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第1章
9. 手を引かれて向かう先
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Side.湊
「湊くん、こっちだよ」
「う、うん!」
私と凪は浜辺を後にして、わかば島のメインストリートに向かっていた。
そこで食事をとって、そのあとは今日の宿探しかな。
それにしても、わかば島ってすごい!
メインストリートじゃなくても人がたくさん!
夜でも街灯で明るいし、商い中のお店ばっかり!
しずく島とは大違いだ…
そんな新鮮な雰囲気に興奮しちゃって、自然と歩みも遅くなる。
「うわぁ~すごいなぁ~…」
しずく島にはないような、背の高い建物にばかり気を取られちゃう。
人間ってこんな建物作れちゃうんだ…
ギュッ
「うぉ?!」
急に手を握られたと思ったら、凪が引っ張ってきた。
「な、凪?どうしたの?」
「前見ないと危ないよ?それに、はぐれると悪いから」
「あぁ、ごめんなぁ;」
確かに、このままキョロキョロしながらゆっくり歩いてたら凪に置いて行かれちゃう。
ここではぐれて迷子にでもなったりしたら大変だ。
…誰かに手を引かれて歩くって、こんな感じなんだなぁ。
「ほら、こっち」
「うん!」
なんとなく懐かしい感じがして、この握られた手を放してほしくなくなった。
「うっわー!この建物ひときわおっきいなぁ!」
メインストリートに着いて、そのまま凪に手を引かれて歩いていたら、横にも縦にも大きい建物発見!
何に使われてるんだろう…
「湊くん、行くよ」
「はーい…って、ここ!?」
「?、そうだけど。ここで食事をと思って」
この巨大な建物、レストランだったの?!
窓の外から建物の中が見えないようになっているからわからなかった。
「…ここ、私みたいなのが入っていい場所?」
「?」
凪が不思議そうな顔をしながら、私の手を引っ張って建物の中に入っていった。
******************************************
「・・・」ソワソワ
「湊くん、食べなよ。もしかして苦手なものとかあった?」
「い、いや!何でも食べられるよ!」
食べ物とかそういう問題じゃなくて!!
建物の中に入った途端、数人のコワモテガードマンが頭を深々と下げて道を開けて、
案内人らしい人がまた深々と頭を下げてきて、人生で数回しか乗ったことのなかったエレベーターに乗せられて、
それが最上階で止まって、今度は支配人らしい人がまたまた頭を…
そして気が付いたら、私は凪と向かい合わせで真っ白なテーブルに座らされていた。
周りに他のお客さんはまったくいなくて、スタッフの人も最初は居たんだけど、凪が席を外すように指示をしていた。
いま目の前にあるのは、大きなお皿に盛りつけられた小さな食べ物。
おっちゃんの男メシとは大違いなぁ・・・;
「な、凪って、どんだけ偉い人なの?」
「え?」
少しずつ食事に手を付けながら、凪に問いかける。
「偉い…のかな」
「賢くない私でもわかる。こんなところに顔パスで入っていったし、この階の位置とか出てくる人のランクとか、どう考えても一般人の扱いじゃないよ!」
「うーん、思い当たる節はあるけど、本当は普通に接してほしいんだよね」
「?」
「みんな、僕とは普通に接してくれないみたい」
そう言いながら、凪は小さいお肉をさらに小さく切って口に運ぶ。
あぁもう、私のバカ。
昔から本当、察するとかくみ取るとかできないんだから。
思ってても口に出しちゃダメだったでしょ、こんなこと。
手紙から何にも学んでない。
凪がどういう人なのか、今日ここで初めて会うより前から知っていたじゃないか。
それに、
『湊くんにまでそう呼ばれるのは、すごく 嫌だったんだ』
さっき浜辺でそういわれたばかりなのに、『一般人の扱いじゃない』だなんて、凪と自分の距離を広げるようなことを言ってしまった。
私たち、友だちなのに…
「・・・」
「ふふっ、湊くんってば」
「?」
凪が手を止めて私に笑いかける。
「全部顔に書いてあるよ、今考えていること」
「え」
う、うそ。私どんな顔して…
「読んであげようか?」
「や、やめてぇ~!」
凪が意地悪を言ってきた。
そして食事を再開する。
なんか、全部お見通しって感じ。
年上のお姉さんに翻弄されているみたいな。
こっちはこんなに深刻に悩んでいたのに、そんなに軽く流さないでよ。
でも、全然嫌な気はしない。
むしろ…
「デザートはメロンパフェだって」
「メロン?!聞いたことある!甘いんでしょ?!」
******************************************
「凪、ごちそうさま」
「おいしかった?」
「うん!」
食事を終えて、レストランを後にした。
こんな高級な料理を口にすることはおそらくもうないだろう…
建物に入る前と変わらず、街はまだまだ人でにぎわっている。
さて、
「そろそろ宿探さないとなぁ~」
「?」
「まだ寝るには早いけど、わかば島の土地勘ないから早めに探さないと!」
「・・・」
「できれば船着き場に近いところがいいなぁ」
「湊くん、湊くん」
「ん?」
凪がまた、私の手を引っ張る。
「もう予約してあるから安心して。
船着場からまあまあ近くて、広くて夜は静かな宿だよ」
「え!いつの間に?!」
私が島についてから今までずっと一緒にいたのに、いつの間に宿を予約してくれたの?!
あれかな、噂でしか聞いたことないけど、"でばいす"っていうヤツを使って、私の目に見えない形で予約したのかな?!
わかば島みたいな先進的な島にはそういうのがあるんだって、長い船旅の中で船乗りさんが話してくれたんだ。
よくわからないけど、わかば島にはだいぶ前からそういうものがあるから、もう紙もペンも使う人はいないんだって―――
・・・あれ?
「さあ、こっちだよ湊くん」
凪はそう言って、また私の手を引いてくれた。
「湊くん、こっちだよ」
「う、うん!」
私と凪は浜辺を後にして、わかば島のメインストリートに向かっていた。
そこで食事をとって、そのあとは今日の宿探しかな。
それにしても、わかば島ってすごい!
メインストリートじゃなくても人がたくさん!
夜でも街灯で明るいし、商い中のお店ばっかり!
しずく島とは大違いだ…
そんな新鮮な雰囲気に興奮しちゃって、自然と歩みも遅くなる。
「うわぁ~すごいなぁ~…」
しずく島にはないような、背の高い建物にばかり気を取られちゃう。
人間ってこんな建物作れちゃうんだ…
ギュッ
「うぉ?!」
急に手を握られたと思ったら、凪が引っ張ってきた。
「な、凪?どうしたの?」
「前見ないと危ないよ?それに、はぐれると悪いから」
「あぁ、ごめんなぁ;」
確かに、このままキョロキョロしながらゆっくり歩いてたら凪に置いて行かれちゃう。
ここではぐれて迷子にでもなったりしたら大変だ。
…誰かに手を引かれて歩くって、こんな感じなんだなぁ。
「ほら、こっち」
「うん!」
なんとなく懐かしい感じがして、この握られた手を放してほしくなくなった。
「うっわー!この建物ひときわおっきいなぁ!」
メインストリートに着いて、そのまま凪に手を引かれて歩いていたら、横にも縦にも大きい建物発見!
何に使われてるんだろう…
「湊くん、行くよ」
「はーい…って、ここ!?」
「?、そうだけど。ここで食事をと思って」
この巨大な建物、レストランだったの?!
窓の外から建物の中が見えないようになっているからわからなかった。
「…ここ、私みたいなのが入っていい場所?」
「?」
凪が不思議そうな顔をしながら、私の手を引っ張って建物の中に入っていった。
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「・・・」ソワソワ
「湊くん、食べなよ。もしかして苦手なものとかあった?」
「い、いや!何でも食べられるよ!」
食べ物とかそういう問題じゃなくて!!
建物の中に入った途端、数人のコワモテガードマンが頭を深々と下げて道を開けて、
案内人らしい人がまた深々と頭を下げてきて、人生で数回しか乗ったことのなかったエレベーターに乗せられて、
それが最上階で止まって、今度は支配人らしい人がまたまた頭を…
そして気が付いたら、私は凪と向かい合わせで真っ白なテーブルに座らされていた。
周りに他のお客さんはまったくいなくて、スタッフの人も最初は居たんだけど、凪が席を外すように指示をしていた。
いま目の前にあるのは、大きなお皿に盛りつけられた小さな食べ物。
おっちゃんの男メシとは大違いなぁ・・・;
「な、凪って、どんだけ偉い人なの?」
「え?」
少しずつ食事に手を付けながら、凪に問いかける。
「偉い…のかな」
「賢くない私でもわかる。こんなところに顔パスで入っていったし、この階の位置とか出てくる人のランクとか、どう考えても一般人の扱いじゃないよ!」
「うーん、思い当たる節はあるけど、本当は普通に接してほしいんだよね」
「?」
「みんな、僕とは普通に接してくれないみたい」
そう言いながら、凪は小さいお肉をさらに小さく切って口に運ぶ。
あぁもう、私のバカ。
昔から本当、察するとかくみ取るとかできないんだから。
思ってても口に出しちゃダメだったでしょ、こんなこと。
手紙から何にも学んでない。
凪がどういう人なのか、今日ここで初めて会うより前から知っていたじゃないか。
それに、
『湊くんにまでそう呼ばれるのは、すごく 嫌だったんだ』
さっき浜辺でそういわれたばかりなのに、『一般人の扱いじゃない』だなんて、凪と自分の距離を広げるようなことを言ってしまった。
私たち、友だちなのに…
「・・・」
「ふふっ、湊くんってば」
「?」
凪が手を止めて私に笑いかける。
「全部顔に書いてあるよ、今考えていること」
「え」
う、うそ。私どんな顔して…
「読んであげようか?」
「や、やめてぇ~!」
凪が意地悪を言ってきた。
そして食事を再開する。
なんか、全部お見通しって感じ。
年上のお姉さんに翻弄されているみたいな。
こっちはこんなに深刻に悩んでいたのに、そんなに軽く流さないでよ。
でも、全然嫌な気はしない。
むしろ…
「デザートはメロンパフェだって」
「メロン?!聞いたことある!甘いんでしょ?!」
******************************************
「凪、ごちそうさま」
「おいしかった?」
「うん!」
食事を終えて、レストランを後にした。
こんな高級な料理を口にすることはおそらくもうないだろう…
建物に入る前と変わらず、街はまだまだ人でにぎわっている。
さて、
「そろそろ宿探さないとなぁ~」
「?」
「まだ寝るには早いけど、わかば島の土地勘ないから早めに探さないと!」
「・・・」
「できれば船着き場に近いところがいいなぁ」
「湊くん、湊くん」
「ん?」
凪がまた、私の手を引っ張る。
「もう予約してあるから安心して。
船着場からまあまあ近くて、広くて夜は静かな宿だよ」
「え!いつの間に?!」
私が島についてから今までずっと一緒にいたのに、いつの間に宿を予約してくれたの?!
あれかな、噂でしか聞いたことないけど、"でばいす"っていうヤツを使って、私の目に見えない形で予約したのかな?!
わかば島みたいな先進的な島にはそういうのがあるんだって、長い船旅の中で船乗りさんが話してくれたんだ。
よくわからないけど、わかば島にはだいぶ前からそういうものがあるから、もう紙もペンも使う人はいないんだって―――
・・・あれ?
「さあ、こっちだよ湊くん」
凪はそう言って、また私の手を引いてくれた。
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