転移したら獣人国からお迎えが来ました

白葉

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王都到着!そして迂闊な俺。

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 ブロロロロ……

 「あ、見えてきた!アレ?」

 「ああ、そうだ。王都ウィンダルだ」

 「へえ~、流石デカいなぁ」

 助手席のヴァレリーによると、目の前にそびえる立派な城壁に守られた王都ウィンダルは、別名白の街というらしい。王宮も街の家々も、この世界では珍しい白い壁で統一されて作られているんだって。

 更に、街中はあちこちに噴水が設置されていて、噴水の周りに様々な種類の屋台が並ぶ賑やかな街でもあるらしい。へえ~、めっちゃ楽しみじゃん!

 それにさっきから気になってるけど、おわっ、チーターかな?あっちはヤマネコ?うおおお!イエ猫の獣人いるじゃん!!!

 城壁に近づくにつれ、様々なもふもふ達が目に飛び込んできて、俺のテンション爆上がり。

 いや、気をつけて運転してるぞ?今時速10~15キロ走行で動いているからな。でも、流石に車が認知されているだけあって、キャンピングカーに驚く人は少ない。

 むしろ、道を開けて敬う態度を取る人が多いんだ。なんせフェザーラプラスの部隊は、王太子殿下直属の部隊だって街でも有名だからだって。

 で、そんな有名どころが、何をして帰ってきたのかは、街の人達も当然知っている訳で。

 「ようこそ~!招かれ人様~!」
 「我らの街ウィンダルへようこそ!」
 「是非街に顔を出して下さーい!」
 
 色んな人達が、通り過ぎるたびに歓迎の言葉をかけてくれるんだよ。俺は嬉しくなって窓から手を出し「お世話になります!」って叫び返しているけどさ。

 ……ふと、疑問に思った。

 「なあ、ヴァレリー。なんでこんなに招かれ人が歓迎されるんだ?」

 「ああ、それは簡単にいうと、招かれ人がこの国の発展に協力を惜しまなかったからだな」

 「ん?という事は、俺と同じようにギフト持ちで現れるのか?」

 「ああ、そうだ。正直、俺が知る限りではトオヤは特に異色だが……トオヤの前の招かれ人が現れたのは、ちょうど十年前か?彼は建築魔法の第一人者でな。この街の住民の為に、家の建築や城壁の修理に貢献してくれたんだ」

 「へえ……でも、変な事を言うようだけど、それって招かれ人が自ら進んで行動しているのか?」

 俺は、つい国から強制されているんじゃないかって疑っちゃったんだ。

 で、俺達の会話を聞いていたんだろう。ディグラン様が会話に加わってきて、俺の疑問に答えてくれたんだけどさ。

 「トオヤ、安心しろ。王家は強制はしないぞ?願い出る事はあるが、基本招かれ人の決定に任せている。それに、この国や世界の法で招かれ人は保護対象だからな。立場的には、招かれ人は王家と変わりない立場になる」

 「へえ、かなり待遇がいいけど……もしかして過去になんかあった?」

 大抵保護されるって事は、認識されてない時代はかなり杜撰に扱われたって事だもんなぁ。

 「やっぱりわかるか?今は、過去の教訓を活かして手厚く保護するようになった、という事だけ伝えておこう。いずれトオヤもこの事を学ぶだろうからな」

 ふーん……とにかく変な先入観は持たない方が良さそうだな。

 ディグラン様の言葉にそんな結論を出していたら、一般の並んでいる門とは格段にデカくて立派な門の前に到着したんだ。

 そこもほぼフリーパス状態で、騎士さん達とは違う服装の門番さん達が門を守ってたんだ。勿論、門番さん達からも「ようこそウィンダルへ!」って、温かく歓迎してもらった。
 
 そうそう、猫科の国っていっても、他種族も当然いるんだなぁ。さっきの兵士さんは犬の獣人さんだったから、この国は多種族を排除しているわけでもなさそうだ。ちょっとホッとする。

 やっぱり平和主義の日本人出身だからなぁ。何事も平和が1番だけど、なにがあるかはわからないから、しっかり世界の事調べないとな。情報は命だ。

 ……ところで、さっきからジトッとした視線がまとわりついているのは、俺の気のせいじゃないよなぁ?主に、隣から感じるんだが……

 「ヴァレリー?どうした?」

 「……いや、何でもない」

 珍しく言い淀んで、フイッと横を向くヴァレリーに俺は首を傾げる。すると、後ろから「ククッ」と笑い声が聞こえたんだ。

 「ディグラン様?」

 「ああ、いや、悪い。ついヴァレリーの反応が面白くてな。トオヤ、悪いが隣の奴も構ってやってくれないか。獣人は番の事となると、心が狭くなるものなんだ」

 「トオヤさん、団長は拗ねてるだけなんですよ。トオヤさんが他の獣人にも笑顔を振りまいているから」

 未だ笑っているディグラン様と、理由を教えてくれたスタッグさんの言葉を聞いてチラッとヴァレリーを見ると……

 「……トオヤは、番の知識がまだないからな。だから仕方ないとはいえ、面白くないのは確かだ」

 なんて明らかに面白くないと顔に書いていたんだよ。助手席の騎士団長さん。

 ………なんだろうな?この胸のムズ痒い感じ。でもって、なんか可愛いんですけど!この雪豹さんってば!ああ!もう!抱きついてすりすりしたい!……でも、今、運転中だからなぁ。

 そう思った俺は、ヴァレリーの右手を恋人掴みをし、俺の頬にヴァレリーの手の甲を擦りつける。

 やっぱりいいわぁ、ヴァレリーの毛並み柔けえ……

 「ヴァレリーの手はあったかいなぁ。今日も一緒に寝ような」

 俺がそう言うと、グルグルグル……と喉を鳴らすヴァレリー。でもヴァレリーの瞳孔が細くなったのは、迂闊な俺は運転してて気が付かなかった。

 「……トオヤ、自滅したな」

 「アレ、絶対添い寝の話ですよ?今夜はそれは難しいでしょうに」

 そんな俺達の様子を見て、ディグラン様とスタッグさんが王宮に着いたらどうなるのか簡単に予想はついたらしいけど。

 この時の俺は、ただヴァレリーの機嫌が直ったのは良かった、と思っていただけだったんだ。

 だから次の日、俺はその言葉を発した事を心底後悔した。まあ、その話は後でわかるとして……

 ディグラン様が思い出したように俺に伝えた言葉に、俺は緊張が走る。

 「あ、トオヤ。王宮に着いたら、親父にあって貰うからな?」

 「ん?ディグラン様の親父……って王様?」

 「当然だ。因みにお前しばらく王宮に住んで貰うからな?」

 「えええ?俺一般市民ですけど……」

 「お前、俺の話覚えていないな?招かれ人は王家と同様の立場だって言ったろ?それに、お前はもう口にした事は覆せなさそうだしなぁ。なあ、ヴァレリー?」

 「当然ですね」

 「え?何?ヴァレリー?どういう事?」

 「トオヤさん、自業自得って言葉を送らせて頂きます」

 「え?スタッグさん?何その不穏な言葉?」

 俺の疑問は解消されないまま、王宮に無事に着いた事は着いたんだけど……
 
 俺、何しでかした?
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