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しおりを挟むなんやかんやあったが、とりあえず図書室へ来ることができた。
正直、ルークをどう扱ったらいいかわからなさすぎて、軽くパニックを起こしているのだけれど、まずは現状の把握が優先だ。
一通り目についた本を集めてきたので、ページをめくりながら、ざっと目を通していく。
────歴史書を見る限り、私の記憶にあるグリンバルデと違いはなさそうね。地図に載っている周辺国も同じ……あら?五年前に新しく出来た国、キルバがないわ。ああ、でも、今の私が7歳だとしたら、なくて当然ね。ということはやはり、身体が若返ったのではなくて、時が巻き戻ったと考えた方がいいのかしら……。
死んだはずの私が、十年も時を遡ってしまった。
現実的に考えてありえないことだが、実際起こってしまっているから、認めるしかない。
────神様のいたずらってやつかしら? だとしても、生き返らせるなら人選をしっかりしてほしいわ。私みたいな役立たずを生き返らせて十年前に送り込んだって、何にもならないでしょうに……。
世界の平和に貢献する英雄や聖女であれば、このような事態も少し受け入れられたかもしれない。
神様から何らかの役目を授かって世界を救いに来た、だとか高尚な理由があればまだいい。
だが、私はそんな素晴らしい能力は持ち合わせていないし、知恵もなければ賢くもない。なんせ『無知の王女』と嘲られた女だ。世界平和に貢献など、出来そうもない。
────そもそも、王女派はこの国の悪の象徴なんでしょう。衛兵達に悪徳貴族だって言われてた人達は、確かにみんな王女派だったわ。逆に王子派は正義の味方で、平民上がりの人達もたくさん活躍しているから、これからは平民でも幸せに暮らせる世界になるって衛兵達が嬉しそうに語っていたし……。これってつまり、私の死が平和に繋がるということ?
あまりに救いようのなさに、乾いた笑いがこぼれ出た。
どうやら私は救世主にはなれないようだ。
では、平和のために大人しく破滅させられるのを待つか。
いや、十年も時を遡ったのに同じ人生を辿るというのは、さすがに気が進まない。
私は一体どうするべきなのだろう。
考え込むように目を閉じれば、ある記憶が頭をよぎる。
死の間際、冷たい地面に頬をつけて目を瞑ったときのこと。
────叶うなら、もう一度やり直したい。
そう心から願った記憶が鮮やかに蘇る。
この願いが、神様に届いたのだとしたら。
「今度こそ、正しい道を……」
記憶をなぞるように呟いた言葉は、心に染みわたるように広がっていく。
私は後悔した。自分の無知を、怠慢を悔いた。
────もう、手遅れだと思っていたけれど。
これはきっと、私に与えられたチャンスだ。
やり直すための、今度こそ正しい人生を歩むための、神様がくれたチャンス。
絶対に無駄にはしない。
「正しく、強い王女になってみせるわ」
私は、もう二度と間違えない。
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