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第十三話
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【第十三話】
『ジェム強盗事件』の懲罰も完遂され、自由の身になって数日後。
街中で俺を切り捨てた女性プレイヤー、アカネが、
「貴様の軟弱な精神を叩き直してやる!」
と戯言を吐いて、『ゴブリン領』との境界まで俺を連れてきた。
アカネというのは、刀を武器とする居合の達人だ。βテスターでもある。『水晶の洞窟事件』や『スキルジェム強奪事件』で嬉々として俺をリスキルしたプレイヤーの一人だ。
まあそんなことはどうでもいい。これからのことが重要だ。
『始まりの街』から東へ進むと、異種族のゴブリンが治める領土、『ゴブリン領』がある。
ゴブリンという種族は、好戦的で、また賢くもある。
なので、正式リリースが開始して一日、二日で彼らの存在が明らかになったが、彼らと友好関係を築くことは不可能だった。
さらに、彼らは社会を形成し、徒党を組んで人間の領土に攻めてくるようになった。
そのゴブリン領との境界では、ずっと人間対ゴブリンの戦争が起こっている。
ずっとだ。朝から晩まで一日中。毎日だ。
人間が負け続けると、すぐ西にある『始まりの街』が陥落するので、相当数のNPCが戦っているのだが、彼らだけでは勝ち続けることができないようになっている。
運営がそのような仕組みにしている。つまりプレイヤーに、つべこべ言わずにゴブリンと戦争しろ、と言っている訳だ。
大半のプレイヤーはこれを無視し、今日までやりたいように遊んでいる。
しかし、一部は例外だった。俗に言う『戦闘狂』たちだ。
彼らは闘うことを生きがいとし、敗北による死すら興奮の材料とする。
そのような『戦闘狂』たちは、喜び勇んで境界で戦っている。
今日も、また。
俺とアカネは、他数人のプレイヤーと共に馬車に乗り、境界付近の建物に到着した。
クラン【英雄の戦禍】のクランハウスだ。
【英雄の戦禍】というクランは、まさしく『戦闘狂』集団と言っていい。ハウスをこんなところに建てるくらいだからな。
「馬車だとすぐ着くんだな」
「それくらいゴブリンに押されてるという訳だ」
境界は、人間とゴブリンの戦争(以下、人ゴブ戦争)の戦況によって、東に押したり、西に押されたりする。
『始まりの街』がゴブリンの手に渡るのか否かは、プレイヤーの手に委ねられている。
「私たちも加勢するぞ」
「本当に行くのか……」
「男ならシャキッとしろっ!」
戦争に行きたくない気持ちを抱くのに、男でも女でも関係ないだろ!
と言いたいが、下手なことを言うとまた切り捨てられる。
どうせ死ぬなら、人類の役に立って死ぬか。
「なんか、やる気出てきた」
「その意気だ、トーマ!」
俺のスキルは集団戦向きだ。この戦いで上手く活躍できるかもしれない。
「行くぞ、アカネ!」
「言われんでもっ!」
俺たちは残り数百メートルの位置にある、ゴブリン領との境界に向かって走るのだった。
※※※
戦線に到着すると、なるほど、これはひどい。
ガチの戦争だ。一分で消えるはずなのに、人間とゴブリンの遺体がそこかしこに転がっている。
「怖気づいたか?ここはこれが普通だ」
「いや、武者震いってやつだ」
あまりにデスしすぎたので、死への恐怖は無くなったと思っていた。
だが、戦場を一目見た瞬間に宿った、この恐怖心はなんだ?
俺もまだまだ甘ちゃんだったということか。
「行くぞ!うおおおっ!」
短剣を鞘から抜き、ゴブリンの元へ躍り出る。
相手は一体。長剣を持っており、粗末な服を身に着けている。
ゴブリン・ソードマンか。
上位種のホブゴブリンじゃないので、俺でもやれるか?
いや、殺らなくては殺られる。
そうか、この気持ちか。
今まで、死んでもいいやという気持ちで、戦闘には真剣に取り組んでこなかった。
どうせ死んでも、失うものなど無いと分かっているからだ。
だが、ここでは違う。
一人の死が他の何人もの死につながり、ひいては異種族に侵略されるという末路が待っている。
ここで死ぬことは、人類の自由を失うということと同じだ。
「シャアッ!シャルシャアアアッ!」
ゴブリン・ソードマンが奇声を上げて剣を振り下ろしてくる。
焦るな。充分に引き寄せて、ここでよける。
ひらりと攻撃を躱した俺は、次の行動に移る。
右手に握っていた短剣を手放し、左手を真っ直ぐ伸ばして前に突っ込む。
ゴブリンが左手を出して掴みかかってくるが、空いた右手で押さえつける。
そのままもたれかかるようにゴブリンに倒れ込みながら、胸の中に左手を入れて魂を掴む。
長剣を振って殴りかかってくるが、素早く左手を引き抜くことで、ゴブリンの意識を奪う。
よし、決まった。
相手の行動を見て、次にしてくることを予想しながら自分も行動する。
たったこれだけのことに気付かなかった。
戦いとはこういうものなのか。
もたもたしていると次の相手がやってくるので、さっさと自分の魂と混ぜ合わせてゴブリンに戻す。
「周りのゴブリンを攻撃しろ」
新しく出来た配下に命令する。洗脳したゴブリンは、敵を求めて駆け出して行った。
落ちていた短剣を鞘に仕舞う。俺の戦い方は無手の方がいい。
さあ、新たな敵はどこだ。
「正面から来てくれるとは限らないぞ」
低い男の声が響く。どこだ?
っ!後ろか!
先ほどのゴブリンよりも大型の個体が、俺に向かって棍棒を振り下ろそうとしていた。
間に合わない!両手を犠牲にして……!
次の瞬間。
どこからともなくやって来た男が、俺とゴブリンの間に割り込み、左腕のトンファーで攻撃を受ける。
「名前は?」
「トーマです」
「わかった、トーマ」
男はトンファーをかち上げて棍棒を押し戻す。その勢いで右のトンファーの先端をゴブリンの脇腹に突き入れる。
「こいつは、俺がやっていいな?」
鋭い眼光で俺を睨みつける。
「はい」
俺が頷くや否や、痛みに唸るゴブリンの頭に、トンファーの連撃を叩き込む男。
何度目かの攻撃で、遂にゴブリンは沈んだ。
「済まないな。トーマの獲物を横取りしてしまった」
「いえ、庇って頂けなければ死んでいました」
「立ち話もなんだ。戦いながら話そう」
次のゴブリンがやってくる。今度は複数。
俺と男は囲まれてしまった。
「次はそうだな、レイピアにするか」
男がぶっきらぼうにそう言うと、手元のトンファーが消え去り、細長い剣が現れた。
「背中は任せていいな?」
「はい」
もう油断はしない。全員洗脳する。
俺の側にいるのはソードマン2匹に、棍棒を持ったゴブリン・ウォリアーが1匹。
後ろに男がいるから、カウンターを狙わず、こちらから攻める。
にじり寄った俺の頭を叩きつけんばかりに、中央のウォリアーが棍棒を振り下ろす。
ゴブリン同士の距離が近いから、振り下ろす攻撃しか出来ないみたいだ。
余裕を持って右に大きく躱す。
なぜなら、右のソードマンが突きをしてくるからだ。
これも回避。棍棒と長剣がぶつかって、ソードマンがたたらを踏む。
今だ。素早くソードマンの元に近づき、魂を抜き取る。
まずは1匹。
続いて、ウォリアーが棍棒を持ち上げながら振ってくる。
慌ててしゃがんでよける。抜け殻となったソードマンの肉体が吹き飛ぶ。
味方ごと攻撃してくるとは。
俺は隙だらけのウォリアーに向かうが、回り込んできたもう1匹のソードマンが切りかかってくる。
大柄なウォリアーの体に隠れて来ており、気づかなかった。
思わず、前に飛び込むようにして回避する。眼前に、棍棒を振り上げたウォリアーが飛び込んでくる。
集中しろ、絶対に死ぬな!
「ウギャルアアアッ!」
俺はしゃがんだ状態のまま、タイミングを合わせて振り下ろされる棍棒の側面に左手を添える。
手を左側に押し、攻撃の勢いを利用したまま右斜め前に前転する。
以前の俺では不可能だったであろう動き。自分の体を思いのままに動かせている。
棍棒がドシャッと振り下ろされる。
俺はすぐさま立ち上がると、ターンしてウォリアーの背に右手を突っ込む。
そして魂を抜き取りながら、体勢を立て直したソードマンの追撃をバックステップでよける。
2匹目はこれでオッケー。
最後のソードマンが剣先を下に向けたままこちらの様子を伺っている。
問題ない。攻める!
俺が愚直に直進していくと、ソードマンも愚直に袈裟切りを放つ。
避けるのが難しい、左下から右上への斜めの斬撃。
だが、突っ込めばいける。
前に進むスピードを急加速させ、半身になって斬撃をよけつつ右手をソードマンに突き入れる。
「ぐっ!」
少し腹を切られたところで、魂を抜かれたソードマンが沈黙する。
終わった。だが、すぐ次が来る。
新たにやって来たウォリアー(3匹目)と対峙しながら、ソードマンの魂に自分の魂を混ぜ込む。
「ギャルアッ!ギャアアアッ!」
ウォリアー(3匹目)の振り下ろし攻撃を躱し、倒れているソードマンの肉体に魂を戻す。
「目の前のやつと戦え」
そう命じて、空中に置きっぱなしのウォリアー(2匹目)の魂を拾う。
俺の手を離れた生身の魂は、一定時間その場に浮遊した後、固形の入浴剤のように、ゆっくりと外側から自壊してゆく。
今回はそんなに放置してなかったから、あまり小さくなっていない。
ゴブリン同士の戦いを注視しながら、自分の魂を混ぜ、隙を見てウォリアー(2匹目)に魂を入れる。
配下になったウォリアー(2匹目)が起き上がる。
「ここから少し離れてから、敵のゴブリンを攻撃しろ」
俺がそう命じると、配下のソードマンがウォリアー(3匹目)を切り伏せた。
「その調子で頼む」
ソードマンは攻撃を見て回避するような行動をとっていた。やはり俺の魂が配合されたおかげで、幾分賢くなっているようだ。
手駒が二匹になった。彼らには遊撃をさせ、少しでも戦況を有利にする。
「しかし、面白いな。洗脳するスキルか?」
とっくのとうに戦闘を終えていた男が訊いてくる。
はたから見ると相手の体の中に手を突っ込んだり、何もない空間を手でこねたりしているので、彼の目には不気味に移っただろう。
「まあ、そんな感じです」
「手を突っ込まなければいけないから、何も持たずに戦っているんだな」
「そうです」
俺が武器を持たない理由も見破られている。相当の観察眼だ。
「言い遅れたな。マスターだ」
「え、マスターさんってもしかして、『英雄』ですか?」
「そんな大層なもんじゃない。単に戦闘が好きなだけだ」
βテストで多大なる功績を残した『勇者』率いる四人組、その名も『勇者パーティ』。
彼、マスターさんはその内の一人で、『英雄』と呼ばれている。
彼のスキルは【アーツマスター】。あらゆる種類の初期装備の武器を手にすることができる。だが、一度に出しておける武器は一種類だけ、という制約がある。
並みのプレイヤーがこのスキルを持っても、満足に使いこなすことができず、初期装備しか出せない外れスキルだと嘆くことだろう。
だが、マスターさんはあえてこのスキルを作った。なぜなら、即座に新品の武器が手に入り、無限に戦い続けることができるからだ。
ゴブリンとの戦争が実装されたのも彼にとって幸運だった。人ゴブ戦争というイベントはβ版にはなかったらしい。
マスターさんは正に、戦いの女神に愛されているプレイヤーなのだ。
「俺のことはいい。次の戦いに移るぞ」
「天候魔法っ!1分後にいきまーす!!」
「……一回退くぞ、範囲型の魔法攻撃だ」
「はい」
天候魔法とは何だろうか。あまり人ゴブ戦争関連の情報を仕入れてなかったのが仇となった。
俺とマスターさんが十分に戦線から離れると、杖を持った女性が前に出た。
「いきますっ!『サンダー・レイン』!!」
女性が魔法名を唱える。雷なのか雨なのかよく分からない。
しかし、雷が雨のように降る、という意味らしかった。
いつの間にか、空が曇天になっていた。
地を焼き焦がさんとする雷が、怒涛のように辺りいっぱいに降り注ぐ。
ゴロゴロゴロッ!ゴロゴロッ!ピシャーン!!
音がうるさいが、爆発魔法ほどではない。鼓膜は無事だ。
だがゴブリンたちは無事ではない。雷に打たれた彼らは、比喩ではなく、消し炭になった。
「彼女はウェザー。天気を操る魔法使いで、俺のクランメンバーだ」
マスターさんが簡潔に説明してくれる。
このゲーム、安直に名前を付けるプレイヤーが多いな。人のことは言えないが。
ゴロゴロッ!!ピシャ!ゴロゴロゴロッ!ピシャーン!!
それにしても長い。生きてるゴブリンなんてもういないだろう。
「彼女のスキルには欠点のようなものがある」
ゴロゴロゴロッ!!!ゴロゴロッ!ピシャ!ピシャーン!!
「それは指定した天候が落ち着くまで時間を要するということだ」
「なるほど……」
ゴロゴロゴロッ!ピシャーン!!
最後に大きな稲光を放って、天気は落ち着いたか?依然として黒い雲が空を覆っているためよくわからない。
「まあこれでハイゴブリンも倒せただろうから、引き揚げるぞ」
マスターさんの一言で、さっきまで戦っていた人たちがゾロゾロと帰っていく。
帰る道すがら、マスターさんにゴブリンについて教えてもらう。
どうやら、ゴブリンには上位種がいて、ホブゴブリンが1つ上、ハイゴブリンが2つ上の種らしい。
また、ソードマンやウォリアーのように、扱う武器や戦い方によってゴブリン・○○やハイゴブリン・○○というような名前がつくとのこと。
「生きていたか、トーマ!少しは貧弱な心を正せたか?……って、『英雄』殿!失礼致しました!馬鹿が迷惑を掛けました!」
俺に向かって失礼なことを言いながらこちらに来たが、隣にいるのがマスターさんと分かると、途端に態度が変わるアカネ。
どうでもいいが、彼女は普通の人に対しては『○○殿』と呼ぶ。俺は異常な人なので、『貴様』と言われている。
「アカネか。久しぶりだな。もしかしてトーマと一緒に来たのか?」
「そうですっ!こいつのだらしない性根を叩き直しに来たんです!」
「そうか。ならもう、充分だと思うぞ」
「え?」
思わず素っ頓狂な声を上げるアカネ。
「以前のトーマを知らないが、今のトーマは覚悟を決めた戦士だ。戦い方にもセンスがある。観察眼と近い未来を読む能力に長けている」
「そうですか?」
「ああ、そうだ。これをもっと伸ばせば、一人でホブゴブリンを狩れるくらいになるだろう」
「ありがとうございます」
『英雄』に褒められるなんて、率直に言って嬉しい。
「そ、そうなのか。トーマ!成長したんだな」
お前は俺の何なんだ。でも、喜んでくれるのは嬉しい。
「粗方焼き払ったから、今日はもうやってこないだろう。明日以降加勢しに来てくれるかは任せる」
彼自身は戦闘狂だが、周囲の人に戦闘を強いることはしないらしい。本当によくできた人だ。
「まあ、なんだ、その、悪かったな、トーマ」
「え?なんだ急に」
ちょっと怖いぞ。
「今までひどい仕打ちをしてきて悪かったと言っている!」
「そんなことか。別に気にしてないから大丈夫だ」
「そ、そうか?」
「そうだ。戦闘の中でコツを掴んだから、むしろ今日連れてきてもらって良かったとも思ってる」
と言ってフォローしておく。
気が強いのもアカネの持ち味といえるからな。元気を出してもらわなければならない。
「それは……良かった」
顔を赤くして恥ずかしがるアカネ。
「でも、今回は死ななくて良かった。何度か危ない場面はあったが……」
これがいわゆる、死亡フラグというやつだったのかもしれない。
ゴロゴロゴロッ!ピシャーン!!
未だぐずつく空から放たれた雷により、俺は一瞬で死んだ。
天候魔法、恐るべし。
さらば現世!
『ジェム強盗事件』の懲罰も完遂され、自由の身になって数日後。
街中で俺を切り捨てた女性プレイヤー、アカネが、
「貴様の軟弱な精神を叩き直してやる!」
と戯言を吐いて、『ゴブリン領』との境界まで俺を連れてきた。
アカネというのは、刀を武器とする居合の達人だ。βテスターでもある。『水晶の洞窟事件』や『スキルジェム強奪事件』で嬉々として俺をリスキルしたプレイヤーの一人だ。
まあそんなことはどうでもいい。これからのことが重要だ。
『始まりの街』から東へ進むと、異種族のゴブリンが治める領土、『ゴブリン領』がある。
ゴブリンという種族は、好戦的で、また賢くもある。
なので、正式リリースが開始して一日、二日で彼らの存在が明らかになったが、彼らと友好関係を築くことは不可能だった。
さらに、彼らは社会を形成し、徒党を組んで人間の領土に攻めてくるようになった。
そのゴブリン領との境界では、ずっと人間対ゴブリンの戦争が起こっている。
ずっとだ。朝から晩まで一日中。毎日だ。
人間が負け続けると、すぐ西にある『始まりの街』が陥落するので、相当数のNPCが戦っているのだが、彼らだけでは勝ち続けることができないようになっている。
運営がそのような仕組みにしている。つまりプレイヤーに、つべこべ言わずにゴブリンと戦争しろ、と言っている訳だ。
大半のプレイヤーはこれを無視し、今日までやりたいように遊んでいる。
しかし、一部は例外だった。俗に言う『戦闘狂』たちだ。
彼らは闘うことを生きがいとし、敗北による死すら興奮の材料とする。
そのような『戦闘狂』たちは、喜び勇んで境界で戦っている。
今日も、また。
俺とアカネは、他数人のプレイヤーと共に馬車に乗り、境界付近の建物に到着した。
クラン【英雄の戦禍】のクランハウスだ。
【英雄の戦禍】というクランは、まさしく『戦闘狂』集団と言っていい。ハウスをこんなところに建てるくらいだからな。
「馬車だとすぐ着くんだな」
「それくらいゴブリンに押されてるという訳だ」
境界は、人間とゴブリンの戦争(以下、人ゴブ戦争)の戦況によって、東に押したり、西に押されたりする。
『始まりの街』がゴブリンの手に渡るのか否かは、プレイヤーの手に委ねられている。
「私たちも加勢するぞ」
「本当に行くのか……」
「男ならシャキッとしろっ!」
戦争に行きたくない気持ちを抱くのに、男でも女でも関係ないだろ!
と言いたいが、下手なことを言うとまた切り捨てられる。
どうせ死ぬなら、人類の役に立って死ぬか。
「なんか、やる気出てきた」
「その意気だ、トーマ!」
俺のスキルは集団戦向きだ。この戦いで上手く活躍できるかもしれない。
「行くぞ、アカネ!」
「言われんでもっ!」
俺たちは残り数百メートルの位置にある、ゴブリン領との境界に向かって走るのだった。
※※※
戦線に到着すると、なるほど、これはひどい。
ガチの戦争だ。一分で消えるはずなのに、人間とゴブリンの遺体がそこかしこに転がっている。
「怖気づいたか?ここはこれが普通だ」
「いや、武者震いってやつだ」
あまりにデスしすぎたので、死への恐怖は無くなったと思っていた。
だが、戦場を一目見た瞬間に宿った、この恐怖心はなんだ?
俺もまだまだ甘ちゃんだったということか。
「行くぞ!うおおおっ!」
短剣を鞘から抜き、ゴブリンの元へ躍り出る。
相手は一体。長剣を持っており、粗末な服を身に着けている。
ゴブリン・ソードマンか。
上位種のホブゴブリンじゃないので、俺でもやれるか?
いや、殺らなくては殺られる。
そうか、この気持ちか。
今まで、死んでもいいやという気持ちで、戦闘には真剣に取り組んでこなかった。
どうせ死んでも、失うものなど無いと分かっているからだ。
だが、ここでは違う。
一人の死が他の何人もの死につながり、ひいては異種族に侵略されるという末路が待っている。
ここで死ぬことは、人類の自由を失うということと同じだ。
「シャアッ!シャルシャアアアッ!」
ゴブリン・ソードマンが奇声を上げて剣を振り下ろしてくる。
焦るな。充分に引き寄せて、ここでよける。
ひらりと攻撃を躱した俺は、次の行動に移る。
右手に握っていた短剣を手放し、左手を真っ直ぐ伸ばして前に突っ込む。
ゴブリンが左手を出して掴みかかってくるが、空いた右手で押さえつける。
そのままもたれかかるようにゴブリンに倒れ込みながら、胸の中に左手を入れて魂を掴む。
長剣を振って殴りかかってくるが、素早く左手を引き抜くことで、ゴブリンの意識を奪う。
よし、決まった。
相手の行動を見て、次にしてくることを予想しながら自分も行動する。
たったこれだけのことに気付かなかった。
戦いとはこういうものなのか。
もたもたしていると次の相手がやってくるので、さっさと自分の魂と混ぜ合わせてゴブリンに戻す。
「周りのゴブリンを攻撃しろ」
新しく出来た配下に命令する。洗脳したゴブリンは、敵を求めて駆け出して行った。
落ちていた短剣を鞘に仕舞う。俺の戦い方は無手の方がいい。
さあ、新たな敵はどこだ。
「正面から来てくれるとは限らないぞ」
低い男の声が響く。どこだ?
っ!後ろか!
先ほどのゴブリンよりも大型の個体が、俺に向かって棍棒を振り下ろそうとしていた。
間に合わない!両手を犠牲にして……!
次の瞬間。
どこからともなくやって来た男が、俺とゴブリンの間に割り込み、左腕のトンファーで攻撃を受ける。
「名前は?」
「トーマです」
「わかった、トーマ」
男はトンファーをかち上げて棍棒を押し戻す。その勢いで右のトンファーの先端をゴブリンの脇腹に突き入れる。
「こいつは、俺がやっていいな?」
鋭い眼光で俺を睨みつける。
「はい」
俺が頷くや否や、痛みに唸るゴブリンの頭に、トンファーの連撃を叩き込む男。
何度目かの攻撃で、遂にゴブリンは沈んだ。
「済まないな。トーマの獲物を横取りしてしまった」
「いえ、庇って頂けなければ死んでいました」
「立ち話もなんだ。戦いながら話そう」
次のゴブリンがやってくる。今度は複数。
俺と男は囲まれてしまった。
「次はそうだな、レイピアにするか」
男がぶっきらぼうにそう言うと、手元のトンファーが消え去り、細長い剣が現れた。
「背中は任せていいな?」
「はい」
もう油断はしない。全員洗脳する。
俺の側にいるのはソードマン2匹に、棍棒を持ったゴブリン・ウォリアーが1匹。
後ろに男がいるから、カウンターを狙わず、こちらから攻める。
にじり寄った俺の頭を叩きつけんばかりに、中央のウォリアーが棍棒を振り下ろす。
ゴブリン同士の距離が近いから、振り下ろす攻撃しか出来ないみたいだ。
余裕を持って右に大きく躱す。
なぜなら、右のソードマンが突きをしてくるからだ。
これも回避。棍棒と長剣がぶつかって、ソードマンがたたらを踏む。
今だ。素早くソードマンの元に近づき、魂を抜き取る。
まずは1匹。
続いて、ウォリアーが棍棒を持ち上げながら振ってくる。
慌ててしゃがんでよける。抜け殻となったソードマンの肉体が吹き飛ぶ。
味方ごと攻撃してくるとは。
俺は隙だらけのウォリアーに向かうが、回り込んできたもう1匹のソードマンが切りかかってくる。
大柄なウォリアーの体に隠れて来ており、気づかなかった。
思わず、前に飛び込むようにして回避する。眼前に、棍棒を振り上げたウォリアーが飛び込んでくる。
集中しろ、絶対に死ぬな!
「ウギャルアアアッ!」
俺はしゃがんだ状態のまま、タイミングを合わせて振り下ろされる棍棒の側面に左手を添える。
手を左側に押し、攻撃の勢いを利用したまま右斜め前に前転する。
以前の俺では不可能だったであろう動き。自分の体を思いのままに動かせている。
棍棒がドシャッと振り下ろされる。
俺はすぐさま立ち上がると、ターンしてウォリアーの背に右手を突っ込む。
そして魂を抜き取りながら、体勢を立て直したソードマンの追撃をバックステップでよける。
2匹目はこれでオッケー。
最後のソードマンが剣先を下に向けたままこちらの様子を伺っている。
問題ない。攻める!
俺が愚直に直進していくと、ソードマンも愚直に袈裟切りを放つ。
避けるのが難しい、左下から右上への斜めの斬撃。
だが、突っ込めばいける。
前に進むスピードを急加速させ、半身になって斬撃をよけつつ右手をソードマンに突き入れる。
「ぐっ!」
少し腹を切られたところで、魂を抜かれたソードマンが沈黙する。
終わった。だが、すぐ次が来る。
新たにやって来たウォリアー(3匹目)と対峙しながら、ソードマンの魂に自分の魂を混ぜ込む。
「ギャルアッ!ギャアアアッ!」
ウォリアー(3匹目)の振り下ろし攻撃を躱し、倒れているソードマンの肉体に魂を戻す。
「目の前のやつと戦え」
そう命じて、空中に置きっぱなしのウォリアー(2匹目)の魂を拾う。
俺の手を離れた生身の魂は、一定時間その場に浮遊した後、固形の入浴剤のように、ゆっくりと外側から自壊してゆく。
今回はそんなに放置してなかったから、あまり小さくなっていない。
ゴブリン同士の戦いを注視しながら、自分の魂を混ぜ、隙を見てウォリアー(2匹目)に魂を入れる。
配下になったウォリアー(2匹目)が起き上がる。
「ここから少し離れてから、敵のゴブリンを攻撃しろ」
俺がそう命じると、配下のソードマンがウォリアー(3匹目)を切り伏せた。
「その調子で頼む」
ソードマンは攻撃を見て回避するような行動をとっていた。やはり俺の魂が配合されたおかげで、幾分賢くなっているようだ。
手駒が二匹になった。彼らには遊撃をさせ、少しでも戦況を有利にする。
「しかし、面白いな。洗脳するスキルか?」
とっくのとうに戦闘を終えていた男が訊いてくる。
はたから見ると相手の体の中に手を突っ込んだり、何もない空間を手でこねたりしているので、彼の目には不気味に移っただろう。
「まあ、そんな感じです」
「手を突っ込まなければいけないから、何も持たずに戦っているんだな」
「そうです」
俺が武器を持たない理由も見破られている。相当の観察眼だ。
「言い遅れたな。マスターだ」
「え、マスターさんってもしかして、『英雄』ですか?」
「そんな大層なもんじゃない。単に戦闘が好きなだけだ」
βテストで多大なる功績を残した『勇者』率いる四人組、その名も『勇者パーティ』。
彼、マスターさんはその内の一人で、『英雄』と呼ばれている。
彼のスキルは【アーツマスター】。あらゆる種類の初期装備の武器を手にすることができる。だが、一度に出しておける武器は一種類だけ、という制約がある。
並みのプレイヤーがこのスキルを持っても、満足に使いこなすことができず、初期装備しか出せない外れスキルだと嘆くことだろう。
だが、マスターさんはあえてこのスキルを作った。なぜなら、即座に新品の武器が手に入り、無限に戦い続けることができるからだ。
ゴブリンとの戦争が実装されたのも彼にとって幸運だった。人ゴブ戦争というイベントはβ版にはなかったらしい。
マスターさんは正に、戦いの女神に愛されているプレイヤーなのだ。
「俺のことはいい。次の戦いに移るぞ」
「天候魔法っ!1分後にいきまーす!!」
「……一回退くぞ、範囲型の魔法攻撃だ」
「はい」
天候魔法とは何だろうか。あまり人ゴブ戦争関連の情報を仕入れてなかったのが仇となった。
俺とマスターさんが十分に戦線から離れると、杖を持った女性が前に出た。
「いきますっ!『サンダー・レイン』!!」
女性が魔法名を唱える。雷なのか雨なのかよく分からない。
しかし、雷が雨のように降る、という意味らしかった。
いつの間にか、空が曇天になっていた。
地を焼き焦がさんとする雷が、怒涛のように辺りいっぱいに降り注ぐ。
ゴロゴロゴロッ!ゴロゴロッ!ピシャーン!!
音がうるさいが、爆発魔法ほどではない。鼓膜は無事だ。
だがゴブリンたちは無事ではない。雷に打たれた彼らは、比喩ではなく、消し炭になった。
「彼女はウェザー。天気を操る魔法使いで、俺のクランメンバーだ」
マスターさんが簡潔に説明してくれる。
このゲーム、安直に名前を付けるプレイヤーが多いな。人のことは言えないが。
ゴロゴロッ!!ピシャ!ゴロゴロゴロッ!ピシャーン!!
それにしても長い。生きてるゴブリンなんてもういないだろう。
「彼女のスキルには欠点のようなものがある」
ゴロゴロゴロッ!!!ゴロゴロッ!ピシャ!ピシャーン!!
「それは指定した天候が落ち着くまで時間を要するということだ」
「なるほど……」
ゴロゴロゴロッ!ピシャーン!!
最後に大きな稲光を放って、天気は落ち着いたか?依然として黒い雲が空を覆っているためよくわからない。
「まあこれでハイゴブリンも倒せただろうから、引き揚げるぞ」
マスターさんの一言で、さっきまで戦っていた人たちがゾロゾロと帰っていく。
帰る道すがら、マスターさんにゴブリンについて教えてもらう。
どうやら、ゴブリンには上位種がいて、ホブゴブリンが1つ上、ハイゴブリンが2つ上の種らしい。
また、ソードマンやウォリアーのように、扱う武器や戦い方によってゴブリン・○○やハイゴブリン・○○というような名前がつくとのこと。
「生きていたか、トーマ!少しは貧弱な心を正せたか?……って、『英雄』殿!失礼致しました!馬鹿が迷惑を掛けました!」
俺に向かって失礼なことを言いながらこちらに来たが、隣にいるのがマスターさんと分かると、途端に態度が変わるアカネ。
どうでもいいが、彼女は普通の人に対しては『○○殿』と呼ぶ。俺は異常な人なので、『貴様』と言われている。
「アカネか。久しぶりだな。もしかしてトーマと一緒に来たのか?」
「そうですっ!こいつのだらしない性根を叩き直しに来たんです!」
「そうか。ならもう、充分だと思うぞ」
「え?」
思わず素っ頓狂な声を上げるアカネ。
「以前のトーマを知らないが、今のトーマは覚悟を決めた戦士だ。戦い方にもセンスがある。観察眼と近い未来を読む能力に長けている」
「そうですか?」
「ああ、そうだ。これをもっと伸ばせば、一人でホブゴブリンを狩れるくらいになるだろう」
「ありがとうございます」
『英雄』に褒められるなんて、率直に言って嬉しい。
「そ、そうなのか。トーマ!成長したんだな」
お前は俺の何なんだ。でも、喜んでくれるのは嬉しい。
「粗方焼き払ったから、今日はもうやってこないだろう。明日以降加勢しに来てくれるかは任せる」
彼自身は戦闘狂だが、周囲の人に戦闘を強いることはしないらしい。本当によくできた人だ。
「まあ、なんだ、その、悪かったな、トーマ」
「え?なんだ急に」
ちょっと怖いぞ。
「今までひどい仕打ちをしてきて悪かったと言っている!」
「そんなことか。別に気にしてないから大丈夫だ」
「そ、そうか?」
「そうだ。戦闘の中でコツを掴んだから、むしろ今日連れてきてもらって良かったとも思ってる」
と言ってフォローしておく。
気が強いのもアカネの持ち味といえるからな。元気を出してもらわなければならない。
「それは……良かった」
顔を赤くして恥ずかしがるアカネ。
「でも、今回は死ななくて良かった。何度か危ない場面はあったが……」
これがいわゆる、死亡フラグというやつだったのかもしれない。
ゴロゴロゴロッ!ピシャーン!!
未だぐずつく空から放たれた雷により、俺は一瞬で死んだ。
天候魔法、恐るべし。
さらば現世!
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