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7. 治らない病気
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私は病気だ。
それは幼いころから分かっていた。でも現代の医学では原因不明で治すことができないらしい。
まぁ別に治らなくてもいいんだけど。
**************************
井場(いば)化学工業薬品、Z 室。
私は普段この部屋で仕事をしている。
研究・開発部でもある実験室は I 室で、私の同期がいる。
営業部、広報部、宣伝部は O 室、人事部、経理部、法務部は N 室にある。
そして私の部署は、
「糸(いと)くん、今期の新規契約ってどこだっけ?」
「リストまとめておいたのでメールしときまーす」
総務部、すなわち雑用。
「そうだったか!それならコピーしてくれないかな?」
この会社は入社時に部署を選べるシステムだった。
「課長、今ペーパーレスですよ。データ保存すればなくさないし、いつでもどこでも見れますよ」
入社してからも希望を出せば部署の変更は可能だし、適性に合った部署に異動させられることもある。
「いやーどうもスマホやパソコンは苦手でねぇ~。コピーお願いね!」
私も何度か I 室への異動を勧められた。
「ご自分でどうぞ~。休憩行ってきます」
時代遅れの上司と話すのは苦痛なので、私もその誘いに乗りたい。
I 室は若い人が多くて年功序列より実力主義な世界だから、私にとって理想的な部署だ。
でも、 I 室に入ると夜勤がある。
それに Z 室だって悪い人ばかりじゃない。
「糸くん今日もつれないな~」ピッ、ウィーン…
「課長~、もう糸さんに絡むのやめた方がいいっすよ?」
「そうそう、あの人は社長のお気に入りなんすから!」
「ん~、でも上司に向かってあの態度は…」
「課長や俺らより仕事できんだから何も言えないっすよ~」
「ていうか課長、いいかげんデバイス使いこなして」
「き、キミたちまで~!!」
**************************
さて、休憩休憩。外に行こう…
「あ、唯(ゆい)ちゃん」
「糸さん!」
…と思ったら、この間一緒に I 室に行った年上の後輩を発見。
「何してるの?」
「 I 室に行くところです!新発明を見てほしいって言われて」
発明…
「それってもしかして」
「糸さんも一緒に行きましょう!」
「ちょ」
手を掴まれてしまった。
非常階段に向かって歩いてるってことは、 I 室の一部である地下の実験室に行くつもりだ。
唯の所属部署は知らないけど、まともそうなので絶対に I 室ではない。
なのに、あいつ何の用だ…?
「私あいつに会いたくないんだけど」
そしてキミともあまり近づきたくない。
「実は糸さんを連れてくるように言われているんです!」
マジか、なにが目的だ。
っていうか この子、
こんなに強引だったっけ?
**************************
I 室 地下実験室。
ガチャ
「お邪魔します!糸さんを連れてきました」
「・・・」
連れられてしまった。
道中、腕を振りほどこうとしたり用事を作ったりしたんだけど、
笑顔のまま力ずくで連れてこられた。
おかげで腕に手の痕が…
…依に殺される。
「おう、待ってたよ。唯、糸」
「・・・」
私を見るなり気持ち悪い笑顔を向けてくるこいつは、大手企業からヘッドハンティングされて来たエリート研究員。
「籠(かご)…」
「よく来たね!早速だけど見てよコレ!」
籠は私たちに冬の必需品・カイロを見せてきた。
今はカイロが必要な時期じゃないぞ。
「これが何だよ」
「カイロって、持ってる人しか温まらないじゃん?
でも僕が開発したコレは、たった1つで部屋全体を温めることができるんだ!!」
「・・・」
だから何だよと盛大に思ったけど、純粋にすごいとも思った。
「じゃあ使うね」シャカシャカ
「は…?」
いや今じゃないだろ…
**************************
「どう?ポカポカでしょ!!」
「・・・」
あっちーよ。
こいつの発明品のおかげで、地下実験室の一室がサウナになった。
籠は白衣を脱いで半袖になったけど汗が止まっていない。
「さすが籠さん…」
唯も上着を脱いでノースリーブのニットになっている。
そしてそのニットも脱いで…ん?
それは脱いだらダメなんじゃないか?
暑さで頭が回らなくなってきたけど、それくらいはわかる。
「唯ちゃん何してんの?」
「何って、服を脱いでるんです。
暑いし、そもそも服なんて着る必要あります?」
依みたいなこと言うな。
唯はついにスカートまで下ろして下着姿になった。
「糸さんも脱いじゃいましょうよぉ、いつまでそんな暑そうな格好してるんですか~?」
私の長そでYシャツを見て言っているんだろう。
「そうだよ糸、そんなもん脱いじゃえ!」
唯が私のYシャツのボタンを1つ外した。
勝手に脱がすな。
「嫌。それじゃあな」
いつまでもこんなところにいたら暑さとこいつらのせいで頭がおかしくなる。
「・・・」
部屋を出るためにドアノブに手をかけようとして悟った。
こんな真っ赤に焼けた金属に触れたら手が焼けて一生使い物にならなくなる。
「あれ?糸どうしたの?外に出ないの?」
これも狙いの内なのか。
本当に何が目的なんだ。
「ねぇ、籠さまぁ…」
籠"さま"?
唯を見ると、いつの間にか下着まで脱いで全裸になっていた。
そして籠の腕を胸の間に挟んで抱きしめている。
異常だな。
「籠、お前何やってんだ」
「ククっ…唯、来月から I 室に入ることになったんだ」
「は?」
「僕が社長に直談判したんだよ。『唯がほしいです』って」
確かに、こいつの好みはピュアで童顔で胸が大きい女で、唯はその条件に当てはまっている。
そしてこいつの趣味は、そんな純情な子を自分の手で汚すこと。
「相変わらず汚ぇな」
「汚いなんて失礼な!唯は自分から僕を選んだのさ!」
「薬で頭おかしくしてるだけだろ。
そうやってロリ顔巨乳が I 室に何人入って何人辞めたと思ってんだ」
「クククっ!相変わらず口が悪いねぇ!そんなの知らないさ」
籠は抱きしめられている手を唯の股に忍ばせて指を沈めた。
「あんっ!// 籠さまぁ、あっ、あぁん//」
籠の手で快感に浸る唯。
それを見て満足そうにしている籠。
私は何を見せられているんだ。
「暑いんだし離れろ馬鹿ども。2人で仲良くしてればいいだろ。
私をここから出せ」
「えー、唯のこと助けてあげないの?こんな目に遭ってるのに」
グチュグチュ
「はぁん、もっと、もっとしてぇ…//」
灼熱の部屋に水音と嬌声が鳴り響く。
「他人の行動に口を出す趣味はない、好きにすればいいだろ」
「好みの子に薬を飲ませて、洗脳して、調教して、監禁しても?」
「…お前 病気だよ」
私がそう言っても、籠は変わらず気持ち悪い笑顔を向けてくる。
「はぁ…それじゃあ、またな」
「は?」
ジューーー
「ぐっ!!…はぁ」ギィ
私はドアノブを回して扉を開けた。
「暑さでドアの形変わってんぞ、気を付けろよ」バタン
私の右手は手ではなく、異臭を放つ黒い物体になった。
「…涼しいなぁ~」
「・・・」
「籠さま?」
「はぁーあ。唯、ちょっと寝てて」
「はい、仰せのままに…スー、スー…」
「糸…お前こそ病気だろ」
**************************
Z 室への帰り道。
丸焦げの手を見つめながら歩く。
私は籠のことが嫌いじゃない。
あいつと私は似てるから本心で話せる。
籠の方は私に何か隠しているようだけど。
そんなのはどうでもいい。
「今日は早退して証拠隠滅しよう」
依だったらこの汗だくのYシャツに喜んで飛びつくだろう。
でも余裕で私以外の匂いもついてるだろうから消臭消臭。
「・・・」
丸焦げだった手が少しずつ肌色を取り戻している。
私は病気だ。
自然治癒力が異常に高い。
痛いものは痛いけど、出血しようが骨折しようがすぐに治る。
だからどれだけ依に傷をつけられても、数日以内に痣まで綺麗に消える。
でもほぼ毎日傷を負っているから、外では長袖長ズボンで過ごしている。
この病気が寿命に影響するかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
ただそれだけ。
それを除けば私なんて、本当に普通の人間だ。
そうでしょ?
それは幼いころから分かっていた。でも現代の医学では原因不明で治すことができないらしい。
まぁ別に治らなくてもいいんだけど。
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井場(いば)化学工業薬品、Z 室。
私は普段この部屋で仕事をしている。
研究・開発部でもある実験室は I 室で、私の同期がいる。
営業部、広報部、宣伝部は O 室、人事部、経理部、法務部は N 室にある。
そして私の部署は、
「糸(いと)くん、今期の新規契約ってどこだっけ?」
「リストまとめておいたのでメールしときまーす」
総務部、すなわち雑用。
「そうだったか!それならコピーしてくれないかな?」
この会社は入社時に部署を選べるシステムだった。
「課長、今ペーパーレスですよ。データ保存すればなくさないし、いつでもどこでも見れますよ」
入社してからも希望を出せば部署の変更は可能だし、適性に合った部署に異動させられることもある。
「いやーどうもスマホやパソコンは苦手でねぇ~。コピーお願いね!」
私も何度か I 室への異動を勧められた。
「ご自分でどうぞ~。休憩行ってきます」
時代遅れの上司と話すのは苦痛なので、私もその誘いに乗りたい。
I 室は若い人が多くて年功序列より実力主義な世界だから、私にとって理想的な部署だ。
でも、 I 室に入ると夜勤がある。
それに Z 室だって悪い人ばかりじゃない。
「糸くん今日もつれないな~」ピッ、ウィーン…
「課長~、もう糸さんに絡むのやめた方がいいっすよ?」
「そうそう、あの人は社長のお気に入りなんすから!」
「ん~、でも上司に向かってあの態度は…」
「課長や俺らより仕事できんだから何も言えないっすよ~」
「ていうか課長、いいかげんデバイス使いこなして」
「き、キミたちまで~!!」
**************************
さて、休憩休憩。外に行こう…
「あ、唯(ゆい)ちゃん」
「糸さん!」
…と思ったら、この間一緒に I 室に行った年上の後輩を発見。
「何してるの?」
「 I 室に行くところです!新発明を見てほしいって言われて」
発明…
「それってもしかして」
「糸さんも一緒に行きましょう!」
「ちょ」
手を掴まれてしまった。
非常階段に向かって歩いてるってことは、 I 室の一部である地下の実験室に行くつもりだ。
唯の所属部署は知らないけど、まともそうなので絶対に I 室ではない。
なのに、あいつ何の用だ…?
「私あいつに会いたくないんだけど」
そしてキミともあまり近づきたくない。
「実は糸さんを連れてくるように言われているんです!」
マジか、なにが目的だ。
っていうか この子、
こんなに強引だったっけ?
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I 室 地下実験室。
ガチャ
「お邪魔します!糸さんを連れてきました」
「・・・」
連れられてしまった。
道中、腕を振りほどこうとしたり用事を作ったりしたんだけど、
笑顔のまま力ずくで連れてこられた。
おかげで腕に手の痕が…
…依に殺される。
「おう、待ってたよ。唯、糸」
「・・・」
私を見るなり気持ち悪い笑顔を向けてくるこいつは、大手企業からヘッドハンティングされて来たエリート研究員。
「籠(かご)…」
「よく来たね!早速だけど見てよコレ!」
籠は私たちに冬の必需品・カイロを見せてきた。
今はカイロが必要な時期じゃないぞ。
「これが何だよ」
「カイロって、持ってる人しか温まらないじゃん?
でも僕が開発したコレは、たった1つで部屋全体を温めることができるんだ!!」
「・・・」
だから何だよと盛大に思ったけど、純粋にすごいとも思った。
「じゃあ使うね」シャカシャカ
「は…?」
いや今じゃないだろ…
**************************
「どう?ポカポカでしょ!!」
「・・・」
あっちーよ。
こいつの発明品のおかげで、地下実験室の一室がサウナになった。
籠は白衣を脱いで半袖になったけど汗が止まっていない。
「さすが籠さん…」
唯も上着を脱いでノースリーブのニットになっている。
そしてそのニットも脱いで…ん?
それは脱いだらダメなんじゃないか?
暑さで頭が回らなくなってきたけど、それくらいはわかる。
「唯ちゃん何してんの?」
「何って、服を脱いでるんです。
暑いし、そもそも服なんて着る必要あります?」
依みたいなこと言うな。
唯はついにスカートまで下ろして下着姿になった。
「糸さんも脱いじゃいましょうよぉ、いつまでそんな暑そうな格好してるんですか~?」
私の長そでYシャツを見て言っているんだろう。
「そうだよ糸、そんなもん脱いじゃえ!」
唯が私のYシャツのボタンを1つ外した。
勝手に脱がすな。
「嫌。それじゃあな」
いつまでもこんなところにいたら暑さとこいつらのせいで頭がおかしくなる。
「・・・」
部屋を出るためにドアノブに手をかけようとして悟った。
こんな真っ赤に焼けた金属に触れたら手が焼けて一生使い物にならなくなる。
「あれ?糸どうしたの?外に出ないの?」
これも狙いの内なのか。
本当に何が目的なんだ。
「ねぇ、籠さまぁ…」
籠"さま"?
唯を見ると、いつの間にか下着まで脱いで全裸になっていた。
そして籠の腕を胸の間に挟んで抱きしめている。
異常だな。
「籠、お前何やってんだ」
「ククっ…唯、来月から I 室に入ることになったんだ」
「は?」
「僕が社長に直談判したんだよ。『唯がほしいです』って」
確かに、こいつの好みはピュアで童顔で胸が大きい女で、唯はその条件に当てはまっている。
そしてこいつの趣味は、そんな純情な子を自分の手で汚すこと。
「相変わらず汚ぇな」
「汚いなんて失礼な!唯は自分から僕を選んだのさ!」
「薬で頭おかしくしてるだけだろ。
そうやってロリ顔巨乳が I 室に何人入って何人辞めたと思ってんだ」
「クククっ!相変わらず口が悪いねぇ!そんなの知らないさ」
籠は抱きしめられている手を唯の股に忍ばせて指を沈めた。
「あんっ!// 籠さまぁ、あっ、あぁん//」
籠の手で快感に浸る唯。
それを見て満足そうにしている籠。
私は何を見せられているんだ。
「暑いんだし離れろ馬鹿ども。2人で仲良くしてればいいだろ。
私をここから出せ」
「えー、唯のこと助けてあげないの?こんな目に遭ってるのに」
グチュグチュ
「はぁん、もっと、もっとしてぇ…//」
灼熱の部屋に水音と嬌声が鳴り響く。
「他人の行動に口を出す趣味はない、好きにすればいいだろ」
「好みの子に薬を飲ませて、洗脳して、調教して、監禁しても?」
「…お前 病気だよ」
私がそう言っても、籠は変わらず気持ち悪い笑顔を向けてくる。
「はぁ…それじゃあ、またな」
「は?」
ジューーー
「ぐっ!!…はぁ」ギィ
私はドアノブを回して扉を開けた。
「暑さでドアの形変わってんぞ、気を付けろよ」バタン
私の右手は手ではなく、異臭を放つ黒い物体になった。
「…涼しいなぁ~」
「・・・」
「籠さま?」
「はぁーあ。唯、ちょっと寝てて」
「はい、仰せのままに…スー、スー…」
「糸…お前こそ病気だろ」
**************************
Z 室への帰り道。
丸焦げの手を見つめながら歩く。
私は籠のことが嫌いじゃない。
あいつと私は似てるから本心で話せる。
籠の方は私に何か隠しているようだけど。
そんなのはどうでもいい。
「今日は早退して証拠隠滅しよう」
依だったらこの汗だくのYシャツに喜んで飛びつくだろう。
でも余裕で私以外の匂いもついてるだろうから消臭消臭。
「・・・」
丸焦げだった手が少しずつ肌色を取り戻している。
私は病気だ。
自然治癒力が異常に高い。
痛いものは痛いけど、出血しようが骨折しようがすぐに治る。
だからどれだけ依に傷をつけられても、数日以内に痣まで綺麗に消える。
でもほぼ毎日傷を負っているから、外では長袖長ズボンで過ごしている。
この病気が寿命に影響するかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
ただそれだけ。
それを除けば私なんて、本当に普通の人間だ。
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