この人以外ありえない

鳳雛

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3. 逃がさない

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依(より)は高校教師だ。
そんな人間が人を傷つけたり殺そうとしたりするのはいけないことだろうって?
違うんだよ。
まったく何にもわかっていないね。

******************************

「依先生、お疲れ様です~!」
「お疲れ様です、繋(けい)先生」
宙読(そらよみ)高校、放課後の職員室。
依の机は、同じく高校教師である繋の隣にある。
「このあと職員会議でしたっけ?」
「それなんですけど、テストの採点で先生みんな忙しいということで、明後日に延期になりましたよ」
「マジですか?!よかった~!」
この高校では昨日までテスト期間だった。
テスト翌日の今日になっても、職員室ではすべての教員が採点に追われている。
「ひゃ~、まだまだこんなに採点残ってる…
この後 病院で検診もあんのに…」
「大変です?」
「まあ、そうっすねぇ。地理は2年と3年の選択科目なんで、人数はそこまで多くないっすけど…」
「頑張ってくださいね。それではお先に失礼します」
「はい、おつか…って、ええ?!」
依はカバンを持って席を立つ。
「ちょちょちょ、依先生!テストの採点は…!」
「私の担当分は昨日のうちに終わっています。先ほど他の先生の担当分も手伝いましたので、帰りますね」
「えぇ?!」
依はそう言って職員室を出ていった。

「な、何者なんだよ依先生って…」
「本当よね~」
「教頭先生。依先生、別に答案を持ち帰って家で採点を済ませてきたわけじゃないっすよね?」
「ええ。彼女は昨日のうちに、定時内にすべての採点を終了していたわ。
採点スピードはものすごく速いけど、それでも採点ミスがあったことはないの」
「うっそ…でも依先生って国語教師っすよね?記述の採点もあるし、全学年の全生徒がテストしてる科目なのに…」

******************************

職員用昇降口を出て、依は家路を急ぐ。
「ねぇあの人誰だろう?」
「学校関係者かな?」
「なんかかっこよくない?!」
「ね!美形~!」
校門には背の高い女性が立っていた。
彼女を見て女子生徒たちがそれぞれに話をしている。
「糸(いと)ちゃん?」
「お、依ちゃん来た」
今日の糸は仕事が終わってもすぐ家には帰らず、依の勤務先の前で彼女の帰りを待っていた。
「帰ろ、依ちゃん」
「うん!」
「なーんだ依ちゃんの友だちか~」
「いや彼女じゃん?」
からかう生徒の声がまるで聞こえていないかのように、依は糸の隣を歩き始める。
「人気者だねぇ、依ちゃんは」
「?、そんなことな…!?」
糸は依が隣に来たのを確認すると、彼女の手を握る。
「い、糸ちゃん、ここ外…///」
「ん?」
依が照れているのに対して、糸は自然な表情。
むしろ手をつなぐことができて嬉しそうにしている。
「もう、糸ちゃんってば…///」

******************************

さて。
家に帰るなり依に両手首と両足首を縄で縛られて床に転がされた。
相変わらず、この縄で縛られるのは痛い。
しかも依ちゃんは見かけによらず力が強いから、縛るのも殴るのも全部強い。
小さい頃から空手やってるっていうし、今じゃ全国大会常連校の空手部の顧問だし。

「いーとちゃーん」
「なに?」
「今日はどうして縛られてると思う?」
「わからない」
「んふふ・・・」
依の右手を見ると、一本鞭を持っていた。
え、なに、SM?
「お外であんなにくっついてきて…
そんな可愛い糸ちゃんには、お仕置きだよ?」
「えぇ…」
なんだよその理由…
自分だって手をつなげて嬉しそうにしてたじゃん。
むしろくっついてきたのは依だろ。

うつ伏せにひっくり返されてベルトに手をかけられた。
カチャカチャ
「はぁ、はぁ…//」
「…依ちゃん?」
「っ! ほ、ほら、お仕置き!」
勝手に興奮された。
そしてついにズボンを下ろされ、ついでに下着も降ろされた。
「ふふ、糸ちゃんの可愛いお尻が丸見えだよ…」
「寒い、戻して」
「恥ずかしい?恥ずかしいよね?
この年になって大事なトコロを丸出しだなんて…エッチな気分になってきちゃった?」
「いや別に」
寝起きにズボン脱げてるときあるし。
「・・・もういい。お仕置き始めるんだから」

ヒュッ スパァン!

「うぐっ!」
いきなり尻を鞭で弾かれた。
鋭い痛みが下半身に走る。
これ血出てないかな?
スパァン!
「い"っ!」
スパァン!
「ぐっ…!」
「ふっあははは!!どう?逃げられないでしょ?!
その恥ずかしい格好で反省しなさい!!」
スパァン!
「っく…」
何を反省しろっていうんだ。
鞭を打たれた箇所が熱を持って、まるで奴隷の焼き印を刻まれているような気分だ。
「あっは、濡れちゃった?
ほら、ちゃんと何回打たれたか数えなきゃ終わらないよ?
それとも、"いとちゃん"は数を数えることができないのかなぁ~?」
「・・・」
ちょっと調子に乗りすぎたね。

「依」

「っ!」ビクッ
お尻を出した滑稽な格好のまま、依の顔を見ずに黙らせた。
「自分の方こそ、生徒に愛嬌振りまき過ぎなんじゃない?」
「なっ・・・そんなわけないでしょ!私は教師で…!」
「生徒に『依ちゃん』呼びされてるのかよ」
「そっ、それは…」
表情を見なくても依が動揺しているのがわかる。
「依」
「・・・」
「縄、ほどいてくれるね」
「は、はい…」
手首と足首の縄をほどかれて、下着とズボンを元に戻す。

そして依に迫る。

「こ、来ないで!」
依は逃げるけど、その先は行き止まり。

ガッ

「っ!」
依の肩を壁に押し付けて目を見る。
「依?」
「は、い…//」
「お仕置きが必要なのはどっちかな?」
依の頬を両手で固定して、この体制からも私の視線からも逃げられない依に、長い長いキスをした。
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