世界最強の女好き吸血鬼が、学園でハーレムを築きながら世界を救う英雄となるまで

柊咲

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仮面の刺客たち 1

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 人気のないフルーゲル廃墟に移動したのは、俺と決闘する為でもあったのだろうか。


「お店で俺の魔術の一部を見たはずだ。それでも、本気で俺と決闘するというのか?」
「戦う前から勝敗は決まっているって言いたげね」
「ああ、その通りだ」


 俺の言葉に、レイナは俺を見る目付きを鋭くさせ、苛立ちの表情を浮かべる。


「確かにレイナは、剣の技術は高い。それは理解している。だが真剣勝負の決闘であれば、俺は魔術を使う」
「構わないわ」
「魔術師相手に、その細剣一本で勝てると思っているのか?」
「──ッ! そんなの……そんなのッ!」


 俺の言葉はレイナの逆鱗に触れた。
 彼女は両足に魔力を込めると、勢いよく蹴り出す。

 自身の身体能力を上昇させる魔術。
 いや、正確には魔術という分類ではないか。
 ただ強化したい体の部分に魔力を込めるだけの、戦闘における応用技のようなもの。
 だから魔導書なんか存在しない。これはまるで呼吸をするように、食事をするように、生きている中で自然と身に着けた力だ。

 これを用いて相手の裏をとったり、四方八方からの連撃へと攻撃に繋げる。

 ──けれど。


「なッ!?」


 両足に込めた魔力量が足りず、レイナの動きを目で追うことは容易だった。
 突き出した細剣を、俺は横に飛んで受け流すと彼女の左腕を掴んだ。

 レイナは掴まれた腕を慌てて振りほどくと、距離をとり更に苛立ちの表情を強くする。


「バカに、しないでよ……」


 左腕を掴む動作ができるのであれば、隙だらけの彼女に終わりを告げる一撃を繰り出すことができた。
 だが俺はしなかった。
 それが彼女にとって”手を抜いた”侮辱行為だと思わせたのだろう。


「もう一度だけ聞くが、このまま戦って俺に勝てると思っているのか……?」


 再び問いかけると、レイナは即答した。


「やってみないとわからないでしょ」


 そうか、と俺は小さく頷く。


「だったら、こっちも本気で──」


 真剣勝負を望んでいるのなら、それに応えるべきだろう。
 もちろん殺すことはしない。お互いに殺すことが目的ではないのだから。
 そう思ったのだが、


「……いや、止めておこう」
「ふざけないで! そんなに私と戦うのが嫌なの!?」
「違う、そうじゃない」
「だったら!」


 走り出しそうになったレイナを止める。


「……ここには、中立国の連中は寄り付かないんだったよな?」
「そうだけど」
「そうか。だが、ここ目掛けて何人か向かっているようだぞ」
「え?」


 周囲をキョロキョロと見渡すレイナ。
 音はない、人影もない。だがはっきりと、俺たちのいるこの場所に向かっている集団がいた。


「どうして、そう言えるの?」
「さっきまでは感じなかった魔力が、ここへ近づいてくるのがわかった。おそらくこれは、中立国の人間じゃないな」
「どういうこと?」
「レイナが言っていただろ。中立国には膨大な魔力を持った者はいないと」
「ええ、そうだけど。もしかして、感じる魔力量が多いの?」


 俺は小さく頷くと、レイナの隣に立ち周囲を警戒する。
 離れた位置からでも感じるほどの膨大な魔力。それも一人や二人ではない。
 学園で声をかけた三国の生徒と同等か、それ以上の者。レイナの話からそれが中立国の人間ではないわかる。


「この場所に三国の者が来るとは思えないわ……。本当に何もない廃墟で、魔獣ぐらいしかいないもの」
「だとすれば、俺かレイナを狙ってきたかだな」
「私たちを?」
「まあ、こいつらから話を聞くのが最も早いだろうな」


 言い終わる前に、俺たちを囲うように廃墟となった建物や周囲の木々から姿を現した者たち。
 その服装は異様で、全員が全員、顔を隠すように仮面を付けていた。

 人数は全員で七人。
 その全員が白塗りに、黒の模様が入った仮面を付けている。
 服装も異様で、髪を隠すようなフード、足首まで覆う紺色のコートを身に着けていた。

 目に見える情報は、七人それぞれ身長や体格が異なるというだけ。
 背の高い者は180ぐらいあるが、低い者は140ほどしかない。
 おそらくは男女混合の集団だろう、その比率はわからないが、それしか得られる情報はない。


「お前たちは何者だ。そう聞いて答えてくれるか……?」


 七人それぞれを見ながら問いかける。
 だが、誰も言葉を返してこなかった。声で性別や人物を特定させないようにだろうか。
 連中は互いに身振りや手振りでやり取りすると、


「……」


 連中は魔導書を手に取り、突き出した手に様々な色の光が輝く。
 魔術を使用する詠唱の言葉ははっきりとは聞こえない。
 四方八方から放たれた様々な属性の魔術は、そこまで威力は高くないものの、防がなければ深手を負うほどの威力を持っている。
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