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第七話
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[第七話]
不毛の茶色い大地から芝生のフィールドに変更し、俺はシズクさんと一緒に魔法を使ってみた。自分の杖を持っていないので、シズクさんから予備を借りた。
レベル1の俺が使える水属性魔法は四種類。全ての魔法の名前には最初に『アクア』がついている。
『アクア・クリエイト』は、無から純水を生成する魔法だ。空の容器アイテムを用意すれば、飲み水を確保することができる。他にも、植物に水を与えたり、便利な使い方ができる。消費魔力は1で、一回の発動につき500mLほどの水が生まれる。
『アクア・ボール』は空中に水球を出現させ、相手にぶつける汎用的な攻撃を行う。魔法の発動から発射まで一秒ほど”溜め”の時間が必要で、発射する向きや速さは一定で、変更することはできない。おまけに、あまり攻撃力が高くないときた。消費魔力は2。
『アクア・ウォール』は、発動地点から1mほど前方から水の壁を生やし、相手の攻撃から身を守る魔法だ。これがまた微妙で、水でできているので相手は壁を通り抜けられる。一応上に向かって流れがあり、多少勢いを減衰させることができそうだが、高い防御力は期待できない。シズクさんも「気休め程度」と言っていた。消費魔力は5で、出現した壁は1分間持続する。
『アクア・ソード』は杖に水をまとわせ剣のように振るうことで、水属性と斬属性を兼ね備えた攻撃ができる魔法だ。属性云々は置いておいて、この魔法の説明をすると、水魔法の中でも貴重な近距離攻撃手段だ。例にもれず、他の属性に比べ威力が低いが、相手に近づかれたときに有効な手札となる。と俺は勝手に思っているが、シズクさん曰く、「あんまり使わない」らしい。消費魔力は3で、こちらも1分間の持続時間がある。
以上、四つの水魔法の試し打ちを楽しんだ。練習場では魔力を消費せずに何回でも魔法を使うことができる。職業レベルの経験値も入らないが。シズクさんには後ろで見てもらい、補足情報や実戦での使い心地、フィールドでの立ち回り方などを教えてもらった。少ししたら慣れてきたので、モンスターを投入しての模擬戦闘に切り替えた。
そろそろいいかな、と思ったところでウインドウを操作し、モンスターの”湧き”を止め、シズクさんに近づいた。彼女は体育座りをしてぼーっとした目で俺の練習する様子を見ていた。近くまで行くと彼女は立ち上がった。
「ごめんなさい。色々試してたら結構時間使ってしまって」
「気にしなくていい。それより、トールは相手の動きを予測するのが上手い。アクア・ボールは十分な命中率だったし、アクア・ソードを使っての近接戦もなかなかのものだった」
「オオカミは戦い慣れているので、パターンを覚えちゃっただけですよ。違うモンスターなら苦労しますよ」
練習場では戦った事のあるモンスターしか出せず、俺はまだモンスターとの戦闘は経験していないが、そういう人のために王都周辺のフィールドに生息するモンスターは出せる仕様になっている。 それなら他のモンスターを出せばいいのだが、見たことのないモンスターに出会うのはフィールド上がいいので、さっきまでファングウルフとひたすら戦っていたという次第である。
「それだけ動けて魔法を扱えれば、ソロでフィールドに行っても大丈夫。王都の近くならモンスターのレベルも低いし安全」
師匠のお墨付きをもらう。それから少しの間二人で話し、有意義な時間を過ごした。この練習場は、一度扉を開けてから閉じるまでに入室した人専用の空間になり、同時に何人もの人が利用できるので、何時間でもいていいということや、王都は高い壁に覆われており、東西南北の四つの門から外に出られるということ、それに伴って王都から行けるフィールドのバイオームもそれぞれの方角にひとつずつあり、マップによる下調べが重要だということなどをご教授頂いた。
話に華が咲き、ふと気になったのでメニューで時間を確認してみると、六時四十分となっていた。夕飯の準備をしないと。
「今日はありがとうございました。夕飯の支度をしたいのでログアウトしたいと思います」
「こちらこそ長々とありがとう。私も落ちる。森雫(もりしずく)って名前だから、学校で会ったらよろしく」
「ちょっと待ってください。森って言いました?もしかして森静さんのお姉さん?」
「うん。静は一つ下の妹」
「そうだったんですね。実は、静とは昨日知り合って、友達になったんです。席が斜め同士なんです」
「妹とは昨日通話した。あなたが静の友達の一人ね」
世界は狭いものだ。先輩が静の姉だったなんて。
意外な事実が発覚し、静の家での様子を聞き出そうとしたが、時間も差し迫っているので、またの機会で、ということになった。
※※※
練習場を出て、もう一度感謝の言葉を述べてからログアウトした。ログアウトは街の中でならどこででもできる。メニューの『ログアウト』からすぐだ。といっても、VRゲーム[AnotherWorld]からログアウトしただけで、VR空間から出たわけではない。数秒の暗転の後、立体的な四角いアイコンが浮かぶ白の空間でちびドラゴンに出迎えられた。この子と会うのは何回目だろうか。
――おかえり、トオル!もうすぐ晩御飯だぞ!肉だといいな!
てっきり甘いもの好きかと思ったが、ドラゴンらしい一面もあるんだ。
初めてのVRゲームでだいぶ疲れた。話しかけたい気持ちをこらえて右下に表示されているログアウトボタンを押す。瞬時に『はい』を選択。
――お疲れ!またいつでも会いに来るとよいぞ!
これでVR空間からもログアウトができた。世界を作り出すディスプレイの電源が切れたことを視覚で確認した俺は、コントローラを脇に置いてからヘッドセットをゆっくりと外した。
緊張と感動から少々汗ばんでいたが、体を洗うよりも今は食欲を満たしたい。おかずの作り置きがあるから、御飯とお味噌汁と一緒に温め直して食べちゃおう。
そう思うと同時に、お腹から御飯時を知らせる大きな音が鳴るのだった。
※※※
食事と入浴を済ませ、髪を乾かしながら今日のニュースをチェックする。その後タブレットで明日の予定を頭の中に入れ、メールが来てないかを見ておく。右上の時刻を確認すると、二十一時前だった。画面を閉じ、充電器につないでおく。
やることはやった。ならばゲームだ。
『チェリーギア』を装着し、昼間と同じ体勢でベッドに腰掛けた俺は、再び[AnotherWorld]にログインした。
先ほどログアウトした魔法使いギルドの中に降り立つ。屋内でログアウトした場合、屋外の場合と同様にログアウトした地点からゲームが始まる。しかし、ログインしたときにその建物が侵入できない状態(お店の営業時間外など)においては、外の出入り口にずれる。何でこんな細かいことを知っているかというと、ログアウト中はプレイヤーのアバターが消えるという仕様を利用して、真夜中に泥棒をしようと企んだ人がいるらしい。もちろんその人は失敗し、掲示板で事の顛末を報告していたので、俺も知っていた。
魔法も練習できたし、対モンスターのコツもつかんだ。フィールドに出たいし、ここで依頼を受けてみるのもいいか。と思ったが、今の俺は初期装備で、
魔法を使うための杖を持っていない。そのため、ひとまず装備を見てみることにした。
魔法使いギルドを辞去し、夕方来た道を引き返すようにして噴水広場に向かう。シズクに、「まずは広場周辺のエクリプス装備店とチルマ雑貨店を覗いてみるのがいい」とアドバイスをもらっていた。この二つの店とホテルハミングバードは、現代でいう大型チェーンのようなもので、王都の他にも世界中の街に支店を展開している。よって、商品の一般的な相場や種類別の流通量を知るにはもってこい、とのこと。
魔法使い通りを抜け北の大通りに差し掛かると、人々の賑わいは一層激しくなっていた。学生専用のこのサーバーにはこんなにプレイヤーはいないので、喧騒の大部分は一杯ひっかけに来た王都民や、狩りから帰還した冒険者のNPCから発せられるものだろう。街の中心に急ぐ人々の流れに乗るようにして歩いていく。
やがて、道を挟むようにして大きな建物の壁が左右から浮き上がる。左がエクリプス装備店、右がホテルハミングバード:王都店だ。道を行く人々の密度がさらに濃くなる。
「雑貨屋は広場の反対側だし、装備店から行くか」
エクリプス装備店の外観は、木造の校舎のようだった。古びた金属の枠組みが組まれており、何百枚もの焦げ茶色の板が縦向きに打ち立てられている。
高さから推測するに四階建てで、各階にはガラス張りの小窓が等間隔に並んでいる。屋根は平らになっており、屋上に上がるための非常階段の一部がここから見える。
装備店側面の左側に位置する入口の前に到着する。広場の北東にあるエクリプス装備店には、広場に面した入口と東大通りに面した入口、ここ北大通りに面した入口の三つがある。入口の扉の壁はショーウインドウになっていて、こちら側には漆黒のローブとつばの広い帽子が飾られている。展示用のスポットライトで照らされていなければ、何も飾っていないと勘違いしてしまうほど夜の闇に溶け込んでいる。
ドアは一枚の大きな木の板をくりぬいて板ガラスをはめ込んだ作りだ。俺の目線あたりの高さに白いギザギザの輪で縁取られた黒い円形のプレートが提げられている。プレートには『絶賛営業中』と手書きで書かれている。
ログインしたときは広場側の入口が開けっ放しだったが、こっちから入っても大丈夫だよなと思いながら、武骨なつくりのノブを捻りドアを開けた。内開きだった。
「いらっしゃいませ、エクリプス装備店へようこそ!」
中に入ると快活な声がすぐ右から聞こえた。ショーウインドウの内側はレジになっていたようだ。オレンジの前髪パッツンでおさげを左右から下ろした女の子が番をしている。灰色のワークジャケットの上に黒地に白のギザギザが縁取られた、ドアプレートと同様の色合いをしたエプロンをかけている。
店内は盛況だった。テーマパークの土産物屋さんのように、各入口の近くにレジが置かれている。店内で商品を見ている人のほとんど、いや全員が冒険者といった格好だ。
並んでいるものからして、どうやら一階は防具の階のようだ。色、デザインが統一されたセット装備がマネキン売りされている。俺はマネキンの木々を縫うようにして速足で近くを通る、一人の従業員に声をかけてみた。ここの店員は共通のデザインのエプロンを着けている。
「すいません。聞きたいことがあるんですけど」
「はいっ。なんでしょうっ」
恐縮気味に少し声を張って呼び止めると、早口で返事が返ってきた。栗色の短髪にひょろひょろの体型の男性店員だ。
「初めて来たんですけど、この店について教えて頂けますか?何階はこのコーナーです、みたいな感じの」
「はいっ。お安い御用ですっ」
オルカと名乗った店員は、ところどころ舌を噛みそうになりながら説明してくれた。彼によると、俺の見立て通り、装備店は四つのフロアで構成され、
〇一階にはセット装備を並べている。戦闘用、生産職に関わらず、流通している廉価版の商品がほとんどである。とはいえ、基本一式でのお買い求めになるので、値段はそれなりにする。
〇二階は一点ものの防具のフロアだ。一点ものというのは、要するにバラ売りの防具である。胴を覆う鎧や、足から脛を衝撃から守るブーツなどである。
セット防具を個別に売っているお求めやすいものから、希少な素材を使った高級なものまで幅広い。
〇三階は武器を売っている。戦闘職が扱う様々な種類の武器が所狭しと立てかけられていて、こちらも二階と同様にピンからキリまで様々な価格帯で提供されている。生産職で必要な道具や器具は売っていないので注意。
〇四階はオーダーメードを受け付けている。オフィスのように窓口が並んでいて、やってきたお客さんの注文通りの装備を作る。とてつもなく刃が長い刀やバネを仕込んであり大きくジャンプできるシューズなど、突飛な注文であっても大抵は応えてくれる。素材を持ち込めば多少の値引きになるが、それでも法外な値段がするのでお金に余裕ができたら話を聞きに行くといい。
とのことだった。彼の話はせかせかとしているにもかかわらず要領が掴めており、聞いていてわかりやすかった。
他には、屋上に使わなくなった装備を買い取る窓口があるので、装備の更新の際には古いものを持ち込むとよい、防御力のないファッション用の装備を指す、服飾は取り扱っていないので、専門のお店に行ってほしい、ショーウインドウの装備は目が飛び出るほどのお値段なので、見るだけに留めておくのが吉だ、など、初心者の俺に細かく教えてくれた。
「失礼ですがっ、職業を伺ってもっ?」
「水魔法使いです」
「それならっ、お値打ちのセット装備がありますよっ!」
語尾が切れるような口調なのに、どうして疑問や強調の意が伝わってくるのだろうと疑問に思いながら、大股で店の奥に進むオルカについていった。
案内されたのは、ローブとバケットハットの格好をしたマネキンの集団だった。それぞれのマネキンが身に着けている装備の色は別々で、赤、青、白、茶と四種類だ。濃い色の一色で統一されており、雨の日に着るカッパみたいでダサい。
「初心者魔法使いセットでございますっ。お客様は水属性魔法使いでありますのでっ、こちらの青いセットがおすすめですっ!」
息も絶え絶えに彼は紹介する。よく見ると、マネキンはローブと同じく真っ青のズボンとつま先のとんがった靴を履いていた。
心は決まっていたが、一応聞いておく。
「お値段はいくらですか?」
「こちら一式で一万六千タメルになりますっ」
ここで俺は初めて、メニューの『所持品』をチェックする。このウインドウでは、上部に四十枠のアイテムインベントリ、下部に[AnotherWorld]で流通する
通貨、タメルの所持金額が表示される。
アイテムインベントリは、モンスターの素材や採取アイテムなどを、一種類につき九十九個まで収納できる一枠の四角がいくつも並んでいる。装備している防具やアクセサリー、武器はカウントされない。
現在俺が持っているアイテムは体力回復薬、魔力回復薬と名付けられている、栓をした試験管に入った飲み薬だった。薬の色は、体力回復薬が緑色、魔力回復薬がオレンジ色で、左上のインベントリ枠にアイコンとして表示されている。アイコンの右下には十と数字で書いてある。おそらく所持個数だろう。
肝心の所持金は一万タメルだった。値切ってみてもカッパ装備は買えなさそうだった。
「ちょっと持ち合わせがありませんでした…」
また来ます、と言い残してそそくさとその場を離れる。一式装備はまだ早かった。せめて二階でローブくらいは見繕おう。
※※※
ちなみに、通貨の名称がタメルという奇天烈なものに至るまで、紆余曲折があった。名前を何にしようと『チェリーアプリ』の[AnotherWorld]開発チームが頭を捻っていた時、社長がこう言った。
「お金は使うものだから、『ツカウ』なんてどうだ?」
「いいじゃないか!桜」
さほど大きな会議でもないのに、なぜか出席している株式会社チェリーアプリ取締役の灰ヶ崎敦(はいがさきあつし)は、即座に賛同する。彼は白峰社長の右腕であり、会社の経営を司るトップだ。普段はクールで知的な印象を振りまく二枚目だが、桜のことになると人格が豹変する。彼女の言うことは絶対である、彼女のためなら何でもしてあげたい、彼女の情報は何でも知りたい。灰ヶ崎は、そんな歪んだ思考の持ち主だった。
桜自身も彼の言動に度々辟易とさせられているが、会社をここまで大きくするのに最も貢献した人物の一人である。優秀すぎるくらいに頭も切れる。なあに、ちょっとくらい癖がある方が人間として魅力的じゃないか、という考えで、彼に全幅の信頼を寄せて今まで一緒に仕事をやっている。
「皆さんも、いいですよね!?」
「いや、流石にそれはちょっと…」
灰ヶ崎の有無を言わせぬ物言いで議論が収束しかけていたその時、反対意見とともにおずおずと手を挙げたのが、黒川開発部長だった。
「『ツカウ』って少し品がないというか、がめついイメージというか、いや、社長がそうだと言っているわけじゃないですよ。ただ、ちょっとストレートすぎるかな、と思いまして。苦節数年、我々は若い世代をターゲットにして[AnotherWorld]の製作に尽力してきました。正式にリリースされれば、まだ学校に通っているいたいけな学生さん方も遊ばれることでしょう。そのような状況の中、プレイヤーが最も目にし、その名を口にするであろう通貨の名前をこのような名前にするのはいかがなものかと、開発部長として提言したいのです。もちろん、通貨をもじって『ツカウ』という名に決めた社長の慧眼はお見事と―――」
桜と灰ヶ崎は、黒川の催眠術に耐性のある数少ない人物であった。他のメンバーは眠りについていた。
「つまり、黒川部長は桜のアイデアに反対ということですか!?」
「はい」
目を向いて詰問する灰ヶ崎に、黒川はきっぱりと言い放った。
「じゃあ、万が一にも、そんなことはないと思うが、桜よりも素晴らしい案があるということですか!?」
「はい」
またもはっきりと言う。
「それはなんですか!?」
「それは……」
いつも饒舌な彼に珍しく、もったいぶった物言いだ。黒川は、一度口を閉じて生唾を飲み込むと、真剣なまなざしで前を見据える。
「タメルです」
黒川は、お金を貯蓄する派だった。
「いいじゃないか!」
「いいじゃないですか!黒川部長!」
今度は桜が間髪入れずに賛成した。倣うようにして灰ヶ崎も続いた。
大多数の棄権により、この場の有権者は三名。その全員がイエスに票を投じたので、メンバーの多くが目覚めた十分後にはすでに、『タメル』で決定したものとして話は次の議題に移っていたのであった。
※※※
近くに階段があったので、一段飛ばしで駆け上がる。踊り場で折り返してさらに上っていく。途中で何人もの人とすれ違った。
二階にも客が多く、混雑していた。レジは階段の横に三つあるが、どれも列ができていた。
人を避けながら一番手前の売り場に到着する。いくつも並んだ白色の棚に兜や帽子が詰め込まれている。ここは頭装備のスペースのようだ。
魔法使いなので、魔力や魔法の威力に補正のかかる装備がないかを探しながら、フロア中を駆けずりまわって全身のコーディネートを行った。少し前にステータスでパラメータは表記されないといった通り、防具を装備する前後で攻撃力等の増減を確認することはできない。しかし、内部のシステムではしっかり適用されているので、直感的ではあるが装備の恩恵は感じられるようになっている。
というわけで、今の俺の装備はこんな感じになった。
〇頭:湿地のベースボールキャップ ¥1000 効果:灼熱耐性・小
王都南のフィールド、アヤカシ湿原でとれるアヤカシ葦を編んで作った麦色のキャップ。通気性が高く、着用者を日差しから守る。
〇胴、上腕、前腕:たなびくポロシャツ ¥2000 効果:濡れ耐性・中、炎属性倍加
同じくアヤカシ湿原に生え、扁平で細長い綿を実らせる植物、イッタンモメンを縒って作られた白い長袖のポロシャツ。薄くて軽く、撥水に優れる。反面、火に弱い。
〇胴:水玉のマント ¥2500 効果:濡れ耐性:中、水属性魔法威力強化:微
東の豊穣の海に生息するスウィムフィッシュの鱗をところどころにあしらった鳩尾丈の短いマント。水属性魔法の威力をわずかに強化する。
〇腰、大腿、脛:ぶよぶよのスウェットパンツ ¥2000 効果:打属性耐性・中、斬属性倍加、刺属性倍加
アヤカシ湿原のモンスター、チョウチンガエルの皮で作ったパンツ。伸縮自在の生地は打撃を軽減するが、斬撃、刺突に脆弱である。腰ひもがあるので
ある程度ぶかぶかになっても履ける。
〇足:スニー『キング』・スニーカー ¥1500 効果:静音
王都周辺に広く分布するファングウルフの足の構造を参考に生み出されたスニーカー。皮、爪、肉球といった彼らの素材を用いることで、発せられる足音を小さくすることに成功した。老舗にして一大ブランドである靴工房、『キングの足下』が提供する大量生産品。
合計9000タメル。残りは1000タメルになってしまった。ただ、初心者装備に関しては屋内のカウンターでも買い取ってくれるらしく、『初心者シリーズ』の装備を全て売り払った。これで合計3500タメルになった。
会計をしてくれた窓口の人はお姉さんだったが、混雑していたため必要最低限の会話しかしなかった。お世話になるかもしれないから名前ぐらいでも聞いておけばよかった。
階段を上って三階に向かう。杖を買おう。
魔法使いであっても杖を装備していなければ魔法を使うことができない。まさに杖は魔法使いにとってなくてはならないものなのだ。
三階は武器が種類ごとに並べられているようだ。一番手前の棚にはいくつもの剣が柄をこちらにしてきれいに置かれている。
魔法使い用の杖の売り場を探す。左半分が剣、槍、槌などの近接武器、右半分がまるまる杖のコーナーだった。
近接武器は大量生産品が多く、在庫が多い。ある程度ぞんざいに扱っても大丈夫なので、省スペースのために敷き詰めるようにして武器が収納されている。間違えて手を切っちゃいそう。
杖は長さや属性ごとにいろいろな種類があり、デリケートに扱う必要があるので、商品の間にゆとりをもって並べられている。落とさないように注意しないとな。
どれも結構高いな。それにしても、指揮者が振るうタクトのような、細く短い杖の方が高いな。製作難度、使っている素材がハイレベルなんだろう。
水属性魔法を使える一番安い杖を選んだ。
〇熱帯の海の杖 ¥3000 水属性 効果:水属性魔法威力強化・微、打属性倍加
南の海のフィールド、アロハリュウグウのサンゴ礁でとれるトロピカルサンゴを使った杖。表面がごつごつしていてそのままでは持ちづらいので、「」ヤシの取っ手をつけている。打撃にもろいので注意。
アロハリュウグウは王都から結構離れたフィールドだが、サンゴの生息数が多く、採取で手に入るので、リーズナブルなお値段でお届けできる。枝分かれした赤いサンゴがかわいらしく、男の俺が持つのはちょっと不格好かもしれない。
さて、必要な装備を揃え終わったところで、残りの所持金は500タメルになった。余裕があればアイテムも見てみようと思ったが、やめておく。
階段で一階まで下り、エクリプス装備店の広場側の出口から出る。ラフな格好にサンゴを持った出で立ちなので、周りの目が気になるが、今さら気にしてもしょうがない。
噴水広場を縦断し、南の大通りを進む。色んなお店が並んでいるが、北の通りよりも若干アイテムを売っているお店が多いか?このまま南門を目指す。
大きな門の隣には、壁に接するように騎士団員の詰め所がある。王国には王都騎士団と呼ばれる、現代でいうところの警察みたいな組織が存在し、各街に人員が配置されている。犯罪を犯すようなNPCや、悪意のある迷惑行為をするプレイヤーなどを処罰する。大人しく捕まった場合や軽度の犯罪を犯した場合は地下の牢屋に押し込まれ、激しく抵抗した場合や、凶悪な指名手配犯の場合は執拗に攻撃され、死に戻りする。街を出入りする人は門で身元を確認されるので、犯罪者は街を利用することが難しくなる。ゲームの世界であっても悪いことはやめような。
夜も更けているため、外開きの門はちょっとしか開いていない。詰め所の壁に寄り掛かっている男性と、フィールドから帰ってきた冒険者に話しかけている女性が門のそばにいる。二人とも灰色の甲冑を着ているが、フルフェイスの兜は脱いでいる。あの人たちが身元チェックの騎士たちか。
王都から外に出る人がほとんどいない。すぐに俺の番になった。半分眠っていたおじさん騎士が俺の気配に気づき、体を前のめりにして前に出てくる。
「こんな夜更けに出るのか。危険だからおすすめしないぜ。そのちんちくりんの格好を見るに新米だろ」
確かにシズクさんから夜の狩りはやめた方がいいと言われたが、玉砕覚悟で行くならタメル、アイテムをほとんど持っていない今がベストだ。プレイヤーが死に戻りすると、所持タメルの半減、一定確率での所持アイテムのロストが行われ、一番近くの訪れたことのある街にリスポーンする。装備はロストしないので、そこは安心だ。
「なけなしのお金で用意したので見た目は勘弁してください。必ず生きて帰ってくるので大丈夫ですよ。トールって名前を覚えておいてください」
「俺はガンケン、あっちの怪力女はオミナだ」
斜め後ろを親指で指しながら見た目通りの渋い声でおじさん騎士がそう言うと、オミナと紹介された女性の首がぎゅるんっ、と回る。
「ガンケンさん、一言多いですよ!」
対応に忙しいのか、それともいつものことなのか、鬼神のごとき表情をしているが彼女はこちらまで詰め寄ってこようとはしない。
「見ての通り声まででかい」
「ガンケンさん!」
彼は怒鳴られてもどこ吹く風だ。早くしてほしいんだが。
「ええっと、トールだな。今日登録を済ませたやつの中に名前がある。通ってよし。くれぐれも、外で悪さするなよ?」
ガンケンは、手に持っていたバインダー上の用紙に素早く目を通した。
「もちろんです」
驚くほどあっという間にチェックを終えると、俺は見上げるほど高い扉から南のフィールドに出るのであった。
不毛の茶色い大地から芝生のフィールドに変更し、俺はシズクさんと一緒に魔法を使ってみた。自分の杖を持っていないので、シズクさんから予備を借りた。
レベル1の俺が使える水属性魔法は四種類。全ての魔法の名前には最初に『アクア』がついている。
『アクア・クリエイト』は、無から純水を生成する魔法だ。空の容器アイテムを用意すれば、飲み水を確保することができる。他にも、植物に水を与えたり、便利な使い方ができる。消費魔力は1で、一回の発動につき500mLほどの水が生まれる。
『アクア・ボール』は空中に水球を出現させ、相手にぶつける汎用的な攻撃を行う。魔法の発動から発射まで一秒ほど”溜め”の時間が必要で、発射する向きや速さは一定で、変更することはできない。おまけに、あまり攻撃力が高くないときた。消費魔力は2。
『アクア・ウォール』は、発動地点から1mほど前方から水の壁を生やし、相手の攻撃から身を守る魔法だ。これがまた微妙で、水でできているので相手は壁を通り抜けられる。一応上に向かって流れがあり、多少勢いを減衰させることができそうだが、高い防御力は期待できない。シズクさんも「気休め程度」と言っていた。消費魔力は5で、出現した壁は1分間持続する。
『アクア・ソード』は杖に水をまとわせ剣のように振るうことで、水属性と斬属性を兼ね備えた攻撃ができる魔法だ。属性云々は置いておいて、この魔法の説明をすると、水魔法の中でも貴重な近距離攻撃手段だ。例にもれず、他の属性に比べ威力が低いが、相手に近づかれたときに有効な手札となる。と俺は勝手に思っているが、シズクさん曰く、「あんまり使わない」らしい。消費魔力は3で、こちらも1分間の持続時間がある。
以上、四つの水魔法の試し打ちを楽しんだ。練習場では魔力を消費せずに何回でも魔法を使うことができる。職業レベルの経験値も入らないが。シズクさんには後ろで見てもらい、補足情報や実戦での使い心地、フィールドでの立ち回り方などを教えてもらった。少ししたら慣れてきたので、モンスターを投入しての模擬戦闘に切り替えた。
そろそろいいかな、と思ったところでウインドウを操作し、モンスターの”湧き”を止め、シズクさんに近づいた。彼女は体育座りをしてぼーっとした目で俺の練習する様子を見ていた。近くまで行くと彼女は立ち上がった。
「ごめんなさい。色々試してたら結構時間使ってしまって」
「気にしなくていい。それより、トールは相手の動きを予測するのが上手い。アクア・ボールは十分な命中率だったし、アクア・ソードを使っての近接戦もなかなかのものだった」
「オオカミは戦い慣れているので、パターンを覚えちゃっただけですよ。違うモンスターなら苦労しますよ」
練習場では戦った事のあるモンスターしか出せず、俺はまだモンスターとの戦闘は経験していないが、そういう人のために王都周辺のフィールドに生息するモンスターは出せる仕様になっている。 それなら他のモンスターを出せばいいのだが、見たことのないモンスターに出会うのはフィールド上がいいので、さっきまでファングウルフとひたすら戦っていたという次第である。
「それだけ動けて魔法を扱えれば、ソロでフィールドに行っても大丈夫。王都の近くならモンスターのレベルも低いし安全」
師匠のお墨付きをもらう。それから少しの間二人で話し、有意義な時間を過ごした。この練習場は、一度扉を開けてから閉じるまでに入室した人専用の空間になり、同時に何人もの人が利用できるので、何時間でもいていいということや、王都は高い壁に覆われており、東西南北の四つの門から外に出られるということ、それに伴って王都から行けるフィールドのバイオームもそれぞれの方角にひとつずつあり、マップによる下調べが重要だということなどをご教授頂いた。
話に華が咲き、ふと気になったのでメニューで時間を確認してみると、六時四十分となっていた。夕飯の準備をしないと。
「今日はありがとうございました。夕飯の支度をしたいのでログアウトしたいと思います」
「こちらこそ長々とありがとう。私も落ちる。森雫(もりしずく)って名前だから、学校で会ったらよろしく」
「ちょっと待ってください。森って言いました?もしかして森静さんのお姉さん?」
「うん。静は一つ下の妹」
「そうだったんですね。実は、静とは昨日知り合って、友達になったんです。席が斜め同士なんです」
「妹とは昨日通話した。あなたが静の友達の一人ね」
世界は狭いものだ。先輩が静の姉だったなんて。
意外な事実が発覚し、静の家での様子を聞き出そうとしたが、時間も差し迫っているので、またの機会で、ということになった。
※※※
練習場を出て、もう一度感謝の言葉を述べてからログアウトした。ログアウトは街の中でならどこででもできる。メニューの『ログアウト』からすぐだ。といっても、VRゲーム[AnotherWorld]からログアウトしただけで、VR空間から出たわけではない。数秒の暗転の後、立体的な四角いアイコンが浮かぶ白の空間でちびドラゴンに出迎えられた。この子と会うのは何回目だろうか。
――おかえり、トオル!もうすぐ晩御飯だぞ!肉だといいな!
てっきり甘いもの好きかと思ったが、ドラゴンらしい一面もあるんだ。
初めてのVRゲームでだいぶ疲れた。話しかけたい気持ちをこらえて右下に表示されているログアウトボタンを押す。瞬時に『はい』を選択。
――お疲れ!またいつでも会いに来るとよいぞ!
これでVR空間からもログアウトができた。世界を作り出すディスプレイの電源が切れたことを視覚で確認した俺は、コントローラを脇に置いてからヘッドセットをゆっくりと外した。
緊張と感動から少々汗ばんでいたが、体を洗うよりも今は食欲を満たしたい。おかずの作り置きがあるから、御飯とお味噌汁と一緒に温め直して食べちゃおう。
そう思うと同時に、お腹から御飯時を知らせる大きな音が鳴るのだった。
※※※
食事と入浴を済ませ、髪を乾かしながら今日のニュースをチェックする。その後タブレットで明日の予定を頭の中に入れ、メールが来てないかを見ておく。右上の時刻を確認すると、二十一時前だった。画面を閉じ、充電器につないでおく。
やることはやった。ならばゲームだ。
『チェリーギア』を装着し、昼間と同じ体勢でベッドに腰掛けた俺は、再び[AnotherWorld]にログインした。
先ほどログアウトした魔法使いギルドの中に降り立つ。屋内でログアウトした場合、屋外の場合と同様にログアウトした地点からゲームが始まる。しかし、ログインしたときにその建物が侵入できない状態(お店の営業時間外など)においては、外の出入り口にずれる。何でこんな細かいことを知っているかというと、ログアウト中はプレイヤーのアバターが消えるという仕様を利用して、真夜中に泥棒をしようと企んだ人がいるらしい。もちろんその人は失敗し、掲示板で事の顛末を報告していたので、俺も知っていた。
魔法も練習できたし、対モンスターのコツもつかんだ。フィールドに出たいし、ここで依頼を受けてみるのもいいか。と思ったが、今の俺は初期装備で、
魔法を使うための杖を持っていない。そのため、ひとまず装備を見てみることにした。
魔法使いギルドを辞去し、夕方来た道を引き返すようにして噴水広場に向かう。シズクに、「まずは広場周辺のエクリプス装備店とチルマ雑貨店を覗いてみるのがいい」とアドバイスをもらっていた。この二つの店とホテルハミングバードは、現代でいう大型チェーンのようなもので、王都の他にも世界中の街に支店を展開している。よって、商品の一般的な相場や種類別の流通量を知るにはもってこい、とのこと。
魔法使い通りを抜け北の大通りに差し掛かると、人々の賑わいは一層激しくなっていた。学生専用のこのサーバーにはこんなにプレイヤーはいないので、喧騒の大部分は一杯ひっかけに来た王都民や、狩りから帰還した冒険者のNPCから発せられるものだろう。街の中心に急ぐ人々の流れに乗るようにして歩いていく。
やがて、道を挟むようにして大きな建物の壁が左右から浮き上がる。左がエクリプス装備店、右がホテルハミングバード:王都店だ。道を行く人々の密度がさらに濃くなる。
「雑貨屋は広場の反対側だし、装備店から行くか」
エクリプス装備店の外観は、木造の校舎のようだった。古びた金属の枠組みが組まれており、何百枚もの焦げ茶色の板が縦向きに打ち立てられている。
高さから推測するに四階建てで、各階にはガラス張りの小窓が等間隔に並んでいる。屋根は平らになっており、屋上に上がるための非常階段の一部がここから見える。
装備店側面の左側に位置する入口の前に到着する。広場の北東にあるエクリプス装備店には、広場に面した入口と東大通りに面した入口、ここ北大通りに面した入口の三つがある。入口の扉の壁はショーウインドウになっていて、こちら側には漆黒のローブとつばの広い帽子が飾られている。展示用のスポットライトで照らされていなければ、何も飾っていないと勘違いしてしまうほど夜の闇に溶け込んでいる。
ドアは一枚の大きな木の板をくりぬいて板ガラスをはめ込んだ作りだ。俺の目線あたりの高さに白いギザギザの輪で縁取られた黒い円形のプレートが提げられている。プレートには『絶賛営業中』と手書きで書かれている。
ログインしたときは広場側の入口が開けっ放しだったが、こっちから入っても大丈夫だよなと思いながら、武骨なつくりのノブを捻りドアを開けた。内開きだった。
「いらっしゃいませ、エクリプス装備店へようこそ!」
中に入ると快活な声がすぐ右から聞こえた。ショーウインドウの内側はレジになっていたようだ。オレンジの前髪パッツンでおさげを左右から下ろした女の子が番をしている。灰色のワークジャケットの上に黒地に白のギザギザが縁取られた、ドアプレートと同様の色合いをしたエプロンをかけている。
店内は盛況だった。テーマパークの土産物屋さんのように、各入口の近くにレジが置かれている。店内で商品を見ている人のほとんど、いや全員が冒険者といった格好だ。
並んでいるものからして、どうやら一階は防具の階のようだ。色、デザインが統一されたセット装備がマネキン売りされている。俺はマネキンの木々を縫うようにして速足で近くを通る、一人の従業員に声をかけてみた。ここの店員は共通のデザインのエプロンを着けている。
「すいません。聞きたいことがあるんですけど」
「はいっ。なんでしょうっ」
恐縮気味に少し声を張って呼び止めると、早口で返事が返ってきた。栗色の短髪にひょろひょろの体型の男性店員だ。
「初めて来たんですけど、この店について教えて頂けますか?何階はこのコーナーです、みたいな感じの」
「はいっ。お安い御用ですっ」
オルカと名乗った店員は、ところどころ舌を噛みそうになりながら説明してくれた。彼によると、俺の見立て通り、装備店は四つのフロアで構成され、
〇一階にはセット装備を並べている。戦闘用、生産職に関わらず、流通している廉価版の商品がほとんどである。とはいえ、基本一式でのお買い求めになるので、値段はそれなりにする。
〇二階は一点ものの防具のフロアだ。一点ものというのは、要するにバラ売りの防具である。胴を覆う鎧や、足から脛を衝撃から守るブーツなどである。
セット防具を個別に売っているお求めやすいものから、希少な素材を使った高級なものまで幅広い。
〇三階は武器を売っている。戦闘職が扱う様々な種類の武器が所狭しと立てかけられていて、こちらも二階と同様にピンからキリまで様々な価格帯で提供されている。生産職で必要な道具や器具は売っていないので注意。
〇四階はオーダーメードを受け付けている。オフィスのように窓口が並んでいて、やってきたお客さんの注文通りの装備を作る。とてつもなく刃が長い刀やバネを仕込んであり大きくジャンプできるシューズなど、突飛な注文であっても大抵は応えてくれる。素材を持ち込めば多少の値引きになるが、それでも法外な値段がするのでお金に余裕ができたら話を聞きに行くといい。
とのことだった。彼の話はせかせかとしているにもかかわらず要領が掴めており、聞いていてわかりやすかった。
他には、屋上に使わなくなった装備を買い取る窓口があるので、装備の更新の際には古いものを持ち込むとよい、防御力のないファッション用の装備を指す、服飾は取り扱っていないので、専門のお店に行ってほしい、ショーウインドウの装備は目が飛び出るほどのお値段なので、見るだけに留めておくのが吉だ、など、初心者の俺に細かく教えてくれた。
「失礼ですがっ、職業を伺ってもっ?」
「水魔法使いです」
「それならっ、お値打ちのセット装備がありますよっ!」
語尾が切れるような口調なのに、どうして疑問や強調の意が伝わってくるのだろうと疑問に思いながら、大股で店の奥に進むオルカについていった。
案内されたのは、ローブとバケットハットの格好をしたマネキンの集団だった。それぞれのマネキンが身に着けている装備の色は別々で、赤、青、白、茶と四種類だ。濃い色の一色で統一されており、雨の日に着るカッパみたいでダサい。
「初心者魔法使いセットでございますっ。お客様は水属性魔法使いでありますのでっ、こちらの青いセットがおすすめですっ!」
息も絶え絶えに彼は紹介する。よく見ると、マネキンはローブと同じく真っ青のズボンとつま先のとんがった靴を履いていた。
心は決まっていたが、一応聞いておく。
「お値段はいくらですか?」
「こちら一式で一万六千タメルになりますっ」
ここで俺は初めて、メニューの『所持品』をチェックする。このウインドウでは、上部に四十枠のアイテムインベントリ、下部に[AnotherWorld]で流通する
通貨、タメルの所持金額が表示される。
アイテムインベントリは、モンスターの素材や採取アイテムなどを、一種類につき九十九個まで収納できる一枠の四角がいくつも並んでいる。装備している防具やアクセサリー、武器はカウントされない。
現在俺が持っているアイテムは体力回復薬、魔力回復薬と名付けられている、栓をした試験管に入った飲み薬だった。薬の色は、体力回復薬が緑色、魔力回復薬がオレンジ色で、左上のインベントリ枠にアイコンとして表示されている。アイコンの右下には十と数字で書いてある。おそらく所持個数だろう。
肝心の所持金は一万タメルだった。値切ってみてもカッパ装備は買えなさそうだった。
「ちょっと持ち合わせがありませんでした…」
また来ます、と言い残してそそくさとその場を離れる。一式装備はまだ早かった。せめて二階でローブくらいは見繕おう。
※※※
ちなみに、通貨の名称がタメルという奇天烈なものに至るまで、紆余曲折があった。名前を何にしようと『チェリーアプリ』の[AnotherWorld]開発チームが頭を捻っていた時、社長がこう言った。
「お金は使うものだから、『ツカウ』なんてどうだ?」
「いいじゃないか!桜」
さほど大きな会議でもないのに、なぜか出席している株式会社チェリーアプリ取締役の灰ヶ崎敦(はいがさきあつし)は、即座に賛同する。彼は白峰社長の右腕であり、会社の経営を司るトップだ。普段はクールで知的な印象を振りまく二枚目だが、桜のことになると人格が豹変する。彼女の言うことは絶対である、彼女のためなら何でもしてあげたい、彼女の情報は何でも知りたい。灰ヶ崎は、そんな歪んだ思考の持ち主だった。
桜自身も彼の言動に度々辟易とさせられているが、会社をここまで大きくするのに最も貢献した人物の一人である。優秀すぎるくらいに頭も切れる。なあに、ちょっとくらい癖がある方が人間として魅力的じゃないか、という考えで、彼に全幅の信頼を寄せて今まで一緒に仕事をやっている。
「皆さんも、いいですよね!?」
「いや、流石にそれはちょっと…」
灰ヶ崎の有無を言わせぬ物言いで議論が収束しかけていたその時、反対意見とともにおずおずと手を挙げたのが、黒川開発部長だった。
「『ツカウ』って少し品がないというか、がめついイメージというか、いや、社長がそうだと言っているわけじゃないですよ。ただ、ちょっとストレートすぎるかな、と思いまして。苦節数年、我々は若い世代をターゲットにして[AnotherWorld]の製作に尽力してきました。正式にリリースされれば、まだ学校に通っているいたいけな学生さん方も遊ばれることでしょう。そのような状況の中、プレイヤーが最も目にし、その名を口にするであろう通貨の名前をこのような名前にするのはいかがなものかと、開発部長として提言したいのです。もちろん、通貨をもじって『ツカウ』という名に決めた社長の慧眼はお見事と―――」
桜と灰ヶ崎は、黒川の催眠術に耐性のある数少ない人物であった。他のメンバーは眠りについていた。
「つまり、黒川部長は桜のアイデアに反対ということですか!?」
「はい」
目を向いて詰問する灰ヶ崎に、黒川はきっぱりと言い放った。
「じゃあ、万が一にも、そんなことはないと思うが、桜よりも素晴らしい案があるということですか!?」
「はい」
またもはっきりと言う。
「それはなんですか!?」
「それは……」
いつも饒舌な彼に珍しく、もったいぶった物言いだ。黒川は、一度口を閉じて生唾を飲み込むと、真剣なまなざしで前を見据える。
「タメルです」
黒川は、お金を貯蓄する派だった。
「いいじゃないか!」
「いいじゃないですか!黒川部長!」
今度は桜が間髪入れずに賛成した。倣うようにして灰ヶ崎も続いた。
大多数の棄権により、この場の有権者は三名。その全員がイエスに票を投じたので、メンバーの多くが目覚めた十分後にはすでに、『タメル』で決定したものとして話は次の議題に移っていたのであった。
※※※
近くに階段があったので、一段飛ばしで駆け上がる。踊り場で折り返してさらに上っていく。途中で何人もの人とすれ違った。
二階にも客が多く、混雑していた。レジは階段の横に三つあるが、どれも列ができていた。
人を避けながら一番手前の売り場に到着する。いくつも並んだ白色の棚に兜や帽子が詰め込まれている。ここは頭装備のスペースのようだ。
魔法使いなので、魔力や魔法の威力に補正のかかる装備がないかを探しながら、フロア中を駆けずりまわって全身のコーディネートを行った。少し前にステータスでパラメータは表記されないといった通り、防具を装備する前後で攻撃力等の増減を確認することはできない。しかし、内部のシステムではしっかり適用されているので、直感的ではあるが装備の恩恵は感じられるようになっている。
というわけで、今の俺の装備はこんな感じになった。
〇頭:湿地のベースボールキャップ ¥1000 効果:灼熱耐性・小
王都南のフィールド、アヤカシ湿原でとれるアヤカシ葦を編んで作った麦色のキャップ。通気性が高く、着用者を日差しから守る。
〇胴、上腕、前腕:たなびくポロシャツ ¥2000 効果:濡れ耐性・中、炎属性倍加
同じくアヤカシ湿原に生え、扁平で細長い綿を実らせる植物、イッタンモメンを縒って作られた白い長袖のポロシャツ。薄くて軽く、撥水に優れる。反面、火に弱い。
〇胴:水玉のマント ¥2500 効果:濡れ耐性:中、水属性魔法威力強化:微
東の豊穣の海に生息するスウィムフィッシュの鱗をところどころにあしらった鳩尾丈の短いマント。水属性魔法の威力をわずかに強化する。
〇腰、大腿、脛:ぶよぶよのスウェットパンツ ¥2000 効果:打属性耐性・中、斬属性倍加、刺属性倍加
アヤカシ湿原のモンスター、チョウチンガエルの皮で作ったパンツ。伸縮自在の生地は打撃を軽減するが、斬撃、刺突に脆弱である。腰ひもがあるので
ある程度ぶかぶかになっても履ける。
〇足:スニー『キング』・スニーカー ¥1500 効果:静音
王都周辺に広く分布するファングウルフの足の構造を参考に生み出されたスニーカー。皮、爪、肉球といった彼らの素材を用いることで、発せられる足音を小さくすることに成功した。老舗にして一大ブランドである靴工房、『キングの足下』が提供する大量生産品。
合計9000タメル。残りは1000タメルになってしまった。ただ、初心者装備に関しては屋内のカウンターでも買い取ってくれるらしく、『初心者シリーズ』の装備を全て売り払った。これで合計3500タメルになった。
会計をしてくれた窓口の人はお姉さんだったが、混雑していたため必要最低限の会話しかしなかった。お世話になるかもしれないから名前ぐらいでも聞いておけばよかった。
階段を上って三階に向かう。杖を買おう。
魔法使いであっても杖を装備していなければ魔法を使うことができない。まさに杖は魔法使いにとってなくてはならないものなのだ。
三階は武器が種類ごとに並べられているようだ。一番手前の棚にはいくつもの剣が柄をこちらにしてきれいに置かれている。
魔法使い用の杖の売り場を探す。左半分が剣、槍、槌などの近接武器、右半分がまるまる杖のコーナーだった。
近接武器は大量生産品が多く、在庫が多い。ある程度ぞんざいに扱っても大丈夫なので、省スペースのために敷き詰めるようにして武器が収納されている。間違えて手を切っちゃいそう。
杖は長さや属性ごとにいろいろな種類があり、デリケートに扱う必要があるので、商品の間にゆとりをもって並べられている。落とさないように注意しないとな。
どれも結構高いな。それにしても、指揮者が振るうタクトのような、細く短い杖の方が高いな。製作難度、使っている素材がハイレベルなんだろう。
水属性魔法を使える一番安い杖を選んだ。
〇熱帯の海の杖 ¥3000 水属性 効果:水属性魔法威力強化・微、打属性倍加
南の海のフィールド、アロハリュウグウのサンゴ礁でとれるトロピカルサンゴを使った杖。表面がごつごつしていてそのままでは持ちづらいので、「」ヤシの取っ手をつけている。打撃にもろいので注意。
アロハリュウグウは王都から結構離れたフィールドだが、サンゴの生息数が多く、採取で手に入るので、リーズナブルなお値段でお届けできる。枝分かれした赤いサンゴがかわいらしく、男の俺が持つのはちょっと不格好かもしれない。
さて、必要な装備を揃え終わったところで、残りの所持金は500タメルになった。余裕があればアイテムも見てみようと思ったが、やめておく。
階段で一階まで下り、エクリプス装備店の広場側の出口から出る。ラフな格好にサンゴを持った出で立ちなので、周りの目が気になるが、今さら気にしてもしょうがない。
噴水広場を縦断し、南の大通りを進む。色んなお店が並んでいるが、北の通りよりも若干アイテムを売っているお店が多いか?このまま南門を目指す。
大きな門の隣には、壁に接するように騎士団員の詰め所がある。王国には王都騎士団と呼ばれる、現代でいうところの警察みたいな組織が存在し、各街に人員が配置されている。犯罪を犯すようなNPCや、悪意のある迷惑行為をするプレイヤーなどを処罰する。大人しく捕まった場合や軽度の犯罪を犯した場合は地下の牢屋に押し込まれ、激しく抵抗した場合や、凶悪な指名手配犯の場合は執拗に攻撃され、死に戻りする。街を出入りする人は門で身元を確認されるので、犯罪者は街を利用することが難しくなる。ゲームの世界であっても悪いことはやめような。
夜も更けているため、外開きの門はちょっとしか開いていない。詰め所の壁に寄り掛かっている男性と、フィールドから帰ってきた冒険者に話しかけている女性が門のそばにいる。二人とも灰色の甲冑を着ているが、フルフェイスの兜は脱いでいる。あの人たちが身元チェックの騎士たちか。
王都から外に出る人がほとんどいない。すぐに俺の番になった。半分眠っていたおじさん騎士が俺の気配に気づき、体を前のめりにして前に出てくる。
「こんな夜更けに出るのか。危険だからおすすめしないぜ。そのちんちくりんの格好を見るに新米だろ」
確かにシズクさんから夜の狩りはやめた方がいいと言われたが、玉砕覚悟で行くならタメル、アイテムをほとんど持っていない今がベストだ。プレイヤーが死に戻りすると、所持タメルの半減、一定確率での所持アイテムのロストが行われ、一番近くの訪れたことのある街にリスポーンする。装備はロストしないので、そこは安心だ。
「なけなしのお金で用意したので見た目は勘弁してください。必ず生きて帰ってくるので大丈夫ですよ。トールって名前を覚えておいてください」
「俺はガンケン、あっちの怪力女はオミナだ」
斜め後ろを親指で指しながら見た目通りの渋い声でおじさん騎士がそう言うと、オミナと紹介された女性の首がぎゅるんっ、と回る。
「ガンケンさん、一言多いですよ!」
対応に忙しいのか、それともいつものことなのか、鬼神のごとき表情をしているが彼女はこちらまで詰め寄ってこようとはしない。
「見ての通り声まででかい」
「ガンケンさん!」
彼は怒鳴られてもどこ吹く風だ。早くしてほしいんだが。
「ええっと、トールだな。今日登録を済ませたやつの中に名前がある。通ってよし。くれぐれも、外で悪さするなよ?」
ガンケンは、手に持っていたバインダー上の用紙に素早く目を通した。
「もちろんです」
驚くほどあっという間にチェックを終えると、俺は見上げるほど高い扉から南のフィールドに出るのであった。
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