世界最強の女好き吸血鬼が、学園でハーレムを築きながら世界を救う英雄となるまで

柊咲

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仮面の刺客たち 2

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「レイナ、俺の側にいろ」
「え、きゃ!?」


 レイナの肩を抱き寄せながら、
「魔力よ無に帰せ──ヴァライドゲート」
 放たれた魔術を防ぐため、俺とレイナを囲うように巨大な門をいくつも生成する。


「連中の狙いが俺かレイナか、あるいはどちらともなのかはわからないが、会話は応じてくれそうにないようだな」
「ええ、そうみたいね」


 発動したヴァライドゲートを見て、連中は顔を見合わせた。
 感情や思考、そういったことは不明だが、有無を言わさず攻撃してきたくせに次なる一手を繰り出してこない。
 そんな奴らの行動に、少し違和感を覚える。だが、


「連中に仮面を外させて、どうして俺たちを襲ったのか聞けばいいだけか」


 ヴァライドゲートの門がスッと音を立てて消えると、俺はレイナから離れる。
 そして連中の警戒心や、仮面の奥底に光る瞳は、ずっと俺に向けられていた。


「なるほど……」


 狙いはレイナではなく俺か。
 そしてこの連中は、俺を殺すことを目的としていない。
 殺すつもりなら一気に畳みかけてくるべきだ。だがそうしないということは、俺自身の実力を測っている、と考えるのがいいかもしれない。

 ──禁忌の魔導書を盗んだ者は必ず、膨大な魔力を持ったあなたに接触してくる。

 カーラの言葉が頭によぎり、そう考えられた。


「光を覆う闇夜の影よ──アンモレアネア」


 太陽の光を遮断するように、暗雲に似た影が上空に浮かぶ。
 視界は徐々に暗くなっていき、連中は慌てながらも周囲を照らそうと炎の魔術を発動する。

 この連中は魔術の心得も、それなりの魔力も持っているみたいだ。

 ただ、それだけだ。


「少し腕に自信があるのはわかった。だが、狙った相手が悪かったな」
「──ッ!?」


 両脚へと魔力を込め駆け出すと、標的を180ほどの背丈がある一人に絞って狙う。
 なぜなら、俺の行動の後に、次の行動を伺うように他の六人が何度かこいつに顔を向けていた。
 おそらくは、こいつがリーダー格なのだろう。
 であれば、こいつさえ無力化すれば問題はない。そして情報も、こいつから聞き出せばいい。

 他の連中を置き去りに、背後へと移動する──だが、


「──その女を狙え!」


 静まった世界で、突如として大声が発せられた。
 男の野太い声が響くと、六人全員の標的が俺から一瞬でレイナへと変わる。

 周囲を照らす炎の魔術が、影を払う風が、レイナを襲う。


「魔力よ無に帰せ──ヴァライドゲート」


 レイナを囲うように展開された巨大な門。
 連中の放った魔術は消え、目の前の体格のいい男が俺から距離をとる。


「逃がすかッ!」


 詠唱している時間が惜しい。
 俺は魔力で生成した剣を右手に持ち、一気に距離を詰める。

 だが連中の標的が俺に向くことはなかった。
 何度もレイナ目掛けて魔術が放たれる。彼女もなんとか避けていたが、返す魔術はなく、四方八方から攻撃されれば対処できない。

 俺は男から離れ、レイナの側に駆け寄る。


「……もういいだろう」


 レイナの下へ駆け寄ったときには、既に連中の気配は遠ざかっていた。
 追うこともできるが、呼吸を荒くさせたレイナを置いていくことはできない。


「大丈夫か、レイナ」
「ええ……」


 手を貸すと、彼女は短く言葉を発して俺の手を掴む。


「……ごめんなさい」


 彼女は申し訳なさそうに顔を下げながら言った。


「どうして謝るんだ?」
「私が足を引っ張ったから、あいつらを逃がした……」
「気にするな」


 俺自身の落ち度もある。
 連中を殺すことは容易だったが、カーラの言葉が頭に残り、生かして捕まえるということで手間取ってしまった。
 それがなければ、きっと結果は変わっていただろう。


「……身に染みて分かったわ。魔術師には、どう足掻いても魔力の無い者は抗えないのね」
「なに?」


 立ち上がったレイナは悲し気に声を漏らした。
 だがすぐに笑顔を浮かべ、首を左右に振った。


「いいえ、なんでもないわ。もう暗くなるから帰りましょ」


 彼女は細剣を鞘に納めると、帰り道を歩く。
 戦闘の続きはしないのか? という質問をする場面ではないだろう。
 俺は彼女の後ろを歩き、伝える。


「酷な話だが、剣術をどんなに鍛えても、魔術には及ばない」
「……そうね」
「レイナはどうして、ヴェリュフール魔剣学園に入学したんだ?」


 夕焼け空が段々と暗くなっていく空。


「……自分の腕がどこまで通用するのか知りたかった、そんなところかしらね」
「知ってどうするつもりだったんだ?」
「さあ、どうしたかったのかしらね」


 レイナは空を見上げる。


「中立国をより豊かにしたかった。三国にバカにされるのが嫌だった。……お父さんとお母さんを、もっと楽させたかった。いろんな考えを今まで持っていたんだけど、結局のところは、自分の力がどこまで通用するのか知りたかったのよ」


 だけど、と。
 レイナは苦しそうに笑った。


「やっぱり私には無理だって、わかっちゃった。魔力を持ったお母さんの娘として、他の三国の連中には負けない気持ちでいたんだけどね」


 きっと入学前には希望があったのだろう。
 磨かれた剣術を手に、魔力を持った生徒たちに挑む。
 だがどんなに頑張っても魔術に剣術では勝てない、歯が立たないと理解して、希望が消えかかっているのだろう。


「なんだか、昔の俺に似てるな」
「え、あなたに……?」


 驚くレイナに、俺は頷く。
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