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第4話 パーティー結成
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「人の言葉が分からないのか? 私は足手まといは不要だと言っている」
ギルド内の緊張した空気など知らぬげに、男は苛立ちも隠さずにそう言い切った。
「テメエっ、俺をレベル50だと知って言ってんのか!?」
当然、自分より格下だと思っている男の言葉にゴルフォは切れた。
止める間もない。
ヤツの拳が男の顔にめり込んだ———ように見えた。
「っ!?」
ゴルフォの拳が、男の顔の前で止まっている。
より正確に言うと、男が顔の前に翳すように手を上げ、拳一つ分の空間を開けてゴルフォの手が止まっている。
「ほお、見事な魔力制御ですねぇ」
室内の騒めきの合間に、オルコギルド長の感心した声がポツリと聞こえた。
「くそっ、くそぉ! 手が動かねえ!!」
停止したままのゴルフォの手は、空間に縫い付けられたように、手首から先が動かない。
暴言を吐き、恨めしげな視線を寄越すヤツをものともせず、男はただ面倒臭そうに溜息を一つ吐いた。
「奇遇だな。私もレベル50だ」
バンッ!!
それが引き金のように、小さな破裂音が響いて、辺りに一瞬閃光がひらめいた。
眩しさに閉じた目を開けてみれば、勝負は既に終わっていた。
「あ……あ、あ…………………」
今の一瞬で弾き飛ばされ、強く壁に叩きつけられたゴルフォがガクリと意識を失う。
オーッと何故か盛り上がる冒険者達。
まあみんな常日頃からゴルフォの態度には苛ついてたから、溜飲が下がったんだろう。
それにしても魔法職でレベル50って………。
俺はゴクリと唾を飲み込む。
魔法職はダンジョンにおいて補佐的な役割を期待されるから、レベルが上がりにくい。
このギルド内においても、最高でレベル40がいいとこだ。
見たところ俺と歳もさほど変わらないくらいだし、これから伸び代だってあるだろう。
彼はよっぽど魔力量が多いのか、それとも———
「大ダンジョンに挑戦したいのですか?」
穏やかなギルド長の声が俺の思考を打ち切った。
「最初からそう言っている。依頼に出していたら間に合わない。私が中に入って採取した方が手っ取り早い」
男の言い分から、目的はダンジョンそのものではなく、中の植物にあると分かった。
なるほど。彼くらい強ければ単独でも———いや駄目だ。
「そうですか。でもあなた1人では入場をお断りするしかありません」
「何故だ。自分の身は自分で守れる。他は足手まといだ」
再び男の声に苛立ちが混ざる。
「大ダンジョンは総合レベル60は必要です。あなたでは10足りません。これは冒険者の命を守るための絶対の規則です。聞き分けて頂けないのなら、お引き取りを」
穏やかな笑顔に圧を感じさせて、オルコギルド長はキッパリと言った。
そうだ。
この街に3つあるダンジョンのうち、最高レベルの大ダンジョンの最深部はまだ未踏破だ。
行かなかったのではなく、行けなかったのだ。
レベル制限付きで解放されてはいるが、危険なダンジョンに変わりはない。
黙り込んでしまった男を前に、「ところで」と声の調子を軽やかに変え、何故かギルド長は俺の肩をがっしりと掴んだ。
「ここに予定のない荷物持ちの青年がおります。ちょうどあなたに足りないレベル10で、過去に59階層まで到達したパーティーに同行しております。ガイドに適任だとは思いませんか?」
「ちょっと! オルコギルド長!?」
まるでお勧め商品を紹介するが如くの言い草に、俺は文句をつけるが、ギルド長の鉄壁の笑みはびくともしない。
「っ!」
チリリとした視線を感じ振り向けば、先程の魔法職のローブの男が、驚いた表情を浮かべて俺を見ていた。
なんだコイツ。最初は乱れた髪に隠れて分からなかったが、よく見るとギョッとするほど顔がいい。
澄んだ空色の瞳に、右目にはモノクルを着けている。
髪を整え、背筋を伸ばし、王侯貴族が着るような礼服を身につければ女子が群がる事間違いなしだ。
男は視線をゆっくりと、俺の背後のギルド長に移す。
「………………おい、知っていて、私に押し付けようという腹か」
「さあ? 一体何の事を仰られているのやら」
苦虫を噛み潰したような美貌の男と、ニコニコ笑顔を崩さないオルコギルド長。
俺にはサッパリ彼らの会話の意味が分からない。
やがて男は長い長い溜息を吐いたかと思うと、グルリと再び俺を見て言い放った。
「いいだろう。お前をこの私、魔法使いロワが引き受けた!」
ギルド内の緊張した空気など知らぬげに、男は苛立ちも隠さずにそう言い切った。
「テメエっ、俺をレベル50だと知って言ってんのか!?」
当然、自分より格下だと思っている男の言葉にゴルフォは切れた。
止める間もない。
ヤツの拳が男の顔にめり込んだ———ように見えた。
「っ!?」
ゴルフォの拳が、男の顔の前で止まっている。
より正確に言うと、男が顔の前に翳すように手を上げ、拳一つ分の空間を開けてゴルフォの手が止まっている。
「ほお、見事な魔力制御ですねぇ」
室内の騒めきの合間に、オルコギルド長の感心した声がポツリと聞こえた。
「くそっ、くそぉ! 手が動かねえ!!」
停止したままのゴルフォの手は、空間に縫い付けられたように、手首から先が動かない。
暴言を吐き、恨めしげな視線を寄越すヤツをものともせず、男はただ面倒臭そうに溜息を一つ吐いた。
「奇遇だな。私もレベル50だ」
バンッ!!
それが引き金のように、小さな破裂音が響いて、辺りに一瞬閃光がひらめいた。
眩しさに閉じた目を開けてみれば、勝負は既に終わっていた。
「あ……あ、あ…………………」
今の一瞬で弾き飛ばされ、強く壁に叩きつけられたゴルフォがガクリと意識を失う。
オーッと何故か盛り上がる冒険者達。
まあみんな常日頃からゴルフォの態度には苛ついてたから、溜飲が下がったんだろう。
それにしても魔法職でレベル50って………。
俺はゴクリと唾を飲み込む。
魔法職はダンジョンにおいて補佐的な役割を期待されるから、レベルが上がりにくい。
このギルド内においても、最高でレベル40がいいとこだ。
見たところ俺と歳もさほど変わらないくらいだし、これから伸び代だってあるだろう。
彼はよっぽど魔力量が多いのか、それとも———
「大ダンジョンに挑戦したいのですか?」
穏やかなギルド長の声が俺の思考を打ち切った。
「最初からそう言っている。依頼に出していたら間に合わない。私が中に入って採取した方が手っ取り早い」
男の言い分から、目的はダンジョンそのものではなく、中の植物にあると分かった。
なるほど。彼くらい強ければ単独でも———いや駄目だ。
「そうですか。でもあなた1人では入場をお断りするしかありません」
「何故だ。自分の身は自分で守れる。他は足手まといだ」
再び男の声に苛立ちが混ざる。
「大ダンジョンは総合レベル60は必要です。あなたでは10足りません。これは冒険者の命を守るための絶対の規則です。聞き分けて頂けないのなら、お引き取りを」
穏やかな笑顔に圧を感じさせて、オルコギルド長はキッパリと言った。
そうだ。
この街に3つあるダンジョンのうち、最高レベルの大ダンジョンの最深部はまだ未踏破だ。
行かなかったのではなく、行けなかったのだ。
レベル制限付きで解放されてはいるが、危険なダンジョンに変わりはない。
黙り込んでしまった男を前に、「ところで」と声の調子を軽やかに変え、何故かギルド長は俺の肩をがっしりと掴んだ。
「ここに予定のない荷物持ちの青年がおります。ちょうどあなたに足りないレベル10で、過去に59階層まで到達したパーティーに同行しております。ガイドに適任だとは思いませんか?」
「ちょっと! オルコギルド長!?」
まるでお勧め商品を紹介するが如くの言い草に、俺は文句をつけるが、ギルド長の鉄壁の笑みはびくともしない。
「っ!」
チリリとした視線を感じ振り向けば、先程の魔法職のローブの男が、驚いた表情を浮かべて俺を見ていた。
なんだコイツ。最初は乱れた髪に隠れて分からなかったが、よく見るとギョッとするほど顔がいい。
澄んだ空色の瞳に、右目にはモノクルを着けている。
髪を整え、背筋を伸ばし、王侯貴族が着るような礼服を身につければ女子が群がる事間違いなしだ。
男は視線をゆっくりと、俺の背後のギルド長に移す。
「………………おい、知っていて、私に押し付けようという腹か」
「さあ? 一体何の事を仰られているのやら」
苦虫を噛み潰したような美貌の男と、ニコニコ笑顔を崩さないオルコギルド長。
俺にはサッパリ彼らの会話の意味が分からない。
やがて男は長い長い溜息を吐いたかと思うと、グルリと再び俺を見て言い放った。
「いいだろう。お前をこの私、魔法使いロワが引き受けた!」
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