先祖様は六十歳まで童貞を保ったらしいわ」
零時
「よくそこまで保って子孫を残せたなご先祖様」
陽子
「そこで、彼は一度だけ使える魔法を覚えることが出来た……って話よ」
零時
「三十まで保つとどうのこうのって言うけど、六十までいかないといけないのか」
陽子
「そうみたいねぇ」
陽子
「その魔法で叶えた願いが『女の子とセックスさせてくれぇ!』だったそうな」
ああなるほど、だから子孫が残ったのかって納得できませんけど。
つーか俺の先祖最低だな。俺でもドン引くよ。うっわ俺そんな爺の血が流れてんのかようえぇっ。
陽子
「そして子供が出来て、家庭を持って、幸せに暮らしましたとさ」
陽子
「だけど問題はここから。魔法で作った子供には、父親と同じ魔力が残ってしまったらしいの」
陽子
「そして代々四ッ橋家の童貞には、一つの魔法が覚えられる程度の魔力を受け継がれるようになった……」
陽子
「ね、信じられないでしょ?」
零時
「ええ全く信じられません」
静香
「でも……事実なんですよね、それ」
陽子
「この言い伝えが事実かどうかは私には分からないけど、しょーくんが魔法を覚えたのは事実じゃない?」
陽子
「男の子を女の子にしてしまう魔法……ってところかしら」
ま、マジですか……
信じられないけど、ありえないけど、静香が女になってしまったのは事実。
信じなければいけないんだろう……
陽子
「きっとせーちゃんには女体化と、認識妨害の魔法がかかってるのね」
零時
「にんしきぼうがい?」
陽子
「魔法を魔法だと理解させない力のことね」
陽子
「並大抵の人間は、せーちゃんが男の子だったと思うことすらできないようになってるはずだわ」
零時
「そ、それで誰も疑問に思わなかったのか……」
静香
「元に戻る方法とか……ないんでしょうか」
陽子
「無理じゃない?」
静香
「即答された!?」
あまりに慈悲のない回答に静香がショックを受け項垂れる。
まぁ、この母にデリカシーって言葉はねーからな。
静香
「で、でも、零時の魔法が性転換とかなら可能性は……」
静香
「う…………」
零時
「どうした?」
静香
「……ま、魔法とか自分で言ったら寒気がした……」
零時
「うん、まぁ……なんとなくわかるよ」
静香
「こんなこと大真面目に話して……なんだかアホみたいじゃないか」
陽子
「あら、もしかして私馬鹿にされてる?」
静香
「そ、そんなことないです!」
陽子
「そう? じゃあ話を戻すわね」
陽子
「仮にしょーくんの魔法が性転換でも無理ね。一度魔法を使われちゃったら魔力耐性がついちゃうから」
静香
「魔力耐性?」
陽子
「そうよー」
零時
「母さん、なんでそんな詳しいの……胡散臭すぎんだけど」
陽子
「そんなの、おとーさんも昔魔法が使えたからに決まってるじゃない」
零時・静香
「えええええええマジでええええええ!?」
そうか、四ッ橋家の童貞だもんな、そりゃそうだ! って簡単に納得できることじゃないけどさ!
しかしこれ以上話の腰を折っても意味はない。ここはぐっと堪えて受け入れよう……
零時
「え、と、父さんどんな魔法使ったの」
陽子
「一時間×××が二本になる魔法だったわ」
す、すごいのかしょぼいのかわかんねぇ……! わかんねーけど、母親の口から×××とか聞きたくなかった!
陽子
「あの時、四ッ橋家の過去とか色々調べたものよ。おかげで変なことに詳しくなっちゃって」
静香
「じゃあ信頼していいんですね、その情報」
陽子
「そこは安心してちょうだい」
陽子
「まず魔力耐性についてだけど、相手に影響するタイプの魔法を使うと、一度使われた相手はその魔力に耐性がついてしまうの」
陽子
「つまり、同じ魔法は効かないってことね」
静香
「なるほど……」
陽子
「魔法の解除はとても高等な技術を必要とするらしいから、今は誰にもできないわ」
陽子
「唯一できるのはかけた本人であるしょーくんだけど……しょーくんは今日覚醒したばかり」
陽子
「解除ができるほどに魔力をコントロールするには十年以上の月日が必要になるわ」
陽子
「その間ずっと童貞でいろというのは酷な話でしょう?」
静香
「た、確かに……さすがにそこまで強制はできない」
零時
「というか、この性転換は父さんのやつみたいに時間制限はねーの?」
陽子
「認識妨害までかかっているほどだもの、恐らく一生モノ……短くて八十年ってところじゃないかしら」
静香
「要するに一生このままってことじゃないですか……」
陽子
「だから言ったじゃない、無理☆って」
陽子
「いーじゃないの、可愛いわよ? 心さんも女の子が欲しかったって言ってたし」
静香
「まぁ……そう、ですけど」
陽子
「あ……ごめんなさい、心さんは今関係なかったわね」
静香
「いえ…………」
心さんとは静香の母親のことだ。今でこそあまり会わないが、昔は母さんと仲良く話をしたりしてたらしい。
静香という名前も、女の子が欲しかったからつけたという。酷い話だ。小学生の頃なんか、名前のことでよくからかわれてたし。
……いや、今でも騒あたりがからかってるか。
陽子
「でも、その姿で男子寮に帰るのは頂けないわねぇ」
零時
「ああ、それで今日はうちに泊めようかと思ってたんだけど」
陽子
「今日と言わずにずーっと居ていいのよ? というかもう住みましょうよせーちゃん」
静香
「えっ? い、いや、そこまでお世話になるわけには……」
陽子
「やだもう、今更でしょう? ちょっと前なんか、二人してドロだらけで帰ってきたりして」
静香
「うわ、わ、わかりましたから昔話とかやめて下さいっ!」
陽子
「ふふっ、じゃあ決まりねぇ」
勝手に色々決められてしまったが、やっぱり母さんの図太さはこういうときに心強い。
いくら前例があるとはいえ、息子の男友達が女になってきたのにこの対応は普通出来ないだろう。
我が親ながら流石だ。これで他の部分でもしっかりしてくれると助かるんだけど。
陽子
「ふふふ、今日は私とお風呂に入る? 娘が出来たらしたかったのよねーこういうこと」
静香
「な、ば、馬鹿なこと言わないでください! 普通に無理ですからっ!」
静香
「というか自分ひとりでも入れる自信がないのに……」
零時
「そうだよな、風呂とかトイレは大変だろうな」
静香
「誰のせいでこうなったと思っている……」
零時
「俺っすね、すんません」
陽子
「しょーくんはせーちゃんに魔法をかけた心当たりはあるの?」
零時
「ねーよ。ちょっと手が触れただけで突然だ」
陽子
「あらぁ……相当魔力コントロールができてないのねぇ。これは先が思いやられるわ」
零時
「はぁ? どういう……」
陽子
「貴方はもう覚醒しちゃったんだから、これからこういうことが多々あると思うわ」
零時
「こういうって……まさか」
陽子
「男の子を女の子にしちゃうってこと」
やっぱりか!
零時
「ど、どうすんだよそんなの!」
陽子
「魔力コントロールばかりはどうしようもないもの……気合?」
零時
「疑問形で言われても!」
陽子
「まぁ頑張ったらいいじゃない。でも、あまり好き放題しちゃだめよ? 性転換って、案外その人の人生コロッと変えちゃうんだから」
零時
「…………」
さらっととんでもないことを言われた気がする。
性別が変わる……確かに、それは人生を反転させるようなものだ。
男と女じゃ何もかもが違う。
もしかして、俺はとんでもない疫病神なんじゃ……
静香
「あ……あの、零時?」
零時
「ん、なんだ……?」
静香
「えぇと……なんだ、その……さっきはああ言ったが……」
静香
「僕はそこまで気にしていないから、あまり落ち込むな」
零時
「…………」
静香
「な、なんだ……黙られると困るんだが」
零時
「いや……うん」
うわ、なんだ今の、やばい。ぐっときた。
可愛いとかそういうのもあるけど、それとは別に、静香がいいヤツ過ぎて泣けてきた。
零時
「さんきゅー、静香」
静香
「別に礼を言われても……気持ち悪いだけだ」
静香
「それに僕は……この方が…………」
静香
「……いや、これは言わなくてもいいことだな」
静香
「とにかく、明日からが大変そうだ。今日はもう休もう」
零時
「そうだな。苦労かけるぜ」
静香
「本当にな」
陽子
「じゃあせーちゃんには私の部屋を貸してあげるわ。私はおとーさんの部屋でいいから」
陽子
「どーせあと数年は帰ってこないんだろうしぃ」
静香
「ありがとうございます、何から何まで」
零時
「必要なものとかあったら揃えるから言ってくれよ」
静香
「はは、至れり尽くせりだな。悪くない」
こうして、変わらないと思っていた俺の日常は一変したのだった。
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