男子校でハーレムが作れる俺マジ勝ち組

葉鳥(はとごろTIMES)

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早乙女静香ルート

残酷な奇跡1

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※この作品は同人ゲーム「男子校でハーレムが作れる俺マジ勝ち組」からテキストを抜き出したノベル版です。
 ゲームテキスト形式なので背景やキャラ名の指定が残っています。
 原作ゲームは18禁ですが、今作は18禁シーンを削除し全年齢版として公開します。
 PCを持っていない方のために、同じく全年齢版の体験版プレイ動画もございます。
 詳しくは「はとごろTIMES」のホームページをご覧下さい。
 また、漫画も投稿しています。そちらも是非ご覧下さい。



《廊下》
放課後、俺は生徒指導室の扉の前に立っていた。
別に悪さをしたというわけではない。ただ待っているだけだ。
中からは微かに教師と女子二人の会話が聞こえてくる。
どういうわけか、こんなところに呼び出されたのは静香と伏嶋だった。
静香が教師から注意を受けるなんて考えられない。怪しすぎる。
そう思って外から様子を窺っていたのだが……その心配は無用だった。
教師
「もう二週間以上も二人揃って寮に帰っていないというから、何かに巻き込まれているのかと心配でな」
静香
「すみません……連絡を入れるべきでした」
確かに、言われてみるとその状況は異様だ。同じ部屋の女子生徒二人がずっと無断外泊を続けているのだから。
そのうち一人は、真面目優等生の早乙女静香。誰だって心配するに決まっている。
……もしかして、二人とも寮に戻ることになるのかな。
ふとそんなことを考える。これは草田先輩から聞いたことだが、寮というのは意外と安全な場所らしい。
多くの若者が共存生活する場なのだから、元々そういう問題への対策はされているとか。男子校なのに。
それに伏嶋と一緒なら、馬鹿な学生に襲われる心配もないだろう。
学園祭以来伏嶋へのちょっかいは消えている。むしろ恐れられている。不用意に近づく馬鹿もそうそういまい。
もう、うちは用済みなのかもしれない。
ずっとあいつの逃げ場所であろうとしてきたけど、そもそもそんなもの、ないほうがいい。
静香だって、いつまでも過去に足を引っ張られ続けるのは嫌なんだ。
恋人にはなったけど、それとは関係なく、そろそろ距離をおくべきなのか……

――ガラッ

静香
「あ……」
扉を開けて出てきた静香と目が合う。気まずそうに、聞いてたのか、という顔をされた。
桃滋楼
「なんだ、四ッ橋いたのか」
零時
「ごめん……静香がこんな所に呼ばれるとか不自然でつい」
桃滋楼
「だろうな。俺だって怪しいと思った」
静香
「別に聞いていたことを咎めはしないよ。そもそもお前にも関係がある話だ」
零時
「……寮、帰るのか?」
静香
「……どうしようか迷っているところだ」
静香
「先生には、退寮するか戻るかを明後日までに決めてくれと言われたが……」
……なんだろう、静香の表情がとても暗い。切羽詰っているとでも言うべきか。
桃滋楼
「四ッ橋、俺先にお前ん家戻ってる」
桃滋楼
「んで、お前らが帰ってきたらそのあたりについて話そうぜ。俺は走って帰るけど、お前らはゆっくり歩いてこいよな」
零時
「え、ちょっ……」
そう言い残し、止める隙もなく伏嶋は走り去ってしまった。
気を使ったんだ、俺達に。
家に帰るまでに、どんなに時間をかけてもちゃんと話し合って、お互いの意見をまとめろと。
見抜かれてたんだな……俺も、静香が出て行ってしまうことを不安がってるって。
そうだ。俺は静香に出て行ってほしくない。
好きなんだ。離れたいわけがない。一緒にいられる時間は多いほうがいい。
でも……
静香
「……今更、お前と陽子さんに迷惑がかかるからなんて、そんなことを言う資格は僕にない」
静香
「だから甘えたことを言ってしまうと、僕は退寮して、おまえといたい」
零時
「え……」
俺が考えていたことがそのまま静香の口から伝えられ、少し驚く。
それからじわりと目尻が熱くなった。うわ、情けな……こんなことで泣きかけてんのか俺。
嬉しいと思った。しかし、その気持ちは長続きしなかった。
静香
「…………おまえと、いたい……けれど…………」
静香
「退寮手続きには……親の、許可が必要なんだ……」
一気に熱が冷めた。寒気まで感じるほど。
静香はぎゅっと腕を掴む。それでも両腕はふるえていた。
静香
「連絡すること自体には問題などない。入寮の時と同じよう、父さんに伝えればいい」
静香の父親については、俺はあまり詳しくない。仕事が忙しくて家を空けることが多かったとは聞いている。
虐待の現場に出くわせば静香を庇うが、それだけで家族らしい会話をしたことはあまりないと静香は言っていた。
自分を忌み嫌い暴力を振るう母親と、他人のような父親。
そんな二人の子供だから、静香は未だに一般家庭への憧れと未練を捨てきれない。
静香
「きっと、言えばすぐに退寮できる。簡単に……」
それは、とても悲しいことだと思った。
退寮して友達の家に住むと言うだけで、理由の説明も求められず、あっさりと了承されてしまう。
それこそ、静香がずっと手に入れようとしてきた「普通の家庭」がそこに無いことの証明。
わかっていることでも、そんな現実を突きつけられるのは、辛い。
静香
「……い、やだ…………」
静香
「聞きたくない……あの人たちの、僕を拒絶しているような声も、他人を相手にしているような言葉も……もう、聞きたくなんかない」
静香の頬を涙が伝う。
それは助けを求める言葉。ずっと一緒に生きてきて、はじめて聞く言葉でもあった。
今までずっと、静香は両親を否定することだけはしなかった。逃げることこそあっても、嫌だとは冗談でも言わなかった。
それが今、崩れている。
ずっと溜め込んできたものが多すぎて、静香の小さな身体では支えられなくなってしまったのだ。
静香
「電話なんかしたくない……でも、お前とも、離れたくない……どっちも、怖い……う、あぁ……っ」
汚れることも気にせず床に崩れ落ちる静香。
俺は……俺が、伝えるべきことは……
零時
「俺も……おまえと、いたい」
静香
「え……」
きっと、これはとても残酷な選択なんだと思う。この静香が泣いてしまうほど辛いことを強いるんだから。
零時
「俺、お前がどれだけ辛い思いしてきたか知ってるのに……すげー最低なこと言ってるかもしれないけど」
零時
「でも、これを最後にすれば……後は俺がずっと一緒にいるから」
静香
「……さい、ご……?」
そう、これで終わらせるんだ。もう静香に両親なんか近づけない。その分、俺がなんでも与えてやる。
静香
「……今、がんばったら……おわるのか?」
静香
「もう、こんなに苦しまなくて……いいのか?」
零時
「当たり前だ。お前は、今までが辛すぎたんだから」
涙と埃で汚れてしまった静香の手をとる。
今度からは、こうなる前に俺が止めるんだ。
静香
「……零時」
零時
「なんだ?」
静香
「あと一回だけ、辛いこと、頑張る……だから」
静香
「おわったら……もう一回デートしてほしい。今度はちゃんと二人っきりだ」
零時
「んなもん、いくらでも行ってやる」
静香
「うん……約束だ」
ああ、よかった。笑ってくれた。
これからもずっと、俺の隣でこうして笑っていてほしい。心からそう思った。



《自宅・リビング》
零時
「というわけで、これからも静香と一緒に住みたいのですが」
陽子
「うん、いいわよー」
母さんの返事は案の定一言の肯定だった。そもそもこの人が静香を追い出すわけがない。
桃滋楼
「えっと、俺もこのまま世話になってていいのか?」
陽子
「当たり前じゃない。桃ちゃんだけ寮には行かせられないもの」
静香
「すまないな桃滋楼。勝手に僕達だけで決めてしまって」
桃滋楼
「いーよ、元々静香の決めたほうに着いてくつもりだったし。俺はどっちでもいいからな」
桃滋楼
「寮を出でたほうが、実家の負担が減るぶん助かったかも」
零時
「ありがとな、伏嶋」
桃滋楼
「れ、礼とか言われても困るし……」
陽子
「新しい住所はうちのを登録しておいていいのよ。緊急連絡先も私の携帯番号ね」
静香
「何から何まで……申し訳ないです」
陽子
「そういうこと言わないで、うちの子として堂々としてなさいな。そのうち苗字も四ッ橋になっちゃうんだし」
静香
「………………」
零時
「………………」
さっきあれだけのことを言ってしまっただけに、この冗談に笑って返すことはできなかった。
陽子
「あら、あらあら、二人とも顔真っ赤にしちゃってぇ」
零時
「というか、母さんもしかして気づいて……」
陽子
「当たり前よぅ、しょーくんとせーちゃんのことは何でもお見通しなんだから」
静香
「う、あ、えとその、ふ、ふつつかものですがそのっ」
零時
「静香テンパりすぎだ! 落ち着け!」
陽子
「こんな息子でよければ好きなだけ貰ってっていいのよー? 孫の顔が楽しみだわぁ」
静香
「うぇっ!?」
零時
「母さん!」
陽子
「ふふふふっ、可愛い子供たちだこと」



《自室》
零時
「……これでよかったんかな」
自室で一人そんなことを呟く。済んでしまったことはもうどうにもならないが、やはり気になってしまう。
自分の選択は、間違いではなかっただろうか。
零時
「…………落ち着かね」
寝る気にもなれず、外の空気でも吸おうと部屋を出た。



《住宅街・夜》
「はい……はい、お願いします」
零時
「ん……」
外に出ると、聞き覚えのある声がした。
静香
「はい。このままお世話になることも考えています」
静香
「…………父さんも、元気で。ありがとうございます」
ピッという音がして会話が終わる。父親に退寮のことを伝える電話をしていたのだろう。
元気で、という言葉以外、とても相手が父親とは思えない。
零時
「静香」
静香
「あ……零時。すまない、うるさかっただろうか」
零時
「全然。家の中まで聞こえてなかったよ。俺はたまたま出てきただけ」
静香
「ならよかった」
零時
「……今は、辛いか?」
静香
「……少しだけ。やっぱり父さんは人にかかる迷惑の有無だけ確認して了承したよ」
静香
「でも、これで終わったんだ」
零時
「そっか」
零時
「……なあ、約束のデート、今から行かね?」
静香
「今からって……もう十時になるぞ」
零時
「近く散歩するだけだって」
静香
「その程度で今日の約束を果たした気になられては困る」
零時
「俺も、何度だって行ってやるって言ったの忘れてもらっては困る」
静香
「む……これは僕の負けだな。いいよ、行こう」
二人でゆっくりと歩き出す。目的もなく、ただ一緒にいることだけを感じて。
静香
「こうして夜にお前と出歩くのは初めてかもしれないな」
零時
「そだな。なんだかんだ、まだしたことない事って多いのかも」
静香
「僕はお前と陽子さんに助けられた記憶ばかりだ。本当に、返しきれない恩がある」
零時
「その分俺とラブラブしていやなんでもない今のナシ」
静香
「恥ずかしがるなら言わなければいいのに」
零時
「うっせーノリだったんだよ深く追求しないで下さいお願いします」
静香
「でも、それでもいいよ、僕は」
静香
「今日ああして泣いてみて気づかされた。僕はもうお前がいなければ生きていけない」
静香
「僕にとってお前がそれだけ大きな存在になっているから、ずっと溜めていたことを吐き出せたんだ」
静香
「零時。お前が思っているより、僕はお前がその……好きだよ」
零時
「お、おう……」
静香
「うん……」
ふたりで夜道をゆっくりと進んでいく。
お互いの手は、自然と重なっていた。
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