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俺の執着心舐めんなよ!

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 「……という事は、スタッグ様達には俺が現れる事がわかっていたって事ですね?」

 「様達って……良いですよ、普通で。ところで……あのトオヤさん?その体勢でいいのですか?」

 「ええ、構いません。ドンと来いです!それよりも、すごいですね。王宮に転移者の来訪と場所を知らせる魔導具?があるのですから。おかげで状況も分かり、大変助かりました」

 「えっと……いえいえ。転移者の皆さんは貴重な力を持って訪れて、我が国にかなりの貢献をして下さっていますから。人族である事も踏まえ保護させて頂くのは、我らの特権とも言えます。……ただ、こんなにも早く状況を受け入れてくれる方は稀ですけど」

 「そうですか?皆様の優しさが伝わってきますから、地球に戻れない事を受け入れさえすれば当然じゃないですか?」

 「……ありがとうございます。(初日の数時間で泣きもせず、暴れもせず、黙りこむこともしないどころか、番まで受け入れる人族は貴方が初めてですけどね……)」

 ◇

 はい、状況を説明もせず失礼しました。あ、場所は変わってませんよ?俺が現れた場所のままです。(何故か敬語)

 ま、変わっているといえば、他の団員さん達が野営準備しているってとこかな。

 こちらの今の時刻は、大体午後3時頃なんだってさ。この世界の時間の単位は一刻(約2時間)。一刻毎に鐘が鳴るから、一の鐘(朝6時)から6の鐘(夕方6時)で数えるらしい。

 で、ヴァレリーさん達が住んでいる街から此処まで、馬?で4刻(8時間)かかるそうで、今日は無理しない事にしたんだってさ。

 この草原は弱い魔物しか出ないから安全だって言ってたけど…

 ……この世界魔物居たんかい……!

 いやあ、本気で迎えにきてくれてありがとうって思ったね。さすがは騎士団!とちょっと調子のいい事思ってたんだけど。

 あ、それで現在俺は、黒虎さんに状況の説明を受けております。

 黒虎さん改めスタッグ・バーニアさんは、ヴァレリーさんの部下で相棒の副団長らしい。

 やっぱり貫禄あるもんなぁ。それに、獣頭なのに困惑している表情がまた、俺にとってはご褒美です。

 猫と話せるのは、猫好きにとっての夢じゃん!いや、厳密に言えば猫科の虎獣人っていう、どちらかといえば猛獣カテゴリーで猫とは言いがたいけどな。

 良いんだ、猫科は猫だ!異論はない!

 ……ん?それよりも数分前、意識がフェードアウトしたんじゃないかって?

 うん、その通りさ。なぜ俺が起きているのか?それは、俺が生粋のケモナーだからと言えよう。そう、あの時俺がフッと意識を飛ばした時ーーー




 ぷにっ(トオヤだけが感じた音)




 わかる?柔らかく滅多に猫が触らせてくれないアレ!肉球のついた手が(実際はちょっと固かった)が倒れる俺の腕を掴み、次にモフッとした毛並みを感じたんだ……!


 その瞬間、倒れていられない!とカッッッと目が覚めたね。


 するとなんという事でしょう……!さっきまで固唾を飲んで見ていた毛並みが俺の顔に触れているじゃないですか!!!

 そう、さすが騎士団長。素早い動きで倒れそうな俺を抱き寄せてくれたんだ……!(感動)

 ……苦節27年。どんなに愛情を伝えてもエサの時(それも一瞬)しか近寄ってくれなかった猫達に揉まれた年月……。

 そうか……!今日この日の為にあったのだな!と俺は納得した!……考えてみれば、正当な立場ならば側に居られるって事だもんな。

 という事で、この際モフモフを感じる事ができるならば、多少男の矜持が削られようが気にしません!

 で、現在。胡座をかいて座っているヴァレリー団長さんの膝に腰かけて、思いっきり寄りかかっていますとも!ふわふわな毛並みが頬に当たってきもちいいったら。

 でも男としての立場は捨ててないから、すりすりは我慢しているけどさ。……さすがにそこまでやると、マナー違反だし、そんな覚悟もないからな。

 それでもってヴァレリー団長さんは、この状態が気に入ったのかご機嫌で俺の頭を撫でている。俺は一向に構いませんし!もふもふを満喫できるので俺もニコニコ。

 そんな俺たちの様子にスタッグさんの目は、呆れと驚きを交えながら説明してくれて今ココって訳。

 ……そもそも、ヴァレリー団長さんってそんなに普段と態度が違うんだろうか?そう首を傾げていると、今度はライオンさんが近づいてきたんだ。

 「おいおい、ヴァレリー。今からそんな調子で大丈夫かぁ?招き人、とりわけ人族は王族預かりになるってのに」

 「……陛下は番であれば考慮して下さる」

 「まあな。とはいえ1ヶ月は確実に時間貰うからな。招き人さんにこの国や世界の事を教え込まないといけないからなあ」

 「……理解はしている。が、こんなにも番というものは離れがたいものだったとは……!」

 俺の頭の上でゴロゴロ音を鳴らし、俺をすっぽり抱きしめるヴァレリー団長さん。

 因みにこのライオンさんは、ディグラン・セレリオさん。セレリオって聞いてもしかして……と思ったらやっぱりこの国の王族さんでした……!

 慌てて敬うも、「気にするな」と俺の頭を撫でてくれるくらい気さくな方だった。そんな気さくとはいえ王族の手をバシッと叩くヴァレリー団長さん。

 ディグラン様はそんな団長さんの様子に呆れていたけど、抱き込まれている俺といえば、その状態のおかげで頭の中は大騒ぎだった。

 うひょおおお!俺の頭にヴァレリー団長さんの頭が乗っている!喉下の毛もフサフサなんだ!!

 テンションの上がった俺は、無意識に喉下をすりすりしていたらしい。「グウゥ」と困った声を出すヴァレリー団長さんの声もこの時の俺は「可愛い!」と思って呑気なものだった。

 うーん、ここも柔らかくていい毛艶ですなぁ。……できれば服を脱いで抱きしめてくれたらもっと嬉しいんだけど。

 この時は……俺の貞操が危機に陥っていたなんて、全く考えて無かったからなぁ。むしろ、どうやって毎日もふもふ出来るか考えていたぐらいだし。

 まあ、俺が痛い目に遭うのは後の話だけどさ。

 それよりも、さっきから俺の鼻にいい匂いが届いてきているんだよ。俺は未だ俺の頭を撫でようとするディグラン様とヴァレリー団長さんの言い争いよりも、そっちが気になってどうしようもなかった。

 だって、食べ物が毛並みを作るといっても良いくらいだ。ケモナーとしては、団長さんを始め団員の皆さんがどんな食べ物を食べているのかが重要だ!目の保養の為でもあるからな!


 そんな感じで密かに調査を始めた俺は、食事が始まるとカルチャーショックを受けた……
 此処はやっぱり異世界だったんだよ。
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