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第九話
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【第九話】
「僕のスキルは【守るべき者】っていうものでね。味方が生きている限り何度でも蘇生できるんだ」
「シンプルに強いな。継戦能力が段違いだ」
Kは土に飲み込まれた後に地中で蘇生したはいいものの、地面に埋まったままだったので手を出すのがやっとだったらしい。
そのおかげで俺でも倒せたし、本当に助かった。
「しかし、三十個か。多いのか少ないのか微妙だな」
Zさんが感想を漏らす。彼は『悪魔』を倒し、一分経ってアイテム化したところで戻ってきた。
「ド畜生が戻ってきましたよ!」
やべ、Yも来た。
すぐさま変身して突っ込んでくる。
もちろん避けられるはずはなく、全速力の突進をモロに受けた俺は激しい衝撃とともに死んだ。
俺、死ななくていいところで死んでばっかりじゃないか?
なんてことを思いながら、リスポーンまでの一分間を待つのであった。
※※※
俺が再び帰ってくると、介錯をしてもらったIを含め、全員が集合していた。
「すごいわね、トーマ。『悪魔』を倒すなんて」
「ハッパの爆破で弱っていたから、俺でもやれただけだ。Kのサポートもあったしな」
「全員が大活躍ってことでいいじゃない?全力出せたでしょ?」
俺が謙遜というか、事実を語ると、ハッパが良い感じにまとめた。
「ハッパの言う通りだな。……ところで、『ソウルジェムの欠片』だが、どうやって分配する?」
Zさんが重要な話を切り出す。
「あ、それなんですけど、もし良かったら俺のフレンドで再生能力のスキル持ちがいるんで、彼にスキルをチャージしてもらうっていうのはどうですか?」
「再生能力持ち!?それって発動条件とかは?」
「ない。傷ができたら徐々に回復する。四肢の欠損もゆっくりだけど治る。致命傷を受けたら普通に死ぬけどな」
たまらず口を挟んできたYにグレープのスキルについて話す。
「込めるスキルについて考えてなかったから、こちらとしては願ったり叶ったりだが、ジェムの取り分はどうする?トーマとハッパがいなけりゃ倒せなかったし、俺としては三十個丸々上げたい気分だが」
「いや~いいでしょ、ね、トーマ?」
「そうだな。Zさん、そう言ってくれるのはありがたいですが、遠慮します。三十個持っていってください」
「いいのか?トーマたちは再生能力を欲しくないのか?」
正直なところ、『スキルジェム』は俺たちの手に余る品だ。
元々倒せるとも思っていなかったし、俺たち基本ソロプレイだしな。宝の持ち腐れになる確率が高い。
「はい。俺たちだけでも倒せなかったので。それに、こういうアイテムはクラン単位で使った方が活きると思います」
「明日も湧くから、いくらでも手に入るでしょ!」
「そ、そうか?ならありがたく貰うが……」
『スキルジェム』の所有権が決まったところで、遠くからガチャガチャと鎧の擦れる音がする。
「おおおい!『悪魔』か!?今行くぞおお!」
「あれが再生能力持ちのフレンドです」
俺は遠くに見えるグレープを指さす。
「なんというか、愉快な人ね」
Iが正直な感想を漏らす。
「俺が来たぞ!『悪魔』は!?『悪魔』はどこだ!?」
「もう倒したぞ。どこ行ってたんだよ、グレープ」
俺はため息をつきながら、【アルファベット】の皆にグレープの紹介をするのだった。
※※※
「それで、これにスキルを込めればいいんだな?」
テーブルの上に置かれた透明な3つの『スキルジェム』を見て、グレープが言う。
場所は変わって、【アルファベット】のクランハウスにお邪魔している。
外でジェムを出しているとPKの的なので、屋内の落ち着いたところにやって来た。
「ああ、やってみてくれ」
「スキルを込めるって、どうやればいいんだ?」
「魔法使いになったみたいに考えればいいんじゃない?ギュっと対象に向かって魔力を使うみたいな」
魔法使いのハッパが大雑把なことを言う。よくわからないが、本職がそう言っているのだからそうなんだろう。
「といっても魔力なんか使ったことないしなあ……。まあやってみるわ」
そう言ってジェムの上に両手をかざすグレープ。
「んーはいっ!!」
変な掛け声を出すと同時に、ジェムが緑色に光った。
「えーと、これでいいのか?」
「うーん…いいと思うが」
光が生じただけで、本当に成功したか分からない。
「そうだな。Zさん。申し訳ないですが試しにジェムを飲み込んでもいいですか?1つ使っちゃうんですけど…」
「全く構わない。検証になるしな」
Zさんが快諾してくれたので、早速緑色のジェムを手に取る。
しかし、どうして飲み込む必要があるのだろうか。地面に叩き付けるとかでよかったような。
そんな疑問を抱きつつ、小石くらいの大きさの『スキルジェム』を飲み込む。
「……これで俺に【自己再生】の能力が付与されたはずです。確かめるために、グレープ、俺を斬ってみてくれ」
そう言って右腕をグレープに差し出す。
「おっけー。いくぞ、ええい!」
こいつ、ばっさりと腕を切り落としやがった!容赦ねえな。
「スキルを得ていれば、再生していくはず……!?おお、腕が生えていく!?」
どうやら無事にコピーできていたみたいだ。検証は上手くいったな。
「こんな感じで、徐々に回復していくといったスキルが得られるといった感じですね」
「なんというか、すごいな。グレープのスキルはジェムと相性が抜群だ」
そう、それが嬉しいところであり、悲しいところでもある。
しばらくしてジェムが安定供給されると、次はコピーして強いスキルが求められるだろう。そしてそれを持ったプレイヤーが見つかると、ジェムへスキルを付与する作業を延々と強いられ、過労死に追い込まれることが予想される。
そしてその標的は、グレープになると思われる。ノーリスクで常時発動する回復スキルなんて、戦闘職が見過ごすはずがない。
未来のグレープに、合掌。といっても右腕は無いがな。
そんなくだらないことを考えながら、残り2つのジェムにスキルを付与するグレープをぼんやりと眺める俺なのだった。
「僕のスキルは【守るべき者】っていうものでね。味方が生きている限り何度でも蘇生できるんだ」
「シンプルに強いな。継戦能力が段違いだ」
Kは土に飲み込まれた後に地中で蘇生したはいいものの、地面に埋まったままだったので手を出すのがやっとだったらしい。
そのおかげで俺でも倒せたし、本当に助かった。
「しかし、三十個か。多いのか少ないのか微妙だな」
Zさんが感想を漏らす。彼は『悪魔』を倒し、一分経ってアイテム化したところで戻ってきた。
「ド畜生が戻ってきましたよ!」
やべ、Yも来た。
すぐさま変身して突っ込んでくる。
もちろん避けられるはずはなく、全速力の突進をモロに受けた俺は激しい衝撃とともに死んだ。
俺、死ななくていいところで死んでばっかりじゃないか?
なんてことを思いながら、リスポーンまでの一分間を待つのであった。
※※※
俺が再び帰ってくると、介錯をしてもらったIを含め、全員が集合していた。
「すごいわね、トーマ。『悪魔』を倒すなんて」
「ハッパの爆破で弱っていたから、俺でもやれただけだ。Kのサポートもあったしな」
「全員が大活躍ってことでいいじゃない?全力出せたでしょ?」
俺が謙遜というか、事実を語ると、ハッパが良い感じにまとめた。
「ハッパの言う通りだな。……ところで、『ソウルジェムの欠片』だが、どうやって分配する?」
Zさんが重要な話を切り出す。
「あ、それなんですけど、もし良かったら俺のフレンドで再生能力のスキル持ちがいるんで、彼にスキルをチャージしてもらうっていうのはどうですか?」
「再生能力持ち!?それって発動条件とかは?」
「ない。傷ができたら徐々に回復する。四肢の欠損もゆっくりだけど治る。致命傷を受けたら普通に死ぬけどな」
たまらず口を挟んできたYにグレープのスキルについて話す。
「込めるスキルについて考えてなかったから、こちらとしては願ったり叶ったりだが、ジェムの取り分はどうする?トーマとハッパがいなけりゃ倒せなかったし、俺としては三十個丸々上げたい気分だが」
「いや~いいでしょ、ね、トーマ?」
「そうだな。Zさん、そう言ってくれるのはありがたいですが、遠慮します。三十個持っていってください」
「いいのか?トーマたちは再生能力を欲しくないのか?」
正直なところ、『スキルジェム』は俺たちの手に余る品だ。
元々倒せるとも思っていなかったし、俺たち基本ソロプレイだしな。宝の持ち腐れになる確率が高い。
「はい。俺たちだけでも倒せなかったので。それに、こういうアイテムはクラン単位で使った方が活きると思います」
「明日も湧くから、いくらでも手に入るでしょ!」
「そ、そうか?ならありがたく貰うが……」
『スキルジェム』の所有権が決まったところで、遠くからガチャガチャと鎧の擦れる音がする。
「おおおい!『悪魔』か!?今行くぞおお!」
「あれが再生能力持ちのフレンドです」
俺は遠くに見えるグレープを指さす。
「なんというか、愉快な人ね」
Iが正直な感想を漏らす。
「俺が来たぞ!『悪魔』は!?『悪魔』はどこだ!?」
「もう倒したぞ。どこ行ってたんだよ、グレープ」
俺はため息をつきながら、【アルファベット】の皆にグレープの紹介をするのだった。
※※※
「それで、これにスキルを込めればいいんだな?」
テーブルの上に置かれた透明な3つの『スキルジェム』を見て、グレープが言う。
場所は変わって、【アルファベット】のクランハウスにお邪魔している。
外でジェムを出しているとPKの的なので、屋内の落ち着いたところにやって来た。
「ああ、やってみてくれ」
「スキルを込めるって、どうやればいいんだ?」
「魔法使いになったみたいに考えればいいんじゃない?ギュっと対象に向かって魔力を使うみたいな」
魔法使いのハッパが大雑把なことを言う。よくわからないが、本職がそう言っているのだからそうなんだろう。
「といっても魔力なんか使ったことないしなあ……。まあやってみるわ」
そう言ってジェムの上に両手をかざすグレープ。
「んーはいっ!!」
変な掛け声を出すと同時に、ジェムが緑色に光った。
「えーと、これでいいのか?」
「うーん…いいと思うが」
光が生じただけで、本当に成功したか分からない。
「そうだな。Zさん。申し訳ないですが試しにジェムを飲み込んでもいいですか?1つ使っちゃうんですけど…」
「全く構わない。検証になるしな」
Zさんが快諾してくれたので、早速緑色のジェムを手に取る。
しかし、どうして飲み込む必要があるのだろうか。地面に叩き付けるとかでよかったような。
そんな疑問を抱きつつ、小石くらいの大きさの『スキルジェム』を飲み込む。
「……これで俺に【自己再生】の能力が付与されたはずです。確かめるために、グレープ、俺を斬ってみてくれ」
そう言って右腕をグレープに差し出す。
「おっけー。いくぞ、ええい!」
こいつ、ばっさりと腕を切り落としやがった!容赦ねえな。
「スキルを得ていれば、再生していくはず……!?おお、腕が生えていく!?」
どうやら無事にコピーできていたみたいだ。検証は上手くいったな。
「こんな感じで、徐々に回復していくといったスキルが得られるといった感じですね」
「なんというか、すごいな。グレープのスキルはジェムと相性が抜群だ」
そう、それが嬉しいところであり、悲しいところでもある。
しばらくしてジェムが安定供給されると、次はコピーして強いスキルが求められるだろう。そしてそれを持ったプレイヤーが見つかると、ジェムへスキルを付与する作業を延々と強いられ、過労死に追い込まれることが予想される。
そしてその標的は、グレープになると思われる。ノーリスクで常時発動する回復スキルなんて、戦闘職が見過ごすはずがない。
未来のグレープに、合掌。といっても右腕は無いがな。
そんなくだらないことを考えながら、残り2つのジェムにスキルを付与するグレープをぼんやりと眺める俺なのだった。
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