軌跡を創る

鳳雛

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2. あなたを追いかける

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「・・・」
「・・・」
立石(たていし)駅を後にして、閃(せん)は同じ制服を着た長身の茶髪女子の後ろを歩く。
授業初日から学校をサボろうとしていた少女が学校に向かって歩いていると信じて。

コツ、コツと、閃のローファーが音を立てる。
一方、少女はスニーカーを履いているので、足音は聞こえない。
(バレてる、よね)
少女には当然、閃の足音が聞こえている。
閃は、黙って後をついてきていることをいつ怒られるかと怯えながら歩く。
「・・・」
しかし、少女は何も言わずに先を歩く。
その間、閃には一切話しかけてこない。
しかし、桜を見て立ち止まったり、老人に挨拶したりして、また前へ進む。
そんな彼女の後姿が、閃には優しく映った。

(話しかけても、いいかな…?)

少し戸惑いながら、閃は勇気を振り絞る。
「あ、あの!」
「なに?」
少女は歩きながら返事をする。
「遅刻しちゃいましたね…」
「授業は9:00からで、今まだ8:50だし、だいじょぶっしょ」
(そ、そうなんだ!まだ間に合う…!)
「な、何年生ですか?」
「いちねん」
(え?!同い年だったの?!)
閃からの質問に、少女は自然に返事をする。
少女からは、何も聞いてこない。

「あ」
並木道を抜けると、学校が目の前に現れた。
(ホントに着いた…)
閃は校門の前に立ち尽くす。
学校にたどり着いた喜びより、この少女について行って学校に着いたことに驚いていた。
少女は歩みを止めずに玄関へ向かう。
閃もすぐその後を追い、昨日発表されたクラスへ向かう。

(どうしよう、先生に怒られる)
階段を上っているとき、忘れていた不安がよみがえってきた。
しかし、
「・・・」
「・・・」
(8:58。大丈夫、まだ授業前。)
前を歩く少女の姿を見て、閃は不思議と落ち着いていた。

1年生の教室がある4階まで上がったので、閃は少女にお礼を言おうした
しかし、少女は立ち止まらずに自分の教室へ向かってしまう。
「あ、ちょっと!」
閃はまた少女の背中を追いかける。
少女は教室の前で立ち止まり、扉に手をかける。
(え、その教室って―――)

ガララッ

その教室は整然としていた。
生徒はおとなしく自分の席に着いていて、教師はすでに存在していた。
「え?」
教室中の注目が、少女と閃に集まる。
ようやく目的地にたどり着いたのに、閃は状況が呑み込めていない。
しかし、2つ確信したことがある。
1つは、少女が同じクラスだったということ。
そしてもう1つは―――
(授業、間に合ってないじゃん!!)
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