この人以外ありえない

鳳雛

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19. 隠さない ー 新婚旅行1日目 ー

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旅行初日、南の島の空港。

「糸(いと)ちゃん、あったかいね~!」
「そうだね、依(より)ちゃん」
依と一緒に南の島へ新婚旅行に来た。
今日から5日間、ここで依とのんびり過ごす。
「初めての飛行機は楽しかった?」
「うん!本当に空飛んじゃったね!」
スーツケースをゴロゴロ転がしてタクシー乗り場に向かう。
午後の便で出発して、今は夕方。
今日は海や観光地には行かないけど、
もう旅行は始まってる。

**************************

日が沈む前にホテルに到着。

依のために、この島で一番高いホテルの一番高い部屋を予約した。
さっそくチェックインを済ませてその部屋に入った。
「糸ちゃん!海が見えるよ!」
「すげー」
依と一緒に部屋のベランダに出ると、紫色の空とそれを反射する海が見えた。
これがオーシャンビューってやつか。
「・・・」
ベランダから直接海に飛び込めそうだな。

「なんか、ロマンチックだねっ」
「ぁ」
おっといけない。
依が頬を染めて私に寄りかかってきたのに、私はアホみたいなことを考えていた。
普通、こんなに綺麗な景色をパートナーと一緒に見ているときは、依みたいにロマンを感じていたいだろうに。
こんなんだから、いつも殺されかけるんだろうな…

「そうだね」
依の手をつないで顔を見る。
こ、これで合ってる?
「ふふっ、糸ちゃん」
依は照れながら手を握り返してくる。
合ってたらしい。
しばらく2人で身を寄せながら海を眺める。

「・・・」
もう今までの私じゃない。
これまでは依の言う通り表情が無く、かつ気持ちを言葉に出さなかった。
けど、これからはちゃんと私が考えてることを伝えて、依に安心してそばにいてほしい。
ちゃんと、伝える。

「・・・」

「・・・」

「・・・ベランダから直接海に飛び込めそうだね」
「糸ちゃん、なに考えてるの」

**************************

日が沈んだので、晩餐の手はずを整えて風呂に入る。
大浴場じゃなくて部屋の露天風呂。
部屋の風呂って言っても、さすが高級ホテル。
「糸ちゃん、気持ちいね~!」
依も大満足。
ヒノキのいい匂い。
湯口から聞こえる水の流れる音で、耳まで心地いい。
透明なお湯なのに、いつもの風呂とは全然違う気持ちよさ。

「夜も絶景だねぇ~」
依が外の景色を見てうっとりしてる。
人口の光がなくても、月が明るいから夜でも海がよく見える。
その海はキラキラしてて、まるで夜空の星まで映してるみたい。
「こんなお風呂、私も初めてだよ」
「ねー!」

さて、一通り風呂を楽しんだから、もう一つの楽しみに移ろう。
「・・・」
それはもちろん、明るい場所で依の裸を見ること。

依の体をひたすら凝視する。
風呂底に座ってるから、お尻のその美しい曲線は柔軟に形を変えて、まるで風呂底に吸い付いているみたい。

私と違って依には陰毛があるけど、かなり薄いしVラインにしか生えてない。今はお湯でゆらゆら揺れてる。

腰はすごく細くて一見心配になるけど、外からは見えない体幹の強さが感じられる。

そして大きな胸。いや、そこまで大きくないのかもしれないけど、下から持ち上げてプルンプルンしたくなる形をしてる。
その先端にある乳首は綺麗な薄ピンク色。乳輪が小さいから"蕾"という表現がよく似合う。

「はぁ…」
ずっと見ていたい。
触りたくもあるけど、依の体が綺麗すぎて、視覚でもその体を味わっていたい。
依は風呂と景色に夢中で私の視線に気づかない…ふりをしている。
「・・・//」
私は知ってる。
依は恥ずかしがり屋だ。

今は旅行中だから一緒だけど、いつもは恥ずかしがって一緒に入ってくれない。
だから、風呂での依を見るのは初めて。
まだまだ"初めて"があるなんてうれしい。

「・・・」
依、腹筋すごいな――――
「も、もう!糸ちゃん!//」
「あ」
依はついに気づいてないふりをやめて怒った。
「じろじろ見ないでよ、えっち…//」
恥ずかしがって、こちらに背を向けて丸くなった。
かわいい。小動物みたい。

よし、もう一度気持ちを言葉にして伝えてみよう。
「依の体、綺麗だからずっと見ていたい」
また思ったことを口にできた。
今日は大躍進だ。
「っ…!///バカ!!//」
バチッ!
達成感を得た瞬間、平手打ちされた。

**************************

首もげるかと思った。
空手家の平手打ちは勢いが違う。

風呂の後、部屋でご飯を食べて一緒のベットで横になる。
依はご飯の時も歯磨きの時も口をきいてくれなかった。
そして今も。
「・・・」
依は私から距離を取って背を向けている。
旅行初日に依の機嫌を損ねてしまった。

…依はもう寝ちゃったかな。
「仲直りしたい」
今の気持ちを伝える。
「ごめんね、依ちゃん。恥ずかしかったよね」
「・・・」
「抱きしめたら、私のこと嫌いになる?」
「・・・」
言葉が返ってこない。
やっぱり寝ちゃったか。


「・・・糸ちゃん」
依がしゃべった。
「アタシの方が、ごめんなさい。
糸ちゃんの言う通り、恥ずかしかったの。
でも、今ちゃんと謝ってくれてうれしい」
「依…」
依がこっちを向いて、口を布団で覆いながら話す。
「叩いちゃってごめんね。
もう腫れてないけど、痛かったよね」
「ううん、全然…いや、痛かった」
「ごめん…でも、やっぱりうれしい。
また正直に言ってくれたから」
布団を引っ張って、依の顔をよく見る。
「私も、自分の気持ちが伝わってうれしい」
気持ちを伝えるって、こんなに素敵なことだったんだね。

でも、言葉にしなくても伝わることはある。
お互い何も言わず、抱きしめ合って、見つめ合って、キスをした。
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