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魔法発現? 1

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 ユリウス先生が来てから、2ヶ月が過ぎる。試用期間が終わり、家庭教師に正式採用となった。
 先生の授業が面白いし、説明は分かりやすく、前世よりも勉強が楽しい。
 あの時は遊ぶものも無く、友達も居なくて、仕方なく勉強するしかなかったから。
 今楽しいのは、お兄様が一緒なのもあるけどね。

「はい、ではこの問題『8÷4』を考えてみましょう。」
「「はい!」」

 僕は暗算ですぐ答えを出し、先生に耳打ちする。

「はい、アレン君正解です。」

 イケメンの微笑みいただきました。僕にとって、小学生レベルの問題は余裕です。
 さて、後はお兄様をニコニコしながら眺める時間。お兄様は指を見ながら一生懸命考え、答えを出そうとしている。
 ウ~ンと唸りながら頑張ったが、どうにも答えは出ない。お兄様の眉尻が下がってしまった。
 ユリウスは悩むクリスを見て、考え方のヒントを出す事にした。

「クリス君大丈夫ですよ。考えやすくなるように、一緒にやりましょう。これを見てください。」

 黒板に綺麗な円を書き、その円に線を引いて8つに区切る。
 クリスはまだ良く分からず、黒板を見て首を傾げた。

「はい、良いですか?これは大きなケーキです。クリス君が家族皆で食べる為に、お店で買って来ました。何のケーキが好きですか?」
「チョコのケーキです!」

 好きな家族とケーキが出てきた事で、クリスはキラキラした目で一気に集中した。
 可愛らしい表情のクリスを、ユリウスは微笑ましく思った。

「ふふっ、私も好きですよ。では、チョコレートケーキを買いました。クリス君の家族は何人ですか?」

 クリスは家族を一人一人思い浮かべ、左手の指を折りながら数える。

「えっと、おとうさまと、おかあさまと、アレンと、ぼくだから……、4にん!」
「そうですね。8つに切り分けられたチョコレートケーキを家族4人で分けます。1人が食べられるケーキはいくつになりますか?」

 お兄様は目を瞑り、ケーキを分けるところを想像した。
 そのクリスを微笑ましく見守るユリウスとアレン。授業中よくある光景だ。

「わかった!アレンのケーキは2つだ!」
「正解です。」

 正解したことで、クリスの表情はパアッと明るくなった。
 やったー解けた!しかも僕で考えてくれるなんて、嬉しい!

「にーしゃま、えらい!」

 お兄様の頭を撫で撫ですると、嬉しそうに顔を緩ませた。

「クリス君、良くできました。割り算は、仲良く同じ数ずつになるように分けるという事です。難しく思った時は、さっきのように考えてみてくださいね。」
「はい。」

 数問問題を出し練習してみると、クリスは自分で考えて答えられるようになった。少し自信がついたように見える。

「アレンはすごいね。」
 
 えへへ、褒められた。前世で勉強しておいて良かった。
 そうそう、ユリウス先生に勉強出来過ぎると危険かを相談したら、頭が良い子はわりといるから、隠さなくて大丈夫だってさ。狙われたりとか怖いから、安心した。

「はい、算数はこれで終わりにします。次は地理のお勉強ですよ。」

 ユリウスは大きな地図をテーブルに広げ、折り目を手で伸ばした。
 クリスは興味深そうに見ていて、アレンも地図に目を落とす。
 地図の中心には大きな国。これがこの国ってことかな?周りには中小の国が多数描かれている。海も広い。
 当然というか、何というか……。見慣れたあの形をしている日本はどこにも無かった。
 やっぱりここは異世界なんだな……。未練なんて無いけど、ほんの少しだけ寂しく感じた。
 ユリウスが地図を指しながら説明を始める。

「この真ん中にある大きな国が、私達が住んでいる国『ドラゴンテイル』です。周りの国々とは友好的な関係を築いています。人の行き来や、物流、技術交流等も行っていますよ。歴史については後日やりましょうね。」
「「はい。」」

 大国なだけあり、王都から遠い土地だと、馬車で1ヶ月もかかるらしい。馬で行っても2週間。飛行機も新幹線も無いから、遠くへ行く時不便だよなぁ。ファンタジーだと、よく移動に使える魔法とかあったりするけど。

「大国ですから、他国への影響力も大きくなります。2人ともこの国を支える仕事に就く事になるでしょうから、頭に置いておいてくださいね。」
「「はい!」」

 ユリウスは子ども達の良い返事に頷く。

「今日はここまでにしましょう。」

 見ていた資料をパタンと閉じ、授業終わりの挨拶をした。

「ありがとうございました。」
「ありがとーざましゅ。」
「はい、ありがとうございました。」

 さーて、遊ぶぞー!お兄様を見るとニコッと笑う。やったー遊べるんだね!何しようかな?どうしようかな?
 ワクワクしてる僕は、地図を片付けている先生に大きく手を振って、迎えに来たフィーと一緒に部屋から出る。

「ねぇ、アレン。ふくしゅうしたいから、すこしまてる?」

 そっか、算数だから復習は特に大事だね。それならしょうがない。

「うん、だーじょぶ。」
「ありがとう。じゃあ、あとでアレンのへやにいくからね。」

 お兄様にバイバイと手を振り、少ししょんぼりした僕をフィーに引いてもらう。

「偉いですね、アレン様。そうだ、美味しいお菓子とジュースありますよ。たくさん遊べるように元気になっておきましょうね。」

 そっか、腹が減っては楽しく遊べないもんね!思わず僕はご機嫌になってしまう。

「おかし~じゅーしゅー~おいし~なぁ~。」
「ふふっ、すぐ用意しますね。」

 部屋に戻り僕を椅子に座らせると、フィーは素早くお菓子とジュースを持ってきた。

「マドレーヌとリンゴジュースですよ。」
「ありがと。」

 マドレーヌを取りパクッと1口食べた。うん、美味しい!残りもパクッと食べ、リンゴジュースをゴクゴクと飲む。

「はぁー、おいし~!」
「良かったです。パティシエに伝えておきますね。」

 お菓子とジュースで簡単にご機嫌になってしまう僕。やっぱり体の年齢に引っ張られるのかもしれないな。
 
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